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1 とく

「将太のおばちゃん」

私は関西地方の田舎に生まれました。
近隣に住むお年寄りはみな自分の住所に"村"を付けて呼んでおり、民家や田んぼ以外には本当に何もない所だったと記憶しています。
子供の頃にはよく一緒に遊んでいた将太という男の子がいました。

「あらっ?いらっしゃい、今日も将太と遊んでくれるの?」
「はい、お邪魔します」

将太の母親は専業主婦でいつも家にいましたが、私がいつ遊びに行っても優しく出迎えてくれました。
忙しい時や、疲れている時もあったに違いないのにそれを見せることなく、まだ子供の私を最大限に気遣ってくれたのが今でも忘れられません。
将太と家の中を走り回ってもほとんど怒られないので、逆に私から「そろそろやめます」と自粛してしまうほどでした。
そんな家庭で育つ将太を羨むあまり私は、母親である「将太のおばちゃん」に小さな恋心を抱いてしまったのです。
(PC)
2 とく
私は小学4年生になり、将太が2年生になって塾に通い始めた年のことです。
ある日私が遊びに行くと、出迎えてくれた将太はズボンのお尻のあたりを何度もさすっていました。

「お母さんに100回叩かれた」
「へ、へぇ…」

じつはお尻を叩かれることに興味のあった私はもっと詳しく聞きたかったのですが、そんな気持ちを悟らせまいとぐっと我慢していました。
すると奥からおばちゃんが顔を出して、

「この子ったら、塾サボって遊びに行ってたのよ」

などと言うのです。
私にしてみれば、たったそれだけの理由であの優しいおばちゃんが将太のお尻を、しかも100回も叩いたというのが信じられませんでした。
おばちゃんは叱ったことを誰かに言いふらすような人ではないですが、この日は将太が自分から報告してきたため、話の流れで概要を教えてくれたのです。
宿題や習い事で怠けたりしたらお尻を叩く、というのがどうやら1年生の時からあったようで、とくに習い事は100回固定。
ずいぶん厳しいようにも思えますが、それ以外ではほとんど叱られない家であることを私は知っていましたから、やはり羨ましいと思っていました。
(PC)
3 とく
当時の私は村の集会所に週1度だけ来てくれる、書道の先生の所へ通っていました。
女の先生で礼儀作法には厳しく、文字の美しさより日頃の生活態度などを重視する、そんな先生でした。
私とは仲良く接してくれていましたが…態度の悪い男子には「お尻叩くよ!」の一喝が飛び、そうして不機嫌になると室内の空気が静まり返るのはどうにも苦手でした。
この先生は脅すだけで実行には移さなかったので、物足りなさがあったのだと思います。
私はしだいに書道教室を休みがちになってしまいました。
しかしそれが「将太のおばちゃん」の耳に届くことになったのです。
田舎の村にわざわざ外部から先生を招いているということで、じつは集会所の近所に住んでいたおばちゃんはこの書道教室のお手伝いの役割を任されていたのです。
早い話が、村の子供のお目付け役。
よりによってサボっているのが私だということで、私は将太が塾に行っている間に家に呼ばれてしまいました。
(PC)
4 とく
「じゃあ…、100回、する?」
「えー…」

将太は塾をサボったらお尻を100回叩かれる、という話を前に聞かされていた私は、それだけで何をされるのか理解できました。
先生に怒られるのとどっちがいいか、という話で私は迷わずおばちゃんを選びました。
座ったおばちゃんの太ももに寝っ転がるとパンツを下ろされ、ほどなくバチンッ!とお尻の方でいい音がしました。
想像していたよりずいぶん痛かったです。

「…2、…3、…4、…5…」

おばちゃんは1回につき5秒ほどの間隔を空けながら私のお尻を叩き、私が痛そうにするたび「大丈夫?」と優しく声を掛けてくれます。
20回もいかないうちにお尻はひりひりと痛み始めました。

「痛い?」
「…痛い」
「うん、100回終わるまで頑張ろう」

おばちゃんはそれだけ言って、またバチン、バチンとお尻を叩いてきます。
私は痛みで歯を喰いしばりながら同時に幸せを感じていました。
(PC)
5 とく
「…21、…22、…23、…24、…25…」

いつも将太はこんなことされてたんだ、ずるいなぁ。
想いを寄せる人からお尻を叩かれて、私はすっかり舞い上がってしまいました。
だんだんと痛みも和らいでいくのがわかります。
70回を超えるころには、お尻を真っ赤にしながらも私はほとんど痛みを感じていませんでした。

「…80、…81、…82…」

おばちゃんも疲れてきたのがわかります。
ふだん叱っている将太とは違う上級生で、さらにそれまで私を叱ったことがないおばちゃんですから精神的にも辛かったに違いありません。
きちんと100回を数えて叩いたあと、おばちゃんは私に「来週はちゃんと行く?」と聞きました。
私は「行く」と答え、ちゃんと約束は守って翌週は通ったのですがその後は2回ほどサボり、同じように2回ともお尻100叩きをもらいました。
3回目はついにおばちゃんも呆れてしまったのか、「次はおウチに電話するよ」と言われてしまいました。
並べてみればたったの3回だけでしたが、私の人生での数少ないお仕置き体験です。
(PC)
6 まさる
良いねこの作品
書道の先生は本当にお仕置きしない人なのかな
(docomo)
7 とく
>6
じつは実体験をベースにもじって書いてみた話ですが、登場人物と叱られる経緯はほぼそのままです(ところどころ誇張してますが)
今回の話には出てませんがこの書道教室、1、2年生が帰る頃に3年生が来る、途中から4年生も加わって、3年生が帰る頃に5年生が来る〜という方式だったのでたとえ先生がお尻を叩いても見られる人数はごくわずかで
私は遭遇できませんでした
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