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1 石井聡美

賢者の書7ーA 新情報告知他

魔法使いの約束で新規に実施されるイベントのストーリーの予告、裏話、
および、各商品コラボやステ情報&ラジオ情報に特化した掲示板です。
74 エイプリルフール

73 エイプリルフール







それぞれの称号を感じさせる書き込みを集めてみました。
72 エイプリルフール
今年のエイプリルフールは幸せ&平和路線。なので、こんな書き込みが見られました。







オヴィシウスとターリアの結婚式の記述はwizardpressの見出しの一覧のなかにありました。更にストーリーや期間限定の配信動画ではゴーマンがブラッドリーのマネージャーになっていました。また、カリウスでミスラの相棒だった魔獣、メトゥスはアルディヴィジョン(特にレノ)がモデルをする雑誌の名にもなっていました。
71 エイプリルフール



最終結果。できれば15000まで行きたかった。
70 エイプリルフール
追加&訂正
レノックス「煤纏う工匠」→「昔日届く工匠のファンタジア」
ドラマのタイトルは「革命の鍵」が正しい。
オズの出演作品は「緋花」
他にもこんなありそうな番組名が。
■怪談「世界一恐怖なstory」(スノウ&ホワイト他)
■ドッキリ「ドッキリKINGDOM」(スノウ&ホワイト、フィガロ)
■ワイドショー系「モーニング.ハイタッチ!」(ムル→カイン)
        「ズバット!」(ムル)
        「朝からシャキッと!ピシッ!と」(リケ)
■体力&耐久系
「共闘!バディ☆」(カイン)
「走れ!アルディ」(オズ、カイン、アーサー、ミスラ、フウィルリン)
Joker杯(オーエン)
■ラジオ&深夜番組
「今宵もしゃべっちゃわknight」(カイン他)
■紀行「旅人の門出」(レノ)
■歌番組「きみの炎と、きみの歌」(ラスティカ)
■教育「アートと遊ぼう」(ルチル)→「つくってあそぼう」から発想?
■グルメレポ
「世界のスイーツ100選!ぱくぱくもぐもぐ食べ尽くしスペシャル」
■料理 ネリーのきまぐれキッチン
メニュー/フライドチキン、アヒージョ、サヴァラン、パンプディング、
    シュニッツェル、オムレツ
69 エイプリルフール


xに投稿された写真にもイベストを思わせるものが。シャイロックのは慕情燃える海街のラプソディ。シノのは眠れぬ夜のカンペッジオ。
68 エイプリルフール
クイズ、紀行、怪談、音楽、お笑い、グルメ、朝の情報番組(ワイドショー)、ドッキリ等魔法使いたちが出演する番組のラインナップも豊富です。なかには現実の番組をもじったようなものも。
左がまほやく右が実在の番組。         
「地平線の果てまで」→「世界の果てまで行ってQ」
「爆笑オンザフロア」→「爆笑オンエアバトル」
「マジカルクイズ大会」→「マジカル頭脳パワー!!」
「クイズ.ビリオン10」→「クイズ$ミリオネア」
さらにワルプルギスの名を冠した映画祭での受賞歴がある名俳優のフィガロをはじめ、イベントから取ってきたとみられるタイトルも。
フィガロ「星満ちる夜の真実」→「星満ちる海に願いをわたして」
シャイロック「青薔薇と蝶」→「青薔薇彩るオスピタリタ」
      「月夜の城が燃えている」→「月夜の城のショコラトリー」
オズ「緋色」→「闇染まる緋花に宴を捧げて」
リケ「悠久の想い花」→「悠久想う未知へのカーソス」
ファウスト※「革命の鍵」(レノックスとの共演作。鍵はレノの魔道具)
     「零れた夢の夢」→「零れた夢のステラート」
     「木漏れ日と猫」→「猫まどろむ静隠の木漏れ日で」
     「ひまわりの調べ」→向日葵のエチュード
ブラッドリー
「Buddy!」(訂正/カフスボタンはこの映画のシーンで使われたもの)
最新作「ショコラに涙のキスを」→「囚われのノーチェに恋して」
シノ「英雄に捧ぐ鉄の真意」→「落魄の血に鉄の真意を」
アーサー「犬使いの歌声」→犬使いのバラッド
カイン「熱砂のオアシスに捧ぐ杯」→「熱砂のオアシスに勇者の歌を」
ミチル「ムウムウの大冒険」(ムウムウは南の祝祭に登場)
ムル「野良猫の悪戯」→「新月の下でとびきりの悪戯を」
ラスティカ「白雪に響く愛の音色」→「白雪の終着に愛を響かせ」
またルキーノのみならず、ミア、ターリアとオヴィシウス、エクターとアトス、ニコラスなどのメインスト&イベストに登場したキャラクター名もサイトやブログ内に登場しました。
67 エイプリルフール



期間限定でXには突如4つのアカウントが出現。更にwizardpressなる特集記事で各プロダクションに所属する俳優陣のプロフィールを見ることができます。文責はルキーノ。またイベント中は彼らのブログを覗くことができます。
リケのブログにはエイプリルフールのイベント料理に関する記載が。
66 エイプリルフール
オズはドラマで活躍する傍ら後輩の指導にあたっています。フィガロはフィガロの診療所というラジオ番組を持っています。ファウストは舞台作品を中心に活躍中。レノックスとは革命の鐘という作品で共演し、続編が決まっています。ブラッドリーはツアイトヘーレというブランドを展開し、指輪やコロン、カフスボタンなどを手掛けています。リケはグルメレポーターとして活躍中。シャイロックは俳優のみならず舞台の脚本や演出も手がけています。レノックスはmeemeeという雑誌で彼氏にしたい男性の常連です。学生のミチルは進学塾のアンバサダーを務めています。美大生のルチルは子供向け教育番組のお兄さんで、ミスラはジムのモデルを担当。ヒースはクロエがデザインした服のモデルに。ラスティカはディナーショー等で演奏を披露。ネロはひーさん、なーさんというマスコットトともに料理番組を配信。オーエンはゲーム配信者として辛口レスバトルを展開。カインはアトスやエクターとダンスユニットを組んでいます。
65 エイプリルフール
2025年のエイプリルフールは現パロ。魔法使いたちが芸能人に扮し、3つのプロダクションに所属します。

フォルモーントプロダクションには演技派の俳優が揃います。フィガロ、ブラッドリー、シャイロック、ファウスト、リケが所属。社長はスノウとホワイト。アレクも所属します。

