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「 、の自習室♭」

あらゆることに神の摂理を求める部屋です
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日本国憲法の立憲主義のあらわれ
この立憲主義の基づく憲法は、

成文憲法(注1)をとり、
硬性憲法(注2)である
ことが一般的になります。

それは、国民と政府の「契約」なので文書の形として残しておくべきという
ことと、憲法を法律のように国家側が勝手に改正できないようにしておくべき、
という発想から帰結しています。

もちろん、

日本国憲法も成文かつ硬性の形を採っています。

理解という意味では、ここの部分も、日本国憲法に当てはめてイメージできるといいと思います。



注1 成文憲法・・・文書の形で残しておく憲法。憲法典
注2 硬性憲法・・・法律よりも改正が難しくなっている(改正要件が厳しい)憲
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第3章の表題の「国民」の意味とは
ところで、日本国憲法の第3章の表題には、
「国民の権利及び義務」とあります。

第3章は人権保障に規定が並びますが、
「国民の〜」とある以上、日本国民のみに向けた人権保障規定、
との解釈も可能です。

私たちは、この「国民の」という文言に意味があり、
問題意識を持つべきと考えます。

なぜ「国民の」とあるのか?
日本国憲法は、自然権思想を元にしているにもかかわらず、
人権の章にわざわざ「国民の」と入れているのは、
大きな意味があるのではないか?

もしかしたら、日本国憲法で規定されている人権保障規定は
外国人を含めないものなのか?

外国人の人権享有主体性問題提起

で、実際、どうなんでしょうか
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マクリーン事件-事案・争点・第1審、控訴審


アメリカ人のロナルド・アラン・マクリーン氏は、
昭和44年5月10日に日本に在留期間1年として入国し、
直ちに語学学校の英語教師として雇用されました(のちに無届で転職)。

他方、マクリーン氏は外国人ベ平連に所属し、
ベトナム反戦、出入国管理法案反対、日米安保条約反対等のデモや集会に参加していました。つまり、マクリーン氏は政治的活動を行っていた、ということです。

そして、マクリーンさんは入国から約1年後、
在留期間更新を当時の法務大臣に申請しました。

しかし、法務大臣は出国準備期間として120日間の更新を許可しましたが、
以後の更新は不許可。
マクリーンさんはこの処分の不服として、その取り消しを求めて提訴。
(ID:unMA01)
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争点と第一審・第二審
この事件の争点は以下の3つ。

外国人の出入国・在留の自由が保障されるか
在留の自由の法務大臣の裁量範囲
外国人の政治活動の自由の範囲
補足します。

第一審の際、
法務大臣は、マクリーンさんの在留更新不許可の理由について2点、
無届で転職したこと、政治活動を挙げました。

政治活動というのは、
もちろんベトナム反戦、出入国管理法案反対、日米安保条約反対等のデモや集会のことです。

マクリーン氏は、いわゆる「不良外国人」で且つ政治活動を行っていた、
だから、在留更新はなし、という当時の法務大臣の判断なのですね。

マクリーン氏は、この判断が不満だったわけです。
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第一審、控訴審
第一審では、法務大臣の在留更新許可について、

「相当広範な裁量権を有する」としながらも「日本国憲法の国際協調主義および基本的人権保障の理念にかんがみ・・・最良の範囲を逸脱する違法の処分」
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「(在留許可更新を認めるに足る)相当の理由があるときにこれを許可すれば足り、その際の判断は(法務大臣の)『自由な裁量』に任されており、在留期間中の政治活動を消極的資料とすることも許される」

と判示し、地裁の判断をひっくり返しました。

つまり、在留更新を許可するか否かは、法務大臣のさじ加減ひとつで、
在留期間中の(日本政府にとって好ましくない)政治活動をその判断材料としても構わないということです。

一審・控訴審は、
法務大臣の裁量の範囲を大きく採るか、小さく採るかの違いですね。

そして、その判断を政治活動としていることで、
事実上、外国人は政治的活動については制約を受けると判断しています。
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マクリーン事件-昭和53年10月4日最高裁判決
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判旨要約・解説
第一審、控訴審の過程でこのような争点をもって最高裁に判断が委ねられましたが、上告は棄却、最高裁は第二審を支持しました。

「憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり・・・憲法上、外国人は、我が国に入国する自由を保障されているものではないことはもちろん、・・・在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもない。・・・更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨である」。

「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、
政治活動の自由についても、我が国の政治的意志決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」。

外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎない・・・すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することは出来ない」。
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解説
便宜上、3つに分けてまとめてみましたが、
最初の段落では争点の1及び2についてです。順番が前後してしまいますが、2から。

わが国において、外国人の人権保障が及ぶ範囲について述べています。
いわゆる、外国人の人権享有主体性の問題の基本見解ですね。

裁判者は、わが国における、外国人の人権保障が及ぶ範囲について、

「権利の性質上、日本国民を対象としたものを除き、外国人にも人権保障が及ぶ」

としました。

つまり、
日本に在留する外国人にも日本国民と同様の人権保障が及ぶが、それは日本国民を対象にしている権利を除いての話であるということですね。

その上で、外国人の政治活動の自由については、原則保障されているとしますが、日本国民が影響を受けない程度との制約を設けています。ここであらためて国民主権原理が働いています。

やってもいいけど、日本国民が民主主義を行使するに当たって影響を受ける程度はダメだよ、ってことです。

1に戻って、外国人の出入国の自由について論じられています。

外国人には出入国及び在留の自由が保障されているわけではなく、
その判断は法務大臣の自由かつ広範な裁量に委ねられているものとしました。

外国人には出入国の自由がないとはいわないが、在留を含めて本人がそう希望したところで叶うわけではない、それは日本政府のさじ加減ひとつ、ということですね。

このへんのニュアンス感じて頂ければ幸いです。

3つ目の部分は、控訴審での判旨
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補足
日本でも外国人組織が政治活動を盛んに行っています。
外国人の政治活動は違法あるいは憲法違反だと述べておられるよう方がいらっしゃるようですが、これは正しくありません。

外国人による政治的活動について、それ自体は禁止されているものではありません。

外国人の政治活動そのものを禁止している法律は存在していませんし、
憲法違反か否かについては当判決が示している通りです。

しかし、憲法15条にも規定されている通り、
参政権は日本国民固有の権利とされています。

そのような性質が強い政治的活動を外国人が行うことによって、
日本国民の政治的表現活動が影響されてはならないという価値判断はあって然るべきだし、そういう趣旨で外国人の広義の政治活動を制限している法律(政治資金規正法)は存在します。

個人的には至極まっとうな理屈ではあると思いますが、
憲法学者からは批判が多い事件ではあります。
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人権と公共の福祉

1 人権と公共の福祉の二つの考え方


5章までは、人権とは広くみんなが生まれながらに持っていて誰にも侵されないもの、ということを説明しました。


しかし、人々が社会の中で他人と共に生きる以上、人権は無制限に保障されるわけではありません。
当然に限界があります。もしも個人の人権を無制限に認めていたら無秩序な社会になってしまいます。

例えば、ある人が自分には人権があるんだ、とあたりの木を切り倒して豪邸を造り、スポーツカーで暴走しているとします。
すると、他の人たちも同じことを行ないます。環境は破壊され、交通事故は絶えません。
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そこで、人権を制限します。人権を制限できるのは人権だけです。
人権と人権の衝突を調整するための実質的公平の原理が公共の福祉なのです。

しかし、何でもかんでも公共の福祉で人権を制限しては本末転倒です。
どんな権利がどの程度制限されるのか、を考えるのが、人権と公共の福祉の問題です
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人権と公共の福祉がぶつかりあう問題を調整する方法として、まず比較衡量論が行なわれました。

比較衡量論とは人権を制限することによってもたらされる利益と人権を制限しない場合に維持される利益とを比較して、どちらの方が利益が大きいだろうか、と比べる考え方です。

