1 戸波
持つべきものは
「じゃ約束ね、破ったら絶交だからっ!!」
そう言って私は明歩の前に仁王立ちしながら、声高らかに宣言した。
「う、うん…いいけど、星奈はそれでいいの…?」
同じクラスの親友、明歩は困った顔をして、おずおずと私に聞いてくる。
どうしてこんな状況になっているのかと言われれば、私にも説明できる自信はない。
とにかく今度、私は明歩とテストの点数で勝負する事になってしまった。
「いいに決まってるよ!明歩こそ負けを認めるなら今だよ!?」
「負けって…、テストなんだから、二人とも頑張ればいいじゃない…?」
「…この期に及んで、何をママみたいな事を!」
「いや、うん…、だからね…?」
私がヒートアップしても全く波立たない、明歩の口ぶり。
この大人びた態度に、私は腹を立ててしまったのかもしれない。
[作者名]
戸波
そう言って私は明歩の前に仁王立ちしながら、声高らかに宣言した。
「う、うん…いいけど、星奈はそれでいいの…?」
同じクラスの親友、明歩は困った顔をして、おずおずと私に聞いてくる。
どうしてこんな状況になっているのかと言われれば、私にも説明できる自信はない。
とにかく今度、私は明歩とテストの点数で勝負する事になってしまった。
「いいに決まってるよ!明歩こそ負けを認めるなら今だよ!?」
「負けって…、テストなんだから、二人とも頑張ればいいじゃない…?」
「…この期に及んで、何をママみたいな事を!」
「いや、うん…、だからね…?」
私がヒートアップしても全く波立たない、明歩の口ぶり。
この大人びた態度に、私は腹を立ててしまったのかもしれない。
[作者名]
戸波
(PC)
2 戸波
いつから仲良くなったのかは覚えていない。
初めて会ったのは幼稚園か、もしかしたらもっと前だったのかも。
覚えてはいないけれど、いつの間にか隣にいるのが当たり前になった。
だからどうして自分からこんな勝負をふっかけたのか、後悔するより先に疑問が湧いているのだった。
(あれ…?ほんとにどうしてあんな事言ったんだろう…?)
腹が立っていたのは確かなのだが、短い時間に色々ありすぎて記憶が追いついてこない。
破った仮定の話とはいえ、親友に絶交宣言してしまった。
明歩、怒ってるかな…?
そればかりが頭の中をぐるぐる回って、もはやテスト勉強どころではなかった。
そもそも私が全力で勉強したところで、明歩に勝てる見込みがあるかどうか…。
(見込みって言うか…ないよね、あれは)
明歩は、私が勉強でわからないところがあるといつも優しく教えてくれる、言わば先生なのだ。
例えば数学の先生に、数学の問題で挑むぐらいの実力差はあると思っていたほうがいい。
もうわかっているかと思うが、私はかなりのバカだ。
「あーもう…、勝てるわけないじゃん!!」
第一、頭がよかったら最初からこんな勝負持ちかけないよね。
もう一人の私が心の中でそう囁いた。
初めて会ったのは幼稚園か、もしかしたらもっと前だったのかも。
覚えてはいないけれど、いつの間にか隣にいるのが当たり前になった。
だからどうして自分からこんな勝負をふっかけたのか、後悔するより先に疑問が湧いているのだった。
(あれ…?ほんとにどうしてあんな事言ったんだろう…?)
腹が立っていたのは確かなのだが、短い時間に色々ありすぎて記憶が追いついてこない。
破った仮定の話とはいえ、親友に絶交宣言してしまった。
明歩、怒ってるかな…?
