Write
1 和昭

妹の隠し事

バタバタバタ・・・
「お兄ちゃん・・・いるっ?」
廊下から聞こえた騒がしい足音は、部屋のドアが開くと同時に止まった。
「お前なぁ、ノックぐらい・・・。」
「そ、それどころじゃないんだって!・・・お母さんって今、台所・・・?」
「いや今日は遅くなるはず・・・って、もしかして・・・またやったのか?」
「え゛!?し、してない!何にもしてないよ!?ははは・・・。」
そう言って顔をひきつらせる妹の凛の格好は、明らかに数時間前とは違っていた。
白いTシャツが一枚に、不自然に巻かれた下半身のタオル。そしてあの焦りようは・・・。

間違いない、また寝小便だ。
[作者名]
和昭
(PC)
2 和昭
あまり言いたくはないが、本来ならば凛はもうそんな粗相をしていいような歳ではない。
母親も「病気ではないか」と一時は心配していたのだが、実は寝る前にぐいっと多量の飲み物を摂取したがる悪癖が見つかっただけらしい。
そして、そうとわかった日から母親は凛の寝小便を厳しく叱りつけるようになった。
「どうしよう、またおしり叩かれちゃうよ・・・。」
「あれだけ喰らってたらそろそろ慣れただろ?」
「慣れないよ!ちょー痛い・・・ってお兄ちゃん!?何で普通に入ってきてるの!!」
「いやほら、自宅だし。」
「・・・ノックぐらいしてよ。」
どの口が言うのかと頬を引き伸ばしてやろうかと思ったが、これから我が妹の身に起きる不幸を想像して特別に許してやる。
(・・・笑えないぐらい痛いんだよな、あれ。)
幼い頃に受けた母親の尻叩きを思い出し、思わず右手で擦る。
今の凛には効かないからと、より強い力で折檻している所も何度か見た。
しかも今日は昼寝中の寝小便で、本来なら発生しないはずの100パーセント余計な洗濯物。
鬼の形相に変わる母親の顔が容易に想像できてしまう。
がんばれよ、と声をかけようとしたその時、凛の方からある提案があった。
(PC)
3 和昭
「・・・お兄ちゃん、お願いがあるんだけど。」
「断る。」
「まだ何も言ってないよ!」
聞かなくても大体察しはつく。
母親にばれないように隠してほしいと言うんだろう。
実際のところ、証拠を隠すだけなら凛ひとりでも不可能ではない。
替えの服や下着は自分たちの部屋に置いてあるし、一枚二枚ローテーションが変わったところで母親が気付くとは思えない。
布団で寝ていたらどうしようもなかったが、昼寝だったのが幸いした。
雑巾で拭き取って消臭剤でも撒いておけば、ほぼ証拠は残らないだろう。
つまり、残る危険因子はあとひとつ。