アルディヴイジョンはアクロバットを得意とします。フォルモーントから移籍してきたオズ、アーサー、シノ、レノックス、カイン、ミスラ、ミチルが所属。社長はチレッタ。

ルスカスピカに所属するのはいわゆるインフルエンサーたち。クロエ、ラスティカ、オーエン、ルチル、ムル、ヒースが所属。ある理由で業界を離れたネロは顔出しせずにネリーという名で活動を続けています。社長はザラとアリアの姉妹。アリアはラスティカと婚約しています。
64 東のイベントストーリー
テレビアニメ魔法使いの約束の第8話では、メイドの話をもとに東の魔法使いたちが墓地を訪れます。東が登場するイベントストーリーにも『幽霊奇譚』を意識していると思われるストーリーがあります。
「呪い屋と孤月のコンチェルト」
東の国にある呪具を扱う店を訪れた東の魔法使いとクロエは、ある少年に出会います。少年の体は呪いの気配により蝕まれていました。少年にはテオという魔法使いの友人がいました。テオは幼い時に大いなる厄災により母親を殺されたと思い込み、屋敷の敷地内にある塔に棲みついて月を呪っていました。そして今度はテオが前回の厄災時に屋敷が火災に遭い、少年をかばって死んだことで少年が月を恨むようになっていました。さらに同じく敷地内にある花園に残っていたテオのマナ石が東西の魔法使いに襲いかかります。
「花雨をシェリーと見上げて」
子どもたちと遊んでいる内に行方をくらました婚約者(花嫁)を探してほしいと依頼を受けた魔法使いたち。行ってみると、かつて村を支配していた悪い魔法使いの影響もあり、魔法使いに対する住民たちの印象はよくなく追い払うような対応を取られます。婚約者の家に行ってみると、彼女の魔道具である櫛が残されていました。櫛の気配をたどっていくと封印されていた井戸がありました。賢者たちが井戸におりるとそこに髑髏とともに婚約者の姿が。どうやらかつて住人達が退治した魔法使いが生きながらえて魔力をもつ彼女を引き寄せ糧にしようとしたものの、そこで息絶えてしまったようです。賢者の魔法使いたちは彼女を救出し、井戸を封じることにします。
「騎士と信義のコンチェルト」
魔法使いたちは、カインの憧れの騎士ローランが人々を襲うという事件を調査します。噂のせいで住人たちの薬や食料などの物流も止まってしまっていました。森の奥にはローランの墓がありましたが、人に襲いかかるような邪悪な空気はただよっていませんでした。実は強盗たちが夜にローランの名を語って所業に及んでいたことが分かります。
63 わたしは町の何でも屋(つづき)
Tutti mi chiedono.    みんなが私をお求めだ。
tutti mi vogliono,     みんなが私をお望みだ。
donne,ragazzi,       奥様、若い衆、
vecchi,fanciulle:      年寄、娘。
Que la parrucca……    ここでは鬘……
Presto,la barba……    急いで髭を……
Que la sanguigna……   ここでは血吸蛭……
Presto,il biglietto……   急いで書状を…… 
Figaro……Figaro……    フィガロ、フィガロ……
Son qua,son qua.    ここにおります、ここにおります。
Ahime che furia,     いやまあ、なんてせかせか、
ahime che folla,     いやまあ、なんてごちゃごちゃ、
uno alla volta,      一度にお一人
per carita.        お願いですから。
Figaro……Figaro……    フィガロ、フィガロ……
Eccomi qua.       はい、ただ今ここに。
pronto prontissimo    すばやく格別すばしっこく
son come un fulmine:まるで稲妻みたいなものよ。
sono il factotum    私はまさに
della citta.       町のなんでも屋。
Ah bravo Figaro    ああ、偉いぞフィガロ
bravo bravissimo    偉くて偉さ極上、
a te fortuna      お前に幸運
non manchera.     恵まれなきゃ嘘だ。
La ran la lera.    ラ.ラン.ラ.レラ、
la ran la la.     ラ.ラン.ラ.ラ。
相澤啓三(編)オペラ.アリアベスト101 新書館,2000
因みに音楽之友社から出ている『(新装版)イタリア.オペラ』のなかで小畑恒夫氏は、「あの家のなかじゃ私は理髪師で、美容師で、外科医で、獣医、つまりは何でも屋なんです」というフィガロの台詞も引きながら、ヨーロッパにおける中世以来の理髪業について、
「たいてい外科医を副業としていた。きっとどちらも刃物を使う職業だからだろう。もちろん学識ある高級外科医もいたけれど、骨折や脱臼、ちょっとした切り傷の外科治療は理髪師や湯屋が行うのが普通だった。(中略)床屋のトレードマークとして今日に伝わる赤.青.白のだんだら棒は、動脈.静脈.包帯を表すという説が一般的だ。刃物を使い、薬の知識があればフィガロの台詞通りの何でも屋になれる。ただし刃物、かつら、薬などをもってどこのお屋敷にも入り込むわけだから、フィガロのように楽天的で人好きのする人間でなければつとまらない。きめ細かいサービスが次の仕事につながるから、頼まれればなんでもやる。ラブレターを運んでやるくらいお安い御用なのだ。とくに恋の手引きはフィガロの得意とするところ(p.19)」と述べています。
62 わたしは町の何でも屋
(以下アクセント記号なし)
La ran la lera.      ラ.ラン.ラ.レラ、
la ran la la.       ラ.ラン.ラ.ラ。
Largo al factotum     そこ退けこちとら
della citta.         町の何でも屋。
Presto a bottega.     急いで店に、
che l'alba e gia.     もう夜明けだから。
La ran la lera.      ラ.ラン.ラ.レラ、
la ran la la.       ラ.ラン.ラ.ラ。
Ah che bel vivere     ああ、暮らしは素敵、
che bel piacere       遊びも素敵、
per un barbiere      理髪師渡世で
di qualita.         いい腕持てば。
Ah bravo Figaro     ああ、偉いぞフィガロ
bravo bravissimo     偉くて偉さ極上、
fortunatissimo       幸運も極上、
per verita!        本当に。
La ran la lera.     ラ.ラン.ラ.レラ、
la ran la la.      ラ.ラン.ラ.ラ。
Pronto a far tutto   用意万全なんでもやれる、
la notte e il giorno  夜でも昼でも構わずに
sempre d'intorno     いつでもそこらに
in giro sta.       出掛けてる。
Miglior cuccagna     極上の極楽
per un barbiere     理髪師渡世に、
vita piu nobile     これ程高尚な
no,non si da.     暮らしはないぜ
La ran la lera.     ラ.ラン.ラ.レラ、
la ran la la.      ラ.ラン.ラ.ラ。
Rasori e pettini,    かみそりに櫛、
lancette e forbici,   メスに鋏は
al mio comando    ご用に備えて
tutto qui sta.     みなここにある。
V’e la risorsa     しかもそこには
poi del mestiere,   仕事の元手、
colla donnetta,     ご婦人と組めば、
col cavaliere……    紳士と組めば。
La ran la lera.     ラ.ラン.ラ.レラ、
la ran la la.      ラ.ラン.ラ.ラ。
61 セビリアの理髪師
アニメまほやく第7話ではいよいよ問題のフィガロのシーン(籠絡)が登場。(次回は助っ人に駆り出されてフィガロの素性がいよいよバレる予感)フィガロ.ガルシアという名前は本名ではなく、昔倒した魔法使いの名を(気に入って)名乗るようになったようです。このうちガルシアはおそらく、ヨーロッパにあるキリスト教の巡礼路の終着点で、聖ヤコブの墓のあるサンティアゴ.デ.コンポステーラを州都とするガリシアのもじりだと思われます。一方、フィガロの方は『セビリアの理髪師(オペラはロッシーニ作)』と『フィガロの結婚(オペラはモーツアルト作)』に登場するフィガロからとったものと思われます。
『セビリアの理髪師』では、18世紀のセビリアを舞台に、ロジーナの遺産を狙う後見人のバルトロによって囚われの身の状態にあるロジーナとアルマヴィーヴァ伯爵との恋をバルトロの家に出入りするフィガロが取り持ちます。
第1幕
バルトロの家のバルコニーの下でロジーナに対する恋心を歌うアルマヴィーア伯爵。そこにフィガロが陽気に登場する。(「町の何でも屋」)ロジーナがこっそり下に落とした手紙から、アルマヴィーア伯爵はロジーナの現在の境遇と伯爵の身分や名を知りたがっていることを知る。伯爵はリンドーロという名の貧乏学生だと偽り恋心を歌う。伯爵がバルトロの家に入る方法を考えるよう報酬を餌にフィガロに言うと、フィガロは軍人の酔っ払いに扮するように伯爵に提案する。そのころバルトロの家では音楽教師のバジリオがアルマヴィーア伯爵がロジーナに気があるとバルトロに告げ、バルトロはロジーナとの婚姻を進めようとする。一方、フィガロからリンドーロも自分を好いていると告げられたロジーナは舞い上がる。フィガロはロジーナに彼に手紙を書くように勧める。フィガロが退室後、便箋が足りないとバルトロが問い詰めているところへ兵士に扮した伯爵がやって来る。兵士はバルトロを罵倒しながら自分がリンドーロであると告げロジーナに手紙を渡す。バルトロが取り上げるがそれはただの洗濯物のメモになっていた。大騒ぎのはてについには本物の兵士まで来る始末。
第2幕
音楽教師ドン.アロンソに扮した伯爵がバルトロの家を訪れる。病気のバジリオに代ってやって来たというもバルトロが信じないのでロジーナの手紙を見せる。さらにはリンドーロが伯爵にロジーナを売り渡すつもりだと吹き込む。ロジーナは喜んでアロンソことリンドーロからレッスンを受ける。フィガロはバルトロの注意を上手く2人からそらす。そこに本物のバジリオがやって来て一悶着あるも、金を握らせて上手く言いくるめて追い返す。フィガロがバルトロのひげ剃りをする間に「伯爵」はロジーナとの駆け落ちの約束をする。しかし残された2人の会話から音楽教師が変装であることを見抜いてバルトロが怒りだし、伯爵とフィガロは逃げ出す。アロンソの正体が気になるバルトロはロジーナにアロンソから渡された手紙を見せて婚姻をせまる。ショックのあまりロジーナはリンドーロとの駆け落ちを打ち明ける。
真夜中、伯爵は(リンドーロとして)フィガロとともに再びロジーナのもとを訪ねる。ロジーナに不実を問い詰められると、「このリンドーロこそがアルマヴィーアだ」とようやく正体を明かす。ところが逃げようにもバルコニーから梯子が外されていた。そこにバルトロの命でバジリオが公証人を連れて現れると、フィガロは機転を働かせてさっさと伯爵とロジーナを婚約させてしまう。遅れて現れたバルトロに伯爵は改めて正体を明かす。既成事実化した婚約はバルトロといえども覆すことができない。結局、当初の狙いだったロジーナの財産を分け与えることで一件落着。
参考文献
音楽之友社(編)スタンダード.オペラ鑑賞ブック イタリア.オペラ
音楽之友社,2023
60 死の舞踏(小説版)抜粋
「幽霊が出現する十二時前に、人びとは結婚式の席についていた。最初の鐘が低い音で響きわたるや、婚礼の踊りで好まれるあの馴染みの曲が聞こえてきた。毎晩繰り返される幽霊現象がまだ終っていたいのではないかと大いに怯え、結婚式の客たちが窓に駆けよると、風笛吹きが白い死装束をまとった者たちの長い隊列を率いて式場に向ってくるのが見えた。風笛吹きは下の玄関口で立ちどまりあらためて楽器を吹くと、行列はそろりそろりと上の結婚式の大広間へとのぼっていった。するとそこで招かれざる蒼ざめた顔の客人たちは眼をこすり、まるで眼を覚ました夢遊病者のように怪訝そうにあたりを見まわしたのである。結婚式の出席者は椅子や机の後ろに逃げて隠れていた。やがて到着した人びとの頬が赤く染まり、青白い唇も薔薇の蕾や柘榴の花のように色づきはじめ、するとその場にいた人びとは慣れ親しんだ口調で名前を呼びあい挨拶をかわした。互いに相手が誰だかわかったのである。死人のように蒼ざめ、今新たに生気を取り戻した人びとは、死に装束に身を包んではいたものの、突然死んでしまったナイセの町の乙女たちにほかならなかったからだ。娘たちは魔法の眠りから眼覚め、マイスター.ヴィリバルトの服魔法の笛に導かれ結婚式の広間に連れてこられたのである。魔法使いのヴィリバルドは別れ際にもう一曲陽気な曲を吹いて姿を消した」(識名訳『幽霊奇譚』pp319−320)
59 死の舞踏(小説版)抜粋
「塔の時計が十一時を打つと、墓堀り人の家の戸口を叩く音がはっきりと聞こえた。墓堀り人の親方が儲け話かと思って戸を開けると、そこには埋葬されたはずの風笛吹きその人が立っていた。「わしのバグパイプ!」風笛吹きヴィリバルドは落ち着きはらって言うと、ガタガタ震えている墓堀り人の眼の前を通りすごし、暖炉のある壁からバグパイプを奪いかえした。それから墓石に身をあずけ笛を吹いた。すると前の晩と同じように舞踏会の客人たちが現れ、夜中の墓場で踊るために集まった。しかしこの夜の楽師は行進曲を吹いた。そして長い行列を引きつれ墓地の門を通り抜け、町中へと繰りだしたのである。楽師は夜中の衛兵パレードを先導して町じゅうの道という道をねり歩き、それは教会の鐘が十二時を打ち、全員が再び墓のなかに戻るまで続いた」(識名訳『幽霊奇譚』p.318)
「翌晩にも幽霊じみた死者の隊列が再び町に現れた。音楽こそ聞こえなかったが、踊り手たちの動きを見れば、<おじいさんの踊り>の曲調に合わせて踊っているのがわかった。しかも今度は前の晩よりももっと悲惨なことになった。幽霊たちは年頃の処女やお嫁さんがいる家の前で立ちどまり、くるくる廻りながら踊ったのだが、その踊りの輪のなかにその家の処女に似た影がはっきり見えたのである。亡霊たちは処女のために夜の結婚式を祝って踊っていたのである。翌朝の町は、まるで大きな死体仮置き場と化した。というのも踊る影として目撃された処女たちは全員突然あの世に旅立ってしまったからである。翌晩も同じことが起きた。踊る骸骨たちはあちこちの家の前でくるくると廻り、連中に軒下で踊られた家では翌朝になると、花嫁さんか生娘が亡くなっていた。」(同pp318−319)
このような経緯でヴィドとエマの結婚式が執り行われることになりますが、ここにもヴィリバルドが現れます。
58 死の舞踏(小説版)抜粋
ハーメルンの笛吹き男とは、笛の音によって大量の鼠を誘いだし、追い出したにも関わらず約束された報酬がもらえず、今度はその街の子どもたちを同じように笛の音で連れ出した、という有名な逸話です。

