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1 義博

家庭科と黄色いエプロン

僕の小学校時代は、怖い先生が沢山いました。

殴る蹴るも辞さないほど感情的になる人も珍しくなく。
教育熱心と言えば聞こえはいいですが、単に自分を抑えられない未熟者もいたでしょう。

ですが子供の目は、簡単にそれを見抜いてしまいます。

怖くても愛される先生とそうでない先生。
その差はどこにあったのでしょうか。

では少しだけ、ある印象深い先生の話をしようと思います。
[作者名]
義博
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2 義博
高学年で担任になったのは、どちらかと言えば年配の…華奢な容姿に反して驚くほどパワフルな女性でした。

仮に桜井先生としておきましょう。

その桜井先生、日頃はあまり罰をしないのです。

とはいえ他の先生がいる隣のクラスからは、遅刻だ忘れ物だと叱りつける声が聞こえてくる時代です。

「今日はこれでお尻を叩きます。」

時には桜井先生もそうして、持参した物差しで罰を与えてきます。

ところが、これが驚くほど痛くない。

黒板前へ呼ばれて叱られるのは恥ずかしいですが、それだけでした。

お尻にはほとんどダメージがない。
そのため、クラス毎に忘れ物の統計を取ればいつもワーストでした。

これだけならただの優しい先生ですね。

でも、違いました。
桜井先生の目が学校一厳しくなる時間があったのです。
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3 義博
それは、家庭科の授業中です。

意外に思うかもしれませんね。
しかし、高学年の家庭科には実習が非常に多かったのです。

調理実習で刃物や火器。
被服実習でも針やはさみ、ミシンなどの使い方を学びます。

一歩間違えば大怪我をする。
家庭科室へ入った桜井先生は教室にいる時と違います。

ほんの少しでもふざけたら。
しなくていい作業を始めたら。
話を聞いていなかったら。

平手うちで力いっぱい、お尻を叩くのです。

軽くお尻に当たる物差しの比ではありません。

さんざん痛めつけておいて、そのあと実習に戻れと言うのです。

しばらくは作業など手につきません。
それでも桜井先生がまた説明を始めれば、聞かないわけにはいかないのです。

同じ授業時間内で複数回呼ばれてしまう子も、ざらにいましたから。
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4 義博
桜井先生を語るうえでもう一つ、外せない事柄があります。

それが、胸当てロングの黄色いエプロン。

真新しくはなかったと思います。
少し色落ちしたような薄い黄色で、肩から掛けて下で留めるようになっていたのは覚えています。

いわゆる簡単に脱ぎ着できるタイプの物でした。

どうしてそんなにはっきり覚えているのか。
それは桜井先生が家庭科室で罰をするとき、必ずこのエプロンを着けたあと行ったからです。

実習中であっても、普段は外しているのです。

着けるのは、先生自身が作業をする時だけ。
前へ出て手元にある道具で説明をする時や、作業できているかを一班ずつ見回る時だけです。

つまり桜井先生がそれ以外で黄色いエプロンを手に取れば、今から誰かのお尻を叩くぞという合図。

不意に名前を呼ばれた時に先生の手がエプロンに伸びていれば、その子はもう覚悟しなければいけません。

これから力いっぱい、お尻を叩かれるのだ。

僕も経験がありますが、あの瞬間の恐怖に勝るものはありません。

桜井先生の呼び間違いで、他の誰かであってほしい…なんてことも考えてしまいます。

周囲の視線が「早く行け」と急かしてくるんですが。
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5 義博
家庭科の実習に限れば、桜井先生はかなりきつく叩くほうでした。

前年度の担任はほうきの柄でケツバットをする先生だったのですが、それよりも遥かに痛いのです。

もちろん一発だけならほうきの方が痛いでしょう。

ただ平手うちとはいえ、桜井先生の罰は十や二十でききません。
二発もらえばほうきと互角、三発目にもなると、ほうきならもう終わっているのにとあらぬ願いが湧いてきます。

それほど痛いにもかかわらず、桜井先生は数えきれないほども叩くのです。


そうやって怒らせてはいけないのはわかっているのに。

教室での先生を見慣れている僕たちは、つい調子に乗って遊んでしまいます。

実習は必ず二時間続くという時間割りも曲者でした。

誰も怒られない日はたぶん、一年のうちで一度もなかったはずです。
家庭科に限れば、ですが。

ただ、きつく叩かれるにせよ授業時間の間に終わる分は幾分甘かったと言えます。

そう、本当に恐ろしいのは終わらない場合。

罰が授業時間外までずれ込むことがあったのです。
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6 義博
ある時、実習合い間の休み時間に準備室へ呼ばれた子がいました。