兄からの告げ口だ。

「・・・ねぇお願い、お兄ちゃん。」
「わかった絶対言わない・・・ってここで言ったら信用するのか?」
「そ、それは・・・。」
実は前にも似たような事があった。
その時も凛から隠すよう頼まれたのだが、自業自得と判断してあっさり報告。
思惑の全てが母親にばれた結果、凛は尻が3倍に膨れ上がるほどの勢いで母親からしこたま折檻を受ける羽目になった。
その経験があってなお隠したいというのだから、妹ながら腹が据わっているというか。
(いや、単に後先考えてないだけだろうな・・・。)
「・・・だったら、お兄ちゃんが。」
「ん?」
「お兄ちゃんがおしり叩いてよ。あたし我慢するからさ。」
後がないと悟った凛は、とんでもない事を言い始めた。
(PC)
4 和昭
「お前さぁ、俺なら加減してくれるとか思ってるだろ。」
「思ってないよ?ほら、お兄ちゃん鬼だし。」
完全に舐められている気がする。
しかし、凛の次の一言で納得せざるを得なかった。
「それでも、お母さんのよりはまし。」
げんなりした表情で、凛が呟く。
受けた者にしかわからない、痛覚のあるヒトとして産まれてきた事を後悔させられるようなうちの母親の仕置き。
なるほど確かに、あれを回避できるならという凛の気持ちはわからないでもない。
「・・・もう一度言うが、手加減はしないからな?」
「お手柔らかに、お願いします。」
そう言うと凛は、屈んだ兄の膝にぽすんと飛び乗った。
母親が帰って来る前にという事だろう。
しかし待て、何か大事なことを忘れている気が・・・。
「凛。」
「んっ?」
「お前、シャワー浴びたか?」
「あ、忘れてた。」
微かに臭いがして気付いた時には少し遅かった。
小便まみれの下半身が、タオルで軽く拭った程度で清潔になるはずもない。
俺の服まで洗濯確定だった。
「・・・15発追加だな。」
「ええ、今のでっ!?それちょっとひど・・・。」
パシィッ!!
凛の口答えを遮るように、右尻を思いきり平手打ちしてやる。
「返事は"はい"でいい。」
「・・・ったぁー・・・、はぁーい・・・。」
凛の返事からは、明らかな余裕が感じ取れた。
(PC)
5 和昭
パシッ・・・!パシッ・・・!パシッ・・・
1発目とほぼ同じ力で、凛の尻を次々に平手打ちする。
真っ白だった左右の膨らみは徐々に赤みを帯び、どこを叩いたかがはっきりとわかるまで浮き出てきた。
とりあえず"追加分"の15発を叩き終え、凛の反応を見てみる。
「・・・あれ、もう終わり?」
「んな訳ないだろ。さっき言った15発が終わっただけだ。むしろ今から始めるんだよ。」
「・・・ねぇ、あたしもう反省したよ?」
「・・・協力するのやめるか。」
「う、嘘っ!まだ全然足りてませんでした!!」
そこから数分間は、無言で凛の尻叩きを続行した。
普通の子供なら数発で音をあげるような強さを意識して叩いたつもりだったが、それでも母親のそれには及ばないようだ。
凛は痛がってはいるのだがどこか口先だけに見え、まだ少なからずの余裕が感じられた。
「・・・ねぇ、まだ叩くの?」
「そんな事言ってるうちは終わらんな。」
「・・・お兄ちゃんのいじわる。」
しかしただ一つ、強さを維持する体力だけは想定していなかったらしい。
尻に平手が当たった瞬間、痛みで思わず体がふるえてしまうのを凛は必死に隠そうとしていた。
(反省させるには、ここからだな・・・。)
パシッ・・・・・・!パシッ・・・・・・!パシッ・・・・・・
叩く強さは今までと同じかそれ以上を意識しながら、より時間をかけて凛の尻を叩く。
無駄に間をおきながら叩くことで、まるでこの時間が永遠に続くかのような錯覚を起こさせる。
「ねぇ・・・、もう・・・いいでしょ・・・?」
「さあな。・・・それは俺が決める。」
「もう、やだぁ・・・!」
凛がポロポロと涙をこぼしながら、許してくれと哀願する。
それでも、折檻は終わらない。
パシッ・・・・・・!パシッ・・・・・・!パシッ・・・・・・

"鬼"の仕置きは、ぎゅっと握った凛の手に力が入らなくなるまで続いた。
(PC)
6 和昭
「あー、サイアク。お兄ちゃんほんとサイアク。」
「・・・言っとくけど、望んだのお前だからな?」
「・・・だからって、ここまでやることないじゃん・・・、あいたた・・・。」
赤く腫れた尻を擦りながら、凛がぶつぶつと文句を言う。
もはや隠すつもりもないのか、凛は下半身を曝け出したまま脱力状態で床に突っ伏している。
「どうでもいいけど、その猿みたいな尻見られたら一発でばれるからな?」
「可愛い妹に向かって猿とは何よ!・・・ってそうか、服!服ーっ!」
「・・・ほんとに猿だな。」
タンスやクローゼットを引っ掻きまわすように漁る姿を見て、血縁者である事をほんの少し後悔した。
「もういいでしょ、お兄ちゃん!着替えるから出てってよ!」
「・・・今さら?」
「着替えは別なの!ほら早く!」
腑に落ちない空気を受け入れる暇もなく、凛の部屋を後にする。
「あー、手が痛い・・・。」
どうせ今日見逃しても、凛の事だからまたすぐにやらかすだろう。
「次までに、治しとかないとな。」
「何か言ったー?お兄ちゃん。」
ドア越しに凛の声がする。
(・・・また、今度な。)
心の中でそう返し、ひとり部屋に戻ることにした。
こっちも少しの間、休ませてもらおう。

数日経ってまた、バタバタと足音が聞こえるまでは。
(PC)
7 無名さん
おもしろかった
(EZ)