火刑を前に亡くなり埋葬されたはずのヴィリバルドに起きた出来事は次のように描写されています。
「夜中の十二時より前に、月の光に照らされ、マイスター.ヴィリバルドが教会の壁ぎわのお墓から這いだしてくるのを目撃した。ヴィリバルドはバグパイプを抱え、月明かりを浴びせられるように背の高い墓石に身をあずけ、おもむろに吹きはじめたのである。生前と同じ慣れた指さばきだった。見張り番たちがヴィリバルドの顔を不安の面もちで見ていると、教会墓地の墓石がいくつも開きはじめた。骸骨と化した住人たちがつるつるの頭蓋骨を突きだし、あたりを見まわすや、曲の拍子に合わせて首を振りふり、身体を地上に出して、手足をカタカタと鳴らしながら、軽快な踊りを披露したのである。霊廟からも教会の迫持からも、眼窩や墓の盛土の上にできた舞踏場へと視線を向けていた。骨と皮だけになった腕が鉄格子の門をかまびすしく揺らすと、鍵や錠が外れ、踊り好きな骸骨たちがねり歩く道が、死者の舞踏会への道が拓けた。いまや、身のこなしも軽やかな骸骨の踊り手たちは、墓の盛土や石の上を闊歩し、陽気な昔の舞曲に合わせ跳ねまわっていた。白装束が痩せ細った骨ばかりの手足にまとわりついて風になびき、教会の塔の鐘が十二時を告げるまで踊りは続いた。すると鐘の音を聞くや、踊り手たちは窮屈な自分たちの地下のねぐらへと戻っていった。楽師ヴィリバルトもバグパイプを小脇に抱え、踊り手たち同様、安息の場へと帰っていった」(識名訳『幽霊奇譚』pp.316−317)
「十一時の鐘の最初の音が打ち鳴らされるや、彼はおもむろに地上に這いだし、墓石に身をあずけ演奏をはじめた。舞踏会の客たる亡霊たちは、音楽がはじまるのを待ちかねていたようだ。というのも最初の音が鳴りわたるや、墓地や霊廟から、草繁る丘や重たげな墓石の下から、遺体や骸骨が大挙して地上に踊りでた。服を身につけている者もいれば、裸のままの者も、大柄な者も小柄な者も、てんでばらばらにねり歩き、くるくる踊りまわった。踊り手たちは楽師が奏でる節まわしに合わせ、ときに速く、ときにゆっくりと楽師をとり囲んで楽しそうにワルツを踊った。舞踏会は教会の塔の鐘が十二時を打つまで続き、それから踊り手たちと楽師は墓へ帰っていった。」(同p.317)
57 死の舞踏(小説版)抜粋
まず、亡くなる前のヴィリバルドの演奏を聴いた人々の反応は以下のように書かれています。
「ヴィリバルドがそのメロディーを奏ではじめると、おすまし顔の美女でさえ踊りを断れず、腰の曲がった老貴婦人でさえ再び足を動かして、白髪のおじいさんまで若い盛りの孫娘とぐるぐる踊りまわった。そのため、この踊りは年老いた父親たちを若返らせるものとして、最初は冗談半分、いつしか世間一般に(おじいさんの踊り)と呼ばれるようになった」(識名訳『幽霊奇譚』p.312)
「このときマイスター.ヴィリバルトは一本の柱のそばに立ち、彼の十八番の<おじいさんの踊り>をいかにも愉しそうに吹きはじめた。市民の誰もがお気に入りのメロディーが鳴りわたるや、苦々しげな表情も頬を緩め、しかめ面の眉間の皺も消え、怒りで振りあげられた拳からは槍や着火用の輪が滑り落ち、猛然と押しかけた者たちもメヌエットの拍子に合わせて行進しだしたのである。ついには群衆全員が踊りだし、騒然としていた広場が楽しいダンス会場へと変わってしまった。風笛吹きが魔法の楽器を吹きながら町中のありとあらゆる通りを先へと進めば、人びとの行列は風笛吹きのあとにつき従い、市民は全員、踊りながら自分の家へと帰っていった。ー」(同p.314)
ところが前述の通り、ヴィリバルドの願いがヴィドをエマと婚約させることと知るや否や、代官は「自分の権威が侮辱された」と感じ、「市民の秩序を乱す敵」としてヴィリバルドを収監し約束を反故にしようとします。ヴィリバルドを刑事裁判にかけ、ハーメルンの笛吹き男(鼠捕り)と同一人物であるかのように扱い、「ハーメルンでは子どもたちを、この町では大人たちを自分の演奏に合わせて踊らせた(識名訳)」と訴えます。
56 死の舞踏(小説版)A
翌日、今度は音楽は聞こえなかったが死者たちは踊りをやめなかった。恐ろしいことに年頃の娘(嫁入り前の娘)がいる家の前にくるとその前で死者たちは立ち止まり踊っていった。その輪にはなんとその家の娘の影が見えた。あろうことか翌日、影になった娘たちはもれなく不審死を遂げていた。翌晩も同じことが続いた。これ以上、娘達を犠牲にするわけにはいかないと、町の住人たちは代官が首を縦に振らなければ、自分たちで無理矢理にでもエマを連れ出し、ヴィドと婚約させようとした。代官も折れるしかなかった。
こうしてヴィドとエマの結婚式が行われた。やはりヴィリバルドが現れ、婚礼の場で鳴らされる曲(おじいさんの踊り)を吹き、死に装束に身を包んだ者たちが入ってきた。ところが、その頬に赤みがさしはじめ、生気を取り戻すと、何とそれは死んだはずの娘たちだった。もう一曲だけ吹くとヴィリバルドは消えてしまったが、こうしてかつてヴィドと彼が交わした約束は守られた。その後もヴィドは精霊でありマイスターであるヴィリバルドの加護を受け続け、画家としても成功した。「死の舞踏」の絵画として現在ドイツ各地で広まっているものは、ヴィドがナイセの町で経験した出来事を描いた絵の模写や複製だという。とはいえ残念ながら我々はそのオリジナルを目にすることは叶っていない。
識名章喜(訳)『幽霊奇譚 ドイツ.ロマン派幻想短篇集』より
ヨハン.アウグスト.アーベル(作) 死の舞踏 
図書刊行会,2023
55 死の舞踏(小説版)@
舞台はシレジア地方のナイセという小さな町。ヴィリバルトという楽師が奏でる風笛を聞くと誰もが踊りだした。ただ一人ヴィドという画家の若者を除いて。彼の心も視線もエマという娘に注がれていた。エマの方もヴィドを好いていた。問題はエマの堅物な父親がナイセの代官であること。代官は娘の身分違いの恋によって威厳が損なわれることを良しとしなかった。ヴィリバルトがヴィドへの協力を申し出るも、ヴィドは出来ることなら自力で代官に認めさせたかった。一方でナイセの町の住人も代官には良い印象を持っていなかった。大したことがないにもかかわらず、かなりの罰金を払えなければ監獄送りになったり、年に一度の葡萄酒市でも、代官は収益の全てを上納するように命じていた。とうとう住人の堪忍袋の緒が切れたとき、ヴィドの頼みを聞き入れてヴィリバルドは風笛(バグパイプ)を吹いた。住人たちは怒りを忘れて踊りだした。そこで代官はヴィリバルドに感謝の印として望むものを与えようとした。ヴィリバルドはヴィドの想いを叶えようとしたが、それだけは代官は首を縦に振ることはなかった。ヴィリバルドが抗議すると、彼を収監し、「ハーメルンの笛吹き男」と重ね合わせて告発した。すると、住人たちは手の平を返すように司法手続きを進める者やら、火刑用に薪の費用を概算する者やら火刑の際にならす鐘の準備をする者やらが現れたが、なんとヴィリバルトはその前に監獄の藁の寝床に横たわって死んでしまった。
代官は彼の生前の遺言に従い、ヴィリバルドの遺体と一緒に風笛も埋葬することにした。ところが翌日の夜から奇妙なことが起こり始めた。墓からヴィリバルドが這いだし風笛を吹くと、墓に埋葬されていた骸骨が夜中の12時まで演奏に合わせて踊り出したのだ。代官がヴィドを収監して問いただすと、代官が約束を守らないからだとヴィドは応えた。そこで代官はヴィリバルドの墓を移すことにしたが、その際、墓堀り人は元凶となる風笛をも掘り起こして自分の家の壁にかけた。するとなんとヴィリバルドが戸口に現れて、風笛を墓堀人から奪い返した。そして墓石のところで行進曲を吹くと、骸骨たちは踊り出すばかりでなく町へと繰り出して行った。そして12時になると再び骸骨は墓へと戻った。それでも代官は忠告に耳を貸さず、そればかりかヴィドを火刑台送りにしようと考えた。
54 黒猫のワルツ
死の舞踏を象徴する骸骨のダンスと白雪姫をあらわしているような赤いリンゴ。

53 黒猫のワルツ
賢者たちの目の前にガラスの棺が現れ、シーツがまわりを取り囲みます。それはまるで葬儀のよう。その時、オーエンが目の前に現れた紫のリンゴを口にいれると天井の覆いが取れて紫の破片が飛び散ります。ファウストはその破片で三角帽子を作り、辺りを飛んでいた恥ずかしがり屋のコウモリを収めます。するとコウモリは猫に変わりました。まもなく音楽が響き舞踏会が始まりました。ミスラは黒猫をダンスに誘います。すると三角帽子を被った13枚目のシーツが現れミスラの手を取りました。ひとしきり踊ると、13枚のシーツは消えて13枚の花弁が残り、さらにそれらがひとつにまとまって赤いキャンディーアップルが現れました。それこそがミスラを深い眠りに誘うはずでした。ところが、これまでの展開を白雪姫の物語に重ねてしまった賢者はミスラを制します。


52 黒猫のワルツ
骸骨が12体しかいなかったので賢者がもう1体の死体を演じることに。姿は見えないものの、何となく末の令嬢の存在を感じる賢者。恥じらいながらもシーツ姿の令嬢たちが骸骨と踊ったことで次の道が開けました。ここからは、スノホワに因んで白雪姫をなぞるように物語が展開していきます。ヒースとアーサーはダックアップルに挑戦。ラスティカがリンゴを齧り、ネロはキャンディーアップルを作ります。さらにホワイトが鐘を鳴らしました。



51 黒猫のワルツ

東の任務先に突然現れたミスラ。眠れないことでかなり苛々している様子。夜、再び訪ねると方法を見つけたといって、ヒース、アーサー、ラスティカ、ネロ、ホワイト、ファウスト、オーエンを次々と呼びつけます。狙いはキャンディーアップル。手にするためには伝承をもとに、儀式の手順を踏まなければなりません。そのためにまずミスラが行ったのは墓場から騎士の骸骨を掘り起こすことでした。




50 黒猫のワルツ

もう一つミスラのイベストの下地になっているのが死の舞踏です。2020年のハロウィンのイベストでは、眠れないミスラが特別なキャンディーアップルを手に入れて願いを叶えようとします。その前半の内容が、死の舞踏の内容と符合します。
49 ミスラの覚え書き
雪原、息吹を吹き込まれた骨や死骸の累積、ミスラへと注がれる怨念、ここまでの2つのイベストは、フランケンシュタインを元にしていると思われます。フランケンシュタインは怪物を作り出した人物の名前です。ところが、いざおぞましい怪物の姿を目の当たりにするとフランケンシュタインは怪物を放り出してしまいます。そして怪物は彼の前から姿を消します。人々に忌み嫌われるなら何故自分は生まれたのか?孤独に苛まれた怪物はフランケンシュタインへの復讐の念を募らせます。そしてフランケンシュタインの弟を手に掛け、一家に恩を感じ尽くしていたはずの小間使いの少女にその罪をきせ、結果的に小間使いは無実の罪で処刑されてしまいます。唯一それが己が生み出した怪物の仕業だと感じとったフランケンシュタインは罪悪感に苛まれます。そして、怪物はフランケンシュタインに姿を消してからの日々を語りはじめます。
48 宿屋のファンタジア