この考えを採用した判例に、博多駅テレビフィルム提出命令事件(9章二)や全逓東京中郵事件(本章二2)などがあります。
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りえきこうりょう【利益衡量】
法律の合理的な解釈のために、当事者や利害関係人の利益その他の公益などを比較すること


こう‐りょう〔カウリヤウ〕【衡量】の意味
意味
例文
慣用句
画像
出典:デジタル大辞泉(小学館)

[名](スル)
1 はかりにかけて重さをはかること。量をはかること。称量。

2 勘案すること。考え合わせること。「容疑者のプライバシーと報道の自由とを比較衡量する」
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この点で注目されるのが,比較衡量論と呼ばれる違憲審査の基準である。この基準は,すべての人権について,「それを制限することによってもたらされる利益とそれを制限しない場合に維持される利益とを比較して,前者の価値が高いと判断される場合には,それによって人権を制限することができる」というもので,個別的比較衡量とも言われる。昭和40年代の著名な二,三の最高裁判所の判例(たとえば,博多駅事件の最高裁大法廷決定,全逓東京中郵事件の最高裁大法廷判決等参照)において採用され,有力な見解となった。その後の多くの判例でも用いられている。
 比較衡量論は,公共の福祉という抽象的な原理によって人権制限の合憲性を判定する考え方とは異なり,個々の事件における具体的状況を踏まえて対立する利益を衡量しながら妥当な結論を導き出そうとする方法であるから,優れた一面を有していることは疑いない。しかし,この比較衡量論は,一般的に比較の準則が必ずしも明確でなく,とくに国家権力と国民との利益の衡量が行われる憲法の分野においては,概して,国家権力の利益が優先する可能性が強い,という点に根本的な問題がある。したがって,この基準は,同じ程度に重要な2つの人権(たとえば,報道の自由とプライバシー権)を調節するため,裁判所が仲裁者としてはたらくような場合に原則として限定して用いるのが妥当であろう。
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*判例における比較衡量論
 近時の典型的な例として,未決拘禁者の自由につき,逃亡ないし罪証隠滅の防止または内部の規律および秩序の維持という在監目的のため,「必要かつ合理的な範囲において一定の制限が加えられることは,やむをえない」とし,その制限が是認されるかどうかは,「右の〔在監〕目的のために制限が必要とされる程度と,制限される自由の内容及び性質,これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」と説いた1983年の判例(「よど号」ハイ・ジャック新聞記事抹消事件参照)が挙げられる。また,この判例を引用して,教科書検定が表現の自由を侵害するかどうかにつき,表現の自由は「公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがあり,その制限が右のような限度のものとして容認されるかどうかは,制限が必要とされる程度と,制限される自由の内容及び性質,これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」と判示した1993年の判例(最判平5.3.16)も,注目される。もっとも,比鮫衡量の基準が厳格な要件で適用されたのは,事前抑制的性格をもつ規制とか警察許可制の場合ぐらいで(前記の「よど号」事件,「北方ジャーナル」事件,薬局距離制限事件等),それ以外の場合には,比較街量がかなり形式的に,かつ,立法裁量を広く認める敬譲的な審査にとどまる形で,行われている。
**解釈方法としての比較衡量
 違憲審査の基準としての比較衡量論に対する本文に述べた批判は,憲法解釈の方法としての比較衛量,すなわち,各人権の性質の相違に応じて設定された違憲審査の基準(たとえば「明白かつ現在の危険」の基準)を具体的事件に適用する際に,基準の枠内において基準を具体化するために行われる比鮫衡量(利益衡量)を否定する意味をもつものではない。
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そこで、比較衡量論の次に、具体的な違憲審査の基準として主張されたのが、二重の基準論です。

二重の基準論とは、精神的自由権を制約する場合と、経済的自由権を制約する場合とで、裁判所の審査基準を変えてみよう、という考え方です。

経済的自由権では緩やかな審査基準を用います。
精神的自由権では厳格な審査基準を用います。

経済的自由で使われる緩やかな審査基準とは、「誰の目から見ても明らかに違憲という場合以外は、裁判所は違憲という判断をしない」というものです。

精神的自由で使われる厳格な審査基準とは、「ここを越えたら違憲だという線を少しでも越えたら即、違憲の判断を下す」というものです。
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精神的自由と経済的自由とで審査基準が異なるのは2つの理由があります。

1つ目は、統治機構の基本をなす民主政の過程を守るためです。
2つ目は、裁判所の審査能力との関係があるためです。

1つ目の統治機構の基本をなす民主政の過程を守るため、とはどういうことかを説明します。

民主政の過程を支える精神的自由はこわれ易く傷つきやすい権利です。
したがって精神的自由権は裁判所がしっかりと守らなければならない権利なのです。
民主政とは国家の主権が国民にあり、国民の意思に基づいて政治が行なわれることをいいます。

例えば、現在コメは輸入が制限されています。これは経済的自由権の制限です。
しかし、コメの輸入の制限をなくしたい、コメの輸入を自由化させたい、と思っている人がいるとします。

これを国に申し出ましたが、その申し出は断られてしまいました。
この場合、経済的自由権は制約されてしまいましたが、民主政の過程は守られています。

再度、申し出ることもできますし、コメでなく別の物の輸入自由化を申し出ることもできます。

もし、表現の自由が制限されてしまったらどうなることでしょう。

表現の自由は精神的自由権です。これは精神的自由権の制限です。

例えば国が制定した法律に不満を述べたら処罰する、という法律ができてしまったとします。
すると、国民は国に対して文句を言えません。
この場合、精神的自由権が制約されてしまったため、民主政の過程が守られていません。

国民は誰も発言できなくなり、国は好き勝手なことをしてしまいます。
民主政の過程は一度壊れてしまうと回復することが難しいのです。
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2つ目の裁判所の審査能力との関係があるため、とはどういうことかを説明します。

経済的自由の規制については、社会・経済政策の問題が関係することが多いのです。

社会・経済政策の問題を扱うには専門知識を必要とします。
裁判所はそうした社会・経済政策関係の専門知識がなく審査能力が乏しいのです。

よって裁判所としては、とくに明白に違憲と認められないかぎり、立法府の判断を尊重します。
裁判所は社会・経済政策関係には口出ししない、というわけです。

先ほどの例と同様にコメの輸入を自由化させたいと思っている人がいるとします。
これは経済的自由権の制限です。その人は輸入自由化を国に申し出ましたが、その申し出は断られてしまいました。

国側にも日本の農業の守るため、という理由があったのです。
国はその人の申し出を断る際に専門家の出した統計データや調査報告書を理由の裏づけとして挙げました。

社会・経済政策関係の専門知識がないと、これらデータの良し悪しがわかりません。
裁判所はこうした社会・経済政策関係の専門知識がないため、口出しすることができない、というわけです。

しかし、もし精神的自由権が制限されてしまった場合は裁判所のお出ましです。
精神的自由権に関する制限は社会・経済政策の専門知識がない裁判所も審査できます。

先ほどの例と同様に、国が制定した法律に不満を述べたら処罰する、という法律ができてしまったとします。
国民は裁判所に駆け込み、こんな不当な法律を廃止してくれ!と訴えました。

この場合、合憲か違憲かを判断するのに社会・経済政策の専門知識は必要ありません。
裁判所の裁判官は審査して違憲判決を下すことができます。
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2つ目の裁判所の審査能力との関係があるため、とはどういうことかを説明します。

経済的自由の規制については、社会・経済政策の問題が関係することが多いのです。

社会・経済政策の問題を扱うには専門知識を必要とします。
裁判所はそうした社会・経済政策関係の専門知識がなく審査能力が乏しいのです。

よって裁判所としては、とくに明白に違憲と認められないかぎり、立法府の判断を尊重します。
裁判所は社会・経済政策関係には口出ししない、というわけです。

先ほどの例と同様にコメの輸入を自由化させたいと思っている人がいるとします。
これは経済的自由権の制限です。その人は輸入自由化を国に申し出ましたが、その申し出は断られてしまいました。