そればかりが頭の中をぐるぐる回って、もはやテスト勉強どころではなかった。
そもそも私が全力で勉強したところで、明歩に勝てる見込みがあるかどうか…。
(見込みって言うか…ないよね、あれは)
明歩は、私が勉強でわからないところがあるといつも優しく教えてくれる、言わば先生なのだ。
例えば数学の先生に、数学の問題で挑むぐらいの実力差はあると思っていたほうがいい。
もうわかっているかと思うが、私はかなりのバカだ。
「あーもう…、勝てるわけないじゃん!!」
第一、頭がよかったら最初からこんな勝負持ちかけないよね。
もう一人の私が心の中でそう囁いた。
(PC)
3 戸波
結果は散々だった。
大層な前置きをしておきながら、たったの一行で済ませてしまうのは申し訳ないが、本当にそれで終わってしまうのだ。
何しろ、右上に書かれた点数は一桁だったのだから。
念のために言っておくと、百点満点のテストである。
「……ど、どうだった…?星奈」
気をつかって声をかけてくれた親友が手にしている答案からは、二桁の点数が日差しに透けている。
いつも通り、八十点台か九十点台なのだろう。
紙の端が垂れているため確認できなかったが、桁が二つの時点で私の完敗である。
一時でも勝てると思った私はどうかしていた。
「…聞く?」
「…あ、後でわからなかったとこ教えるね…」
「……ありがと」
このまま明歩の優しさに甘える手もあったのだが、それではあまりにも卑怯なので。
私は自分から切りだすことにしたのだった。
「約束だからね…、あとで行ってくる」
「せ、星奈…」
大層な前置きをしておきながら、たったの一行で済ませてしまうのは申し訳ないが、本当にそれで終わってしまうのだ。
何しろ、右上に書かれた点数は一桁だったのだから。
念のために言っておくと、百点満点のテストである。
「……ど、どうだった…?星奈」
気をつかって声をかけてくれた親友が手にしている答案からは、二桁の点数が日差しに透けている。
いつも通り、八十点台か九十点台なのだろう。
紙の端が垂れているため確認できなかったが、桁が二つの時点で私の完敗である。
一時でも勝てると思った私はどうかしていた。
「…聞く?」
「…あ、後でわからなかったとこ教えるね…」
「……ありがと」
このまま明歩の優しさに甘える手もあったのだが、それではあまりにも卑怯なので。
私は自分から切りだすことにしたのだった。
「約束だからね…、あとで行ってくる」
「せ、星奈…」
(PC)
4 戸波
このテストの前に、私は明歩とある約束をした。
約束というより、賭けだ。
しかも私が一方的に取りつけた上に、絶交宣言までしているのだから笑い話にもならない。
とにかく、何か些細な事に腹を立てた私が、負けたらこうだよと条件をつきつけたのである。
その条件というのが、
「念のために聞きますが、不正をした子はいませんねー?」
担任の先生が妙に軽いノリで聞いてくる、テスト返却後のカンニングチェックだ。
冗談めかしているが、抑制も兼ねているためその罰はずいぶん具体的だった。
「もしカンニングをしたら、お尻ぺんぺん百回の刑ですよー」
実際に、毎年何人かは該当者がいるらしい。
それを前もって聞かされているため、子供みたいな罰でも笑いが起きることはなかった。
むしろ恐れている子は多いようで、冗談でも「しました」などと言うお調子者は誰もいない。
「星奈、やめた方がいいよ…」
「…止めないで明歩、私が悪いんだから」
今回の賭けというのはつまり負けた方が、カンニングしてましたと先生に申告する事。
お尻ぺんぺん百回の刑が、そのまま敗者の罰になるというわけだ。
「無理だって」
「そんな事ない、私の決意は固いんだから!」
「…あのね、さっき星奈の点数、見えちゃったんだけど…」
「…うん?」
「…その点でカンニングしましたって言っても、信じてもらえないと思うよ…」
やはり私はバカだった。
約束というより、賭けだ。
しかも私が一方的に取りつけた上に、絶交宣言までしているのだから笑い話にもならない。
とにかく、何か些細な事に腹を立てた私が、負けたらこうだよと条件をつきつけたのである。
その条件というのが、
「念のために聞きますが、不正をした子はいませんねー?」
担任の先生が妙に軽いノリで聞いてくる、テスト返却後のカンニングチェックだ。
冗談めかしているが、抑制も兼ねているためその罰はずいぶん具体的だった。
「もしカンニングをしたら、お尻ぺんぺん百回の刑ですよー」
実際に、毎年何人かは該当者がいるらしい。
それを前もって聞かされているため、子供みたいな罰でも笑いが起きることはなかった。
むしろ恐れている子は多いようで、冗談でも「しました」などと言うお調子者は誰もいない。
「星奈、やめた方がいいよ…」
「…止めないで明歩、私が悪いんだから」
今回の賭けというのはつまり負けた方が、カンニングしてましたと先生に申告する事。
お尻ぺんぺん百回の刑が、そのまま敗者の罰になるというわけだ。
