【専門職が回答する】在宅医療・介護のご家族向けお悩み掲示板
1 匿名希望

CD検査について

担当している高齢の女性のことでご相談です。
下痢が続き、検査をしたことろCDトキシン(+)CD抗原(+)とので、ショートステイの受け入れが拒否されました。
検査結果が(ー)になればと、内服治療のもと、トキシンは(ー)になったのですが、抗原は(+)のままで。病院でカーテン隔離している状態では受け入れは難しいとのお返事でまた行き場を失いそうです。
この抗原と言うものは、(ー)にらならないものなのでしょうか?何か手だてはありますか?
2 安間章裕(ケアエコDr.)
ご相談ありがとうございます。ケアエコ運営医師の安間と申します。
CD腸炎の治療後も抗原検査陽性で、施設にいけないという状況と理解しました。
これはかなり複雑な話になります。
この方はまだ下痢が残っているのでしょうか?

結論から申し上げますと、抗原検査を陰性にするのはなかなか難しいと思います。

その前に、CD腸炎の検査について説明しますね。CDというのは、Clostridioides difficile(クロストリジオイデス ディフィシル)という菌の略です。
このCD自体は、腸内に普通に存在している人もいます。
例えが適切か分かりませんが、人間に善人と悪人がいるように、CDにも悪さをしない菌と悪さをするCDがいるのです。
このうち、悪さをするCDがトキシンという毒素を出し、腸炎を起こすのです。
抗原検査というのは、CDがいるかどうか、つまり善人が悪人に関わらず人間がいるかどうか、を調べる検査です。
一方、トキシンの検査というのは、それが毒素を出しているかどうか、つまり悪人かどうかを調べる検査です。

この方の場合は最初の検査で抗原検査、トキシンとも陽性なので、「悪さをするCDがいる」ということは確実です。
それが、治療後に、トキシンは陰性になったけども、抗原検査は陽性のまま、という状況なのですね。
これは単純な理屈から言えば、抗原検査陽性、トキシン陰性という結果は、CDはいるけど悪さをしていない、ということになります。
ただ、注意が必要なのは、トキシンの検査は完全でなく、悪いCDであっても検出できない場合があるのです。
さらに複雑なのが、抗原検査というのはCDの体の一部を検出する検査です。
そのため治療後ですとCDの壊れた体の一部を検出しているだけの可能性があります。
この場合は腸内に生きているCDはおらず、残骸が残っているだけとなります。
実際に、アメリカの保健所であるCDCは、「治療後6週間以上検査が陽性になりうるから再検査はするな」といっています。
https://www.cdc.gov/cdiff/clinicians/cdi-prevention-strategies.html

分かりにくかったかもしれませんが、今回の検査結果からは、
@悪さをしないCDだけが残っている
A生きているCDは残っていない
B悪さをするCDが残っている
のいずれも可能性としてはあり得ます。

@、Aであればなんの問題もなく施設に行けると思います。
問題はBであった場合ですが、この場合も下痢がない(=保菌しているだけ)のであれば感染対策上は特に対応は不要である、という考え方が一般的です。
環境感染学会のガイドライン(案)でも、そのような記載があります。
http://www.kankyokansen.org/other/cdi-guide_publiccomment.pdf

しかし、下痢が残っていると問題です。下痢の原因がなんなのか、ですが、もしまだ下痢が続いているのであれば、印象としてはCD腸炎が残っている可能性も十分あるのかなと思います。
CD腸炎は再発も多く、治療に難渋する場合も少なくありません。
あくまで主治医の先生のご判断になりますが、再治療は検討の余地があるとおもいます。

長くなりましたが、以上から、この患者さんに関しては、
・悪いCDが残っている可能性は否定できない
・ただ下痢が治まっていれば感染リスクは低いと考えられている
・最終的には施設の判断となるが、下痢が残っていると受入れは難しいかも
という感じです。

専門的な内容で恐縮ですが、ご参考になりましたでしょうか。
患者さんにとって良い結果になるようお祈り申し上げます。