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1 コラム

尊敬できるオトナ

近頃は、子供を叱らなくなったなんて聞くけどさぁ。

僕の小さかったころなんかは、周りのオトナが他人の子供を平気で叱りつけてた。
昭和40〜50年代かな。
叩いたりも平気であったし、友達の親が自分の親より怖かったりしてね。
今じゃ虐待なんて言われちゃうんだろうけどさ。
僕も何人か憶えがある。
今でも思い出せるほどとんでもなく痛かったのは・・・健一君、ケンちゃんの家かなぁ、やっぱり。
(PC)
2 コラム
原因は、入っちゃいけない場所に忍び込んでばれてしまったことだ。
少しだけ言うと、落ちたら危ない立入禁止の建物の屋上で遊んだのがバレた。

僕とケンちゃんは2人でケンちゃんの家にいて、その時、電話が掛かってきた。
懐かしの黒電話。
ジリリリリン、はい、○○です。
ケンちゃんの母親が電話に出る。
しばらく会話をして・・・、チン、受話器を置いた瞬間、「健一〜!!」ケンちゃんを呼ぶ大きな声がする。
ケンちゃんの母親は「落ち着いた物静かで優しい女性」という印象だったので、僕はまずその怒声に驚いた。
(PC)
3 コラム
「健一、○○○の屋上に入ったって本当っ!?」
「えっ・・・!?」
「本当なのねっ!?」

何でばれたの・・・?嘘がつけない純粋無垢なケンちゃんは、あっさり罪を認めてしまった。
そこからがとてもまずい展開だった。

「×××君も・・・?」
「・・・え?」
「×××君も、健一と一緒に入ったの?」

何がまずいって。
・・・実は、僕とケンちゃんは4つも学年が違う。
つまり僕は、面倒を見るお兄ちゃんであり、ケンちゃんの母親からは(あの×××君がそんな悪さをするはずがないよね)という全幅の信頼を置かれていたのである。
その信頼を、僕は裏切ってしまった。
(PC)
4 コラム
「×××君・・・。」

悲しそう、というより、怒りの行き場がまだ決まっていないような・・・、内心複雑な苦笑い、といったところ。
先に呼ばれたのはケンちゃんだった。

「健一、お尻っ!」
「イヤだ、イヤだよっ!」
「いいから来なさい!」

パチン、パチン・・・、いきなり生尻。
母親は相当怒っている様子で、有無を言わさず下着ごとずりおろすと平手の痕が肌に残るぐらいの強さでケンちゃんの尻叩きを始めた。
パチン、パチン・・・。
もう1度言うが、僕とケンちゃんは4つも学年が違う。
当時ケンちゃんはまだ低学年であり、虐待だと何かとうるさい昨今でなくともやりすぎではないかと思えるぐらいの折檻だった。
低学年で生尻100叩き。
もしも落ちたら命に関わるような場所に入ったわけなので妥当と言えば妥当かもしれない。
まして自分の息子。
親の立場として考えれば、厳しく叱りつけているのもうなずける。
(PC)
5 コラム
ただそうなってくると不安なのが、僕に対する罰である。
僕はそれまでケンちゃんの母親に叱られる経験はなかった。
ただそれは前述のとおり、全幅の信頼関係があってのことだ。

「×××君は、何回にする?」

ケンちゃんの尻叩きが終わった。
母親はすぐ僕のほうに向き直ると、そんな風に質問をしてきた。
生尻叩きは僕も同じらしい。
あとは回数を自分で決めるようにということなのだが、これがまたいやらしい。
低学年のケンちゃんが目の前で生尻100叩きに耐えたのだ。
4つも年上で体の大きい僕が、中途半端な数字を言うわけにいかない。
変なプライドもあり、「300で・・・」と言ってみた。
そんなに叩かないわよ、というリアクションを僕は期待したのだが・・・。

「まぁ、そんなもんかな。」

お尻向けて、母親は快諾し、生尻300叩きがこの時すでに確定。
僕はもう尻を突き出して許しを請うしかなかった。
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