「無理だって」
「そんな事ない、私の決意は固いんだから!」
「…あのね、さっき星奈の点数、見えちゃったんだけど…」
「…うん?」
「…その点でカンニングしましたって言っても、信じてもらえないと思うよ…」
やはり私はバカだった。
(PC)
5 戸波
「ごめん…、ほんっとーにごめん!」
「いいよ、もう……私、あんまり気にしてないし…」
気づいたら明歩の家にお邪魔して、深々と頭を下げていた。
限りなく土下座に近い謝罪っぷりである。
顔を上げてと優しく起こしてくれた明歩だが、まだ私の気はおさまらない。
「何で!?絶交とか言ったんだよ!?…もっと真剣に怒ってくれてもいいじゃん!」
「お、怒られたいの…、星奈…?」
「…そうじゃ、ないけど…」
もう何に不満があるのか、自分でもよくわからない。
そんな私の様子を見かねて、明歩はこんな事を言いだした。
「よし」
ぱん、と胸の正面で両の手のひらを合わせると、
「じゃ怒ってあげる、あっちの部屋で、お尻ぺんぺん…しよ?」
「…はえ?」
明歩は立ち上がり、すたすたと奥の廊下へ消えていった。
「いいよ、もう……私、あんまり気にしてないし…」
気づいたら明歩の家にお邪魔して、深々と頭を下げていた。
限りなく土下座に近い謝罪っぷりである。
顔を上げてと優しく起こしてくれた明歩だが、まだ私の気はおさまらない。
「何で!?絶交とか言ったんだよ!?…もっと真剣に怒ってくれてもいいじゃん!」
「お、怒られたいの…、星奈…?」
「…そうじゃ、ないけど…」
もう何に不満があるのか、自分でもよくわからない。
そんな私の様子を見かねて、明歩はこんな事を言いだした。
「よし」
ぱん、と胸の正面で両の手のひらを合わせると、
「じゃ怒ってあげる、あっちの部屋で、お尻ぺんぺん…しよ?」
「…はえ?」
明歩は立ち上がり、すたすたと奥の廊下へ消えていった。
(PC)
6 戸波
「ねぇ明歩、ほんとにやるの…?」
「星奈がしてほしいって言ったんじゃない?」
「そ、そう…だっけ?」
私の記憶と若干の違いはあるが、明歩がそうだと言うならそうなのだろう。
彼女はいつだって正しいはずである。
「懐かしい…、私も昔、ここでよくお婆ちゃんに叱られたの」
「えっ?明歩が?」
「うん…、…昔は、私も勉強キライだったから」
初めて耳にする話だった。
明歩の事は昔から知っているはずなのに、そんな一面は見せた事もない。
「こうやってお尻を縁側に向けて、ぺん、ぺん、ぺん…ってね、あれは痛かったなぁ…」
叩いていたというお婆ちゃんには何度も会っているが、とても優しそうな人である。
そんな人が、知らないところでは明歩のお尻を叩いていたなんて。
「うちお母さんが仕事でいなかったから、そのぶんお婆ちゃんが厳しくしてくれたの」
「星奈がしてほしいって言ったんじゃない?」
「そ、そう…だっけ?」
私の記憶と若干の違いはあるが、明歩がそうだと言うならそうなのだろう。
彼女はいつだって正しいはずである。
「懐かしい…、私も昔、ここでよくお婆ちゃんに叱られたの」
「えっ?明歩が?」
「うん…、…昔は、私も勉強キライだったから」
初めて耳にする話だった。
明歩の事は昔から知っているはずなのに、そんな一面は見せた事もない。
「こうやってお尻を縁側に向けて、ぺん、ぺん、ぺん…ってね、あれは痛かったなぁ…」
叩いていたというお婆ちゃんには何度も会っているが、とても優しそうな人である。
そんな人が、知らないところでは明歩のお尻を叩いていたなんて。
「うちお母さんが仕事でいなかったから、そのぶんお婆ちゃんが厳しくしてくれたの」
(PC)
7 戸波
先ほどから出てくるのは、私が知らない明歩ばかりである。
聞いているうちにほんのちょっとだけ羨ましくなってしまった。
「お尻、出すの…?」
「うん、そうしないと痛くないから…」
「痛くなくっちゃ、駄目…?」
「駄目」
私はしぶしぶ下着を下ろし、スカートを捲った。
「そっちじゃないよ、お尻は縁側」
「えぇ!?誰かが通ったら見えちゃうじゃん!」
「…うん、そういうのも罰だもん」
今日の明歩には迫力がある。
怒った時のママには逆らえないというか、それに似た感じ。
「イヤなら廊下に出て、縁側で叩きましょ?」
…明歩って将来、絶対怖いママになると思う。
聞いているうちにほんのちょっとだけ羨ましくなってしまった。
「お尻、出すの…?」
「うん、そうしないと痛くないから…」
「痛くなくっちゃ、駄目…?」
「駄目」
私はしぶしぶ下着を下ろし、スカートを捲った。
「そっちじゃないよ、お尻は縁側」
「えぇ!?誰かが通ったら見えちゃうじゃん!」
「…うん、そういうのも罰だもん」
今日の明歩には迫力がある。
怒った時のママには逆らえないというか、それに似た感じ。
「イヤなら廊下に出て、縁側で叩きましょ?」
…明歩って将来、絶対怖いママになると思う。
(PC)
8 戸波
…ぴしゃん!…ぴしゃん!…ぴしゃっ!
