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1 坂江

叔母と冬休み

忘れもしない、小6の冬休み。
年末年始をすぐに控え、どの友達も家族と過ごす予定ばかりで退屈だった俺は、母親に頼んで叔母の家へ泊めてもらう事になった。
4つ下の春輝という遊び相手も居るため、退屈しないだろうと考えたのだ。
時期を考えれば迷惑な話だったが、叔母は嫌な顔ひとつせず受け入れてくれたらしい。

「自分の家だと思って過ごしてね」

年明けまで長期滞在を希望したのには、やはりお年玉狙いという意味合いもあった。
両親には後でせがめばいいとして、もしかしたら叔母夫婦からも貰えるかもしれない。
そんな年明けの打算よりも早々に。
俺はこの家に来てしまった事を後悔する羽目になるのだった。
[作者名]
坂江
(PC)
3 坂江
叔母はこんな風に躾に厳しい人ではなく、どちらかと言えば春輝を溺愛して甘やかしているイメージがあった。
小学校に入学して変わったのだろうか?
考えてみれば、記憶にあるのは今よりずっと小さい頃の話で。
小学生になってからの春輝を俺はほとんど知らない。
少なくとも、あそこまで叱られるような事をしでかす子供ではなかった。

(もしかして、昨日夜更かししたから?…だとしたら、俺のせいかも…)

ろくに味もわからないまま。
ぴしゃり、ぴしゃりと聞こえる音を背にして、用意してあった白飯は味噌汁で流し込む事にした。
泣き声こそしないが、春輝の顔を思い浮かべると申しわけなくて仕方ない。

(…許せ、春輝)

俺はまだどこか他人事で、のちに不幸が我が身に降りかかるなどと想像もしていなかったのである。
(PC)
4 坂江
食事を終えると、平手打ちの音はもう止んでいた。
食べるのに10分程度かかったとすれば相当叩かれたのではないかと心配になったが、正確に計ったわけではないしもしそうなら叔母も加減はしただろう。
気まずいが、人の家のルールにまで口出しできるほどの社交性はない。
リビングに戻ると、春輝が小さなテーブルに小冊子と1枚のプリントを広げて勉強を始めていた。
冬休みの宿題らしい。
近くで眺めていた叔母が俺に気付いた。

「ごめんね、ありあわせの物しかなくって」

「え…」

今しがた食べ終えた、遅い朝食の話だとわかるまでに数秒かかった。
てっきり春輝のお尻を叩いていた事情に触れると思っていたからだ。
もしかすると、叔母にとっては気にするまでもない日常的な行為だったのかもしれない。

「あの、さっきの…」

「え?…あぁ、ちょっとね、お勉強を怠けちゃったお仕置きをしてたのよ」

「お仕置き…?」

「そう、冬休みの宿題をね、何日までにどこまで終わらせておくかってお約束なの、できてなかったから、お仕置き」
(PC)
5 坂江
やはり叔母は躾に厳しいようだった。
俺の母も勉強しなさいと口うるさい所はあるが、ここまで細かい決め事は記憶にない。
まして小学2年生の頃なんて、俺は何も考えず遊び呆けていたのは確かだ。

「そういえば、もう終わったの?」

「……?」

「冬休みの宿題」

「え、あ…えーっと…、昨日やったから、半分くらいは」

俺はとっさに嘘をついてしまった。
さっきの光景がまだ焼き付いているのか、叱られるかもしれないと思ったのだ。
本当は半分どころか叔母の家に宿題のテキストさえ持ってきておらず、始める事すらできない。
しかし叔母はすんなり俺の言葉を信じたようで、

「さすが、お兄ちゃんね…春輝も見習いなさいよ」

と言っただけだった。
(PC)
6 坂江
叔母に嘘が露見したのは、わずか2日後の29日の事だった。
リビングで春輝の勉強を見ている最中「そういえば」と思い出したように立ち上がる叔母。
母親から宿題のチェックを頼まれているからと、俺にテキストを見せるよう要求してきたのだ。
当然、応じられない。
見せようにも宿題そのものが叔母の家にないのである。
しぶる俺に怪しさを感じていたらしい叔母はついに、俺に対して「本当の事を言いなさい」と叱る口調で説教をした。
思えば、叔母に叱られるのはこれが初めてだった。