47 宿屋のファンタジア



そこで魔法使いたちは宿ごと潰すことにしますが宿の周りには集落があり、人々の営みがあります。南の魔法使いたちは障壁を張り、彼らを守ろうとします。
46 宿屋のファンタジア




何者かは宿に賢者と魔法使いを閉じ込める算段のようでした。南の魔法使いは戦闘を北の魔法使いに任せて他に取り残された人がいないか調べます。幸い、今いる賢者と魔法使いの他に客はいないようです。肝心の宿の主人は、魂を少女の姿をした人形に閉じ込めて潜んでいました。その間に宿を乗っ取った何者かは、長い間ミスラへの恨みを募らせていました。
45 宿屋のファンタジア
その何者かは眠気を誘うベッドを手始めに賢者たちに容赦なく襲いかかり、骸骨を差し向けます。ですが次第に相手かミスラに絞られていることに賢者たちは気づきます。

44 宿屋のファンタジア
過酷な北の国の中では穏やかな方の平原にある宿。中は呪術の道具だらけ。一見気味の悪い外観ですが、これにより願いを叶える宿の力を高めているといいます。宿から聞こえる声はミスラに反応。ところが、どうやら良からぬ者が主人に成り代わり潜んでいるようです。


43 宿屋のファンタジア



42 宿屋のファンタジア



ストーリー冒頭。激しく争うミスラとオーエンを仲裁したのはやはりオズでした。この下りが以前に書いたマザーグースの詩を思わせます。共同生活を円滑にするため、北の魔法使いは南の魔法使いとともにパジャマパーティーを催すことにします。場所として選ばれたのは以前、双子からてひどい目にあって以来、主人が二人の言いなりになりながら管理も任されて営んでいる宿でした。何でも至れり尽くせりで希望が叶う宿らしいですが、この設定はアーサー王の聖杯伝説に基づくものと思われます。
41 紅蓮の大地で遊ぶ愛し子


魔法使いが魔法を使うには、心や気質がその土地の精霊のものと呼応している必要があります。ミスラが戦う間に大分、北の大地の精霊の怒りに触れてしまいます。今回の編成は、ミスラ、スノウ、オーエン、オズといった北の気質を熟知した魔法使いとクロエ、ムル、ラスティカ、カインといったそれ以外の魔法使いで構成されています。どうやら、フランケンシュタインや元になった幽霊譚にまつわるメンバーとアーサー王物語を意識して選ばれたメンバーで構成されているようです。アーサーのミスラへの祝辞はこのイベストを受けてのことだと思います。
40 紅蓮の大地で遊ぶ愛し子
小動物を大体誘導し終えた頃、クロエは耳飾りを片方なくしたことに気付きます。ミスラの戦闘の最中、来ていないシャイを除いた西の三人は耳飾りを探して火口付近にやってきます。クロエにとっては、ミスラが見つけた原石を削って作った唯一無二の耳飾りだったのです。





今まで怖いという印象が強かった北の魔法使い、特にミスラに対するクロエの印象が変わったのはこのストーリーがきっかけかもしれません。
39 紅蓮の大地で遊ぶ愛し子
ディアウグルは蘇るだけでなく、チレッタの魔法が施された影響で封印された時よりも強化されていました。さらに麓にはまだ小動物が取り残されています。そこで魔法使いたちはディアウグルとの戦闘をミスラに任せて、クロエやカインを中心に結界の中に誘導することにします。


38 紅蓮の大地で遊ぶ愛し子
夜眠れないミスラのために晶が提案したのはサウナ。ミスラは以前、ノーヴァやブラッドリーを飛ばした火口を臨む紅蓮大地へバカンスに行くことに。かつてミスラはチレッタと修行していた頃にディアウグルという魔法生物と闘いました。倒しきれずにディアウグルはチレッタに封印されました。その場所が紅蓮大地だったのです。そして厄災の影響でディアウグルの封印が解かれ火山に近い場所に生息していた獣を食い荒らしたため、そこだけ獣の骨が散らばる異様な光景が広がっていました。


37 ミスラ祝誕
2月8日はミスラの誕生日でした。






クロエの発言は、どちらかというとステのミスラと重なる気がします。ミスラはチレッタから引き継いだ水晶の髑髏を魔道具にしており、呪術や占いの知識があります。チレッタとはルチルとミチルの兄弟を守ると約束しており、そのためにミチルにマナ石を食べさせ、結果、ミチルはチレッタの呪文を使えるようになります。また、2部で東の魔法使いが瀕死の状態に陥った際は、シノの求めに応じて馳せ参じます。力ずくで物事を解決しようとすることが多かったミスラですが、南の兄弟とのやりとりを通じて別の手段をとる姿が見られるようになります。

ムルの発言に見られるミスラの外見はどうやらフランケンシュタインを意識しているようです。実際、育成エピソードでは蘇生術を試そうとして手酷く失敗する様子が語られます。
36 月の召喚術の失敗
クックロビンを探して月蝕の館を訪れた賢者の前に、厄災の傷の影響で実体化したムルの魂の欠片の1体が現れます。そこで聞かされたのは、誰かが大いなる厄災を招こうとしたものの、贄に死体を使ったことで儀式が変質したという衝撃の内容でした。 
トビカゲリが出現した墓地を調べる東の動向が神曲や嵐が丘を元にしているのに対して、この月蝕の館での出来事は、幽霊譚の花嫁の話の中の遺体を調べる場面を元にしているように思います。


35 仮面のエチュード
他人の変身を見破る授業を終えたクロエが挑む記念すべき初任務は、西と中央の友好の印てあるはずの仮面が消えて、夜な夜な城内を謎の人物がうろつく異変の解決でした。外交問題の解決のために若い魔法使いをだしに使い、初舞台を汚したとシャイロックはフィガロにご立腹の様子でー


34 死の花嫁
クロエが挑む初任務、仮面のエチュードの元ネタもおそらくは「幽霊奇譚」に収録されている一話の一部分です。さらに侯爵は魔術師アブラハムを思わせ、「牡猫ムルの人生観」に通ずる部分もあり、ウンディーネに似た話も織り交ぜるなどラスティカの(探し求めている)花嫁の話にもつながっていそうなので、以下にあらすじを紹介。
社交の場でも一際注目を集める侯爵が、その場に集ったご婦人方と騎士に語ったところによると、
グロボダ伯爵には双子の娘リブサ(姉)とヒルガルデ(妹)がいた。ヒルガルデの方は既に亡くなっていたが、リブサはヴェネチア被れのディ.マリーノ公爵に求婚される。聞けば公爵はリブサと絵画館の肖像画の前で出会い見初めたという。ところが当のリブサには外国へ出かける機会はなかった。一方、公爵が見かけた人物のうなじにはほくろがあった。それは亡くなったヒルガルデの特徴だった。
念のため伯爵は侯爵と深夜の霊廟で墓あばきを行ない、確かにヒルガルデの遺体が納められていることを確認する。さらに公爵にはアポローニア女伯爵との間に後ろ暗い過去があった。そこで侯爵は例え話として以下の話を持ち出す。
フィリッポ(仮名)という男がクララという女性との固い誓いを破って心変わりを起こす。新な女性、カミラとの婚約パーティーに仮面の婦人が現れる。婦人は身につけているはずの指輪を無くしたばかりのカミラと同じ装飾の宝石を身につけ、しきりに新郎新婦に目を向けていた。さらに晩餐用の食器の数とその場の「招待客」の数が合っていなかった。婦人の手にする高価な花束も気になっていたカミラの父に求められても、婦人は頑なに仮面を取ろうとせず、その場から消えてしまう。さらに2人の結婚式を執り行うはずだった司祭は当日悪寒を感じ部屋から出られないほどの容態で別の聖職者を選ぶよう助言するも、二人はこの司祭を望んだ。ところが司祭は既に死の床にあった。加えてフィリッポのもとにクララの訃報が届く。当のフィリッポはカミラとの結婚式を前に見知らぬ女性の影に怯え続けていた。結局結婚式が行われることはなく、カミラは気を失い、フィリッポの方は痙攣を起こして死んだ。カミラの無くした指輪は教会から戻ってから宝飾箱で見つかった。
この話をひいてきたことで公爵の怒りを買った侯爵は拳銃で決闘する。決闘は、一発目で拳銃を払い落とし二発目は手元に命中した侯爵の勝利に終る。
それでもリブサは公爵と一緒になろうとするが、当の公爵は婚約パーティーの場で踊りに興じた挙げ句に花嫁と姿を消してしまう。ところが会場に現れたリブサの姿を見て伯爵夫妻は驚愕する。リブサはヒルガルデの部屋にいたという。実は村には以下の伝説があった。
「娘は節操もなく恋人を裏切ったため、恋人の男は死んでしまった。男の幽霊はまさに女の婚礼の夜に彼女を殺害した。ーそれ以来彼女の幽霊がこの地上で、絶世の美女の姿となって徘徊し、愛する者たちに浮気に走らせるという。亡霊は生身の肉体を借りることが許されないため、死者のなかからその美女によく似た人物を探しだし、のりうつって出るようになった。そのような理由から亡霊は家族の肖像画が陳列されているような大広間によく現れ、ー話によれば、娘は不倫の罰として彷徨い歩き続ける宿命で、誘惑されても応じない男が見つかるまで、亡霊は現れ続けるというのである。まだ彼女はその目的を果たせていないはずだー司祭の運命は女の亡霊のそれと切っても切れない関係にある。なぜなら、恋人を裏切った罪深い女の性を、司祭が引きうけねばならなかったからだ」(識名訳より引用)
つまり幽霊となったヒルガルデが花嫁の格好をして公爵を連れ去ったようだ。こうして公爵は報いを受けた。
さらにこの話を騎士にした侯爵も侯爵で士官に逮捕されたかのように見せかけて、同じ目的で本物の士官が現れたときには行方をくらました後だった。
参考文献
ヨハン.アウグスト.アーベル
フリードリヒ.ラウン
ハインリヒ.クラウレン(著)
幽霊奇譚 ドイツ.ロマン派幻想短篇集より
F.ラウン 死の花嫁
識名章喜(訳)
図書刊行会,2023
余談ですがヒッチコックの映画、「めまい」はこの話を元に創作されているように思います。
33 魔法使いの約束オケコン実施
1月27日(夜公演のみ)に開催され、2月2日まで配信されていた
魔法使いの約束オーケストラコンサート Musica Anniversario。
司会は西師弟、ラスティカ(声/三浦さん)とクロエ(声/天崎さん)
でした。曲目は、月に愛された世界、21人の魔法使いのテーマ(称号ごと)、5周年テーマ曲、Cast Me a Spell、5か国別テーマ曲。
32 石井聡美 
より正確には、イベント最終日の29日が今年のテトで今はベトナムは政府公認の休暇期間中のようです。それと、イベスト最初のスノウの失敗は火と水の譲渡はダメというところに掛けたミスかも。
31 石井聡美 竈の神様
現在、まほやくではネロが主人公のイベストが展開中。尚、期間中がどうやら今年のベトナムの旧正月を祝う祭り、テトに当たるそう。鯉が天を昇り、ちまきに似たものを食すところが端午の節句をやや思わせます。テトにおいて信仰されているのは竈の神様。三体で一つの体をしています。というのも悲しい物語が背景にあるようです。ある夫婦が仲違いをシテしまい、妻は裕福な男と再婚します。その後、別れた夫は物乞いになり元妻を頼ります。現在の夫に知られるとまずいので藁に隠しますが、あろうことか事情を知らぬ現夫が藁に火をつけてしまうのです。しかし、元夫は元妻に迷惑をかけぬようそのまま死のうとします。それを見ていられずに元妻がさらにそれに驚いた現夫が火に飛びこんで、天帝が彼らの愛に報いた形でそのような姿になったそうです。テトにはルールが幾つかあり、喧嘩、皿を割る、白か黒の服を着る等のことは避けます。なので今回の魔法使いのコックコートもフィガロやラスティカも厳密な白ではないはず。元の話を聞けばレノやフィガロという人選も頷けます。とはいえ、弔いの意も兼ねての食事会なら、一番働かなければならない人たちが働いていないような?他にもウンディーネや幽霊譚を踏まえて今回の人選になった模様。
30 鏡の国のアリス
以下は新潮文庫の矢川澄子訳。
「どうもすみません」アリスはそれだけ言うのがやっとでね。なにしろあのおなじみの歌の文句が時計のチクタクみたいに頭に鳴りひびいていて、いまにも口をついて出そうだったんだ。
ソックリダムとソックリディー
一戦交えることにした
ソックリダムの大事なお初のガラガラ
ソックリディーがこわしちまったからだ
そこへとんできたきた怪物カラス
黒さも黒しタール樽そこのけ
二人の勇士もこれにはゾゾゾ
さしものけんかもどこへやら
29 鏡の国のアリス
ルイスキャロル作の「鏡の国のアリス」でも、トイードルダムとトイードルディーの双子が出てくる場面で、以下のように引用されています。
原文は同じく「英文学の中のマザーグース」より。
“I'm sure I'm very sorry,” was all Alice could say;for the words of the old song kept ringing through her head like the ticking of a clock,and she could hardly help saying them out loud:ー
“Tweedledum and Tweedledee
Agreed to have a battle;
For Tweedledum said Tweedlde
Had spoiled his nice new rattle.
Just then flew down a monstrous crow,
As black as a tar-barrel;
Which frightened both the heroes so,
They quite forgot their quarrel.”
28 大烏には逆らえない
テレビアニメ、魔法使いの約束の第2話では北の魔法使いとオズが登場。
北の魔法使いはオズに逆らうことができません。それは以下のマザーグースに由来するものと思われます。
※強化能力のあるブラッドリーがいない時、オーエンとミスラは基本そりが合わずしょっちゅう喧嘩します。
以下は、藤野紀男(著)、『英文学のマザーグース』より。
Just then flew by a monstros crow,
As big as tar-barrel,
Which frightened both the heroes so,
They quite forgot their quarrel.
ちょうどその時タールだるほどもある
巨大なカラスがそばを飛び過ぎたので
2人の英雄はふるえあがってしまい
けんかのことなどすっかり忘れてしまった
27 寄り道A
アニメ魔法使いの約束の放送が迫ってきました。
放送開始日&局を一部載せておきます。
TOKYOMX 1月6日 22時〜
BS-TBS  1月7日 23時30分〜
MBS   1月7日 27時30分〜(=1月8日3時30分〜)
配信
1話同時配信 DMMTV 1月6日 22時〜
以下 1月11日(土)22時から。
順次配信 AMEBA,dアニメストア,Hulu,T-ver,TELESA,FOD,
     U-NEXT,バンダイチャンネル etc.
   都度課金制 GooglePlay,Youtube等
26 寄り道@
舞台魔法使いの約束。12月1日でホワイト、クロエ、ラスティカが100公演目を迎えました。
さらに12月22日のエチュードpart2の大阪公演終了後、
12月29日にはオーケストラ音楽祭seriescollectionを終え、
無事に全日程完了しました。
12月29日をもってオズ役の丘山晴己さんは卒業を迎えました。
そして、賢者晶と魔法使い21人の旅はまだまだ続きます。
この度、1.5部「きみに花を空に魔法を」の舞台化が決まりました。
25 迷子の子羊

