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1 愛佳

おしおきベンチ

こんなつもりじゃなかったのに。
後悔するには遅すぎた。私は校外学習の班から抜け出し、ひとりで街外れにいる。

事の発端はクラスの友達との些細な口ゲンカ。
でも思い返してみても、ケンカと呼べるほど波風が立っていたわけではない。結局どちらが悪かったのかも正直言ってわからない。
ただ、同じ班の子たちが揃って向こうの味方をしたのが私にはどうしても許せなかった。

しかし、黙って抜け出したのはまずかった。
これでケンカの非がどちらにあろうと、一番怒られるのは間違いなく私。もしかしたらもう家にも連絡されていて、帰宅してから更に大目玉を喰らうかもしれない。

考えれば考えるほど憂鬱になった。
[作者名]
愛佳
(PC)
2 愛佳
今の私には幾つか選択の余地があった。しかし、それがかえって決断を鈍らせる。

まず、素直にみんなとはぐれた場所に戻る道。
これが他人事ならば恐らくこれが一番いい。余計な心配をかけなくて済むし、うまくすれば家にも連絡しないでもらえる。
ただ同時に、みんなの前で怒られる可能性が大いにある。

次に、直接学校へ戻る道。
これも怒られはするだろうが、下校時間になるまで待ってからなら周りの目はなくなるかもしれない。
しかし、遅くまで粘ると当然家にも連絡がいく。

もう一つ、全てを忘れて家まで戻る道。
・・・って、さすがにこれはないか。

一人でパンクしそうな頭を抱えていると、先生が私を探す声が聞こえた。
(PC)
3 愛佳
「春川、無事かー!?」
私に気付いた先生が、血相を変えてこちらに向かってくる。
逃げても大人の足には勝てないだろう。
私は言い訳を二、三考えながら悲しそうな顔をつくってみせたが、先生はとりあえず安心した様子だった。
「・・・見つけました。はい、責任持って連れて帰りますので。」
携帯で家に連絡しているのかと焦ったが、どうやら繋がっているのはもう一人引率で来ていた先生のようだった。
気付けばもう夕方で、下校時間を過ぎていてもおかしくない。他の子たちは先に学校に戻り、既に下校準備をしているようだった。
もちろん私だけは、そんな風にすんなり帰してもらえるわけがない。
場所を移しての事情聴取が始まった。
(PC)
4 愛佳
腰掛けたのは並木道の横長いベンチ。
少し説教じみた話もされたけど、思っていたよりは深刻そうじゃない。
怪我もなく見つかったし、家にもまだ連絡はしてないらしい。

それならこのまま先生の胸にだけしまっておいてくれればいいのに。

というのは私の勝手な希望で、先生はなかなか折れてくれなかった。
危険な目に遭う可能性もあったわけだし、怒られるのも経験だと口にしては私の頭を撫でる。
しかし私は怒られる事を除いても、親にそれを知られるのをどうしても避けたかった。
ショックを受けて、一瞬でも悲しい顔をされるのが嫌だったのだ。

そこで私は、最後の手段に出ることにした。
(PC)
5 愛佳
「先生、おしりたたいていいから家に言わないで。」
先生は突然の頼みごとに驚いた様子だった。
おしりをたたくというのは先生が学校でたまにやっていた罰で、悪さを繰り返す子に歯止めをかけるために使われていた。
私はこの時点でまだ経験がなかったが、涙など見せたことないような子が我慢できず涙ぐんでしまう所を見てしまった事もあり、その痛さは伝わってきた。
更にここは屋外で、大通りと離れているおかげで人通りこそ少ないものの全くないとは言えない。
もしかしたらおしりをたたかれている最中に、誰かに見られてしまう可能性だってある。
それでもいいからと頼み続けると、沢山たたくという条件で先生は承諾してくれた。

先生の腕をぎゅっとつかんで膝に寝転ぶと、おしりにすぐ平手が飛んできた。
薄手のパンツなんてほとんど意味がないほどきつく、何度も何度もばしばしやられるうちに涙も出てきて、ごめんなさいって泣きながら足をばたばた。
でもそんなもんじゃ痛みをごまかしきれなくて、先生の腕おもいきり握ってたなぁ。もう我慢できないから許してくださいって願いながら。
結局、おしりがパンパンに腫れるまで許してもらえなかったけど・・・家に言わないって約束は守ってもらえた。
(PC)