カリフォルニアポピー

もう何年も前の話だが、俺はカリフォルニアポピー(別名、花菱草)の種を植えた。花を種から育てることなんて小学生の頃のアサガオ以来だった。
なぜカリフォルニアポピーを選んだのかというと、俺の大好きなバンドのヴォーカルの好きな花だったからである。その人は手首にその花の刺青をしているほどだ。カリフォルニア出身のバンドなので、カリフォルニア大好きな彼は州の花も好きだったのだろう。

そのバンド大好き人間であった俺はというと、バンドメンバーの人数と同じくプラスチック製のプランターを４つ設置したのであった。
そこに種を植えた後で、バンドメンバーの名前が書かれた園芸ピックを各プランターに立てた。
どんだけ徹底しているのだ。ちょっと気持ち悪い。

そして名前を呼びながら水やりをしたり肥料を与えたりとにかく大好きなメンバーを育てている感覚で嬉しかった。端から見るとただの変人に見えただろう。

いつ植えたか覚えていないが6月に目が出たと思う。
目じゃない。目だと怖すぎるだろ。
薄黄緑色した可愛らしい芽を愛でる日々が始まった。
韻を踏んでいる訳じゃないのだが。
そして大切にメンバーを育てていくと、ようやく見事なオレンジ色の心に元気を与えてくれるような花を咲かせてくれた！！
嬉しかったなぁ。育てるのは簡単な花だけど、自分が不器用すぎて花を咲かせられるかも不安だったのだ。
嬉しすぎて俺は花に話しかけていたと思う。
彼らに挨拶した記憶がある。


夏が来た。

メンバーは、真夏の異常な暑さで枯れた。

ちくしょうっ！
きっとあれだ！あれだ！もうあれだ！
プランターがプラスチックのせいで熱を上手く逃がすことも出来ていなかったんじゃないか？
水やっても熱湯なんじゃないか？
陶器製の物にしとけば良かったよ。
なんて後悔した。
今となっては笑える。
俺の育てていたバンドは全滅してしまった。
そう考えるとなんか笑えてくる。
このバンドは実際にはまだ解散はしていない。
しかし活動休止になった。
もしや、俺のせい？なんて言うのは考え過ぎだろう。