16 南◆QyhO
「変わらない人っていいよね」と呟いた人がいました。

彼はとんでもない不良少年。

「あいつらは変わった。趣味が合わない。俺とかホラ、前からバイクが好きだからさ…スノボとかやらねえし。あいつらもバイク好きだったのに、急にスノボとか意味わかんねえ」

僕はどっち付かずの浮浪少年。

「てか、あいつらの話に入っていけねえし、流されたくもねえし、なんかムカつくわ、ムカつかねえ?」

旧友への当て付け半分、明らかに同調者を求める口振りの彼である。

「変わらない人っていいよね」

突然旧友に裏切られた形になり、あの時の君は僕にそう言うしかなかったのだろうね。その表情から「ひとりは嫌だから一緒に居てくれ」と、聞こえない声が聞こえた気がしたのだ。

直感的に、もしかしたら君はとても脆くて弱い人なんじゃないかと、思ったことを記憶しています。


それから君と彼らが和解するまでの数日間、毎日ふたりで下校しましたね。

うろ覚えだけど、下校中はセックスの話ばかりしていましたね。そんな時、男同士だと取り敢えず下ネタは空元気の素。

「変わらない人っていいよね」

でもやっぱり、この言葉がハッキリと胸に残っている。声のトーンまでハッキリと覚えている。

卒業してからは音信不通になったけど、当時変わってしまった“彼ら”の内のひとりから、君が夭逝してしまったと連絡がありました。

あれからかなり道を外れた分、社会復帰が困難で、随分とひとりで悩んでいたそうですね。一度関われば、なかなか抜け出せない世界。

あれから僕は変わりました。とても汚ないヤツになりました…っていう、くだらないドラマ仕立ての常套句を書いてみたけど、やっぱり僕は変わってないんです。

あの頃も今も、汚ないヤツなのだ。

あの時の僕は学校という小さな社会で、君という権力欲しさに同調者を装った。
“変わらない人”だと思われていたことも好都合だったんだよ。より仲良くなった後も、振り回されずに一定の距離を置ける気がして。

ホントに卑しくて、ちっぽけな打算でありました。

だから、もしまたいつか会えたらもう一度言ってくれませんか。

罪因罪果とでも言いますか。

「変わらない人っていいよね」
(ID:7xcaPt)