国側にも日本の農業の守るため、という理由があったのです。
国はその人の申し出を断る際に専門家の出した統計データや調査報告書を理由の裏づけとして挙げました。

社会・経済政策関係の専門知識がないと、これらデータの良し悪しがわかりません。
裁判所はこうした社会・経済政策関係の専門知識がないため、口出しすることができない、というわけです。

しかし、もし精神的自由権が制限されてしまった場合は裁判所のお出ましです。
精神的自由権に関する制限は社会・経済政策の専門知識がない裁判所も審査できます。

先ほどの例と同様に、国が制定した法律に不満を述べたら処罰する、という法律ができてしまったとします。
国民は裁判所に駆け込み、こんな不当な法律を廃止してくれ!と訴えました。

この場合、合憲か違憲かを判断するのに社会・経済政策の専門知識は必要ありません。
裁判所の裁判官は審査して違憲判決を下すことができます。
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行政(ぎょうせい、英: administration)とは、立法および司法と並ぶ国家作用の1つで、国家が国民を支配する作用のこと。法律や条例などにより決定された内容を実現することである。

定義編集
行政学上の定義編集
「政治体系において権威を有する意思決定者によって行われた公共政策の決定を実行することに関連する活動」[1]などと定義される。

行政法学上の定義編集
法律学においては立法や司法と並ぶ一つの国家作用である[2]。立法権、司法権と並び、統治権の一つとして、行政を行う権能を行政権という。軍事作用は含まれない。

実質的意義の行政編集
国家作用が作用自体の性質という点に着目して立法、司法、行政に三分類されるとき、これらはそれぞれ実質的意義の立法、実質的意義の司法、実質的意義の行政と概念づけられる[3]。

実質的意義の行政とは何かという点については、現代の行政は複雑で多岐な内容にわたっており、これに必要かつ十分な定義を与えるのは、容易でない。そのため、行政の定義については、内容的に定義することを放棄し、消極的に定義するにとどまる控除説(消極説)と、なんとか行政の内容を積極的に定義してその内容を明らかにしようと努める積極説が対立する。

控除説(消極説)
日本の公法学上は、国家作用のうち、立法作用と司法(裁判)作用を控除した残余の作用を指すとする見解(控除説、消極説)が支配的である。
このような控除説による説明は、内容的な定義づけを放棄しており、意味がないようにも見える。しかし、君主が有していた包括的な国家権能のうちまず立法権が議会に移譲され、その残りである執行権のうち司法権がさらに分化され、君主に残された権能が行政とされたという沿革に対応している。さらに、現実問題としても、行政と観念される作用には様々なものがあり、それらを漏れなく包括する必要もある。したがって、控除説は一般的に支持されている。
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行政組織法編集
行政機関編集
行政機関とは、行政主体のために行政を実施する機関をいう。権限の帰属で捉えた機関概念である。
意思決定機関
行政庁:意思を決定し、これを外部に表示する権限を有する。
独任制−各省大臣・地方自治体の長
合議制−公正取引委員会 行政委員会
法令の適用による法人またはその機関
例:弁護士等への懲戒を行う弁護士会・日本弁護士連合会
諮問機関:行政庁から諮問を受け意見を申し述べる。諮問機関の意見に法的拘束力はない。
法制審議会、各種審議会、中央社会保険医療協議会
参与機関:意思決定権限はないが、議決に基づき行政庁の意思決定がなされる。参与機関の意見には法的拘束力がある。
電波監理審議会、検察官適格審査会
監査機関:行政機関の事務処理について監査する。
会計検査院、監査委員
執行機関:行政目的達成のために、行政庁の命を受けて必要な実力行使をする機関をいう。
警察官、消防職員
補助機関:行政庁その他の行政機関の職務を補助するため、日常的な事務を遂行する機関をいう。
副大臣、大臣政務官、局長
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国家行政組織編集
日本国憲法
内閣
行政権は、内閣に属する(第65条)。
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する(第66条)。
会計検査院 - 行政機関であるが、憲法および会計検査院法により内閣からの独立が保障されている(第90条第2項・会計検査院法第1条)。
内閣法
第2条第1項
内閣は、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣をもつて、これを組織する。
第4条第1項
内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
内閣府設置法・各省(庁・委員会)設置法等
日本では、憲法第65条で、行政権は内閣に属すると定めている。これは、一般的には行政権が内閣総理大臣一人に属しているのではなく、内閣総理大臣と国務大臣の合議体からなる内閣に帰属しているということを意味すると理解されている(憲法第66条第1項・内閣法第2条第1項参照)。ただし、例えば内閣総理大臣が自己の任命式を終えた後、人事熟考のために時間をかけて組閣を行うなどの場合、その間において、内閣総理大臣のみをもって内閣が組織されることがありうる(いわゆる一人内閣。憲法第68条・第71条参照)。
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行為形式編集
行政立法編集
行政立法は、行政機関によって定立された一般規範またはその立法行為である。
実質による種類
法規命令
国民の権利義務にかかわる法規たる性質を有するもの
(例)政令、内閣府令、省令、会計検査院規則、人事院規則、地方公共団体の長や教育委員会等の規則
執行命令
憲法・法律等上級の法令を実施するための具体的細目・手続事項
(例)政令・府令・省令・府や省の外局である委員会の規則・会計検査院規則・人事院規則などの命令。
委任命令
法律等上級の法令に基づき発せられる。
(例)政令の委任に基づく省令、委員会規則
行政規則
訓令
通達
告示
形式による種類
政令
府省令
外局規則
独立機関規則
行政規則
行政行為編集
詳細は「行政行為」を参照
法律行為的行政行為
命令的行為
下命、許可、免除
形成的行為
特許、認可、代理
準法律行為的行政行為
確認、公証、通知、受理
附款
行政契約編集
行政契約とは、行政目的を達成するための契約。

行政指導編集
行政指導とは、指導・勧告・助言等で処分に該当しない行為。

行政計画
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行政行為(ぎょうせいこうい)とは、行政庁が、行政目的を実現するために法律によって認められた権能に基づいて、一方的に国民の権利義務その他の法律的地位を具体的に決定する行為[1]。合意に基づくことなく、国民の権利義務に直接的・観念的影響を与える。

自己の名で行政行為を行う行政機関を行政庁という。行政庁は行政行為の法的責任を負う。ある行政行為について誰が行政庁となるかは個別的に判断される。その行政行為をする権限を行政機関に与える旨の法令の規定に明示されている場合もあれば、その法令の解釈によって定まる場合もある。行政庁の例としては各省庁の大臣・長官、地方公共団体の首長、各種の委員会などがある。なお、行政機関と同義で行政庁という用語を用いることも多い。後述の各最高裁判例には、「行政庁の処分」は行政庁の法令に基づく行為の全てを意味するわけではないとする部分があるが、ここでいう「行政庁」は行政機関の意味である。

行政行為(ドイツ語:Verwaltungsakt)の概念は「行政行為の父」と呼ばれるドイツの行政法学者オットー・マイヤーが確立した。かつての日本の行政法学は行政行為論を中心に展開した[1]。
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ふかん【付款・附款】
法律行為から生ずる効果を制限する目的で、表意者が法律行為に際して特に付加する制限。条件・期限などがその例。
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「行政法は憲法を具現化したもの」



byフリッツ・ヴェルナー



行政法とは、憲法の中にうたわれた基本的人権の保証などの理念に活かしたものが「行政法」です。よって行政法には、民法や憲法などの法律と異なり、「行政法」という統一的法典はありません。
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このため、行政法という法律はありません。しかし、行政に関する法は多数存在し、その総称が、「行政法」と呼ばれます。(例)国有財産法、道路交通法、河川法、農地法、特許法、建築基準法、土地区画整理法、国土利用法、都市計画法、食品衛生法、年金法、郵便法、生活保護法、医師法、予防接種法etc...



