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1 美緒

男の子の秘密

あたしの通う小学校に、カケル君という男の子が転校してきた。

見た目は可愛くて、女の子が男の子の格好してるみたいだった。
おとなしくてあまり自己主張せず、最初はいかにもマジメって感じに見えたのに、一つ大きな問題があって担任の先生にとっては悩みの種だったみたい。

それは、彼が宿題をまるでしてこないコト。

転校してきて数日の間はそんなこともなかった。
宿題もちゃんとやってきてたし、授業も真剣に受けていた。
でも一度忘れてきて以来、家では全くやってこなくなった。
だから実際のところ、カケル君は「毎日」先生に怒られては宿題を忘れた罰としてお尻をぶたれている。
そうまでして宿題をやらない理由は何だろう?あたしは興味本位で聞いてみた。
「なんで宿題やってこないの?」
「めんどくさい。」
「またお尻たたかれるよ?」
「それは・・・しょうがないよ。」
この反応が少しひっかかった。
どう見ても嘘をついているようにしか見えなくて、問い詰めても恥ずかしそうにはぐらかすだけ。
もしかしたら宿題をするのめんどくさいというのは建て前で、目的は他にあるんじゃないだろうか。
そう考えていたら、ピンときてしまった。

「もしかして、先生にお尻たたかれたいとか?」

この世の終わりみたいな顔のカケル君を見る限り、図星のようだった。
女の子の間で性の話題の広まり方は驚くほど早い。
実際見たことはなくても、世の中に痛い事をされて喜ぶ人がいるというのは既に常識だった。

「お願い、みんなに言わないで・・・。」
ボロボロ涙を流しながら言うカケル君を見て、あたしの中にも何かが芽生えてしまった。

「・・・いいけど、これからはあたしの言う事聞いてくれる?」


その日をきっかけに、カケル君は宿題を家でやってくるようになった。
もちろん、あたしとの約束があるから。
毎日宿題を忘れないでやってくれば誰にも言わないし、ばれることもない。
彼の願望は、あたしが先生に代わって満たしてあげることにした。
放課後になるとカケル君を連れ、下校するふりをして人気のない神社や廃屋に身を隠し、そこでお尻をたたいてやる。
もちろん子供のあたしじゃ先生ほどの力はないから、同じようにたたいてもきっと痛くない。
だからズボンも下着もおろすし、叩くときに手加減もほとんどしない。
カケル君が痛がったって構わない、だって本来これは罰だもの。
カケル君自身、涙を見せて痛がったりはするものの、あたしがどんなに強くたたいても本気で拒むような様子はなかった。
[作者名]
美緒
(PC)
2 美緒
小学生のあたしは、問題児のカケル君に対して自分は「良い事」をしていると信じこんでいた。
宿題をやってこない子を正しい道に向かわせている。
そうだ、先生すらできなかったことをあたしがやってあげてるんだ。
人のいない場所に呼び出しては異性のお尻をたたくという異常な行為も、あたしの中ではすっかり正当化されてしまっていた。
約束を守ったカケル君のお尻をたたいてあげることが、あたしにとっての正義だったのだ。

しかしそうなってくると、新たな問題はカケル君に対する「罰」のほうだった。

いくらカケル君がマジメになったところで、以前のように宿題をやってこない日だってある。
普通に忘れることもあるだろうし、あたしなんかより先生にお尻をたたかれたい日もあったのだろう。
そのくらい、願望がないあたしでも察しはつく。
今までそれ目当てに宿題を忘れ続けた子が、ある日突然パッタリなくなったとしたら未練が全くないわけがない。
代わりにたたくあたしという存在があってもだ。
だからといって、カケル君が先生に怒られたあとあたしからも同じ罰を与えるのは逆効果かもしれない。
だからそんな時、あたしからの罰は「しばらくお尻をたたいてあげない」こと。
数日間はマジメに宿題をやってきてもあたしは何もせず、普段通りに学校生活を送るだけ。
カケル君が物欲しそうな目でねだってきても、そこはお預け。
反省するまでは他のみんなと同じ、ただのクラスメイトでいる。

それでもカケル君は変な気を起こせない。
なにしろ秘密を握っているのがあたしだから。
あたしが駄目なら先生にお尻をたたかれたいと思っても、もし続けて忘れたらあたしが誰に何を言ってしまうかわからない。