始まってみれば、かなり本格的にお仕置きだった。
担任の先生がするのをまだ見た事はないけれど、こんなに強く叩くものなのだろうか?
きっと明歩は、お婆ちゃんからこんな風にされてきたのだろう。
「復唱…、次は…もっと頑張ります」
「…つ、次は…」
「声が小さいです」
ぱちぃっ、すかさずお尻に明歩の平手が飛ぶ。
いつもは自分がボソボソ喋ってるくせに、こんな時だけ…。
「つ、次…」
「こ・え・が・ち・い・さ・い」
ぱちっ、ぱちっ、ばちっ、ばちん…不意打ちの連発はかなり堪えた。
「次はもっと頑張ります」の一言が言えるまで、二十発くらいは叩かれてしまった。
痛すぎてはっきりと覚えていないのが正直なところではあるが。
始まってみれば、かなり本格的にお仕置きだった。
担任の先生がするのをまだ見た事はないけれど、こんなに強く叩くものなのだろうか?
きっと明歩は、お婆ちゃんからこんな風にされてきたのだろう。
「復唱…、次は…もっと頑張ります」
「…つ、次は…」
「声が小さいです」
ぱちぃっ、すかさずお尻に明歩の平手が飛ぶ。
いつもは自分がボソボソ喋ってるくせに、こんな時だけ…。
「つ、次…」
「こ・え・が・ち・い・さ・い」
ぱちっ、ぱちっ、ばちっ、ばちん…不意打ちの連発はかなり堪えた。
「次はもっと頑張ります」の一言が言えるまで、二十発くらいは叩かれてしまった。
痛すぎてはっきりと覚えていないのが正直なところではあるが。
(PC)
9 戸波
「はい次…、もう勉強を怠けたりしません」
「も…もう勉強を怠けたりしません!!」
「はい合かーく」
ぱっしぃん!
とびっきりの平手打ちが勢いよくお尻に当たった。
あ、合格でも叩くんだ…しかも今までで一番痛いやつだった…ふーん。
言いたい事は山ほどあるが、今の明歩に意見できるほど私は怖い者知らずじゃない。
もし怒らせたら永遠に叩いてくるんじゃないだろうか?
「ち、ちなみに明歩…、これって何回続くの…?」
「え…?」
「…まさか先生と同じ、百回とか…?」
私は大げさに数を言ったつもりだった。
今の明歩なら悪ノリで、本当に百回やろうかなんて言い始めてもおかしくない気がする。
それでも実際には三十か四十、多くても五十回くらいで許してくれるだろうと。
私はそう思っていた…のだが。
「百回かぁ…、うーん…、それもいいけど…」
いや多すぎるでしょ…と、待ったをかけようとした私に、明歩は信じられない事を口にしたのだ。
「子供の私が叩いてもあんまり痛くないから…、二百回にしよっか」
「も…もう勉強を怠けたりしません!!」
「はい合かーく」
ぱっしぃん!
とびっきりの平手打ちが勢いよくお尻に当たった。
あ、合格でも叩くんだ…しかも今までで一番痛いやつだった…ふーん。
言いたい事は山ほどあるが、今の明歩に意見できるほど私は怖い者知らずじゃない。
もし怒らせたら永遠に叩いてくるんじゃないだろうか?