その結果、行政法の対象は非常に広く、主に「行政組織法」、「行政作用法」、「行政救済法」と3つに分類されます。これが行政法の全体構造となります。



これら3つは、行政法の定義という項目で詳しく解説してますので、そちらも参考にして下さい。
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行政法の特質として、公益優先性、公権力性があります。公益優先性とは、私人の活動は「私益」に関わるのに対し、行政活動は「公益」に関わります。そのため、行政法は「公益」を保護するための特別な規定を置いています。



つまり、個人の利益ではなく全体の利益を保護するために別の規定がある、ということです。それが、公益優先性といいます。



次に、公権力性とは国民の意思に関係なく、一方的・強制的に権力を用いて活動を行うことをいいます。例えば、課税賦課処分や土地収用など、やむを得ずに個人の利益を奪う性質がある、ということです。
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行政法の法源


まず、法源とはどういうものか?



「法源」とは、法がどのような形式で存在しているか、という問題です。例えば行政法でいえば、行政法は成文法という形で存在している、不文法によって存在している、ということです。ちなみに、行政法では成文法が原則であり、不文法は補充的法源としての役割にとどまります。

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成文法源


成文法源とは、実際に文書として制定されているものから基づかれている法源です。具体的に、憲法、条約、法律、命令、条約という5つの成文法があります。





憲法


憲法は、国家の基本法です。そして、行政法は、憲法の定める基本的な価値を具体的にしたものです。よって、行政に関するあらゆる法は、憲法の基本原理に従わなければなりません。



最も重要なのは、憲法は行政法の法源のなかでも、最上位の法源であるということを理解していなければなりません。(憲法98条)



日本国憲法98条1項:この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
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しょうちょく
【詔勅】
天皇が公に意思を表示する文書。詔書と勅書と勅語と。
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法律


法律とは、国家により制定される法規範の存在形式のことをいいます。具体的にいうと、私たち国民の権利・義務に関する一般的規律は国家が制定する、ということです。法律は、行政法の最も中心的な法源です。





命令


命令とは、行政機関により制定される法をいいます。(例)政令、省令、規則、内閣府令、施行令



ここで、ちょっと法律を勉強されている人なら、憲法41条により国会が唯一の立法機関なのでは?、という矛盾に声があがるかもしれません。しかし、「憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること」、は憲法73条6号により認められてますので、そこのところは気にしなくて大丈夫です。
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条約


国家間の、文書による合意を条約といいます。



国際法上の法形式ではありますが、国内行政法の法源にもなります。その理由は、条約が国内法的効力があり、それが行政にかかわるものであれば、その条約は行政法の法源となるからです。





条例


憲法94条は、地方公共団体に条例制定権を認めています。よって、地方公共団体の議会が制定する法を条例といいます。
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不文法源


不文法源とは、実際に文書として制定されておらず、暗黙の了解のような観念から基づかれている法源です。具体的に、慣習法、条理という観念があります。





慣習法


まず慣習とは、人が行為をおこなう際に、自然と暗黙の了解で従うようになった一定の様式を慣習といいます。そして、慣習が民衆の確信に支えられ、法として効力を認められるまでに高められたものを慣習法といいます。例えば、法令の交付は官報ををもってすること、が慣習法として認められてます。





条理


条理とは、「社会通念」ともいわれるものです。つまり、法令上明示されてはいませんが、一般に正義にかなう普遍的原理と認められるような原則をいいます。よって、法の一般原則ともいえます。(例)比例原則(憲法13条参考)、平等原則(憲法14条1項)、信義誠実の原則(民法1条2項)



比例原則:行政目的を達成するとき、必要最小限を超える不利益を課する手段を用いてはならない原則です。平等原則:同じ状況下の人達がいる。その中で特定の人を、合理的理由なくして差別することを禁止する原則です。信義誠実の原則:簡単にいうと、信頼関係をなくす行為をしてはならない原則です。
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行政法の定義




行政法とは「行政の組織及び作用並びにその統制に関する国内公法」by田中二郎



行政法とは、上で話したように「行政法」という名称の法典はなく、抽象的な法理論です。そこで行政法は、行政の組織にかかわる「行政組織法」、行政の作用にかかわる「行政作用法」、そしてその統制にかかわる「行政救済法」の3つの分野に分けられます。

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行政法の定義




行政法とは「行政の組織及び作用並びにその統制に関する国内公法」by田中二郎



行政法とは、上で話したように「行政法」という名称の法典はなく、抽象的な法理論です。そこで行政法は、行政の組織にかかわる「行政組織法」、行政の作用にかかわる「行政作用法」、そしてその統制にかかわる「行政救済法」の3つの分野に分けられます。

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婚姻関係の破綻(民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」)とは、簡単にいうと、@夫婦が婚姻継続の意思をなくしてしまい、A夫婦としての共同生活を回復する見込みがない状態をいいます。

このような状態にあるかどうかを色々な要素をふまえて判断することになります。ただし夫婦関係のことですから、夫婦にしかわからない事情が多く、第三者からみて簡単に判断できることではありません。

以下では、判断にあたって考慮される主な事情をご紹介します。
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(1)別居の有無
別居の有無

不貞行為以前に、夫婦が既に別居していたという事実は、婚姻関係破綻を基礎づける最も重要な事情です。

別居の期間が相当長期間にわたっているような場合は、破綻がより認められやすくなるといえるでしょう。

もっとも、長期間別居していても、仕事の都合によりやむを得ず別居している場合もありますし、頻繁に夫婦の時間を設けている場合もあるでしょう。

したがって、別居に至った事情や、別居中の夫婦の生活状況など、具体的事情を考慮する必要があります。

別居について正当な理由がある場合は、基本的に別居があったとしても婚姻関係の破綻が認められないのは当然のことです。

たとえば、別居についての正当理由がある場合とは以下のような例があります。

子どもを進学校に入れるため、妻と子どもが夫と一時的に別居することなどはよく行われていることです。 また、仕事の関係での配偶者の単身赴任、病気による配偶者の長期入院・転地療養などは、止むを得ない事情によるものですから、別居についての正当理由があるものと言えます。

このように正当な理由がある別居の場合、離婚に向けた別居をいち早く進める必要があります。
このような別居が始まらないといつまで別居していても、婚姻関係の破綻が認められないことになりかねません。

当事務所で担当したケースでは、元々海外赴任であった夫が一時帰国し、妻に対して離婚を切り出し、その後、離婚協議を複数回行い、その後に離婚調停を申し立てたというものがありました。
このケースでは、正式に離婚を切り出した時点から離婚に向けた別居が開始したものと裁判所は判断しました。

このように協議を持つことがどうしてもできない場合は、離婚の意思表示を内容証明郵便で行うとか、離婚調停を申し立てることが必要となると考えます。
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(2)離婚に関する協議の有無
不貞行為以前に、既に夫婦間で離婚協議がされていた場合には、破綻が認められやすくなります。 ただし、夫婦の一方が離婚という言葉を口にしていた、という程度では足りず、具体的に離婚条件につき協議していたなどの事情が必要でしょう。

お互いの両親を交え、離婚したい理由をしっかり述べ、また養育費や財産分与など離婚の条件についてしっかりと協議とするべきです。

離婚協議を相手方が望まないケースは当然あるでしょう。どうしても相手方が協議に応じてくれない場合は、離婚調停を申し立てることが良いでしょう。
離婚調停を申し立てて調停期日でいろいろなことを話し合っていれば破綻は認められやすくなります。また、仮に相手方が調停期日に来なかったとしても、相手方に話合いの機会を与えたという実績にはなるでしょう。

