中◆田正◆義。(半)

数多の声の中から私に気付きましたか。迂闊なあなたにしては大変良い出来です、グッフォーユー。

余所行きの言葉で迎えるのは些か気恥ずかしいので止めましたが、探し求める声にわざわざ応えて頂いたのだから、相応に持て成すのが道理でしょう。どうぞ、お客様用のソファへ。そわそわするのに飽きたなら、このメモに目を通してチェックを入れてください。つい先ほど思い付いて書きなぐったものですが、読めそうですか?私とあなたの求めるものが同じかどうか、きちんと確かめなくては。

少しばかり、とは言えない程度に長くなります。時間が無ければ帰っても構いません。このまま残るのなら、お茶を2人分用意しましょう。今なら美味しいクッキーが付いてきますよ。……クッキーが食べたくて言っているわけではない。いいな。私が厨房から戻るまでに、そのにやけた顔を、どうにかしておけ。

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《確認事項》

□本体様が、最低限度の一般常識を備えた成人女性であること。挨拶などの小さなマナーや言葉遣い、親しき仲の礼儀を軽んじない者であること。

□巻数問わず、原作を楽しく読んでいること。読了の意思がある場合、未読部分のネタバレを断固として避けたいのであれば、ただちにこの文章を読むのを止め原作の未読部分を読み進めることを強く強く勧める。

□世界観、知識、人間性など、全ての事柄において過剰に「完璧」を求めないタイプであること。良くも悪くも「どこか違う」部分を、それはそれとして受け入れられる者が望ましい。

□生活が昼夜逆転しておらず、日に数度メールを送れる程度の時間的余裕があること。 基本的には「帯・豆」を用いた「言葉のみ」での遣り取りだが、「ロールプレイ(〜200前後)」「外出(チャットサイト使用)」「通話(本体・半ナリ)」など、それぞれが楽しいと思えることを無理せず臨機応変に楽しめると尚良し。

□この関係性において、恋愛あるいは性的関係を結ぶことを主たる目的としないこと。

□健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、愛し、敬い、慰め、助け、互いに真摯に向き合い真心を尽くすこと。

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──……ああ、やっと読み終えましたか。日本人は筆記体の読み書きが苦手な傾向にあると聞いています、ミルクティーが冷める前に読み切れたのだから上々でしょう。理解できない単語は……は?誰があなたと結婚したいなどと言った。読み直し。

人間関係において「恋愛」という名がついたものは、現代日本での一般的な優先順位として、比較的上位にあります。私に同性の恋人がいたことはないけれど、ご存知の通り、偏見はありません。私とあなたの関係性に最終的に「恋愛」という名が付くのなら、それはそれで結構。私達だけが知る新たな名が付くのなら、それもまた大いに結構。ひととひととの関係性に予め決まったラベルを貼るなどという、ナンセンスな真似をするよりは、ずっと良いとは思いませんか。

そういった理由で、あなたとこれからどんな言葉を交わしどんな関係を築いていきたいのか、現時点で明確なビジョンが定まっているわけではありません。ただ、……正義。あなたに楽しいことがあったとき、辛いことがあったとき、下らないことを思いついたとき。ふと思い出して声を掛ける相手が、他でもない私であれば良い。そう思いました。特別話すことが無い時は……そうですね。あなたが苦手でなければ推理ゲームでもしましょうか。「エトランジェ」で極上の宝石を眺めて鍛えた観察眼に期待していますよ、私のワトソン。

さて。おおよそ理解出来たのなら次はこちらを読んでください。先程のメモよりは、随分短いですよ。

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《必須事項》

・簡単な自己紹介
活動時間、ロールプレイ時の文字数、
外出や通話の可否など
・私や、この関係に求めること
・豆ならID、帯ならURL
・他、質問/要望/確認など

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正義、あなたへの宿題です。
このメモの内容を全て盛り込んだメールを、私に送ってください。銀座で宝石店のアルバイトをしている某人物曰く、どうやら私はとてもとても優しいらしいので、今回は日本語で構いませんよ。提出期限は未定、メールの長さも問いません。本当にそのメモの内容だけを箇条書きにするほど、あなたは人との関わり合いに淡白ではないでしょう。あなたの真っ直ぐで嘘がなく、時折とんちんかんな母国語を、どうぞこの外国人に遺憾なく見せつけてください。分からないことがあればいつでも連絡を。

本当に長くなってしまいましたね。時折あなたに喋り好きだと茶化されるけれど、これでは否定できなくなってしまう……まあ、強く否定するつもりもありませんが。流石にそろそろ御開きとしましょう。

なかなか難しい望みであることは自覚しています。だからこそ期待している。あたたかくかけがえのない時間をゆっくり積み重ねていくことが出来たら、あなたとの思い出は硬く美しい結晶となって、私の心の地層の奥深くに永く残るでしょう。……いつかこの心から掘り返した時に、私の手のひらの上にはどんな名を冠した宝石が輝くのか。今からとても楽しみです。

お付き合いありがとうございました。
メール、楽しみに待っていますよ。