5周年イベント中は魔法舎を歩く魔法使いに遭遇する特別仕様でした。ここでも羊を探すレノの姿が。
24 レノの羊
11月30日に、まほステエチュード後半戦が開幕しました。雨宿りのエチュードの主人公、レノックスは羊を小さくして魔法舎に持ってきており、一緒に旅もしています。ただ、この羊は迷子になりがち。
エチュードではメエメエがあやうく厄災の傷を負って幼児化したオーエン(略称、傷オエ)の玩具になるところでした。その原因はおそらく、これらの詩にあるのではないかと思われます。
(メリーもボー.ピープも女の子ですが)
以下訳はどちらも鳥山敦子氏。
Mary had a little lamb,      メリーさんの羊
Its fleece was white as snow;  ゆきのように 白かった
And everywhere that Mary went  メリーが行くとこ どこにでも
The lamb was sure to go.    羊は かならず ついていった

Little Bo-peep has lost her sheep, 
And can't tell where to find them;
Leave them alone,and they'll come home,
And bring their tails behind them.
Little Bo-peep fell fast asleep,
And dreamt she heard them bleating;
But when she awoke,she found it a joke,
For they were still a-fleeting.
Then up she took her little crook,
Determined for to find them;
She found them indeed,but it made her heart bleed,
For they'd left their tails behind them.
ボー.ピープちゃんの 羊が迷子
どこをさがしていいかわからない
ほうっておきなさい もどってくるから
ちゃんとおしりに しっぽをつけて
ボー.ピープちゃん ぐっすりねんねして
羊が鳴いてる夢をみた
でも 目をさましたら それはそらみみ
羊は 迷子になったまま
ボー.ピープちゃん 杖を 手にとり
ぜったい 羊みつけようって 心にきめた
やっとこさ みつけたけど がっかり
しっぽを どこかに忘れてきちゃんだもん

因みにtailをtale(物語)に置き換えると、レノの捜し物は羊ではなく、ファウストとも言えるかもしれません。ようやく再会できたファウストは過去の英雄譚から逃れたがっているように見えます。さらに、厄災との戦いを経てファウストが負った傷は、見ている夢が外に漏れ出すというもので、最初に異変が起きた場にはレノもおり、東の国に結界を張るための媒介を取りに行くというファウストに同行します。
23 皇帝の新しい服
5周年ではまたしてもクロエが賢者を入れて22人分の新しい衣装を用意します。更に今回は中央の国の職人に特別に作らせた指輪も用意されていました。クロエの誕生日での発言から考えると、口利きをしたのはどうやらアーサーの様子。まほやくでのクロエの旅路はアンデルセンと重なるものがあります。(クロエの夢は仕立屋です。アンデルセンも母親に仕立屋の職を勧められますが性に合わず、舞台役者の見習いのようなことをした後、人より大分遅れて学校生活を送り、数回にのぼる外国旅行を経て(児童文学)作家として世界に知られるようになります。旅行の間にヴィクトルユゴーやディケンズとも会っています)アンデルセンの著作の中で、今回の周年イベストのように宮廷お抱えの仕立屋が出てくるのが、裸の王様こと、皇帝の新しい服です。
あらすじ
ある国の皇帝は政務よりもめかし込むことに熱心で一時間ごとに着替えをしては見せびらかしていた。ある日、皇帝のもとに二人のペテン師が服を仕立てるという名目でやって来る。彼らは役職にふさわしくない者やバカな者には見えないと方便を使った。自分の元にいる役人が本当に使うに足る人材か見極めたくて、皇帝は二人を雇うことにした。その実は全く機など織っていないにも関わらず、ペテン師の2人組は材料として王が与えた糸類(絹糸、金純金糸)は丸ごと自分たちのものにしていた。服の進捗を確かめるために皇帝はまず大臣を寄越した。勿論、ないのだから見えるはずはないが、自分の能力を疑われてはかなわないと、図案や凝った文様、色味などペテン師が語る言葉をそのまま皇帝に伝えた。糸が足りないと要求され、追加を皇帝が与えるとペテン師たちはそれも自分のものにした。次に別の役人を皇帝が視察に行かせると、その役人もまた大臣と同じ思いをした。そこででまかせの褒め言葉を並べ立てた。服の評判が都に広まり、皇帝は遂に自分の目で服を見たくなった。ペテン師たちは皇帝にも服の見事さを伝えるが、皇帝は見ることができない。大臣や役人をはじめ、自分だけが見えない、自分は愚か者でその職に就くには不適合者だと思われたくないと、皇帝もまた服を褒めそやし、おつきの者も同調した。ペテン師2人にはボタン穴用の十字章と称号が授与され、遂には皇帝は(実際にはありもしない服が)完成した暁には行列の先頭に立って民に披露することにする。皇帝が服を脱いでしまうとペテン師たちは着付ける振りをする。またしても周りにいた者はいぶかしみながらも服への賛辞を口にした。皇帝は存在しないマントの裾を持ち上げさせていよいよ街中に繰り出します。(服の噂は広まっているので)街の者も真実は口にしない中、唯一、「あの人、着てないよ」と口にした者は子どもだった。それでもその囁きはまるで波のように人々に確かに伝わっていった。こうして民は皇帝が気付かぬ振りをしていた真実を口にできた。かといってそのまま行列を止めるわけにもいかず、皇帝はそのまま進んだ。
参考図書
ハンス.クリスチャン.アンデルセン(著)
吉澤康子,和爾桃子(編訳)
夜ふけに読みたい 森と海のアンデルセン童話.平凡社,2024
22 東を示唆するマザーグース2
Jack be nimble,Jack be quick,
Jack jump over the candlestick.(wikipediaより)
ジャックが素早く、ひょいっとろうそくを超えていく。
ファウストのアミュレットが燭台であることを加味すると、ファウストの
お陰でジャックの品格のなさ(※詩のなかではそそっかしさや愚かさ?)が露わになる様子が出ています。
※飛び越えるタイミングを一歩間違うと、ジャックのお尻に火が点くなんてことにもなりかねません。
21 ジャックの印象
オズに師事したと嘘をついてまで、ヒースの両親に取り入ろうとしていたジャック。その心象の悪さは東の魔法使いたちの発言からも伺い知ることができます。

20 師匠についた傷



シノがつけた傷、一歩間違えばマザーグースの詩のようになっていたのでは?
19 東を示唆するマザーグース
ジャックが二人に互いを守ると約束させている設定は、おそらくこのマザーグースの詩の1番から。まさに共倒れ。
Jack and Jill went up the hill ジャックとジル 丘をのぼった
To fetch a pail of water;   おけに水をくみに
Jack fell down and broke his crown,
                 ジャックがころんで あたまにけが
And Jill came tumbling after. ジルもあとから ころがり落ちた