別居開始間も無く1回目の離婚調停を行い、不調となって数年間別居が続いた場合、1回目の離婚調停が申し立てられていることによって、婚姻関係の破綻がより認められやすくなるという影響もあると考えられます。

このようにしっかりと協議や調停を行うことは決して無駄では無いことを覚えておいてください。
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3)夫婦間の接触の有無
同居はしていても、全く夫婦間の接触がない場合には、破綻が認められやすくなります。

たとえば、互いに顔をあわせることもなく、共働きで生活費は各自が負担、居室も別でただ同じ家で生活しているだけ、という場合です。

近年、このような家庭内別居の相談が多くなってきました。

たしかに接触が無い点では別居と変わらないと思われるかもしれませんが、接触があったか無かったかは家庭内の事情ですので、外部から客観的に把握することは難しいです。

裁判所は家庭内別居の事実を認定できないと、婚姻関係が破綻したとの認定を躊躇するでしょうから、確実に離婚したいと思っているならば、家を出るべきです。

そして、別居した後で、家に戻ったり、一緒に食事をしたり、接触をなるべく避けるようにする必要があります。そうしないと、離婚に向けた別居をしているのかどうか分からなくなるからです。

家に残した子供と会いたいから、相手方と一緒に子供とどこかに行くとか、一緒に食事をとるということはあるのかもしれません。場合によってはその日だけは家で泊まるということもあるかもしれません。子供に会うだけなら問題はありませんが、相手方と接触するのは、離婚をするという視点からはマイナスと言わざるを得ませんので、是非注意して頂きたいところです。

以上、色々と書きましたが、「こういった事情があれば必ず婚姻関係破綻といえる」という明確な基準があるわけではありませんので、婚姻関係の破綻が問題となりそうな場合は、弁護士にご相談されることをおすすめします。
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不貞行為が原因で精神的苦痛を受けた場合、その精神的苦痛(を金銭評価したもの)が「損害」になります。これが「慰謝料」と言われるものですが、そのほかにも一定の損害賠償が請求可能です。

以下、不貞相手に請求できる損害として、どのようなものがあるかご説明します。

1 慰謝料
精神的苦痛の診断書

精神的苦痛の程度は、目に見えるものでも数値化できるものでもありませんので、裁判所が様々な事情を総合評価し、金銭評価します。1つの精神的苦痛の程度を示す要素として、精神疾患の発症があります。

たとえば不眠、食欲不振などの体調不良や、無気力になるなどの精神面での不調に悩まされている場合には、ぜひ一度医師の診察を受けましょう。

心身の不調の治療をしてもらうという意味がることはもちろん、診断書によって、精神的苦痛の程度を示すことにつながります。
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弁護士費用
交渉や調停では現実的にはなかなか難しいですが、不倫の慰謝料請求で訴訟まで行う場合には、不倫と相当因果関係のある弁護士費用も「損害」として請求することが可能です。

弁護士費用という名前ですが、現実に弁護士に支払った金額が、そのまま認められるというわけではありませんので、ご注意ください。一般的には、慰謝料額の10パーセント程度(慰謝料が300万円と認定された場合、弁護士費用の額は30万円となります。)が認められます。
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探偵事務所などの調査費用
探偵事務所などの報告書

不貞行為の証拠については、探偵事務所の報告書があることをご説明しましたが、訴訟になった場合には、この調査に支払った費用についても、「損害」として請求する余地があります。

ただし、必ずしも損害として認められるわけではありませんし、認められる場合であっても、かかった費用がそのまま認められるわけでありません。

したがって、訴訟を行えば相手方から回収できるだろう、という見込みで調査を依頼することはおすすめしませんので、ご注意ください。
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探偵事務所などの調査費用
探偵事務所などの報告書

不貞行為の証拠については、探偵事務所の報告書があることをご説明しましたが、訴訟になった場合には、この調査に支払った費用についても、「損害」として請求する余地があります。

ただし、必ずしも損害として認められるわけではありませんし、認められる場合であっても、かかった費用がそのまま認められるわけでありません。

したがって、訴訟を行えば相手方から回収できるだろう、という見込みで調査を依頼することはおすすめしませんので、ご注意ください。
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不倫】高額の慰謝料を回収した事例
依頼者:男性(40代)
相手方:男性(50代)
子ども:なし
事案内容(相談までの背景)
妻が職場の既婚者である上司と数年にわたり交際していたことが発覚したということで、ご相談にみえました。
妻は、上司とのメールのやりとりなど、証拠となるようなものをすべて削除していましたが、夫が問い詰めたところ、上司との交際を認め謝罪しました。
夫は、妻との離婚を決意していましたが、離婚するか先に不倫相手に対し慰謝料を請求するか迷っているとのことで、ご相談にみえました。


当事務所の活動結果(受任から解決まで)
不倫の客観的証拠が少なかったので、離婚する前に、妻に対し、交際期間や、会った回数、一緒に出かけたところなどを記載した書面を作成してもらうようにアドバイスしました。
妻が書面を作成したところで、まず不倫相手の男性に対し、慰謝料請求を行うこととし、内容証明を送付しました。

相手方の男性は、弁護士に依頼し、慰謝料を支払う旨回答してきましたので、弁護士と慰謝料金額につき交渉しました。交際期間が長期にわたったことなどから、最終的にはかなり高額の慰謝料を回収することができました。
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解決のポイント(所感)
bengosi不倫相手から慰謝料を回収するよりも先に離婚してしまうと、元配偶者から証拠を得ることは困難になりますので、離婚と不倫相手に対する慰謝料請求の順番についてはよく検討する必要があります。
本件では、不倫相手から不貞行為を認めて謝罪する旨の示談書も取り付けることができ、妻との離婚においても、夫に有利な内容で合意して、協議離婚することができました。
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民法第770条
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
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慰謝料を請求できる場合
代表的なケースは相手に不貞(浮気・不倫)行為があった場合です。

離婚の慰謝料は、法律で定められている離婚事由を基準として考えられており、配偶者の浮気や不倫などの不貞行為(有責行為)などが原因で離婚に至るような場合に、精神的苦痛に対する損害賠償として配偶者と浮気・不倫相手に請求することができます。

法律で定められている離婚事由は以下の5つとなります。
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こんな場合にも慰謝料を請求することができます

精神的・肉体的虐待
(DV・モラハラなど)

DVを受けている
モラハラを受けている
(暴力行為を受けた側に特別な落ち度がなく、DV、モラハラがはじまった)
セックスレス

セックスレスの期間が長期(3年以上)に及ぶ
夫婦間ではセックスレスである一方、浮気相手(不倫相手)とはセックスしていた
悪意の遺棄

生活費を渡さない
理由もないのに同居を拒否する(帰ってこない)
健康なのに働かない
専業主婦(専業主夫)なのに家事をしない etc.
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慰謝料が請求できない(請求が認められない)場合
慰謝料は、離婚をするからといって必ず請求できるものではありません。

「不貞行為(浮気や不倫などの有責行為)より前に婚姻関係がすでに破綻していた」
「性格の不一致や価値観の違いが離婚理由で、夫婦どちらの責任ともいえない」
「配偶者の不貞行為(浮気や不倫などの有責行為)を理由として慰謝料を請求し、すでに慰謝料が支払われ、受け取っている」
などの場合は、慰謝料が請求できない、または慰謝料の請求が認められない場合があります。
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離婚の慰謝料には、養育費の算定表のような明確な基準はありません。
離婚の慰謝料の金額は、離婚の理由や婚姻期間、子どもの有無、相手方の社会的地位や資力などの事情で変わるためです。
しかしながら、実際の交渉では過去の裁判例が参考とされています。例外もありますが、たとえば、不貞行為(浮気や不倫などの有責行為)が離婚の理由である場合の慰謝料は、200万円〜300万円でまとまることが多い傾向にあります。
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慰謝料の増額