その子は直前の実習中にふざけてさんざん桜井先生からお尻を叩かれたばかりだったのですが、腹を立てて同じことをもう一回やったのです。

同時にチャイムが鳴ったため、桜井先生が場所を変えて叱るつもりなのだと誰もが思いました。

もちろん単に人目を避けただけではありません。
わめくような声がしたかと思うと、お尻を叩いているらしき音が壁を挟んでも聞こえてきます。

誰も扉に近寄ったりはしていませんが、中の様子は想像がついてしまいます。

廊下には下級生が出てきていて、「誰か怒られてる」などとぼそぼそ話す声がしていました。

廊下側にいた女子が出ていって静かにするよう促していたので、あまり騒ぎ立てる子はいなかったようです。

ただ罰は休み時間の間じゅう続けられていたので、叱られた子はまるまる十分間ずっとお尻を叩かれていたことになります。

詳しく聞くまでは僕もどこか他人事でしたが、中でパンツを下ろされたと聞いてふるえ上がりました。

考えてもみてください。

ズボンの上からでも、ほうきで叩かれるよりずっと痛くなるのです。

十分間そんなものを受け続けたかと思うと、叩かれてもいない自分のお尻が痛くなってきました。

そうして、この一件がクラスの噂になります。

「桜井先生に家庭科準備室に呼ばれたら、お尻丸出しで叩かれなければならない」

僕たちがそう騒いでいたのは先生の耳にも入っていました。

それが抑止力になるならと、どうやらいい方に受け止めていたようです。
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7 義博
そしてついに。
僕が準備室に呼ばれる日が来てしまいます。

ただ、それまでに叩かれていた他の子と事情が少し違いました。

調理実習でお菓子を作る日だったのですが、簡単に言えばそこに市販のお菓子を持ちこんでいました。

それが実習時間の終わり際に発覚してしまったのです。

問題はその量でした。

作るのがお菓子ですし、桜井先生も少量なら見逃してくれたかもしれません。

しかし食べきれないほどのスナック菓子まで目の当たりにしては、桜井先生としても怒らないわけにはいかないようでした。

「掃除はいいから、準備室に来なさい。」

何より運がなかったのは、この日は時間割り変更で掃除の直前の二時間が家庭科だったことです。

準備室でこれからすぐにお尻を叩かれるとして、隣の家庭科室では学年の違う担当クラスが掃除を始めるのでしょう。

廊下を掃除する下級生にも聞こえるに違いありません。

そればかりか、授業中でないだけで他の先生に覗き込まれるリスクも上がります。

お尻は丸出し。
考えるほど、最悪の事態で頭がいっぱいになりました。
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8 義博
準備室に入ると、桜井先生が椅子に座って待ち構えていました。

ただ、第一印象は教室にいる時の先生なのです。
普段と変わらない先生があの黄色いエプロンを着けているのは、直接見た僕にしかわからないであろう違和感がありました。

「もう少し、早く見つかるべきだったね。」

桜井先生は手招きしながら、ズボンを下ろしなさいとジェスチャーで伝えてきます。

僕はできるだけ下半身を見られないようギリギリまで先生に近付いたあと、お尻を出すのと同時に目の前の太腿に上体を預けました。


びしっ、と鋭い痛みが走ったのは直後のこと。

強く叩かれると痛いのはズボン越しもそうなのですが、徐々に熱くなっていく感じがしないのです。

最初から火傷でもさせられたような、強烈な痛みでした。

ばしばしと続けて叩かれると、表に人が大勢いるのも忘れて泣きたくなってしまいます。

それを必死になってこらえ、お尻に大量の手形を作りながらひたすら耐えるのです。

僕は廊下側の扉にお尻を向ける形で叩かれていたため、目に入るのは準備室の棚ばかりでした。

これが唯一といえば唯一の救いだったと思います。

準備室と廊下をつなぐ扉は、いたずら防止のため普段から施錠されています。

お尻に感じる痛みはとんでもないのですが、この時点で恥ずかしさはなくなっていました。

仮に廊下から覗かれたとしても僕は気付けなかったでしょう。
お尻を叩かれながらその最中に目が合ってしまうより、こっそり覗いてもらった方がよほど気が楽なのです。

痛みに耐えれば終わりだと、ある意味油断していました。


ところが。

なんと家庭科室側の扉からノックの音が聞こえるのです。
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9 義博
「失礼します…。」

荷物を抱えて入ってきたのは、下級生の担任をしている先生でした。

「ごめんねー、取り込み中に。」

「大丈夫ですよー。…通れます?」

桜井先生は赤いお尻の僕を太腿に抱えたまま、後ろを通ってもらおうと椅子をずらそうとするのです。

そうして叩かれるのが中断した途端、恥ずかしさがぶり返してきました。

さらなる問題が入ってきた先生にありました。

「あれ、誰かと思ったら…。」

僕の顔を見るなり気付きます。
そう、間の悪いことに昔の担任だったのです。
二年生の時の担任で、もちろん僕も覚えていたので焦りました。

「やだぁー、一体何したのー?」

「見ての通りで…、お菓子です。ほら、これとか。」

「うそ、全部ですか?そりゃー怒られるわ…。」

すぐに出ていってくれるものと思っていたら、しばらくそうして話しているのです。

お尻を出したままの僕は動くこともできず、終わるまで大人しく待つほかありません。

「それじゃあ、続きするよ。」

「あ…終わってなかったんですね、なんかすいません。」

「気にしないで。…ほら、お菓子の量が量だしね。」

「あぁ…。」

そう言うと、桜井先生は僕のお尻をまたびしびしとやり始めます。

かつての担任の前だろうとお構いなし。

しばらく立って見ていたようですが、僕が痛みに悶えている間にいなくなっていました。
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10 バステン
実話ですか? 凄くいいです。実話だとしたらいつ頃の話か教えて頂けませんか?
(i)
11 たか
こういうお尻丸出しでお仕置きされてるのを見られる屈辱って凄く良いですね。
また期待してます。
(Android)
12 義博
>10
「実話だったもの」を大げさに脚色していると思ってください。
ちょうど昭和が平成になろうとしていた頃、ですかね。
(PC)