1 東洋

<東洋流ポーカー術/支配力の過ち>

 
アメリカが韓国の輸入を止めてしまったせいで、今後、日本の経済までもが危うくなるといった見通しが付けられている今現在の世界情勢を果してどう見るべきであろうか?

直接的には争いに荷担していなくとも、間接的に被害を受け、その被害によって、自分自身の生命を脅かす程の大惨事と成りえる事だって十二分に有り得るわけである。

状況は、参加者800人程のトーナメント、ファイナルテーブル。ラスト9人まで絞り込まれており、俺はダントツのチップリーダーである。そのため、いつものように、テーブル上のみんなをイジメている。

しかし、そろそろ、イジメる必要も無いかなと考え始めている。何故なら、このトーナメントでは、上位5名が決まった時点で全てのゲームが終了となり、その5名が平等な状態で、後日行われる次のトーナメントへと進む権利を得る事が出来るからである。

従って、これ以上チップを増やす事に意味もなく、俺に残された仕事は、このトーナメントが終わるまでフォールドボタンを押し続けることであった。

ここで戦うべき者達は、その他、5名以内に残れるか、残れないかの瀬戸際に立たされているプレイヤー達である。また、仮にそのプレイヤー達が戦わないのならば、ブラインドとアンティーの上昇によって、チップが削られ、ゲームオーバーとなってしまうため、まあ、必死である。対して、そんな状況を眺めているチップリーダーの俺は愉快である。

言うなれば、高みの見物が許される状況であったが、ここで、1ハンド前にショートスタックへと落ち込んだ日本人プレイヤーがチャットで話し掛けて来た。加えて、そのプレイヤーをショートスタックへ追い込んだ本人が俺だったりもするため、ポーカーとは別の悪口バトルも始まり出すのかと、一瞬、文字打ち本性を晒け出そうかと身構えたが、予想を裏切り、好意的な挨拶であったため、コッチも正体を隠したまま、気の良い挨拶を交わした。会話も弾み、ブラインドが1周する頃には、親友となっていたため、同じテーブルを囲む、プレイヤー達のちょっとしたクセを教えた。

「俺の左隣のイタリア人は、ブラフの時、ハーフポットベッドを素早く打つ傾向があるので、そのアクションが来たらレイズを返せば良いよ」「君の右にいる中国人は、フロップの当たり外れだけでアクションを決めるタイプなので、フリフロップはコールで付いていっても、その後のプレイで十分利益が出せるよ」

……といった具合に。同時に、このトーナメントの最終テーブルに置いて、自分の生き残り以外、この親友も次のトーナメントへ連れて行くといったサブミッションも加わってしまったわけである。先に親友になる見込みがあると分かっていれば、俺もそこまでチップを奪っていなかったというのに、まったくもって変な話である。まあ、ヘンテコながらに真面目な話、自分も戦わなければならない状況ならばともかく、このゲームでは、とくにやることもないため、気の良い日本人プレイヤーが居ると分かれば、少し手助けする程度のことはたまにしてやったりもするわけである。

言うまでもなく、ゲーム上の力関係で言えば、ビックスタックは強い。

こちらが1万点のチップを持っており、相手が1千点のチップしか持っていなかったとしよう。互いに同じようなレベルのハンドが配られ、どちらにも全くフロップがヒットしなかったとしよう。

ここで1万点持っているプレイヤーは気軽にブラフの1千点をベッドすることが出来るのに対し、1千点しかないプレイヤーは、コールするにも、ベッドするにも、命懸けのアクションを強いられるため、まあ、有利不利を語るまでもなく、力関係はハッキリしたものとなってしまう。

そして、そんなビックスタックが味方に付いてしまったとなれば、強力な仲間だと言わざるを得ないだろうし、それも、そのビックスタックが俺程の者となれば、俺の親友から金を奪おうとする悪い連中を、懲らしめにいこうと思ってしまったりするため、他のプレイヤーからしたら相当厄介である。

まずは、手始めに、親友の邪魔に成りそうなプレイヤーがビックブラインドに居る場合い、全てのゲームに10BBのレイズから入るというややこしさを発揮するところから始めてみた。俺にとっては捨てても問題ない10BBであろうと、他の者達にとっては、生死を賭けた10BBとなる状況であるため、まあ、ウザいだろう。ウザいだろうが仕方ない。この格差社会に置いて、東洋というルール以外は存在し得ないという事を知らしめる必要があるのだ。この勝者と敗者によって生み出された残酷な図式……独裁的に踏みにじられる俺だけの世界を恨むのならば、これまでの戦いの中からチップを得られなかった自分自身の能力を恨み、苦痛と苦悩を味わい続けるが良いといった闇の支配力による10BBをお見舞いし続け、親友がブラインドの時は自らのAKを捨てた上で、そのカードをテーブル上へオープンするといったエコヒイキ丸出しなプレイによって、俺の親友に逆らう者は、俺が殺しに行くよというメッセージをテーブル上で伝えた。その効果もあってか、親友のスチールも決まりだし、ブラインドが10周する頃には、親友は、入賞を決める程のチップ量を持っていた。そして、そのまま、親友も次なるトーナメントへと出場を果たしたのだが、なんと、悔しくも、そのトーナメントの序盤で、その親友と同じテーブルとなり、その親友からアッサリ殺されてしまったのであった。

こんな事になると分かっていれば、こんな親友さっさと殺しておいたのに、まったく持って変な話である。

直接的には争いに荷担していなくとも、間接的に被害を受け、その被害によって、自分自身の生命を脅かす程の大惨事と成りえる事だって十二分に有り得るわけであるということを改めて痛感している今日この頃であった。

BY/東洋
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2 資本主義とは?
あそびてーなー
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