SHINITAI

はやく死にたい。低所得だし、小説は落選ばかり。生きててもろくなことがない。夢も希望もない。はやく死にたい。
俺は、双曲線的非ユークリッド幾何学の専門家に相談した。
「カンタンですよ。実軸と虚軸を使って複素平面を作成すりゃあいいんです。実数ばかり使ってるからダメなんです。虚数を使えば一発で解決しますよ」
なるほどー！　その発想なかったー！
俺はさっそく何か思考する時、頭の中で虚数を使ってみた。するとどうだ。生きる気力がわいてくる。逆境と戦ってやるという気持ちになってきた。勇気が出てきた。
虚数、おそるべし。
ｉ×ｉ＝−１。
普通は１×１＝１、あるいは、−１×−１＝１だ。同じのをかければプラスになる。しかし、虚数は違う。マイナスになる。ありえない。まるでラピュタだ。普通、建物は地面に建っている。しかしラピュタは空に浮いている。ありえない。だから面白い。虚数に通じる。確かにフィクションを和訳すると虚構だ。虚数を英訳すると、イマジナリィ・ナンバー。


そんなわけで俺は今、生きている。虚数に感謝である。虚数がなかったら、世の中に絶望して自殺していたであろう！