だから、カケル君は我慢するしかなかった・・・に違いない。

またあたしにお尻をたたいてもらえるようになるまで・・・。
(PC)
3 美緒
そうなると、あたしのほうにも意識の変化が生まれてきた。

このままあたしがカケル君のお尻をたたき続けたところで、そのうちまた宿題忘れの常習犯に戻ってしまうんじゃないか。
少なくとも現状では、あたしがお尻をたたくのをやめた翌日には元通りになってしまうだろう。
それでは意味がない、あたしがカケル君をマジメにしなきゃいけない。
それはもはや使命感だった。

ただ望んだ事をしてあげるだけじゃ駄目だ。
カケル君がお尻をたたかれるのを嫌がるようにさえなれば・・・。
そう思った瞬間から、あたしの行動は正義とはよりかけ離れた方向へ変わっていった。


まず、カケル君が先生にお尻をたたかれるべき日をあたしの指示で決めるようになった。
カケル君が先生にたたかれたくなった日に自らの意思で罰を受けるというのは、ただ本人の欲求を満たしているにすぎない。
カケル君にはきちんと宿題をやらせ、その上で朝に突然「今日はやってないと言いなさい」と望まない罰を受けさせる。
もちろんこれだけなら今までとそう変わらないので、先生ができるだけ強くたくさんたたいてくれるよう仕向けることもあった。
「先生、カケル君が勝手にあたしの宿題ぜんぶ写しました。」
「先生、カケル君本当は昨日もおとといも自分で宿題やってないです。」
もちろん全て嘘なのだが、不正が嫌いな先生はあたしの話をいとも簡単に鵜呑みにしてくれた。
「嘘をついたの?」と聞かれれば、カケル君は「はい」と答えるしかない。
宿題をやっていないこと自体が嘘なのだから、どう答えようと辻褄が合わないのだ。

これによってカケル君は先生からたっぷりとお尻をたたかれることになった。
本来ならば十数発もやられれば無罪放免というところを、嘘をついたからと四倍、五倍ほどもたたかれたらしい。
放課後に一人呼び出されていたので直接は見ていないのだが、泣き方が尋常じゃなかったのは涙の痕からも推測できた。

しかし、それを見たあたしの気持ちはやりすぎたとか可哀想だとかいう類のものではなかった。

これはいい、きっとカケル君にはこういう罰を与えなくちゃいけないんだ。
あたしの暴走は止まるどころか、更に加速を続けるだけだった。
(PC)
4 美緒
「あら美緒ちゃん、ボーイフレンド?」
「違います。・・・あの、怒ってもらおうと思って。」
あたしの次なる作戦は、カケル君にとって見ず知らずの大人にそのお尻をたたいてもらうことだった。
ちょうどあたしと顔見知りの塾講師をやっている若い女性が近所に住んでいるのを知っていたので、その人に頼んでみようとカケル君を呼びつけたのだ。
もちろん来るまでカケル君本人には言わず、ついさっき「お尻たたいてもらいに行くよ」と伝えてここまで引っ張ってきた。

元々この先生が塾で怠ける子のお尻をたたくことがある、というのは聞いていたので、こちらに都合よく事情を説明するのは簡単だった。
「怠け癖がひどい」「親、学校の先生の言うことは聞かない」「お尻をたたかれることだけはものすごく怖がっている」
嘘も交えて耳打ちしながら本気で困っていると相談すると、そういうことならと「協力」してくれることになった。

指導する立場としての血が騒いだのかもしれない。

「カケル君は、なんで今日ここに連れて来られたか聞いてる?」
「・・・。」
「あたし言いました、お尻たたかれに行くんだよって。」
「知ってるならいいか・・・。こっちへ来て。」

その罰は、あたしの目の前で始まりました。
先生はしゃがんだ状態でカケル君のお腹に腕を回し、軽く突き出たお尻を平手でパンパンと叩き始めます。
おそらくは塾でやっている子と同じようにたたいたのでしょう。
しかし、あまり痛そうには見えませんでした。
これではあたしがたたく時のほうが遥かに痛いはずなので、わざわざ連れて来た意味がありません。
「カケル君、ぜんぜん痛くないでしょ。」
「ええ?・・・そうなの?」
「学校じゃもっときつくたたかれるし、パンツも下ろされてるんですよ。それなのに、言うこと聞かないんだもん。」
パンツのくだりは嘘だった。
あたしがたたく時は毎回下ろしていたが、教室で先生がそんな風にしているところはまだ見たことがない。
放課後呼び出された日にはもしかするとあったのだろうが、別室でのやりとりをあたしの目で直接確認する術はない。
つまりはあたしの妄言なのだ。