慰謝料の金額は、精神的苦痛(どれだけ悲しい思いをしてきたか、つらい思いをしてきたか)を証明することで、増額の可能性があるでしょう。
精神的苦痛を受けたことにより、病院へ通院することを余儀なくされたなどの事情は、裁判でも重要なポイントとなりますので、できるだけ証拠となりうるものを集めておいてください。
同時に、証拠をいつどのタイミングで提示するかも含めた「交渉」も重要になってきます。
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離婚慰謝料の算定要素
離婚の慰謝料は、離婚に至るまでの様々な事情を考慮して総合的に判断されます。

算定要素として、以下のような要因が考慮されます。

一般的要因
離婚に至った原因や動機
浮気・不倫などの不貞行為(有責行為)の原因や態様、程度
婚姻関係(夫婦関係)の破綻に至る経緯
精神的苦痛や身体的苦痛の程度
婚姻に至る経緯、実情
婚姻期間(同居期間・別居期間)
未成年の子の有無、人数
親権、監護権の帰属
財産分与の金額etc.
資産状況
社会的地位 etc.
請求者側の要因
性別
年齢
資産
初婚、再婚の別
自活能力
妊娠中絶の有無
健康状態(精神疾患など) etc.
被請求者側の要因
性別
年齢
職業
資産
収入
婚外子の出生、認知の有無
婚姻中における贈与
生活費(婚姻費用)不払いの有無
夫婦関係修復の努力の有無 etc
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不貞相手(浮気相手・不倫相手)のみに慰謝料を請求
例:慰謝料の金額が300万円の場合

不貞相手(浮気相手・不倫相手)のみに慰謝料を請求
不倫相手に300万円の請求が可能です。

離婚をする場合、浮気相手・不倫相手に慰謝料を請求することができます。慰謝料請求をすることで、謝罪と反省を求め、婚姻関係破綻の責任と重大さをわかってもらうことができる場合があります。また、離婚をせずに慰謝料を請求することで、配偶者との関係を断つことを求めることもできる場合があります。
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離婚の慰謝料請求の時効
離婚の慰謝料請求は、3年で時効となりますので、原則、離婚が成立した日から3年を経過してしまうと、慰謝料を請求することができません。もし、時効完成間近である場合には、時効中断の手続をとる必要があります。

「離婚が成立した日」とは?

協議離婚 → 離婚届けが受理された日
調停離婚 → 調停が成立した日
審判離婚 → 審判が確定した日
裁判離婚 → 判決が確定した日
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慰謝料を請求する側の年齢が高いほど、慰謝料が高額となる傾向があります。
職業
慰謝料を請求される側の社会的地位が高かったり、収入が高いと思われる職業に就いている場合、慰謝料が高額となる傾向があります。
養育が必要な子の数
養育が必要な子の数が多いほど、慰謝料が高額となる傾向があります。
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慰謝料を請求するための有効な証拠とは
より高額な慰謝料を請求するためには、有効な証拠(使える証拠)が必要です。

5.1不倫などの不貞行為を立証する有効な証拠
写真・動画
配偶者と不倫相手がラブホテル※に出入りしている写真や動画。
※ビジネスホテルなどは、「打ち合わせ」などの言い訳ができてしまう可能性があるので、必ずしも有効な証拠とはなりません。

メール・SNS・手紙
有責行為(結婚している人との浮気、不倫などの不貞行為)があったと思われるような、たとえば、性交渉の感想や準備、要望などの履歴、または保存データなど。

念書
配偶者本人、不倫相手が不貞関係の事実を認めた念書。

なお、配偶者本人が認めても、不倫相手が認めない場合は、配偶者と不倫相手のどちらが信用できるか五分五分の争いとなるため、有力な証拠にならないことがあります
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減額理由@:離婚していない
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償です。しかし、離婚しない場合は精神的苦痛は比較的少ないと判断され、夫婦関係を継続するときは慰謝料相場は低くなる傾向にあり、慰謝料減額の理由になります。

慰謝料請求の通知書には、不倫が「平穏な婚姻生活を侵害した」、「夫婦関係が破綻した」等と記載されている場合があります。

しかし、明確に離婚したと書いていない場合は離婚していない可能性が高いです。


離婚していれば慰謝料請求する側に有利な事実なので記載するはずです。離婚したと記載がない場合は離婚したかを確認し、離婚していなければ慰謝料減額の理由として主張しましょう。

離婚していない場合、慰謝料減額の交渉が成功する可能性が高くなります
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減額理由A:不倫期間は短く、肉体関係の回数は少ない
慰謝料金額は離婚したか否かが重要であると一般的に言われます。しかし、慰謝料減額の理由はこれだけではありません。



私たちは、500件を超える裁判例を分析し、以下のとおり考えております。

不倫関係が短いこと(肉体関係が少ないこと)も請求された慰謝料を減額する重要要素である



概ね不倫期間が数か月から半年以内であり、肉体関係を持った回数が10回以内程度であれば慰謝料の減額交渉が成功する可能性が高くなります。他方で、肉体関係を伴う不倫期間が1年以上の場合は不倫期間は長期間であると判断されるため、慰謝料の減額交渉でその他の慰謝料減額事由を主張する必要があります。
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減額理由B:不倫に消極的だった
あなたが不倫に消極的だったことは、慰謝料減額の理由となります。慰謝料は夫婦関係の平穏を侵害されたことの損害賠償です。しかし、夫婦関係の維持については、配偶者がいるのに不倫をした不倫相手に主たる責任があり、あなたの責任は副次的なものだからです(東京高裁昭和60年11月20日判決等)。

例えば、職場の上司である既婚男性から積極的なプロ―チを受けて不倫関係が始まったような場合、あなたは不倫に消極的・受け身だったことを慰謝料の減額理由として主張できます。



但し、強姦のような特別な事情がない限り、慰謝料を全く支払わないことは難しいでしょう。また、慰謝料減額を主張するのではなく、向こうが積極的なアプローチをしたことを理由に慰謝料の支払いを完全拒否すると、相手方を怒らせて裁判を起こされる可能性もあるので注意が必要です。支払いを完全拒否するのではなく、慰謝料の減額理由と理解すべきでしょう。
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71
減額理由C:求償権を放棄する
求償権の放棄は慰謝料減額理由です。あなたが適正な慰謝料を全額支払った場合、一般的には支払った慰謝料の半分以上を不倫相手に支払うよう求めることができます(求償権)。


不倫相手の夫婦関係が継続するときは家計が同一なので、慰謝料を全額貰っても半分以上を求償権で不倫相手が家計から払うことになります。そのため慰謝料を全額貰う意味がありません。そこで、求償権を放棄する代わりに、半分程度の慰謝料を支払うだけで解決できる場合があります。これが求償権放棄が慰謝料減額事由となる理由です。
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72
非違行為
一般
非違行為 ひいこうい