「ち、ちなみに明歩…、これって何回続くの…?」
「え…?」
「…まさか先生と同じ、百回とか…?」
私は大げさに数を言ったつもりだった。
今の明歩なら悪ノリで、本当に百回やろうかなんて言い始めてもおかしくない気がする。
それでも実際には三十か四十、多くても五十回くらいで許してくれるだろうと。
私はそう思っていた…のだが。
「百回かぁ…、うーん…、それもいいけど…」
いや多すぎるでしょ…と、待ったをかけようとした私に、明歩は信じられない事を口にしたのだ。
「子供の私が叩いてもあんまり痛くないから…、二百回にしよっか」
(PC)
10 戸波
ぱぁん、ぱぁん…庭が見える和室の一角で、明歩にお尻をぶたれる私の姿があった。
お尻は丸だしである。
暴れないようにと左手で背中を押さえつけられているのだが、さすがに私もそこまでみっともない暴れかたはしない。
そう明歩に何度も言っているのだが、幼い子供のように太腿に横たわる私にはそれ以上どうしようもなかった。
「…ねぇ明歩、そろそろ許してよー」
「まだ駄目…、です」
七十回ほども叩かれて、すでに私のお尻には白い部分がほとんどなかった。
お尻の山のてっぺんはもう真っ赤、端にいくにつれてほんのり朱色がかった桃色があるといったところか。
もちろん自分では見えないのだが、さっき「もう叩くとこないでしょ?」と言った私に明歩が丁寧にわかりやすく、色合いから説明してくれた。
そんな優しさはいらない。
「私が悪かったよぅ…」
「…そういうのは、あとでね」
「…はい…」
すんすんと鼻をすすって泣いたふりをしてみたものの、一瞬で明歩に見破られてしまった。
さすがに長いつき合いである。
お尻は丸だしである。
暴れないようにと左手で背中を押さえつけられているのだが、さすがに私もそこまでみっともない暴れかたはしない。
そう明歩に何度も言っているのだが、幼い子供のように太腿に横たわる私にはそれ以上どうしようもなかった。
「…ねぇ明歩、そろそろ許してよー」
「まだ駄目…、です」
七十回ほども叩かれて、すでに私のお尻には白い部分がほとんどなかった。
お尻の山のてっぺんはもう真っ赤、端にいくにつれてほんのり朱色がかった桃色があるといったところか。
もちろん自分では見えないのだが、さっき「もう叩くとこないでしょ?」と言った私に明歩が丁寧にわかりやすく、色合いから説明してくれた。
そんな優しさはいらない。
「私が悪かったよぅ…」
「…そういうのは、あとでね」
「…はい…」
すんすんと鼻をすすって泣いたふりをしてみたものの、一瞬で明歩に見破られてしまった。
さすがに長いつき合いである。
(PC)
11 戸波
「はい、仕切り直し」
「……い、づっ…!?」
ぱしぃん、と一際大きな音がして。
明歩と私は再び、ママと娘のようになっていた。
…いや、先生と生徒か?もうどっちでもいいや。
とにかくお仕置き再開、と言っても、すでにお尻はびりびりに痺れているのだが。
「…ねぇ、星奈」
「ふぇ?」
「私が、怒ってないと思った?」
「…何の話?」
びちぃん!と物凄い音を立てて、赤いお尻により濃いもみじマークがつく。
痛い、と叫ぶ暇すら与えてくれず。
びちん、ばちん、と真っ赤な桃のようになったお尻を明歩は連発で叩いてくる。
「…私が!ちっとも怒ってないと!思ってた…!?」
「いっ…、…痛…あ、明歩…?」
こんなに大声をあげて、取り乱す明歩は初めてだった。
「……い、づっ…!?」
ぱしぃん、と一際大きな音がして。
明歩と私は再び、ママと娘のようになっていた。
…いや、先生と生徒か?もうどっちでもいいや。
とにかくお仕置き再開、と言っても、すでにお尻はびりびりに痺れているのだが。
「…ねぇ、星奈」
「ふぇ?」
「私が、怒ってないと思った?」
「…何の話?」
びちぃん!と物凄い音を立てて、赤いお尻により濃いもみじマークがつく。
痛い、と叫ぶ暇すら与えてくれず。
びちん、ばちん、と真っ赤な桃のようになったお尻を明歩は連発で叩いてくる。
