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1 坪内

友達の母から

昔からよく一緒に遊ぶ友達がいる。
家で遊ぶだけじゃなく学校でも仲がいい。
だから、何でも知っているつもりだった。

ところが最近、その友達のある噂を耳にしてしまった。


今でも母親からお尻をぶたれて叱られることがあるらしい。

しかし、にわかには想像できなかった。
何年も前から数え切れないほど遊びに行かせてもらっている。
友達と二人で叱られてしまった日も何度かはあった。
ただそれは口頭で注意を受けただけで、手をあげられたことなど一度もない。


知らない一面を、自分の目で確かめてみたくなった。
[作者名]
坪内
(PC)
3 坪内
「自分の子供じゃなくても?」

「そうねぇ、叩かれるような悪いコトしたんなら叩くかもね。うちにいる間はおばさんがお母さんみたいなもんだから。」

「…もしかして、なにか悪いコトしちゃったの?」

いつもと違う態度を不審に思ったおばさんが、向こうからそう聞いてきた。
しかし、これはチャンスだった。
あれこれ聞くよりも実際にお尻を叩いてもらったほうが手っ取り早いはず。

「実は今日、塾をサボッて遊びに来たんです…。」

「あらぁ、それはイケナイわね。」

「今すぐに帰っても間に合わないの?」

「はい。」

「それじゃ、二度としないようにお尻を叩きましょうか。」

おばさんは飲み終えたお茶の道具を台所へ片付けた後、エプロンで軽く手を拭いながら戻ってきた。

「まずは、お尻を出してもらおうかしらね。」

「ぜ、全部ですか?」

「当たり前です。たくさん叩くから、痛くってたまらないでしょうけどね。」

その少し意地悪な言い方は、いつものおばさんとはもう違っていた。
(PC)
4 坪内
ピシャッ!

ひとつ叩かれた時、もう後悔が始まった。
お尻に電気が走ったような激しい痛みを感じ、思わず歯を食いしばってしまう。

「痛いでしょう?」

「はい…。」

「でもおばさんは一度叩くと言った以上、途中ではやめませんよ。」

ピシャッ!

「ひいっ!」

「ただ時々、こうして休憩は入れてあげる。痛いだけで反省しなかったら意味がないからね。」

「は、はい…。」


ピシャッ!


ピシャッ!


ピシャッ!


休憩とは名ばかりだった。
たくさん叩かれる中で置かれる時折の「間」は、お尻の痛みをじっくりと味わわせるための罰の一環に違いなかった。

ピシャッ!


ピシャッ!


ピシャッ!


まだ、叱られ始めてからそんなに時間は経っていない。
それなのに、もう随分と長くお尻を叩かれ続けたように錯覚してしまう。

「…いくつ、叩くんですか?」

そう聞かずにはいられない。

ピシャッ!


「さてね、まだ決めてないわよ。」


ピシャッ!


「塾の先生、お父さんお母さん、通ってる他のお友達…。」

「何人に迷惑をかけたか考えたら、きりがないでしょう?」


ピシャッ!


おばさんは、そう簡単に許す気はない。
お尻が赤くなった程度で許してもらえるだろうと考えていたのが甘かった。


ピシャッ!


ピシャッ!


ピシャッ!


どんどん増えていくお尻の手形が、全体を深い赤へと彩っていく。


ピシャッ!


ピシャッ!


ピシャッ!


「塾の授業時間は、どれくらい?」


ピシャッ!


ピシャッ!


「い、一時間半…です…。」


ピシャッ!


ピシャッ!


「そう。」


ピシャッ!


ピシャッ!


ピシャッ……
(PC)
5 坪内
どうやらいくつ叩くと決めたのは、その時だったらしい。
「休憩」を挟みながらとはいえ、一時間半もの間おばさんから打たれ続けたお尻。
自分のものとは思えないほど大きく腫れ、しばらくはその場から動く気にならなかった。

「その痛み、覚えておきなさいね。塾に行くが嫌になったとき思い出せるように。」

「一時間半もお尻を叩かれるより、同じ時間、真面目に勉強するほうがずっといいでしょう?」

忘れたくても忘れられない。
塾でも、つまらない授業の時は本当に時間が長く感じてしまう。
それでもおばさんの罰に比べたら、あっという間に終わるだろう。

「こんなに痛いとは思いませんでした。」

「お友達の前ではしないで、…って約束したからね。」

「うちの子叩く時は夜まで待ってあげてたの。」

「けどこれで、隠す必要もなくなったかな?」

おばさんは真っ赤な手の平に息を吹きかけると、どこか嬉しそうに呟く。

「今度から、うちで悪いコトしたときは…。」

「覚悟しておきなさいね。」

帰り道。
赤く腫れたお尻を悟られないよう、いつもの通りを意識して歩く。
そのぎこちなさが、初めておばさんとの秘密を持ったようで嬉しかった。
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