1 熟年妄想族

高校教師 第一章

比嘉は沖縄県の県立高校の体育の教師である。また学校の生徒指導部でもある。
沖縄県教育委員会の研修で二泊三日で各高校から二名が参加し研修を受ける。昔と違って最近は生徒を指導するさいに暴力は当たり前だが触ることさえ禁止である。何でもかんでもハラスメントとされるので講習を受けないといけない。
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part 1

沖縄県教育委員会の研修センターは那覇市の郊外にある。古い校舎のような建物だが冷房完備で、熱帯夜とは思えないほど涼しい。
お風呂は大浴場のみでサウナも完備してる。
「玉城先生?、今回のテーマ『現代の子どもと向き合うためのコミュニケーション術』なんて難しいねぇ」
比嘉が大股で歩きながら言った。黒いジャージ姿がよく似合っている。沖縄空手の名手だ。
玉城教頭は眉間にシワを寄せた。白髪混じりの短髪に太い眉毛。
「なあ比嘉よぅ……」
研修資料をめくりながら、玉城は声を潜めた。
「今は何をしてもハラスメントになるんだな」
「そうですねぇ。触るのも駄目だし大声も駄目ですよ。昔と違い過ぎますね?」
「じゃあ俺たち大人はどうすればいいんだ?」
「それは自分をしっかり持ってですね……」
と比嘉は得意げに胸を張った。分厚い胸板が盛り上がる。上半身裸になって鍛えた体を見せるのが彼の癖だった。
「あ!比嘉先生!」
その時、若い女性教師が小走りで近づいてきた。ショートヘアにピンクのトレーニングウェアがキュートだ。隣の高校の養護教諭・美華である。
「比嘉先生のお陰でうちの学校の生徒達すごく元気になりました!!ありがとうございます!」
「いやぁそんなことは……」
照れくさそうな顔をする比嘉を見て微笑みつつも何か考えている表情をしているようだ。
休憩所に向かう廊下には窓越しに海が見えた。穏やかな波音が聞こえてくるような気がしたほどだ。
「比嘉よぉ」
自動販売機の横にあるベンチに腰掛けながらコーヒー缶を開ける。一口飲むと甘い香りと共に苦味広がる。喉の渇き癒されていくようだった。
「なんだい玉城先生?悩みでもあるんですか?」
「実はな……」
ため息ついて項垂れるように言う彼の姿からはただならない雰囲気を感じ取れたのだ。
「最近嫁が全然させてくれなくて困ってんだよなぁ〜」
予想外すぎる内容だったため呆気にとられつつも苦笑い浮かべることしかできなかったようだ。
「そりゃ大変じゃないすっか〜」
同情する口調で応じてみると安心感与えられたらしく安堵した様子になった。
「だろ?まだ52だっていうのにさ!週末だって帰ってきてもすぐに寝ちまうんだ」玉城教頭は顔を赤らめながら言った。
比嘉は腕を組み、うーんと唸った。「それは辛いですねぇ。でも先生、奥さんも先生だし疲れてるんじゃないですか?」
「まぁそうかもしれないけどよ……」玉城教頭はコーヒーを握りしめながら続けた。「この前なんか、“もう無理”って言われたんだぜ。“疲れてるから”とかじゃなくて、“もうしたくない”って」
比嘉は驚いたように目を丸くした。「それは重傷やねぇ。でも先生、熟年夫婦ってこんなもんでは?」
玉城教頭は首を振った。「いやぁ、俺の知ってる限りじゃそんなこと言う人はいないぞ。みんな“年だから”とか言ってるだけだ」
「へぇ……」比嘉は納得いかないような表情を浮かべていた。
すると突然、玉城教頭が言った。「そうだ!比嘉よぉお前はどうなんだ?」
「えっ!?」予想外の質問に比嘉は焦った。
「お前みたいな精力旺盛なヤツがセックスレスなんてあり得ないだろう!」
「いやぁ……」比嘉は苦笑いしながら答えるしかなかった。
確かに自分はバイセクシャルで最近は女には全く興味がないのだ。どちらかと言うと男性が好きで特に熟年親父が好きなのである。
しかし今はそんな事を言っている場合ではないと思い直し話を続けることにした。「まあ俺も色々ありますがねぇ……」と言いつつ