目次
非違行為とは

非法行為と違法行為のこと。行政職員などが、公的もしくは私的に遵法していない行為をさす。
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73
上告人
(読み)じょうこくにん
世界大百科事典内の上告人の言及
【原告】より
…相手方は被告であり,原告・被告の間の訴訟に加わってくる者は訴訟参加人(訴訟参加)と呼ばれる。上訴,すなわち控訴,上告を提起する当事者は,それぞれ控訴人,上告人と呼ばれるが,これは原告と同一人とは限らない。原告が勝訴して,敗訴した被告が上訴した場合,上訴審では原告が被控訴人・被上告人となるわけである。…
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74
じょうそ
【上訴】
《名・ス自》
1.
上の者、特にお上(かみ)に訴えること。
2.
法律
裁判に対する不服申立て方法の一つ。上級の裁判所に対して行う。控訴・上告・抗告の総称。
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75
上級裁判所
(読み)ジョウキュウサイバンショ
デジタル大辞泉の解説
じょうきゅう‐さいばんしょ〔ジヤウキフ‐〕【上級裁判所】
上級審の裁判所。第一審の地方裁判所に対し、控訴審にあたる高等裁判所など。
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76
こうとう‐さいばんしょ〔カウトウ‐〕【高等裁判所】
下級裁判所の中で最上位の裁判所。東京・大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌・高松の8か所にある。高裁。
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77
かきゅう‐さいばんしょ〔カキフ‐〕【下級裁判所】
1 最高裁判所以外の裁判所の総称。高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の4種がある。
2 上級審の裁判所の下にある下級審の裁判所。高等裁判所に対する地方裁判所など。
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78
ちほう‐さいばんしょ〔チハウ‐〕【地方裁判所】
下級裁判所の一。原則として第一審を担当し、判事と判事補とで構成される。裁判は一人の裁判官によって行われるが、重要な案件については三人の裁判官の合議制による。各都府県に1か所ずつ、北海道に4か所ある。地裁。
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79
さいばん‐かん〔‐クワン〕【裁判官】
裁判所の構成員として裁判事務を担当する国家公務員。最高裁判所長官・最高裁判所判事・高等裁判所長官・判事・判事補・簡易裁判所判事の6種がある。憲法と法律にのみ拘束され、良心に従い独立してその職権を行う。
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80
かんい‐さいばんしょ【簡易裁判所】
最下級の裁判所。訴額140万円以下の請求にかかる民事事件、一定の軽い刑の科せられる刑事事件などの第一審を取り扱う。簡裁。
[補説]裁判所法等の改正により、平成16年(2004)4月から、簡易裁判所で扱う民事事件の範囲が拡大され、請求の上限が90万円から140万円に引き上げられた。
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81
かてい‐さいばんしょ【家庭裁判所】
家庭に関する事件の審判・調停および少年保護事件の審判などを行う下級裁判所の一。昭和24年(1949)少年審判所と家事審判所とを統合して設置された。→家事審判 →家事調停
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82
こうこく
【抗告】
《名・ス自》裁判所(または行政官庁)の決定・命令に対する不服を上級の裁判所(または官庁)に申し立てること。
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83
そしょう
【訴訟】
《名・ス自》裁判所に訴えて、権利・義務の法律的確定を求めること。その手続き。 「刑事―」
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84
けいぞく
【係属・繫属】
《名・ス自他》
1.
つなぎつけること。つながりをつけること。
2.
法律
ある訴訟が裁判所で取扱い中であること。


