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1

寝静まったあとで

夜。
家族みんなが眠りについて、灯りも消えた真っ暗な夜。
私は暗闇の中でひとり頭を悩ませていた。

(まだ、9時半かぁ…。)

胸の辺りまで被った布団の中で、しきりに手足を動かしてみる。
電気を消すとマイナスの事ばかり考えてしまうのが私の悪い癖だった。
何とかならないかとこうして努力を続けてみるものの、あまり効果は見られない。

(このまま寝ちゃったら、まずいよね…。)

普段なら眠気に負けてしまえば朝には忘れているのだが、そういう訳にもいかなかった。
どうしても、もうしばらく起きていなくてはいけない事情があるのだ。
[作者名]
(PC)
2
「…起きてる?」

「もう、みんな寝てるから。少し早いけど…行こっか。」

ウトウトとし始めた矢先、小声で話す母に頷いて返事をする。
気付けば15分ほど経っている。
起き上がろうと手をついたところに皮のコートが1枚、準備されていた。

「外は寒いから、それだけでも羽織っていきなさい。」

言われるまま袖を通す。
それほど暖かくはならなかった。
私と母がこれからどこへ行って何をしようとしているかを考えれば、コート1枚分くらいの寒さなんてどうでもよかった。

「暖房入れてあるから、先に行ってなさい。」

「…はい。」
(PC)
3
向かったのは、家の敷地内にあるプレハブ住宅。
…といっても大きな部屋はひとつだけの簡易式のものだ。
以前母がピアノを教えていたため、一応の防音施工はなされているらしいのだが…。
当時から表で遊んでいても全くの無音という訳ではなかったので、あくまで音を小さくする程度の効果なのだろう。
今はピアノがない代わりに、全く別の用途で使われている。

(うぅ、さむさむ…。)

玄関から数メートルほどの距離でも、物音を立てないという条件がつけば動作は鈍くなる。
防寒のためのコートも裸足にサンダルという軽装備ではあまり意味をなさず、震えながらプレハブまで早足で歩く事になった。

(あ…、中はもう暖かい。)

電気を点けると、広い部屋にひとりきりなのがはっきりとわかる。
コートを脱いで入口に掛けると、パジャマ姿でこの場にいる自分がものすごく間抜けに思えた。
(PC)
4
しばらくして、母が扉を開けた。

「あら、寒くないの?来るまで着てればよかったのに。」

「…大丈夫。」

「そう。」

母は靴を綺麗にそろえると、部屋の中央まで歩いていく。
私はおもむろにパジャマのズボンを脱ぎ、小さく畳んでその場に置いた。
そのまま母の近くに寄っていくと、ほんの一瞬驚いた顔。
そのあと、くすくすと笑い始めた。

「あらあら…、気が早いわねぇ?」

「…どうせ、脱がされるし。」

「うふふ、確かにそうね…。」

母は昔から、小さな子供を叱る際にはお尻をぶつと公言している。
その母にとっての基準が曖昧でわからなかったのだが、中学生になった兄が母にぶたれる姿は一度も目にしていない。
つまり小学校を卒業するまでは…という事なのだろう。
しかし6年生の女子からしてみれば、12にもなってお尻ぺんぺんというのはたまったものではない。
低学年の妹でさえ、そんな姿を人に見られるのを嫌がるというのに。
ごく最近まで私も、昼夜問わず母にこのお尻を差し出していたのだ。
その最中に兄が帰宅しても、始まっていれば関係ない。
気まずそうに後ろを通る兄と、気にしてない素振りでじっと我慢する私。
ついに耐えきれなくなったのは、やはり私のほうだった。
(PC)
5
お尻を叩くのは夜中にしてほしい。
私は母にそう願い出た。
別の罰に変えてほしいという願いならば、かつてと同じように一蹴されただろう。
日をまたがない、寝る前だからといって手心は加えない事を条件になんとか承諾してもらった。
幸い、我が家は寝るのが比較的早いようで…夜9時には父も布団に入ってしまう。
最後まで起きているのはいつも母のため、寝静まったかどうかの確認をするには好都合のようだ。