「…私が!ちっとも怒ってないと!思ってた…!?」
「いっ…、…痛…あ、明歩…?」
こんなに大声をあげて、取り乱す明歩は初めてだった。
(PC)
12 戸波
「私が…、絶交かもって言われて、どれだけ悩んだか……!!」
「あ…」
明歩は真面目な子だった。
私が軽口で、絶交なんて引き合いに出せば…それだけで傷ついてしまうくらい、繊細で、優しい子。
そんな事くらい、私は誰よりも知っていたはずなのに。
「…ごめんね、明歩」
「…いいえ…、…許しません」
精一杯の主張だったのだろう。
早くも彼女はもう、いつもの穏やかで平坦な口調の明歩に戻っていた。
「…この罰が終わるまでは、百回謝っても許しませんから」
どうやら私は、もうしばらく明歩に怒ってもらう事になりそうだった。
「あ…」
明歩は真面目な子だった。
私が軽口で、絶交なんて引き合いに出せば…それだけで傷ついてしまうくらい、繊細で、優しい子。
そんな事くらい、私は誰よりも知っていたはずなのに。
「…ごめんね、明歩」
「…いいえ…、…許しません」
精一杯の主張だったのだろう。
早くも彼女はもう、いつもの穏やかで平坦な口調の明歩に戻っていた。
「…この罰が終わるまでは、百回謝っても許しませんから」
どうやら私は、もうしばらく明歩に怒ってもらう事になりそうだった。
(PC)
13 戸波
そこからは厳しいなりに、優しい明歩だった。
百回を超えてから痛みの感覚が薄くなってきた私に、数分ほど時間をおいてから罰の再開、とくり返した。
普通に考えたらきちんと二百回、相応の痛みを与えるためにそうしたのだろうけど。
お尻が腫れて動けないほどの私には、数分の休憩でも十分ありがたかった。
「もしかして明歩、ちゃんと数えてるの…?」
「えぇ、今ので百七十一回目…って星奈、数えてないの?」
「い、いや…あはは…」
「…あきれた、私が勝手に多く叩いてたらどうするの?」
「…そこはほら、いつだって明歩を信用してるから…」
ぱちぃっ、と平手が飛んだ。
調子のいい事を言った報いかもしれない。
「これがお婆ちゃんだったら、また一回目からやり直しになるところだよ」
「う、うそっ!?」
「…さすがに、百七十一回のは経験ないけどね…」
百回を超えてから痛みの感覚が薄くなってきた私に、数分ほど時間をおいてから罰の再開、とくり返した。
普通に考えたらきちんと二百回、相応の痛みを与えるためにそうしたのだろうけど。
お尻が腫れて動けないほどの私には、数分の休憩でも十分ありがたかった。
「もしかして明歩、ちゃんと数えてるの…?」
「えぇ、今ので百七十一回目…って星奈、数えてないの?」
「い、いや…あはは…」
「…あきれた、私が勝手に多く叩いてたらどうするの?」
「…そこはほら、いつだって明歩を信用してるから…」
ぱちぃっ、と平手が飛んだ。
調子のいい事を言った報いかもしれない。
「これがお婆ちゃんだったら、また一回目からやり直しになるところだよ」
「う、うそっ!?」
「…さすがに、百七十一回のは経験ないけどね…」
(PC)
14 戸波
ぱしぃん、ぴしゃん、ぱしっ…終わりが近づくにつれて、ほんの少しずつではあったが、明歩が手加減をして叩いてくれたのがわかった。
ぱんぱんに腫れてすっかり感覚のなくなった私のお尻でも、それぐらいわかるのだ。
厳しい事を言いながら…、常にやり過ぎないよう気をつかってくれている、親友の優しさくらい。
「…ありがとね、明歩」
「…何、急に…?まだ百七十九回目だから、許してないよ」
「へいへい」
ばちぃんっ、また痛いのが飛んできた。
軽口は禁止らしい。
さっきの優しさは一体どこへ…。
…ぱん、…ぱん、…ぱぁん……これまでより遅いペースのまま残り二十回、私のお尻を叩き終えた明歩は、ハァハァと肩で息をしていた。
やはりお尻ぺんぺん二百回というのは、叩くほうも相当に疲れるのだろう。
「…はい、これでもう許しました」
「…痛っつつ…、あれ明歩…、その手…?」
「え?…あぁ…」