Up Jack got,and home did trot,ジャックは起きあがって
                   家へむかって
As fast as he could caper,   できるだけはやく 駆けてった
To old Dame Dob,who patched his nob
                   母さん ジャックのあたまに
with vineger and brown paper.  お酢と茶色の紙で しっぷした
鳥山 敦子(著).もっと知りたいマザーグース.スクリーンプレイ,2002

ヒースがオレンジの木を友人に見立てて話しかけ、シノがレモンパイを好物にしているのはおそらく以下の詩から。シノとヒースの場合は、お金を返す時がいつかの話ではなく「自分のことを話すのは英雄になれた時」と置き換えられます。最後の二行は二人を指導する、ファウストとジャックをそれぞれ示唆するのかも?
Orange and lemons,     「オレンジとレモン」と     
Say the bells of St.martin's. 鐘ならすよ セント.クレメント
You owe me five farthings,「百円貸した」と
Say the bells of St.Martin's. 鐘ならすよ セント.マーチン
When will you pay me?  「いつ払うのか?」と
When I grow rich,      鐘ならすよ オールド.ベイリー
Say the bells of Shoreditch.「払えるとき」と
When will that be?     鐘ならすよ ジョーディッチ
Say the bells of Stepney.  「それはいつ?」と
I'm sure I don't know.   鐘ならすよ ステップニー
Say the great bell at Bow.「知るもんか」と鐘ならすよボウ
Here comes a candle to light you to bed,
ベッドへと照らすろうそくが来るぞ!
Here comes a chopper to chop off your head.
ホラ おまえの首はねに 首切り人来るぞ!
オレンジとレモンの訳は鷲津名津江氏。
18 出張 若まほ図鑑
シノとヒースが喧嘩をするのは大抵、お互いが言葉足らずになり、相手の反感や不信感を煽ってしまうときです。特にシノはヒースの人柄を伝える言葉が乏しく、自分の過去の伝え方も未熟です。(4周年で前者については前進しました)狩人のバラッドでも、シノは魔物の討伐依頼を引きうけていましたが、英雄への道半ばと考えてヒースには報告しませんでした。1.5部では、ヒースはファウストの言葉をきっかけにシノとの距離のとり方を模索し始めます。折しも二人はミノタウロスの襲撃を受けます。一瞬シノはこれで自分が死ねばヒースの願い通りになると考えますがヒースに一喝されます。2周年にて、リケがミチルに約束を迫ったのを阻止したことで、シノとヒースは互いを守るという約束が縛りではなく、確かな絆の証であることを確認します。2部での経験はシノの内面を大きく成長させることになりました。東の魔法使いたちは魔法使いギルドの実態(現状)を確かめるべく、かつての本拠地であったらしいホテルを訪ねます。ネロとヒースが先に偵察に行っている間、シノはファウストに抱えていた不信感をぶつけます。シノはバラッドの依頼人を見つけ、東の国で起きている行方不明事件を聞きつけます。さらにホテルからネロとヒースの姿が消えてしまいます。ホテルは地下水路へと空間がつながっており瀕死のネロと黒豹のヒースがいました。シノはその正体がヒースであることをファウストに話します。ファウストは人造魔法使いとの戦いを一手に引き受け、ネロ、ヒース、また西の国の者たちの先導をシノに任せ、次期英雄として鼓舞します。結局、さらにつながっていた北の大地にたどり着いた時、ネロはブラッドリーにファウストはフィガロに介抱され、命はとりとめることが出来ました。その後、回復したファウストはシノとともにコルテーゼ領を襲っていたハリタスモルティファと戦うことになります。レノの話と、自らの人造魔法使いとの一戦の経験からファウストが体内のマナ石が狙い目だと気づき、最後は西の魔法使い、北の魔法使い、そしてカインが力を合わせることによって、西の国で起きていた変事の1つは解決することができました。これを境にシノは今まで積極的ではなかった座学や予習にも真面目に取り組むようになります。
17 出張 若まほ図鑑
11月26日はいよいよ5周年。現在、5周年ストーリーの中編まで読むことができます。何やら、魔法舎にシノの過去を知るらしい新たな魔法使いが現れたことでシノとヒースの仲が険悪モードに・・・そこで、二人の関係をプレイバック。
ヒースクリフ.ブランシェットは東の国の守りを固める名門貴族、ブランシェット家の次期当主です。両親は一心に愛情を注ぎますがヒース自身はそれを重く感じており魔法使いであることを申し訳なく感じていました。(叶わぬ吹雪に願いを灯してでは、フロスティが幼いヒースの心の隙間に入り込みます)シノは孤児でしたが、ブランシェット家に引き取られて以来、シノ.シャーウッドと名乗ります。今は森番を任せられており、同時にヒースの従者でもあります。2人は当初、ジャックという魔法使いに師事しますが、彼の罠にはまり、お互いを守るという約束をさせられてしまいます。(魔法使いは約束を守れなければ魔力を失ってしまうため、仮に弟子を敵を回すことになっても、ジャックは1人倒せばいいことになります)ジャックとヒースの二人は先に賢者の魔法使いとして召喚されファウストと出会います。ヒースはファウストに師事することを望みますが、ジャックはこの厄災戦で亡くなり、ファウスト自身も大怪我を負い、ヒースは賢者に助けを請います。(温室のラプソディでは、ヒースがオレンジの木を温室で友達のように育てていた思い出とともにカインやファウストなど前回の厄災戦を戦った者との日々も語られます)失った魔法使いの穴を埋めるため新たに召喚された魔法使いのなかにシノもいました。先の厄災と戦った者たちには魂に傷が残りました。ヒースの場合、当人のあずかり知らぬうちに黒豹と化し、敵、味方問わずに襲ってしまいます。シノはなかなかこの事実を打ち明けられずにいました。当初のヒースは主君として堂々と振る舞って欲しいというヒースの願いに反しているように見えました。黒豹化はヒースの願いが形に表れたものなのでしょうか。一方で、ニコラスが魔法使いを侮辱する発言をすると外交問題を持ち出して切り返すなどヒースにも芯の強さはあります。また向日葵のエチュードのように正式に魔法舎が稼働する前から当主代理として現地に赴いたり、真実の街の若い当主に寄り添ったり、東の祝祭や東のジューンブライドでは周囲から孤立して独自の風習を守っていたり、魔法使いを追い出すような態度をとる村に赴いても、弱き者や当事者の声に耳を傾け、人間と魔法使い、両者の間を取り持つなど責任感と優しさが垣間見えます。
16 2つのハロウィン
11月1日はオーエン、11月12日はクロエの誕生日です。一般的にハロウィンは10月31日ですが、実はもうひとつ日付が存在します。それが11月11日。
魔法使いであるオーエンとクロエがそれぞれにどんちゃん騒ぎをした悪者や死者たちが帰って日付を超えると誕生日を迎えるなんて、洒落てもいながら、両方とも魔法使いであることを恐れられてきたことをふまえると(オーエンは怪物のように思われ、クロエは偏見を受ける)どこか皮肉めいた設定にも思えます。というのも、そもそもハロウィンは正しくは「万聖節の前夜」のこと。本来は翌日の11月1日は「万聖節」というカトリックの祝祭の日なのです。hallowとは「聖なる名士(聖人)」を表す言葉です。8世紀半ば教皇グレゴリウス3世が殉教者の祝祭日を11月1日に移動し、全ての聖人の祝典にしました。100年後には教皇グレゴリウス4世が万人がその日を祝うことを求めました。それ以前からこの日は暦上、秋の終わりで冬の始まりでもあります。(因みに春を迎える祭りがワルプルギス)
何故11月11日にも似たような行事を行うのかというと、まずカトリック界隈では1582年、グレゴリウス13世が、それまでのユリウス暦では4世紀ごとに3日ほど誤差が生じることになり、復活祭の日を算定することが難しくなったため、グレゴリウス暦に変えるための署名をしました。ところがプロテスタント界隈ではそれよりも65年も前にドイツでルターが改革活動を行っていたのもあって、カトリック側が提示した新暦を受け入れることはなかなか難しく、古い日付で”ハロウィン”を祝う風習が残りました。新暦と旧暦の間にある誤差を計算すると11日分になるので、10月31日で祝う地域と11月11日に祝う地域があるのです。
また元々11月11日は収穫の守護聖人(並びに騎士、兵士、毛織物業関連者、物乞い、家畜、ホテル経営者、ワインの守護聖人でもある)聖マルティヌスに由来する祭日でもありました。11月10日に生まれたルターの名はこの人物から取られたものです。聖マルティヌス(聖マルティン)は城門で震えていた半裸の物乞いにマントを半分にして与えたといいます。この半裸の人物がキリストであるという説があり、マルティヌスが洗礼を受けるきっかけになったとされています。
参考資料
wikipedia
リサ.モートン(著)大久保康子(訳)ハロウィーンの文化誌.原書房,2014
15 5周年情報(記念特番)
youtube内で公開された5周年記念イベント関連情報+αがこちら。
オケコンと先行上映以外の現実世界で開催されるイベント情報、雑誌情報
ColyID情報は省きます。
★進行役4人(アーサー、カイン、ファウスト、シャイロック)により既に
 マナ石100個配布は決定。賢者様のx投稿の累積により50個追加なるか?
 #まほやく5周年合コン(〜12日)目標2万件
(前夜祭)
★カウントダウン国別ガチャ(既に南、西、東は終了)
★訓練に期間限定で「魔法舎の森」が登場。
★限定依頼
(魔法使いのアイテムをあつめて修練室で5か国分のタペストリーを作成)
★期間限定のシークレット依頼
有償限定2nd&3rdyearガチャ
★4th復刻ガチャ
★メインスト1.5部が期間限定解放
→★ピックアップ解放(2nd,3rd,4thアニバーサリー)
(5周年イベント)
★11月17日(18時)〜11月29日(12時59分)
ストーリー及ログインストーリーは都志見先生書き下ろし
※4周年まで履修してストーリーは読みましょう。
★祝宴の花束を集めよう!目指せマナ石110個!
★イベント中に厄災を倒してお座りサクちゃんをGET(〜29日)
→スペシャルアイテムショップでボイスや称号、背景と交換(〜12月6日)
5周年カード(全員SSR)もエフェクト付き。↓
5周年国別ピックアップガチャ&有償限定ステップアップガチャ開催
11月15日(18時)〜12月2日(12時59分)step3&step5 SSR確定
                    Step7 5周年SSR確定
★11月15日〜11月29日
 @最大165連無料ガチャ 毎日11連無料 
  11月26日当日は5周年限定カードも。
 A賢者レポート再登場
★11月21日〜26日で連続5日間ログインすると、
         ボーナスでマナ石300個GET!
★11月15日〜11月29日 魔法舎で魔法使いがお出迎え&
           サクちゃんから思い出のドロップをGET!
(機能関連)
★育成カード所持上限は 2100に。(100枠プレゼント)
★親愛度上限は     60に。
★ガチャポイント上限は一気に2桁up
★1月のアニメ化に合わせて親愛ストーリーのヴォイスが実装
★「予言の書」を全育成スポットで見られるように(予定)
(アニメ)
★1月6日〜7日が初放送日となります。
★OP主題歌はMiliさんが担当。「Year N」
12月10日、1話&2話先行上映会実施 丸の内ピカデリー 開場18時40分
                          開演19時10分
(オケコン情報)
1月27日 開場17時00分   開演18時30分 東京ガーデンシアター
              終演21時予定
MC三浦さん(ラスティカ)&天崎さん(クロエ)
ゲストCassie Weiさん
(商品情報)
@2025年1月22日〜 魔法使いの約束サウンドトラックCD第二弾発売
★Miliさんが魔法使いの約束5か国イメージ曲書き下ろし
中央の国 Process/北の国 Whiteout/西の国 Gluttony
東の国 Monsters in the Woods/南の国 Life We Sow
→5周年期間限定、5thイベスト&各育成スポットBGMにも採用。
Aレシピ本第二弾制作決定
14 ジタンの巡礼祭
※ジタンはフランス語でスペイン語ではヒターノ。
いわゆるロマの人々のこと。
こちらは同じマリアでもキリストの母親である聖母マリアではありません。
キリスト受難後、南フランスの浜辺に一艘の小舟が流れ着きました。
乗っていたのは、聖母の妹マリア.ヤコブ、ヨハネの母マリア、そして
マグダラのマリア。そのうちマグダラのマリアは一行と別れ、
残りの2人のマリアと侍女のサラは上陸地にとどまって一生を終えました。
その土地が後にサント.マリー.ド.ラ.メールと名付けられ、
祭りが催されるようになりました。侍女のサラはロマの聖人となりました。

