1 トムソン

まだだよ

 新沼は某有名ラーメン屋で特製担々麺を食べていた。新沼は担々麺が好きだ。幸せだった。天にも昇る。とはいえ、幸福中の不幸。担々麺は高かった。値段が高かった。新沼にとっては。新沼はフリーターだから低所得なのである。地獄だ。
 新沼はかように不幸と幸福を抱えて、生きている。みんなと同じく。
 幸福がユークリッド幾何学とするならば、不幸は双曲線的非ユークリッド幾何学である。何。意味がわからん。安心せえ。わいもわからん。うはははははは!
 そんな新沼。彼は小説を書いていた。今はフリーターだが、将来的にプロ作家になる予定である。
 どんな作品を作りたいのか。一言で言えば、エンターテイメントと文学をミックスした作品だ。日々、努力している。
 新沼が部屋で書いてるとき、窓からまどかが入ってきた。勤務先の塾の生徒である。
「先生。遊びに行こう」
「いいね」
 新沼はまどかと外に出た。どこに行く。まどかはまだ高校生であるし、新沼は低所得だから、カネのかかるとこは駄目だ!
 ゆえに図書館に行った。図書館で、朗読会がある。
 朗読するのは、「ウンチョス丸山物語」を書いた、ウンチョス丸山だ。
「ウンチョス丸山はアスファルトにウンコをブリブリブリっとした。あまりに臭くて、北沢は倒れた」
 場内、大爆笑である。下品だがおもしろい。
 とはいえ、警察がやって来た。
「やめろやめろ。道徳的にあかん」
「帰れポリス」
「そうだそうだ。表現の自由の侵害だ」
「なにい」
 警察は拳銃を構えた。
 ウンチョス丸山は、床にウンコをブリブリブリとした。それをつかみ、警察に投げた。即死だった。
 場内、拍手。新沼もまどかもニッコニコだ。
 ウンチョス丸山は朗読を続けた。
「ウンチョス丸山は、ウンチョス大魔王に言った。お前のウンコに対する情熱はそんなもんか、大したことねえな。ウンチョス大魔王は悔しかった。図星だったのだ」
 みんな泣いてる。ウンチョス丸山は、コメディ作家だが、たまに泣かせるシーンがあるので奥が深い。
 まどかも泣いてる。新沼はハンカチを渡した。
「ありがとう先生」
 新沼はかわいいなあと思う。
「ウンチョス丸山は、またアスファルトにウンコをブリブリブリとした」
 爆笑。
(WX12K/w ID:EGaPkU)