「実は俺はもう何年も妻とはセックスレスなんです……」と比嘉が切り出したのだ。
「お前も奥さんに“もうしたくない”って言われたのかハハハハハ」
「違うんです玉城先生……」比嘉は額に汗を浮かべながら答えた。「実は、妻に拒否られたわけじゃなくて……妻もセックスが好きじゃないし私の方からもうしなくていいと言ったんです」
玉城教頭の目が大きく見開かれた。「えぇっ!?お前が?信じられんわ……あの強靭な筋肉の持ち主が……」
自動販売機の低いモーター音だけが二人の沈黙を埋めていた。
玉城はコーヒー缶を握りしめながら聞いていた。「それで今はどうしてるんだ?」
「センズリか……」玉城が小声で尋ねると、
「はい。センズリばっかりしてます……ほとんど毎日しています」
「奥さんがさせてくれないから玉城先生もそうでしょうハハ」と比嘉が笑った。
玉城教頭は顔を赤らめながらコーヒーを飲み干した。「まぁな。俺だって毎日のように妄想してるよ。でも現実に相手がいないとな……」
「わかるよ先生!」比嘉は急に真剣な表情になり、「僕もずっと一人で処理してるんですよ!もう10年以上も!!」
玉城教頭は驚いたように目を丸くした。
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part 2

「10年以上だと!?そんなに長い間?」
「そうですとも」比嘉は誇らしげに胸を張った。「しかも私は女よりもセンズリが好きですからね!」
「それじゃまるで女嫌いみたいじゃないか」
確かに自分はバイセクシャルなのだから今は女性には全く興味が無いのだ。
それに何よりも男性こそが自分にとって最も魅力的なのだと思っているくらいなのだから当然であろう。
「ところで比嘉……」
玉城教頭が何か言いかけた瞬間、スピーカーからアナウンスが流れた。
「午後の研修開始まであと5分です。皆様、会議室にお集まりください」
廊下に響くチャイムの音。壁に掛けられた時計を見上げると、13時を指していた。
「……あっ」
玉城教頭が小さく舌打ちをした。「ちょうどいい所で時間切れか」
「えっ?どういう意味ですか?」
比嘉が不思議そうな顔をすると、玉城は苦笑いで返した。
「いや別に何も」
二人は慌てて自販機コーナーを離れ、エレベーターホールへ向かった。
午後の研修会場は、朝と同じ大きな多目的ホールだった。天井近くの窓からは午後の陽光が差し込み、少し蒸し暑くなっていた。最前列中央に座るのは、教育委員会の講師の人々だろう。スーツを着込んだ中年の男性や綺麗なブラウスの女性職員などが並んでいた。
午後の研修プログラムは順調に進んでいった。ハラスメント対策についてのディスカッションやロールプレイを繰り返し行ううちに、参加者たちの理解度も高まっていったようだった。
比嘉は積極的に意見を出し合い、時にはジョークも飛ばしながら和やかな雰囲気を作り出していた。
一方の玉城教頭はというと、あまり乗り気ではないようで時折上の空になっていることがあった。それでも彼なりに一生懸命メモを取りながら勉強している様子が伺えた。
午後四時になると講義も終盤に差しかかってきた頃だったためか全体の集中力も緩み始めた頃合いだったせいもあってか少々弛緩した空気が流れていた。
「ではこれにて今日の研修は終了です。明日もありますのでゆっくり休んでください」
女性講師の締めくくりの言葉で全員が席を立ち始めた。ホッとした空気が漂い始め、談笑したり伸びをする姿があちこちに見える。比嘉は大きな溜息をつくと隣に座っていた玉城教頭に話しかけた。
「ふぅ?やっと終わった」
「お疲れさま比嘉。なかなか面白かったな」
「ええ。色々学ぶことがありましたね」
二人は荷物を持って会場を後にした。エレベーターに乗る頃には夕暮れが始まっていた。
「晩飯どうします?」比嘉が訊くと、玉城は髭を撫でながら言った。
「先に風呂入ってビールでも飲みながら飯にしないか?」
その提案に比嘉の目が輝いた。研修中ずっと楽しみにしていた大浴場の存在を思い出す。教育委員会の研修センターには珍しく温泉付きの大浴場があり、夕方からは開放されるとのことだった。