「さて、覚悟はいい?」

母に促され、私は這うように床に両肘をつく。
以前は掌で上体を支えていたのだが、私の体が大きくなるにつれて母もたくさん叩くようになった。
長時間そのまま耐えていると急に姿勢が崩れて危ないので、肘から上を使って体重を支えるようになったのだ。
そうすると自然とお尻が上を向くため、母も叩きやすくなったらしい。
…それに関しては喜ばしいことではないが。

「下ろすわね。」

覆っている布がなくなるこの瞬間だけは、どうしても好きになれない。
これからひどくお尻をぶたれるとわかっているからだ。
この時さえ訪れなければ、私は今頃ぐっすり眠っているはずなのに。
母が掌に息を吐き、娘を躾ける準備をしている。
耳からの情報だけでそれがわかると、次に感じるのは痛みだろう。
心の準備を済ませると、自然と体に力が入った。
(PC)
6
パァン!

「あっ…!」

…パンッ!…パシッ!…パシッ!

「…んっ、ふっ…、…っ!!」

前もって約束した通り、母は寝る前だからといって手加減はしてくれない。
ピアノを教えていた頃は人様の子でもこうしてお尻を叩いていたらしいので、私がそれを期待するのは難しいだろう。
そうでなくとも一度口にした事は曲げない母だ。
お尻100叩きだと言われた日には、お尻を100回叩かれるまでは決して終わらない。
前もって回数を口にしない今回のような場合なら、それ以上だってあり得るという事だ。
事実、私も兄も過去に何度かそういう経験がある。

…バチッ!…パァンッ!…バチンッ!

私にできるのは、終わるまでただじっと耐えるだけなのだ。

…バチッ!…バチン!…バチッ!…パァン!

痛くて掌に汗が滲む。
気を紛らわせようと握り直してみても、お尻の痛みは増していくばかり。

…バチッ!…バチンッ!…パシッ!

夜中だという事も忘れて、大声で叫んでしまいたくなる。

(…そういえば、これ…外にも聞こえてるんだ…!)

家族はもうみんな寝ているはず。
仮に起きていても、プレハブの近くまで来ない限りは誰にも気付かれはしない。
それでも。
この場所からは見えないところまで、私がお尻をぶたれて叱られている音が聞こえてしまっている。
それだけで、死にたくなるほど恥ずかしかった。

…パチンッ!…バチッ!…バチンッ!…パチッ!…バチッ!

母も気付いているのだろう。
人目を避けるためにこの時間にしてもらったが、夜は静かすぎる。
誰かに聞こえてしまう可能性は低いものの、決して0にはならないのだ。

…パァン!…バチッ!…バチンッ!…パンッ…!

そんな事などお構いなし。
母のお尻叩きは一向に終わる気配を見せず、遅くまで続けられた。
(PC)
7
「…ま、この辺でいいかしらね。」

母の許しが出ると、私は這うような体勢のまま脱力していた。
下着が下がっている事も忘れ、真っ赤に染まったお尻は突き出したまま、終わった安堵で大きく溜め息を吐く。
母から「はしたない」と窘められるまで、しばらくはそのままの格好でいたかったのだ。
自分の手で軽く擦ってみただけでも、相当きつくやられたのがわかる。
痛すぎて途中からは別の事を考えようと努力してみたのだが、そう都合よくはいかない。
今日は簡単に寝つけそうにない事を悟ると、余計に気が滅入った。

「戻してほしかったらいつでも言ってちょうだいね…?時間。」

「…いい。決めたもん。」

「…我が娘ながら、頑固ねぇ…。」

部屋に戻る頃には痛みも幾分落ち着いてきたものの、さすがに腹這いで横にならないと寝るには辛かった。
枕に覆い被さるように腕を曲げて寝そべると、またお尻をぶたれるような気分になってひとりなのに気恥ずかしい。
まだお尻がじんじん痛むので尚更だったが、寝ないわけにもいかなかった。
なんとか眠気に身を任せると、自然と眠りに落ちていった。
(PC)
8 無名さん
すごい好きな小説でした^^
この手のシリーズまた書いてほしいです
(PC)
9 無名さん
なんとなく雰囲気があって良いですね
(EZ)
10 無名さん
良い♪
(EZ)
渚さん
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(PC)
若い女性の方
悪い僕のお尻を平手でペンペンしてください。泣いてもやめないでくださいね
(SP)