訴訟係属
そしょうけいぞく
saisine; Rechtshängigkeit
(1) 民事訴訟法上,ある事件が裁判所で訴訟中であること,すなわち特定の裁判所が特定の訴えについて審判中である状態。訴状が被告に送達された時点から開始する。訴訟係属の効果として,一定の訴訟行為が許され,あるいは逆に許されなくなる。前者に関するものとしては,訴訟参加,訴訟告知,訴えの変更,反訴などがある。後者に関するものとしては,二重起訴の禁止がある。 (2) 刑事訴訟法上も同意義であって,公訴提起の事実上の効果として生じる。訴訟係属のある事件について二重の公訴提起があると,のちの公訴は棄却される。
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二重起訴
にじゅうきそ
(1) 民事訴訟法上,特定の権利あるいは法律関係についてすでに訴えが提起されている場合に,同一の当事者が同一の内容の訴えを提起すること。二重起訴は禁止され,あとの訴えは不適法として却下される。 (2) 刑事訴訟法上は,同一被告人に対して同一事件について2個以上の公訴が提起されることをいう。二重起訴であることが判明すれば,一方の公訴は棄却される。
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86
そしょうさんか【訴訟参加】
他人間に係属する訴訟手続に第三者(参加人)が訴訟行為をなすために加入すること。
【民事訴訟】
 参加とは,自己の名においてその利益を守るために(代理と異なる),他人間の訴訟手続で訴訟行為をなすために(この点,証人や鑑定人と異なる),自己のイニシアティブで(この点,当事者の申立てによる訴訟引受けと異なる)行われる。参加人の地位に応じ,当事者参加と補助参加に分かれる。(1)当事者参加 参加人みずから訴訟上の請求をなし訴訟当事者となる参加である。
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イニシアティブ
initiative
直接民主制の一方法で,国家 (地方公共団体) の意思形成に関し,国民 (住民) に発案権を認め,その成否を国民 (住民) 投票の結果にかからしめるものをいう。国民発案ないしは直接発案ともいわれる。国民 (住民) 発案には,案を直接国民 (住民) 投票に付すもの (直接発案) と,案をまず議会の審議にゆだね,議会の同意を得られない場合に国民 (住民) 投票に付すもの (間接発案) とがある。日本の地方自治法 74条の認める条例の制定・改廃の請求 (その地方公共団体の有権者総数の 50分の1以上の連署を必要とする) は,案を議会に付議するにとどまり,議会の同意が得られない場合における住民投票までは定めていないが,広い意味での国民発案といえる。日本の国政レベルでは,国民発案の制度は設けられていない。
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地方自治法
ちほうじちほう
昭和22年法律67号。1947年5月3日,日本国憲法と同時に施行された地方自治に関する基本法。日本国憲法第8章「地方自治」の本旨に基づき,地方住民の参政権を保障し,地方団体の自治権の育成を目的として制定された。この法律の特色は,都道府県を市町村と同格の地方公共団体とし,知事,市町村長の公選,地方議会の権限の拡大,住民の直接請求権(→直接請求)など,団体自治および住民自治を拡充し,中央政府の官僚統制を廃して技術的な助言,勧告にとどめるなど,まったく新しい地方制度を打ち立てたところにある。だが,制定後まもなく地域社会における封建制の残存,官僚的行政統制の伝統,地方財政の窮乏などにより本法の趣旨が十分実現できないため改革が論議され,地方自治を確立する方向で重要な改正がなされた(昭和22年法律169号および昭和23年法律179号)。また,特に講和(→対日講和条約)以後は,占領政策(→対日占領)の是正と自主体制の建設,行政能率向上などの観点から改革が論議され,第13国会で改正された(昭和27年法律306号)。さらに同国会で成立した地方制度調査会において,府県の性格,行政事務の再配分など,本法の重要な部分が再検討された。その後 1995年に地方分権推進法が制定され,1999年には同法に基づく地方分権推進委員会の勧告を具体化した地方分権推進一括法の制定などにより地方自治制度の改革がはかられた。
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地方分権推進一括法
ちほうぶんけんすいしんいっかつほう
平成11年法律87号。正式名称は「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」。地方分権を進めるため,地方自治法や国家行政組織法など,地方自治にかかわる 475の法律の改正を一括して行なった法律。1999年7月成立,2000年4月施行。主従関係にあった国と地方公共団体を対等な協力関係とするのが目的で,地方分権推進委員会(→地方分権推進法)による勧告を具体化した。骨子は,国の仕事の代行であった機関委任事務を廃止し,自治体の裁量にまかせる自治事務と,国が実施方法まで定める法定受託事務に分けること,また国と都道府県の対立を解決する国地方係争処理委員会,都道府県と市町村の対立を解決する自治紛争処理委員会を設置し,ここで解決しない場合は裁判で争う枠組みを定めたことである。そのほか,補助金で建設された施設の人員,福祉事務所の職員配置など国が義務づけてきた必置規制の廃止・緩和,地方事務官制の廃止などが盛り込まれている。
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対日占領
たいにちせんりょう
allied occupation of Japan
ポツダム宣言に基づいて 1945年8月 28日から 52年4月 28日まで行われた連合国側による日本占領のこと。占領の最高政策機関として極東委員会が設置され,連合国による占領管理の形式をとり,そのもとで総司令部 SCAPEが占領政策の実施にあたったが,連合国最高司令官 D.マッカーサー元帥はアメリカの軍人であり,H.トルーマン米大統領の言明もあって,実質的にはアメリカによる単独統治であった。 46年からイギリス連邦軍が中国,四国の占領に参加したが,軍政には関与しなかった。対日占領は,日本政府を通じての間接統治であり,SCAPEは GHQの指令,メモランダムなどによって日本政府に指示を与え,政治,経済諸制度の抜本的な改革を行なった。このなかには,憲法の民主的改定,財閥解体,農地改革などがある。また占領軍は直接,軍事裁判により,いわゆる戦争犯罪人の処罰を行なった。占領政策は,当初は日本の非軍事化と民主化を目標としたが,冷戦の激化を背景に日本の左翼勢力の活動が活発化するにつれ,47年の二・一スト中止命令を契機として 48年にかけて転換が行われ,民主化政策は後退した。また 50年に朝鮮戦争が勃発すると,日本政府に対して警察予備隊の創設を命じ,事実上の再軍備が始められた。 51年4月にはマッカーサー元帥が罷免され,連合国最高司令官の後任に M.リッジウェー中将が任命された。 51年9月対日講和条約が締結され,52年4月 28日その発効とともに日本は独立を回復した。
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連署
れんしょ
他者の署名に連続して署名すること。法律および政令にはすべて主任の国務大臣が署名し,内閣総理大臣が連署することになっている (日本国憲法 74) 。 (→副署 )
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輔弼
ほひつ
大日本帝国憲法 (明治憲法) 下において,天皇の権能の行使につき国務大臣,宮内大臣および内大臣が行なった助言のこと。明治憲法 55条によれば国務大臣は各個独立して天皇に対する輔弼責任に任じていた。それに対して日本国憲法は,天皇の国事行為につき,内閣の「助言と承認」を要求し (「助言と承認」は天皇に対して法的拘束力をもつ) ,天皇の国事行為に関し内閣の国民に対する責任を明確にしている (3条,66条3項) 。
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国務大臣
こくむだいじん
広義においては,内閣総理大臣を含めておよそ内閣の構成員を意味するが (憲法 66) ,狭義においては内閣総理大臣を除いた内閣の構成員をさす (68条) 。内閣総理大臣は,国会の指名に基づいて天皇が任命するが (6条1項) ,(1) 狭義の国務大臣の任免権は内閣総理大臣がもつ (ただし,国務大臣の過半数は国会議員のなかから選ばれなければならない〈68条〉) 。 (2) 広義の国務大臣は,文民であるを要する (66条2項) 。 (3) 国務大臣は,その在任中,内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない (75条) 。大臣は内閣の構成員として行政全般を掌握する (73条) とともに,別に法律の定めるところにより主任の大臣 (→行政大臣 ) として行政事務を分担管理するが,例外もある (内閣
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行政大臣
ぎょうせいだいじん
主任の行政事務を分担管理する地位における内閣総理大臣および各省大臣をさし,旧憲法下において,天皇の大権の輔弼者 (ほひつしゃ) としての国務各大臣 (55条1項) とは異なるものと観念されていた。なお,現行法上は主任の大臣 (内閣法3条1項,国家行政組織法5条1項) がこれに相当する
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行政事務
ぎょうせいじむ
(1) 内閣とその統轄下にある行政機関の掌理する国の事務(国家行政組織法1)。または,行政作用に属するすべての事務。
(2) 2000年の改正前地方自治法における事務区分の一つ。地方公共団体の事務のうち,公共事務(→固有事務)および団体委任事務に対して,その区域内における権力的事務で国の事務に属さない事務。例としては,集会,集団行進,集団示威運動(→集会の自由)の取り締まりなどがあった。2000年地方分権推進一括法の施行(地方自治法の改正)による機関委任事務の廃止に伴い事務区分が再編され,公共事務,団体委任事務,行政事務はすべて自治事務に統一された。
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集団示威運動
(読み)しゅうだんじいうんどう
世界大百科事典内の集団示威運動の言及
【公安条例】より
…地方公共団体の制定する条例で,主として道路・公園その他公共の使用に供される場所における集会,集団行進,集団示威運動(デモンストレーション)を取り締まる目的で各種の制限を定めるものの総称。公安条例を正規の表題とするものはなく,〈集会,集団行進及び集団示威運動に関する条例〉(東京都,京都市等),〈行進又は集団示威運動に関する条例〉(愛知県等),〈多衆運動に関する条例〉(石川県等)等の表題をもつ。…
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固有事務
こゆうじむ
地方公共団体がその存立の目的から本来行なうべき事務。国などから地方公共団体に委任される委任事務(→団体委任事務)に対する概念であり,具体的には 2000年の改正前地方自治法における公共事務をさす。地方公共団体である都道府県市町村の事務は,性質上,固有事務,委任事務,行政事務の 3種に分けられ,地方公共団体が任務とする住民の福祉のために行なう事務(団体の組織,自治立法,財務,事業の経営,施設の管理に関する事務など)が固有事務とされていた。2000年地方分権推進一括法の施行(地方自治法の改正)により機関委任事務が廃止され,同時に事務区分が再編された。これにより,公共事務(固有事務),団体委任事務(委任事務),行政事務という区分はなくなり,すべて自治事務に統一された。
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機関委任事務
きかんいにんじむ
地方公共団体の長などの執行機関に対し,国またはほかの地方公共団体から法律または政令によって委任された事務。2000年地方分権推進一括法の施行(地方自治法の改正)により廃止された。戸籍,外国人登録,統計調査,河川の維持管理などの事務が機関委任事務とされ,これらの事務執行に関して,委任者(多くは国)は監督を行なっていたが,住民の代表である地方議会は説明を求めるにとどまり意思決定には関与できなかった。1991年の地方自治法の一部改正で,機関委任事務の一部について検査・検閲および監査請求を行なうことが認められたが,委任された事務が国の指示どおりに実行されない場合は,国は代執行を行なうことができるとされていた。この制度は地方自治の本旨にそぐわないとの見方から,たびたび廃止の議論がなされ,2000年改正地方自治法の施行で廃止された。同時に,団体委任事務など,地方公共団体が担うそのほかの事務も含めて事務区分が再編された。かつての機関委任事務のうち,一部は事務自体が廃止,また国が直接執行する事務とされ,地方公共団体の事務として存続するものは,国政事務としての性格が強い法定受託事務と,それ以外の自治事務に分けられた。
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くない‐しょう〔‐シヤウ〕【宮内省】
1 律令制で、太政官(だいじょうかん)八省の一。皇室の庶務・土木・用度などを取り扱った。
2 明治2年(1869)に設置され、皇室関係の事務を取り扱った官庁。→宮内庁
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1 -
平成29年(行ヒ)第320号 停職処分取消請求事件
平成30年11月6日 第三小法廷判決
主 文
原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
被上告人の請求を棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
理 由
上告代理人荒尾幸三,上告復代理人中井崇の上告受理申立て理由(ただし,排除
されたものを除く。)について
1 普通地方公共団体である上告人の男性職員である被上告人は,勤務時間中に
訪れた店舗においてその女性従業員に対してわいせつな行為等をしたことを理由
に,停職6月の懲戒処分(以下「本件処分」という。)を受けた。本件は,被上告
人が本件処分は重きに失するものとして違法であるなどと主張して,上告人を相手
に,その取消しを求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)ア 地方公務員法(以下「地公法」という。)29条1項は,職員が同法等
に違反した場合(1号),全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
(3号)等においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処
分をすることができる旨を定め,同法33条は,職員はその職の信用を傷つけるよ
うな行為をしてはならない旨を定めている。
イ 加古川市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和28年加古川市条例
第7号。以下「本件条例」という。)4条1項は,停職の期間は1日以上6月以下
とすると定めている。
また,加古川市長(以下「市長」という。)は,平成19年,「加古川市職員の
懲戒処分に関する指針」(以下「本件指針」という。)において,懲戒処分に付す
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