「いいっすね。実は俺も早く入りたいと思ってたんですよ」
「だと思った。お前なら絶対好きそうだもんな」
エレベーターの中での会話が弾む。ガラス張りのドア越しに沈みゆく西日が眩しい。
「俺さぁ、こういう大浴場って好きなんですよ。なんか開放感があって」
比嘉は空手家らしい隆々とした腕を見せつけるように振り上げた。分厚い胸板と腹筋の凹凸がシャツの上からも分かる。
「分かる分かる。お前は鍛えた体を見せるのが好きな裸族だからな」
玉城はニヤッと笑った。坊主刈りに近い短髪が男臭さを醸し出している。
他愛もない会話をしているうちにエレベーターが開いた。廊下に出ると温かい空気が肌を包む。どこからか石鹸の香りが漂ってくる気がした。
「よしっ!ひとっぷろ浴びて汗流すとするか!」
比嘉のテンションが高い理由を玉城は察していた。単なる風呂好きではない。おそらく今宵は……。
脱衣所は想像以上に広々としていた。木製のロッカーがずらりと並び、湿気を含んだ木の匂いが鼻腔を刺激する。
「さすが教育委員会が金かけてるだけあるなぁ」
玉城が感心する傍らで比嘉は鼻歌交じりに服を脱ぎ始めた。
「やっぱ風呂は最高ですよ。特にこうやって脱ぐ瞬間が堪らないんですよねぇ」
逞しい肉体があらわになるにつれ、周囲の目線が集まるのを感じる。比嘉自身もそれを知っていて、わざと見せつけるようにゆっくり脱ぐのが癖だった。
一方の玉城も負けじと上着を脱ぐ。長身の体格には似合わぬ細身のTシャツ一枚になってから一気に頭を通した。
「おい比嘉ぁ…… お前も負けてねえな」
顎鬚を擦りながら感嘆するように呟いた。
二人はお互いに素っ裸になり向かい合う形になった。先に声を上げたのは玉城だった。
「おう! さすが沖縄県民らしい見事なお宝持っとんな!」
股間に釘付けになる視線。その中心には堂々としたモノが鎮座していたのだ。皮がまったく被っていない亀頭部分が露わになっている上に竿全体の太さと長さも相当なものであることは容易に想像できるほどだった。さらに睾丸までもかなり大きいほうであるということが見て取れるのである。
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part 3

それだけではなく濃密すぎる陰毛によって覆われている箇所が多いせいか余計にグロテスクさと威圧感を与えてしまう印象を与えていたのである。
それに対して比嘉のほうも同様の反応を見せていたようだ……。
「へへへ〜 教頭こそすごいですね! この剛毛加減といいカリ首周りのエグさったら! オイラより凄く見えるかも知れないっすよぉ!」
そんなことを言いながら嬉しそうに自分のモノを見せ合う二人の姿には微笑ましささえ感じられる程であった…………
脱衣所を抜けると目の前に広がったのは贅沢な広さの大浴場だった。大理石の床に沿って複数の湯船が設けられ、中央には岩造りの露天風呂まである豪華さだ。
「うおおっ!やっぱり大浴場は最高だなぁ!」
比嘉は早速洗い場へ向かう足取りを弾ませる。その背中に追いついた玉城が声をかける。
「おいおいそんなにはしゃぐなよ。四十路過ぎのおっさんがさ」
軽口を叩きながらも自分も興奮気味なのがわかる。研修で凝り固まった筋肉をほぐすには格好の舞台だ。桶に汲んだ湯で体を清めつつ周りを見渡す。研修を受けた先生だけなので利用者はまばらだが……
「ほほう、これはなかなかいい光景だな」
玉城が低く唸るように呟いた。視線の先にいるのは五十代前後と思しき中年男性達だ。鍛錬された肉体を持つ者が多く見受けられ、その誰もが堂々と露出させたまま歩いている様は壮観だった。
その中の一人に比嘉の目が留まる。頭一つ抜けた長身に厚い胸板。引き締まった腰回りから太腿へと続くラインが美しい。剃刀負けのような傷痕がある頬と立派に蓄えられたヒゲ。そして何より股間で威容を誇示する極太ズル剥け巨根???。
(おお!強面だが小沢とおる似でまさにドストライク!)
