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10歳の秋

忘れもしない、10歳の秋。
僕はその当時からもうお尻をぶたれる事に興味があった。

何がきっかけだったのかは自分でもわからない。
両親には手をあげられた覚えがなかったし、学校では素行のいい方だった。
中には指導の一環として頬やお尻を叩く事のある先生は確かにいたのだが、少なくともそういった場で「自分も叩かれたい」などと考えた事は一度もないように思う。
"ある日突然、ふっと興味がわいた。"
最も的確に表現するならば、本当にその程度ではないだろうか。
[作者名]
(PC)
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そして僕はその事を一生、誰にも言わずに黙っておくつもりでいた。
子供ながらに「おかしい」という自覚はあって、家族や友達はもちろん、自分を知る人間の誰にも感付かれてはならない、知られるわけにはいかない。
たまに学校で同級生が叩かれるのを見るくらいのうちは、この守秘義務は何の苦にもならなかった。
それは多分、大勢の友達の前で叩かれるというリスクが僕にとってあまりに大きすぎたからだ。
教室で他の子と同じように叩かれる事は、僕にとって今の学校生活を捨てる事を意味する。
少し大袈裟に言えば、それくらいは考えていたように思う。
だから本心から学校で叩かれたいなどとは考えもしなかったし、黙って願望を押し殺す毎日もそれが普通だと思っていた。

しかしある時、そんな僕の気持ちを揺るがす話を耳にする。
(PC)
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同じ地区に住む友達が、親に叱られる時にお尻をぶたれる事があるというのだ。
しかもそれは本人の口から聞いたわけではなく、たまたま家に遊びに行ったという別の友達からの目撃情報。
これが実は、僕が当時より更に幾つか小さい頃から頻繁にお邪魔していた家。
そういった場面に遭遇した事はなかったものの、親も含めて家族全員の顔を知っていたので想像するのは簡単だ。
しかしこの日を境に、「僕もお尻を叩かれる」という考えが変にリアリティを帯びてしまった。
「僕が叩かれるなんてありえない」と思い込んできたおかげで抑えられていた願望は、大きく揺らいだ。
こんなに身近にお尻を叩かれている子がいる。
しかもそれが自分の知っている子で、叩く大人(親)とも顔見知りで結構仲がいい。
これはもしかして、僕自身も叩いてもらえるチャンスなんじゃないか?
少し前までなら、絶対にそんな考えには至らなかった。
しかし一度ぶら下がったその"餌"はあまりに魅力的すぎて、簡単には頭から離れてくれない。
悩みに悩んで、僕は策を練る事にした。
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最初に考えたのは、僕がその家の友達と一緒になって悪さをするという案。
これはすぐに却下された。
地域の風習としては、悪さをするとよその家の子供でもまずまとめて一緒に叱られる。
その点では僕もお尻を叩いてもらえる可能性は大なのだが・・・これでは友達が不憫すぎる。
ひどくすれば僕が帰宅した後、1人だけ更に厳しく叱られるかもしれない。
さすがにそれは気が引けた。
かと言って、僕が単体で悪さをしてお尻を叩かれる展開になるかといえばそれもかなり難しい。
見知った仲であるし、家族同然に思ってもらえていればあり得ない話ではないのだが、よその子を叱れる親であっても、よその子「だけ」を叱る際にそこまで厳しくするだろうか?
もちろん何を仕出かすかにもよるのだが、やりすぎると家に連絡がいきかねない上に大した悪さじゃなければそれこそお尻なんて叩いてもらえない。
そして結局、僕が実行する事にした案は・・・とんでもなく無謀なものだった。
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それは何と、相手の親に「お尻を叩いて」と直接頼む事。
当然の事ながら、僕は性癖のカミングアウトがしたいわけではない。
あくまでも嫌々ながら、仕方なく「叩いてほしい」とお願いするのが目的だ。
そこで僕がまず利用したのは、友達の母親(この人がお尻を叩く)と僕の父親に深い面識がなかった事。
家の父親は仕事で家を空けている日が多く、相手の親にしてみれば本当に「顔は見た事がある」程度だった。
僕はそれを切り札に、友達の留守中、その母親に「相談」に行ったのだ。
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僕は友達の母親に対して、まず「自分は怒られなきゃいけない、すごく悪い事をした。」と切り出した。
物を壊したとか誰かをいじめたなどと言うと取り返しがつかない恐れがあったので、勉強に関する何かを選ぶ事にする。
ただ、単にテストの点が悪いなどと言っても怒ってもらえるはずがない。
そこで僕は数か月前に用済みの夏休み用テキストを持って行き、「クラスの子にお金を払ってやってもらった」事にした。
今はその事をすごく後悔していて、誰かに怒られないと自分の気が済まない。
でも自分の父親は怖くて、どれだけ殴られるかわからないし下手をすれば血が出る。
(実際は父親そんなに怖くない)
掻い摘んで言うと、そんな説明を「お尻とかならまだいいんですけど・・・」というニュアンスを含みながら続けるだけ。
後から思えば自分でも笑ってしまうぐらい稚拙な策なのだが、この時はなんと通用してしまう。
そして僕は友達の母親から、お尻をぶたれる事になった。
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最初の数発はドキドキしすぎてあまり覚えていない。
ズボンのお尻からパーン、パーンと大きな音がして、痛みはそれから数発ほど後にやってきた。
しばらく叩かれているうちに熱いような痒いような感覚がお尻全体に広がってきて、ようやく自分が罰を受けている実感がわいてくる。
しかし30ほど叩かれたところで、友達の母親から「痛い?」と声がかかった。
それだけ叩かれるとお尻は結構ひりひり痛んでいたのだが、「痛いです」と答えればそこで罰が終わってしまうかもしれない。
そう考えた僕が首を横に振ると、「じゃあ下脱ぎなさい」とズボンはおろか下着ごとずり下ろされて叩かれることに。
痛くなかったなら最初から、という事でカウントはゼロに戻り、また30発。
今度は平手打ちが肌に直接当たる上、最初からある程度叩かれて色づいたお尻だったため痛みは比べ物にならず。
友達の母親も、ここで手加減したら更に30発叩く事になるという事でかなり力が入った思われる。
大人のお尻なら「たかが60発」かもしれないが、10歳の僕にとっては非常に厳しくしばらく痛みが引かなかった。
しかし終わった後「お父さんには言わないで」と念を押す事は忘れず、叩かれたかった事は最後まで隠してそのまま帰宅。
家に帰ってもお尻は痛いままだったものの、何とも言えない満足感が残る日だった。
叶うならもう1度、10歳の秋の日に戻りたいと願っている。
(PC)
8 無名さん
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(EZ)