「じゃあ、この間は嘘をついてたのね?」

春輝の前で、俺は情けなく首をうなだれていた。
こちらを見てはいないが、勉強しながらでも耳をそばだてて聞いているだろう。
見習えと言われた遊び相手が、じつは自分より悪い事をしていたのだ。
それが嘘だったとなれば面白いはずがない。

「そういう事なら、お尻を叩かないとね」
(PC)
7 坂江
「ま…、マジですか?」

「…マジですか?じゃないの、6年生にもなってこんな事で叱られる子いないわよ?」

「で、でも…」

「でもじゃない、お尻を出すの!」

叔母は上体を起こしたままカーペットの床に両膝をつき、右腕でガッシリと俺の体を挟んだ。
俺は足先を床につけた状態で軽く腰を持ち上げられたのだが、直後、叔母にあっさりパンツを下ろされたのに驚いて抵抗できなくなってしまった。

「何日もサボって、許さないわよ!」

ぱしぃん、と。
つるんと剥けた裸のお尻に叔母の平手打ちが炸裂した。
俺は心のどこかで、叔母は俺になら手加減してくれるだろうと期待していたのだがあてが外れたようだった。
ぱしん、ぱしん、ぱしぃん…リビングの真ん中で、叔母に上体を抱え込まれてお尻を叩かれる。
その恥ずかしさは、昨日まで面倒を見ていたはずの春輝の視線によって倍増していた。
痛みだけなら我慢できないほどではないが、この後も何日か叔母の家で過ごすと思うと泣けてくる。
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8 坂江
「ばれなきゃいいと思ったの?」

「…」

「答えなさい!」

「…思い、ました」

ぱぁん、ぱぁん、ぱぁん…叔母は質問するだけで、答えに関しては何も言わなかった。
その後も質問は続き、俺はすべて正直に答える事にして痛みに耐えた。
つま先では体を支えきれず、次第に脚がプルプル震えてきたのだが叔母はまだ許してくれそうにない。
結局その姿勢のまま30分ほども叩かれたお尻は、元の色がわからないほど真っ赤に腫れてしまった。
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9 坂江
「今日、一旦取りに帰りなさいね」

「な、何を?」

「宿題」

ズボンを穿き直しても中で湯気が上がっていそうなほど熱くなったお尻。
動けず床に突っ伏していると、叔母がそう声をかけてきた。

「年明けまで居るんでしょう?早めに取りかからないと、お尻が大変な事になるわよ?」

一時帰宅が許されるのならそのまま帰ってしまいたかったが、母親に話されても気まずい。
どうやら慌てて冬休みの計画を立て直す必要がありそうだった。

「春輝も、お兄ちゃんと一緒に勉強しなさいね」

「はぁい」

あんな事があった後で叔母からお兄ちゃん扱いされると、それだけで顔から火がでそうになった。
(PC)
10 坂江
そして翌30日、31日と俺は3日連続で叔母からお尻を叩かれる事になる。
もっとも、それは29日の帰り際に言われていた事で、叔母に言わせればけじめのお仕置きだった。
春輝と同じで、何日までにどこまで宿題を終わらせているか。
始めてさえいなかった俺がスケジュール的に間に合うはずはなく、どう頑張っても31日まではお仕置きでしょうね、と言われていたのだ。
叔母の言葉通り、それは現実となった。
毎日リビングで叔母から30分はお尻を叩かれ、その状態で宿題に取りかかるのだ。
痛みがひいてくる頃には、外はもうお昼過ぎか夕方になっていた。
自分の家だと思って過ごしてね。
あの言葉には、叔母も俺のことを自分の子供として扱う意味もあったらしい。
気付くのが少々遅すぎたようだが。

「気を抜かないのよ?帰る前にはもう一度チェックするから」

合格をもらい後は家でやろうと思っていた矢先、そう言われた。
小学校最後の冬休みは、こうして痛く、思い出深い年明けとなったのである。
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11 ずん
なんという良い冬休みと厳しいお仕置き
(SP)
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