それでも、目の前の罰に対しての影響力はあった。
先生はカケル君のズボンに手をかけお尻を丸出しにさせると、ただしゃがんでいるだけの体勢から正座を始めた。
その正座の太腿にカケル君を横たわらせたあとは、お尻をひとつずつぴしゃり、ぴしゃりと打ち始める。
それは先生というよりはさながら母子のようにも見え、悪戯のすぎた息子を厳しく叱るように力強く、わざとゆっくり時間をかけてのお尻たたきだった。
カケル君は数発ごとに我慢できず声を漏らしては、痛みの逃げ場がないのか全身を振るわせている。
それでも先生は塾講師という立場上、こうして心を鬼にして子供を叱ることには慣れているようで一切の手心を加えようとしなかった。
すっかり赤く腫れているカケル君のお尻を見るに、今まであたしがたたいていたのとは比べ物にならないほど痛かったのだろう。
カケル君はお尻をだしたまま、しくしくと涙を流すだけだった。

こういう子には、すぐ終わる罰だと意味がないから。
終わったあとで、先生はあたしにだけこっそりそう教えてくれた。

「これでも効き目がないようだったら、また連れてきなさい。」
(PC)
5 美緒
それからしばらく、カケル君のお尻をたたく役目はまたあたしに戻っていた。

塾の先生による罰は相当堪えたようで、カケル君が理想とする痛みの許容を超えていたらしい。
もちろんあたしにとっては好都合で、それを使わない手はない。
「怖いお尻たたき」が一つできただけでも収穫なのだ。
本当に怒ったときはあの先生のところへ連れて行くと言っておけば、学校での宿題忘れもある程度の歯止めはかかる・・・かもしれない。

あたしはそんな期待を抱きながらも、あたしの手による罰ももう少し効き目があるようにできないかと悩んでいた。

そこで思い付いたのは、お尻をたたく場所を「人目につかないどこか」からもっと身近な場所に変えること。
カケル君の気持ちになって、そんなことをされている自分が一番見つかりたくない場所はどこか。

自ずと、カケル君に罰を与えるべき場所が見えてきた。


それは、カケル君の家。
自宅で家族に見られる可能性があるというのが最も怖いだろうということで、あたしがカケル君の部屋にお邪魔してそこで罰を与えるようになった。
おばさんはあたしを遊びに来たクラスメイト程度にしか思ってないはずだが、実は気付かれないように息子であるカケル君のお尻をぴしゃぴしゃとたたいているのだ。
もちろん前もって、多少の防衛線は張っている。
本格的に罰するのは家の人が留守にしている間がほとんどで、いる間はあまり音がしないようわざと弱めにたたいてあげている。
それでもお尻を丸出しにしたところを見られようものなら言い訳もきかないし、どうやったって音は漏れるので気付かれるリスクはゼロではない。
「音楽会に向けて手拍子の練習中」という強引すぎる言い訳も用意してはいるが、たたいているあたしのほうも「見られたらどうしよう」と思いながらやっている。
あたしがそうなのだから、家族のいる近くで情けなくお尻を曝け出しているカケル君はどんなにも屈辱と恥ずかしさを感じているのだろうか。
「おばさん、もう買い物行ったのかな?」
「・・・まだ、下にいると思う。」
「そうなんだ。聞こえちゃってるかもねぇ。」
「・・・お願い、もうちょっと弱くして。聞こえちゃう・・・。」
「そうだね。でも駄目、痛くないんでしょ?もっと大きい音だしてもいいんだよ。」
こんな会話をしながら、長い時間をかけてお尻をたたく。
あの先生から学んだことだ。
もしおばさんが階段をのぼる音がしたらすぐに立たせ、素早くズボンを腰まで上げてもらう。
カケル君は生きた心地がしないだろうな、きっと。
(PC)