思わず心臓が跳ね上がる。脳内で勝手に名前をつけてしまったほどだ。"小沢さん"と。
(五十路も近いだろうにあのガタイと巨根……きっと夜ごと妻を犯してんだろうな)
淫靡な想像が止まらない。
(もし仮に俺が抱かれるとしたらどんな風にされるんだ……?)
浴室の熱気と興奮で全身が火照ってくる。しかし理性を保とうとする自分もいた。
(ダメだダメだ……こんなところで勃っちゃいけねえ!)
一方で小沢さんは特に気にするそぶりもなく堂々と歩いていく。湯上がり後に軽くタオルで水滴を拭う仕草さえ男前だった。そのまま露天スペースへ向かっていく背中を目で追いかけながら比嘉は夢見心地で呟いた。
「ふぅ〜 エロいなあ……」
そこまで考えて我に帰る。慌てて隣にいる玉城の存在を思い出した。彼も同じく小沢さんを見ていたらしく視線がかち合ってしまう。
「なんだ比嘉? 知り合いか?」
ニヤリと笑う顔は全て見透かされているようで居心地悪くなった。
「別にただ……その……」
「フン!まあ確かになぁ!立派なモン持ってるな」
「そりゃまあそうですけど!」
話題を変えようと必死になっているのが自分でもわかったがうまく誤魔化せなかったようだ。結局その後もチラチラ様子を伺いながら温泉につかる羽目になり心安らぐどころではなかった……
大浴場を出た二人は体からほんのり湯気が立つ状態で食堂に向かった。外はすっかり暗くなり、虫の鳴き声が聞こえる夏の夜だ。
食券販売機に辿り着いた。迷うことなく定番メニューを選んでボタンを押す。
「お前も焼き魚定食にするか?」
「じゃあそれで」
トレイを片手に席を探していると見覚えのある人物が目に飛び込んできた。さっきの"小沢さん"だ。
整然と盛られた刺身とご飯茶碗を持って、窓際の席に腰掛けていた。湯上り後の紅潮した顔つきに浴衣が艶っぽく見えてしまう。
内心喜んでいる自分が恥ずかしかったが否定できない事実だ。
「おい比嘉」
突然呼び止められてドキッとする。振り向くと玉城が意味深な笑みを浮かべていた。
「あそこにいる浦添高校の先生はデカマラだったな?」
その言葉に思考が停止しかけた。一瞬遅れて質問の内容を咀嚼する。
(なんで玉城さんが知って……いやそれよりあの人は浦添高校の先生なのか!?)
まさかの情報に狼狽えつつも平静を装う。
「え?あ、あれ?そうなんですか」
「知らないのか。あの人も空手をやってるよ」
さらりと話す玉城。比嘉にとって衝撃的すぎた。
(マジか……浦添高校の先生なんて知らなかった……しかも空手をやってるなんて)
内心舌打ちする思いだった。同じ流派であれば接点も多くなるだろう。羨望と嫉妬がないまぜになった複雑な感情が渦巻く。
「ほら行くぞ。あの辺空いてる」
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part 4

玉城が指し示したのは奇しくも小沢さん(と呼んでしまうのも妙な違和感はあるものの)のすぐ近くのテーブルだった。
断る理由もなく従うしかない。椅子を引いて腰掛ける直前で改めて小沢さんの横顔を盗み見る。
彫りの深い顔立ちに立派な眉とひげ。

逞しい骨格に刻まれた年輪のような皺。全てが魅力的に映る。あの風格は校長レベルだ。
食事を始めるが食欲など湧いてくるはずもなかった。
玉城が何やら世間話を振ってきたが適当に相槌を打つしかできない。
ちらちら視線を感じるのは気のせいじゃないだろう。小沢さんの方からもこちらを見ているようだ。しかも意味ありげな笑みを浮かべて。
(マジか……バレてるんじゃないか?俺がジロジロ見てたこと)
冷や汗が滲んでくるのを感じた。平静を装い続ける自信がない。
「飲みすぎたかな、比嘉、ちょっとトイレ行ってくる」
「飲みすぎですよ。もうビール二杯に島酒5杯目ですよ」
急に立ち上がる玉城を見て助かったと思った矢先
「ああそうだ。ついでに浦添高校の先生にも挨拶してくるよ」
え?と思わず聞き返してしまいそうになる。
(ちょ!マジで?何言ってるんですか教頭さん!)
