忘却の彼方

今日、3月8日。楽しみにしてる日めくりカレンダーを捲った時、嗚呼もうこんなに時間が経ったのかと呆気に取られた半分、ぞっとした。人類に皆平等に与えられた時間という概念。俺はこれを平等だとは思わねェ。これまで生きてきた中で、何度も死にかけた事はあった。その時は不思議と辺りが静寂に満たされ、全てがスローモーションに見える。ギリギリの処で切り抜けてやってきた。生き急いで来た分、俺の時間はお前らと平等じゃねェし、早死にするんじゃねェのかな、と思ってる。
それも良いかもしれねェ。行き着く先は地獄でも、俺の大事なもんだけが暖かくて優しい場所に居られたらそれで満足だ。だから今日も、ほら、スローモーションが流れていく。

血の匂いを覚えたのは幾つの時だったか。
忘却の彼方に飛んでしまった記憶を、取り戻す事は難しくて。

せめて今だけを大切に生きてェと思うが、いかんせん1人じゃ…どうせまた、3月8日という今日を忘れるだろう。俺に代わりに、お前が覚えててくれやしねェか。俺という人間が生きた瞬間をその目にその耳に焼き付けておいてくれねェか。
生き急ぎ野郎の、1つだけの願いだ。叶えてやろう、っつー輩は、俺様宛に帯と言葉を綴って送ってくれ。俺様には時間がない。互いの交差する点でも見つかりゃ良いんだが。取り敢えず、待っとくとする。それじゃあな。
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