トラック

　男子高校生、利根川たかしは、トラックにはねられた。
「痛いよう。痛いよう」
　たかしはわんわん泣いた。トラックの運転手が怒鳴った。
「泣くな！男だろ！」
　たかしはイライラしてきた。なんだこいつ、加害者のくせして偉そうに。ぶっ殺す。
　たかしは拳銃を構え、運転手に向かって撃った。
「痛いよう。痛いよう」
　今度は運転手が泣く。たかしはやり過ぎたかなと思った。
「キャンディあげるよ」
「ひっくひっく。ありがとう」
　運転手はキャンディを口に入れた。
「おいしーい」
　運転手が笑顔になったので、たかしは嬉しかった。しかし、間もなく運転手は出血多量で死んだ。
　たかしは悔しい。自分が殺したとはいえ、元の原因はトラックにある。
　たかしはトラックを正座させ、説教した。
「もう人をはねんか！」
「ふええん。乗る人によりますよう」
「生意気ゆうな」
　たかしは怒って、トラックを殴った。
「痛い！」
　トラックむちゃくちゃ硬い。たかしは泣きたくなってきた。しかし、運転手の言葉を思い出した。男だろ。泣くなよ。
　たかしはぐっとこらえた。
「運転手の分も生きなくちゃいけない！」
　たかしはトラックに飛び乗り、走り出した。無免許だけど。
「はいよー！はいよー！」
「ひひいいいいん」
　何か馬っぽい。
　たかしが乗ったトラックは女子高生をはねた。
　野良犬が不気味に吠えている。
　Am7。