平気だよ?と笑う、散々私のお尻を叩いた明歩の手は、霜焼けみたいにぷっくり赤く腫れてしまっていた。
指でさえ華奢で細身の明歩だから、余計に目立ってしまうのだ。
「ごめん、私のせいで…」
「…いいよ」
本当に嬉しそうに。
穏やかな顔で、愛おしそうに添えた左手で右手の甲を撫でながら、明歩が言う。
「さっき十分、謝ってもらったし…」
「でも」
「…いいの、嬉しい事もあったから…」
明歩が言うには、素直に気持ちを吐きだせただけでもすっきりしたそうだ。
決めた罰を受けたとはいえ、何もかも私が悪いのにあっさり許してくれるところは器が大きいというか。
男の子だったら惚れているかもしれない。
ぱんぱんに腫れてすっかり感覚のなくなった私のお尻でも、それぐらいわかるのだ。
厳しい事を言いながら…、常にやり過ぎないよう気をつかってくれている、親友の優しさくらい。
「…ありがとね、明歩」
「…何、急に…?まだ百七十九回目だから、許してないよ」
「へいへい」
ばちぃんっ、また痛いのが飛んできた。
軽口は禁止らしい。
さっきの優しさは一体どこへ…。
…ぱん、…ぱん、…ぱぁん……これまでより遅いペースのまま残り二十回、私のお尻を叩き終えた明歩は、ハァハァと肩で息をしていた。
やはりお尻ぺんぺん二百回というのは、叩くほうも相当に疲れるのだろう。
「…はい、これでもう許しました」
「…痛っつつ…、あれ明歩…、その手…?」
「え?…あぁ…」
平気だよ?と笑う、散々私のお尻を叩いた明歩の手は、霜焼けみたいにぷっくり赤く腫れてしまっていた。
指でさえ華奢で細身の明歩だから、余計に目立ってしまうのだ。
「ごめん、私のせいで…」
「…いいよ」
本当に嬉しそうに。
穏やかな顔で、愛おしそうに添えた左手で右手の甲を撫でながら、明歩が言う。
「さっき十分、謝ってもらったし…」
「でも」
「…いいの、嬉しい事もあったから…」
明歩が言うには、素直に気持ちを吐きだせただけでもすっきりしたそうだ。
決めた罰を受けたとはいえ、何もかも私が悪いのにあっさり許してくれるところは器が大きいというか。
男の子だったら惚れているかもしれない。
(PC)
15 戸波
「でももう絶交はなしにしてね、…星奈が怒られたい時でも、なし」
「わかったよ…ってイヤイヤ、怒られたい時とか…、ないから」
「…お尻ぺんぺんして欲しくなったら、言ってくれれば…」
「ないよ!」
もう懲り懲りである。
さっきから喋っていても、出したままのお尻がひりひりしっぱなしで落ちつかない。
座る場所を少しずらせば畳がひんやりして気持ちいいのだが。
あんまり長く座っていると、お尻に畳の跡が残ってしまいそうだった。
「さてと、私からはこんなところだけど…」
明歩はとても言いづらそうに、とある情報を教えてくれた。
「…あの点数で、許してくれるのかな…?星奈のママ」
「あっ」
すっかり忘れていたが。
黙っておけばいいのに、今回私は「あの明歩と点数勝負する」などと意気込んで親に報告してしまっていたのである。
一桁は、さすがにまずい。
「…うわーん、明歩ぉー…」
「よしよし」
相変わらず、私はどこまでもバカなままだった。
「わかったよ…ってイヤイヤ、怒られたい時とか…、ないから」
「…お尻ぺんぺんして欲しくなったら、言ってくれれば…」
「ないよ!」
もう懲り懲りである。
さっきから喋っていても、出したままのお尻がひりひりしっぱなしで落ちつかない。
座る場所を少しずらせば畳がひんやりして気持ちいいのだが。
あんまり長く座っていると、お尻に畳の跡が残ってしまいそうだった。
「さてと、私からはこんなところだけど…」
明歩はとても言いづらそうに、とある情報を教えてくれた。
「…あの点数で、許してくれるのかな…?星奈のママ」
「あっ」
すっかり忘れていたが。
黙っておけばいいのに、今回私は「あの明歩と点数勝負する」などと意気込んで親に報告してしまっていたのである。
一桁は、さすがにまずい。
「…うわーん、明歩ぉー…」
「よしよし」
相変わらず、私はどこまでもバカなままだった。
(PC)