80 南◆QyhO
携帯非連続短篇小説
「にんきもの」
僕は小学校4年生になるまでは、いわゆる "人気者グループ" ってやつから無縁の存在でした。
しかし4年生になるとそれは一変。絵画習字読書感想文などの賞をたまたま貰ったことで、僕は少しだけ注目されるようになったのです。
キッカケがあると子供って、直ぐに仲良くなれたりします。
新しいともだち。
新しい世界。
毎日がヤバすぎる。眼前に突如その姿を現した新世界。くすぐられる好奇心。
その一方で、幼稚園の頃から成長を共にしてきた数人のともだちとは、疎遠になってしまった。友人関係の舵取を、ド素人の僕が取ることになったのだから当然のことなのですが。
あちらからは右だがこちらからは左。そんな感じで、あたふた。
思い返せば、後ろめたさを感じていた。
やがて帰り道も自然と別々になった歩道橋。新しいともだちと雑草を丸めた爆弾を造り、車に投げ落とし、サッと隠れる。僕は笑っていた。その後ろをゾロゾロと無言で通過する昔のともだち。
僕は声を掛けなかった。
彼らは皆、借家の長家暮らしで、なにか妙な連帯感というか内弁慶というか、そんな空気を醸していた。
僕は近所の一軒家でしたが、それまでは殆ど毎日そこへ遊びに行った。
連なる長家の路地。必ず誰かがいて、誰もが僕を知っていた。悪いことをすれば、余所の子だろうと容赦なく叩かれた。
そんな風景は、今はもう見る影もなく。
どこぞの会社が、その一帯を工場にしてしまった。
地主さんが売ったんですね、その土地を。
まだ足元のおぼつかない人気者が、5年生になる少し前のことでした。
ひとり消え、またひとり消える。
最後の日曜日、1番仲の良かった奴。
ぎこちなく「バイバイ」と、人気者。
見送り終えて家に帰って、一人になった、人気者。
泣き疲れてまた月曜日。
何事もなかったかのように歩道橋で笑う、人気者。
ざまあみろ。
「にんきもの」
僕は小学校4年生になるまでは、いわゆる "人気者グループ" ってやつから無縁の存在でした。
しかし4年生になるとそれは一変。絵画習字読書感想文などの賞をたまたま貰ったことで、僕は少しだけ注目されるようになったのです。
キッカケがあると子供って、直ぐに仲良くなれたりします。
新しいともだち。
新しい世界。
毎日がヤバすぎる。眼前に突如その姿を現した新世界。くすぐられる好奇心。
その一方で、幼稚園の頃から成長を共にしてきた数人のともだちとは、疎遠になってしまった。友人関係の舵取を、ド素人の僕が取ることになったのだから当然のことなのですが。
あちらからは右だがこちらからは左。そんな感じで、あたふた。
思い返せば、後ろめたさを感じていた。
やがて帰り道も自然と別々になった歩道橋。新しいともだちと雑草を丸めた爆弾を造り、車に投げ落とし、サッと隠れる。僕は笑っていた。その後ろをゾロゾロと無言で通過する昔のともだち。
僕は声を掛けなかった。
彼らは皆、借家の長家暮らしで、なにか妙な連帯感というか内弁慶というか、そんな空気を醸していた。
僕は近所の一軒家でしたが、それまでは殆ど毎日そこへ遊びに行った。
連なる長家の路地。必ず誰かがいて、誰もが僕を知っていた。悪いことをすれば、余所の子だろうと容赦なく叩かれた。
そんな風景は、今はもう見る影もなく。
どこぞの会社が、その一帯を工場にしてしまった。
地主さんが売ったんですね、その土地を。
まだ足元のおぼつかない人気者が、5年生になる少し前のことでした。
ひとり消え、またひとり消える。
最後の日曜日、1番仲の良かった奴。
ぎこちなく「バイバイ」と、人気者。
見送り終えて家に帰って、一人になった、人気者。
泣き疲れてまた月曜日。
何事もなかったかのように歩道橋で笑う、人気者。
ざまあみろ。
(ID:7xcaPt)