毎年、5月24日〜25日の2日間、ヨーロッパ中に散らばったロマの人々が集合し、教会にある2人のマリア像を崇めます。地下祭室にはサラの人形もあります。
初日は黒いサラの像が、翌日には2体のマリア像が教会から下ろされて
町中をパレードし、ロマの巡礼者らによって担がれて、海へ運ばれ、
聖水をかけられます。

尚、10月22日に一番近い土、日にも巡礼者の祭りがあるそうなので、
今回のフィガロはそれに合わせてきたのかもしれません。
13 神像売り
このイベストのカドストを読むと、商品として彫刻の価値を見定めるブラッドリーのエピソードがあります。そこでこんな逸話も紹介。
「ある男が木彫りのヘルメス像をこしらえて、市場へ売りに行った。さっぱり買い手がつかないので、人寄せをしようと、商売繁盛の神はいらんかねと大声を張りあげた。すると、その場に居合わせた男が、「おい、そんなに有り難いものをどうして売るのだ。自分がそのご利益にあずかればよいのに」と野次るので、答えて言うには、「俺には手っ取り早いご利益が必要なのに、この神様はゆっくりとしか儲けを授けて下さらないからさ」恥ずべき儲けを追い、神々をも顧みない男にこの話はぴったりだ」(中務哲郎訳)
12 高慢といえば
ヘルメスを題材にしたイソップ寓話にはこのような話もありました。
訳はどちらも中務哲郎氏です。
ヘルメスと彫刻家
「ヘルメスは人間界でどれほど尊敬されているか知りたいと思い、人に姿を変えて彫刻家の工房へ入って行った。ゼウス像を見つけて「幾らかね」と訪ねたところ、「一ドラクメです」との答。安いのでおかしくなって、「ヘラの像は幾らだ」と訊くと、もっと高いと言う。自分の像もあったので、何しろ自分は神々の使者で利値の神さまだから人間はさぞ高い値をつけているに違いないと思い、重ねて、「で、このヘルメスは?」と尋ねた。すると彫刻家の言うには、「いやなにこちらの二体を買ってくださるならそいつはおまけで差し上げます」人からは物の数にも入れられぬうぬぼれ屋にこの話はあてはまる」
ヘルメスと蟻に噛まれた男
「船が乗客もろとも沈むのを目撃した男が、神の裁きは正しくないと言った。罰あたりが一人乗りこんでいるからといって罪もない人が大勢その巻き添えを食って死ぬのだからとこんなことを言っていると、よくあることだが、蟻の大群が小麦の籾殻を齧ってやろうと、男の方へ向かって来た。そして中の一匹が咬みついたところ、男はたくさんの蟻を一緒くたに踏みつぶした。するとヘルメスがこの男に現れ杖で打ちながら言うには、「これでもお前が蟻にしたのと同じ仕方で神々がお前たちを裁くのが我慢ならぬと言うか」」
11 神曲の抜粋
「今はともかく、いずれは私もあなたたちのように、目蓋を縫われて耐えなければならない、そんな一人の人間だ。私はあまり他人を羨んだことは無いから、ここで耐える時間はそれほどではないかもしれないが、私にとって、もっと心配なのは、この下の環道、高慢の罪を浄める場所だ。そこできっと私はそこでは他人よりも長い時間苦しむことになるだろう(中略)私はただの旅人だ。あるべき道を求める心持ちは誰にも負けないとは思うが、今は全くの無名だ」その時頭上から天使の声が聞こえてきた。他を妬むことの非を説いたそれらは、強くなり、弱くなり、忘れていたものを思い出させるかのように時折、雷のようにあたり一面に鳴り響いた。歌い終わった天使は、目を射る光を全身に放ちながら、私たち二人の方にやって来て言った。「もう良い、先へ行くがいい。坂はもっと楽になっているはずだ」言われて私たちが第二の環道を後にすると、それを祝福する歌声が切なく山にこだました。すでにこう一つの、Pの文字が消えていた」
引用文献
ダンテ(著).谷口江里也(訳.構成).神曲.
株式会社アルケミア,1996
10 神曲の抜粋
「見れば粗末な服をまとった大勢の人が座りこみ、岩に体を寄せている。やはり祈りの歌声が聞こえてきたが、ここではそれが、言いようのない、悲痛な響きに満ちている。弱々しい声が集まり、岩に返され、まるで環道全体が、切なく震えているように思われた。どうやら彼らは全員目を閉じてでもいるのか、あれだけ多くの人がいるのに、視線というものが全く感じられない。もしかしたら盲目なのかもしれないと思ったが、近くに寄ってみたとき、私はそこに信じられないものを見た。目蓋が針金で縫いつけられていたのだ。その痛ましさを何と形容したら良いだろう。他人を羨み妬むという、さもしい罪を浄めるために、そうして誰もが目を結び、その目に涙をにじませていた。「マリア様、ミゲル様、ペドロ様、全ての尊いお方よ、我らの基へ。」切実な歌声が震えながら地面を這って行く。ここで耐える時間は、どんなに長く感じられることだろう。ああ、煉獄の山を取り巻く環道が、ここでは身動きも出来ぬほど狭く、人は皆、互いに身を寄せ岩にもたれて待っていた。盲目の人はよく顔を上に向けているが、ちょうど彼らもそうして天に祈るかのような姿勢のままで、私たちの足音のする方に体を向けるのだった。≪もしかしたら私たちを天の使者と思って赦しの言葉を待っているのだおるか≫不憫でもあり≪何か一つでも≫と私はその中の一人に言葉をかけた。ー
9 神曲の抜粋
煉獄編より
「振り向くと、そこに石の門があった。三色の石段があり、その上に一人の天使が腰かけていた。白刀の剣を持ち、毅然と前を向いていた。一段目は白の、二段目は濃藍の、そして三段目が鮮血のような赤の大理石で出来た石段の上から、天使が私たちのことを問い質した。応えて師が事情を話し、加えて私が開門を慎ましやかに願い出た。金色に焼けた灰のような色の衣を着た番人は、凛とした表情を少しも崩さず、私の胸を三度叩くと、手に持つ剣で私の額に、罪を表す頭文字、七つのPを刻み込んだ。そして今度は金と銀二つの鍵を取り出すと、それを使って重い鉄の門をおごそかに開いた。 
決して後ろを振り向くな
汝の額の七つの傷を、我刃が刻んだ七つのPを
一つ一つ流し去れ、決して後ろを振り向くな(中略)
私たちは狭い岩間をすり抜けて、とうとう煉獄の山を取り巻く七つの環道の、その最初の環道に入った。(中略)
「人間は脆いものだ。どんなに強い外敵も、自分自身が内に持つ悪しき感情ほどには、打ち負かすのが困難ではない。煉獄の七つの環道ではそうした罪を浄めるために、自ら苦を負い、そして耐える人たちがいる。ほら、向こうに見えてきた。重い石を背負い、腰をかがめ、まるでおじぎをするかのように頭を垂れて、ゆっくり道を行く人が・・・・・・。人間が犯しやすい七つの心の罪のうちの一つ、高慢、うぬぼれを浄める人たちだ。」見れば誰もが裸のままで、石の重みに耐えながら、ただ黙々と坂を登っていた。(略)しばらく行くと道が平らになっており、地面に様々の像が浮き彫りになっていた。聞けば高慢により罰を受けた十三の人物像がそこに形作られていたのだという。ニオベがサウルが、ギリシア神話や聖書を知る人物たちが、その最後の姿を、そこに永遠にとどめていた。中でも目をひくのはアラクーネだ。美貌と、美しく機を織る技術を鼻にかけ女神アテネとその技を競ったあげく、ついには蜘蛛の姿に変えられてしまった、あのアラクーネがそこにいた。十三人が生きたまま石像と化したような場所から、一歩外に踏み出ると、体が幾分軽くなったように思われた。気のせいかと思ったが、ヴィルギリウスにそう言うと、師は微笑みながら教えてくれた。「もしここに鏡があればおもえにも判るのだが、おまえの額のPの文字が、ここで一つ消えたのだ。さあこれから煉獄の第二の環道だ、ここでは嫉妬の罪が浄められている。」ー
8 神曲の抜粋
「私たちは暗い路を行った。やがて深い谷を見下ろす崖の上に出た。そこが地獄の第八の圏、十の邪悪の壕の最後の壕だった。暗く沈んだ底に何やら蛆虫のようなものがうごめいているのがかすかに見えた。どうやら亡者たちであるらしい。嘆きの声のいくつかが、流れ矢のように鋭く、私の胸を突き抜けた。耳を覆わずにはいられなかった。立ち上る臭気、そして近づき、目が慣れるにつれてよりハッキリと見えてきた彼らの姿に、私はいっそ、五感の全てを麻痺させてしまいたかった。腐敗する体で地を這いずり回る亡者。顔も手も、目も指も、崩れてカビが生えていた。そこは錬金術師や贋金造り、詐欺師たちの地獄だった。全身を異常な痒さが苛んでいるのだろう。誰もがころげまわり、体を砂にこすりつけ、狂ったように爪で体中を掻きむしっている。所々乾いてカサカサになった皮膚が、爪で掻かれる毎にバラバラ落ちる。掻いても掻いてもきりがない。身から出た錆と、やはり言うべきなのだろう。腐って落ちた皮膚が、地面を被ってカビを生む。それがころが回る体に付着して、更なる腐敗と痒みをよぶ。すえた臭いがあたりに籠る。息をつくのも苦しい程の異臭の中で、おそらく苦しさをまぎらわすためだろう、わめきちらしている亡者がいる。大声をあげて息を吸い込めば、その分だけ更に、今度はカビが中にも巣くう。恐るべき悪循環の中を、無数の亡者が、蛆虫のようにうごめいていた。自らの、腐った体のすみずみが、更なる腐敗を育てていた(略)路端には、病んだ亡者の声が満ち、自分の足で立つことすら出来ない亡者も大勢いた。しばらく行くと、互いにぴったりと身を寄せ、もたれかかる二人がいた。まるでそのまま縫い付けてくれと言わんばかりの二人だが、それが頭から足の先までぴったりとこびりついたかさぶたに、全身被われていた。二人は贋金造りだった。二人でしきりにかさぶたを、まるで魚の鱗でもとるように、掻き落としていた。いろいろな亡者たちがいた。猛り狂い、追い回し、引き倒し、噛んで相手の身を裂く狂人がいた。体の一部が痩せ細り、他の部分が水ぶくれになった異様な亡者もいた。贋金造りに詐欺師、偽証の罪を犯した亡者や遺言状を偽造した亡者、自分の欲望をとげるために道を外れた、ありとあらゆる亡者たちが、そこにはいた」