制止する暇もなく玉城は向かい側の席へ歩いていってしまった。
二人が何か親しげに話し込んでいる様子を遠目で見守るしかない比嘉。会話の内容はわからないが小沢さんが大笑いしているのが見える。
(いったい何を話してるんだ?俺の変態趣味とかバラされてたりしないよな?)
不安で胃が痛くなってきた。
数分後、満足そうな表情を浮かべて戻ってきた玉城。席に戻るなり比嘉を肘で小突く仕草を見せてきた。
「あの先生、お前のことを知ってたぞ」
「はっ!?俺をですか?」
「ああ。空手をやってることをな」
意外な答えに戸惑うしかなかった。確かに浦添高校は県内でも有名な伝統校だし武道にも力を入れている。
だけどなぜここで俺の名前が出てくるのか全く理解できなかった。
「インターハイの引率教員で何度か見かけてなんかお前とは一度会ってみたいと思っていたらしいぞ。良かったな」
何故だかとても得意げな口調だった。まるで自分が仲介役を果たしたとでも言わんばかりに。
「ちょ!ちょっと待ってくださいよ!どういう……」
慌てて問い詰めようとする比嘉だったがもう遅かった。玉城は既に別の話題を持ち出してきていて完全に取り残されてしまう。
(マジかよ……小沢さんが俺を……?嘘だろう?)
信じられない思いだった。でも同時に高揚感もあることは否定できない。
食堂内の喧騒が遠のいていくような錯覚に陥っていた。
「あの人の名前は?」思わず聞いてしまう。
「喜友名先生。体育の先生で空手部の顧問だよ。俺と同じ歳で昔から知ってる」
玉城が当たり前のように答えると比嘉は言葉を失った。空手部の顧問……つまり自分と同じ世界の人間なのだ。(そっか……だからあの貫禄があったんだ)
ふと気づくと喜友名先生がこちらを向いていた。穏やかな眼差しが交差する。まるで磁力が働くように目が離せなくなる。
不意に鼓動が高鳴るのを感じた。
自分の反応に戸惑う。今まで男にこんなにもときめいたことなんてなかったのに……
食堂を出て部屋に戻ると比嘉は即座にベッドに潜り込んだ。玉城はまだ起きてるはずだ。
しかし眠れるわけがなかった。
瞼の裏に蘇るのはあの光景―――風呂場で見た喜友名先生の重量感のある巨大な逸物が雄々しく床を指し示す姿。
(くそ……落ち着け……)
いくら言い聞かせても身体が疼き始めている。股間にじんわりとした熱が集まっていくのが分かる。
ベッドの中でゴソゴソ動き回ってしまう。少しでも刺激すれば簡単に勃ってしまいそうな危うさだ。
ふと隣に微かな物音を聞いた気がした。
隣にいる玉城の様子が気になる。鼾でもかいてくれていれば多少安心できるのだが……。
静寂の中に響く自分の呼吸だけが煩わしい。
このまま欲望に任せてシコることは簡単だろう。
しかしそれが不可能だということは重々承知している。
妻帯者としての建前上、ここでオナニーなどすれば即破滅だ。
それに隣の玉城のことも考えなくてはならない。
もしバレてしまえば確実に面倒なことになるだろう。
(そもそもここで抜いたところで……)
解決策が何も無いことに気づき溜息が出た。欲求不満のまま明日を迎えるしかないのかと絶望的な気持ちになる。時間だけが無為に過ぎていく焦燥感とともに眠れない夜が始まった……
比嘉は一向に訪れない睡魔に苛立ちを募らせていた。隣から微かに響く寝息や布団が擦れる音が余計神経を逆なでする。
枕元にある時計の針は23時を回ろうとしていた。
「あーもう限界だ!」
遂に我慢できなくなった比嘉はベッドから起き上がった。
そのままドアを開けて室外へ足を踏み出すと廊下の照明が目に入る。
幸運なことに人影はないようだ。忍び足で階段を降りていき施設玄関から外へ出る。
夏の夜特有の生暖かい空気がまとわりつくような感触がしたが今はそれが心地よい。
月明かりに照らされた宿泊棟前の庭園は昼間とは違う幻想的な佇まいをしている。
比嘉はしばらく景色を眺めていたが次第に落ち着きを取り戻していく自分を自覚し始めた。
これならば何とか寝付けるかもしれないと思い踵を返す。

続く
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