7 神曲の抜粋
「私たちは、こっそり谷間を抜け出すと、地獄の第八圏の第八の邪悪の壕に向かう道を行った(略)「あれがマホメット。さすがに気丈なものだ。その前を、顔を縦に割られて泣きながら駆けて行くのはアリ、彼のいとこだ。ここには分裂、仲違いの元凶をなした者がいる。向こうに長い剣を持った鬼がいるだろう。あいつがあの鋭い剣で手当たり次第に切りまくる。一族や身内、同じ仲間の間で骨肉の争いをさせた連中がここでこうして、今度は自分の体を切り裂かれている。」
「彼らはどこへ向かって駆けているのですか?」
「この涸れた壕は丸い円になっている。ああして割れた体をかかえて、連中はそのサーキットを回るのだ。走らずにはいられないだろう。生身の人間なら即死するほどの傷だ。痛みにかられて走り続け、またここに戻ってくる頃には、いつの間にか傷が元通りになっている。消えた痛みに気付く間もなく、そこにはもう鬼の剣が待っている。戦をけしかけた者はその舌を、人の心を惑わした者はその頭を、鬼の剣が叩き切る。中で最も重い罪は、異端の教えをもった主の民を、分裂対立へと導いた者たちだ。」
「見るがいいこの俺を!俺が手に持つ提灯が、俺の行く手を照らし出す。俺の姿を映し出す。元は一つのこの体、離れて見ればよく見える。俺の首には足が無い、俺の肩には首が無い。元は一つのこの体、俺の名前はベルトラン、俺の名字はボルン。一つお城に住んでいた。一つ体で息をした。俺の名字はボルン、俺の名前はベルトラン。ああ暗い、暗くて見えぬ足元が、照らせ行く手を俺の首、少しは先が見えるなら。ああ寒い、体を風が吹きぬける、夜風が胸を吹き抜ける。かつて俺は詩人だった。ボルン家のベルトランと言えば、少しは知られたものだった。俺の言葉が一つの国を割る程に・・・・・・。ー」
6 神曲の抜粋
※以下はグロテスクな内容を含みます。
地獄編より
「第七の邪悪の壕には、盗人たちが墜ちていた。何と形容したら良いのだろう、その凄まじい光景を!無数の裸の亡者と蛇、蛇が首筋に噛みつくと、亡者の体はたちまち燃え尽き、灰になる。灰はそのまま元の姿の形に落ちて、再び五体が甦る。蛇が絡まり、体を伝い体中を締めつける。しびれる毒が、鋭い牙が狙いをすます。逃げて隠れる場所も無く、それを持てば姿が消えるという、魔法の石も今は無く。くり返す無限地獄。蛇地獄。人が逃げ、蛇が追う。しかし谷は狭く、それに比して、蛇の数はあまりにも多い。(略)そのうち一匹の巨大な蛇が三人の男を追ってこちらの方にやってきた。(略)蛇は素早く中の一人に追いつくと、足を絡めて大地に倒す。尾が男の胴から足を締めつけて、胸から手、そして首へと蛇の頭が絡みつく。巨大な蛇がギリリと男を締めつけると、世にも不気味な音がした。どうやら男の骨という骨が、音をたてて砕けてしまったに違いない。蛇と男は固く絡みあったまま、しばらくじっとしていたが、やがて蛇の尾がプクリと動き始めた時、渡しは見ていること目を疑った。蛇の尾が二つに別れ始めたのだ。そして蛇はその尾で、グニャリとなった男の二本の足を締めつける。と、見るまに、二本の足が一つとなって、それに応じて二つに割れた蛇の尾がしだいに人の形をとり始めた。やがて蛇から手がのび、男の体から手が消えた。蛇が煙を吐き、それが低く、それらを包んで漂う中を、髪が落ち、髪が生え、耳が消え、そしてもう一方に耳がついた。ほんの少し前まで断末魔の叫びをあげていた男の口が、今ではすでに先が二つに割れ、赤く細い舌を出し、シュウシュウ音を立てていた。前代未聞の転換が行われたのだ。男は蛇に、そして蛇が男になった」
5 イソップ寓話
病気の鹿
「森に住む鹿が、軽やかな脚が動かなくなったため、原っぱに出て乳香樹の若芽の豊富な所に臥せっていた。そこなら腹が減っても、若芽をすぐに餌にできたのだ。さて、この鹿はおとなしい隣人であったので、いろんな動物が群なして見舞いに訪れ始めた。しかしどいつもこいつもやって来ては病人のことなどそっちのけで、葉っぱをむしゃむしゃ食べては森へ帰って行った。このため鹿はまだ嘴細烏の二倍の寿命も満たしていないのに、病気ではなく飢えのために、骨と皮になってしまった。友だちさえいなければ、老齢まで生きたであろうに」(中務訳)
因みに、嘴細烏の寿命は人間の九倍、鹿はその四倍、大烏はその三倍に相当するそう。
この話は、フィガロがファウストだけに打ち明けた寿命が近いという話、また(フィガロガ南の医師であることも関係していると思いますが)現に2部で北の精霊を使役するのに時間がかかっていることや七夕で皆の願いを叶えるべく双子先生の手助けを借りている話にもつながってくると思います。
また、ハシボソガラスに象徴されているオズとの年齢差やファウストが友達アレクにかまけて自分をないがしろしたというフィガロの当初の気持ちも込められている物語のように感じます。
またヘルメスと彫刻については以下のような逸話があります。
ヘルメスと石工
「石工が白大理石でヘルメス神像を彫って売りに出した。二人の男が買おうとしたが、一人は最近息子を亡くしたのでそれを墓石にするつもり、もう一人は職人で、神像として安置する予定だった。その日はもう遅かったので石工も売り渡しはせず、二人が明朝来た時にもう一度見せる約束をした。さて、石工が眠ると、ヘルメス自身が夢の虎口に現れて、こう語るのが見えた。「やれやれ、死人にされるか神様にされるかわしの運命はお前の秤にかけられているわけだ」」(中務訳)
※「オデュッセイア」によると夢の門は二つあり、象牙の門を出て来た者は逆夢、角の門を潜って来た者は逆夢という。
4 3つの彫刻
≪ミロのヴィーナス≫
1820年、メロスあるいはミロというキクラデス諸島の島(エーゲ海にある島)で、ヨルゴスという名の農夫が鋤で畑を耕しているときに発見された。
像の一部だったリンゴを持つ手を含む、他の断片とともに。リンゴはパリスの審判により、もっとも美しい者に選ばれたヴィーナス(アフロディテ)を指し示すものだと考えられた。ただし、建築家のフォンテーヌは日記に、「保管されている破片が偶像の一部であると言う人もいれば勝利の女神だと言う人もいたが最終的に行政のトップたちはこれをヴィーナスと呼んでいる」と記している。
≪サモトラケのニケ≫
「この勝利の彫像の名前は、1863年4月15日にこれが発見された場所であるエーゲ海北方のサモトラケ島(現サモトラキ)島に由来している。この有翼の女性像は勝利の女神ニケに他ならない。船の舳先に立っていることから、海戦の勝利を記念したものであることは明らかだが、具体的にどの戦闘に関するものかはわからない」
(以上の出典,パスカル.ボナフー(著)田中佳(訳).ルーヴル美術館の舞台裏 知られざる美の殿堂の歴史.西村書店。以下は『世界の彫刻1000の偉業』より引用)
「ヘレニズム芸術のもっとも力強い作品のひとつが≪サモトラケのニケ≫であり、エーゲ海の北東にあるサモトラケ島の聖域にあった大規模な記念建造物の部分である。もともとニケは戦艦の舳先に舞い降り、勝利を表していた。その石像の舳先がこの躍動感あふれる像の台座であるが、それらが一体となって、海の波を表す噴水を備えた風景の中に設置されていたのである。この風景と美術と演劇的要素の組み合わせが、ヘレニズム時代の特徴である。(略)ニケの両足の間で大きく膨らむ布地の動きが、この作品にそれまでの彫刻にはない躍動感を与えている。
≪アルテミスと雌鹿≫(ヴェルサイユのディアナ)
「鹿を伴って駆け、狩をする力強いアルテミスの描写は、紀元前4世紀のギリシアのオリジナルに由来すると考えられている。アルテミスは処女神のひとりで、狩人であり、野生と豊穣を司る。豊穣との関連から、彼女は出産の女神ともされる。アルテミスはアポロンと双子で、この彫刻のコピーは、しばしば≪ベルヴェデーレのアポロン≫のコピーと対にされる。野生の庇護者と狩人という彼女のふたつの役割が、この作品に認められる。つまり、狩をする一方で、保護する雌鹿を伴っている。一方の手を矢に伸ばし、もう一方の手は修復されているが、もともとは弓を持っていたであろうー」
※また有地京子氏によると、純潔の処女神アルテミスは愛欲を司る愛と美の女神ヴィーナス(アフロディーテ)ともよく対比されるそう。(『名画で味わうギリシャ神話の世界』より)
3 キーワード
@ペルラ
これは「ミロのヴィーナス(アフロディーテ)」と「サモトラケのニケ」という二つの彫刻、及び聖母マリア(それもステラマリス=海の星の聖母と呼ばれるもの)が合わさった存在と考えられます。特にニケとステラマリスはともに航海をする者にとってその安全を支えたり導いたりする存在です。ペルラは海にあったものを引き揚げられました。そしてイライジャはその再現を試みます。
Aフィガロ
フィガロはイエス.キリストで、北5、南のレノ、東のネロとファウスト、西のラスティカ、シャイロック、ムル、中央のオズは12使徒ではないかとする説があります。今回もその流れでステラ.マリスを意識したエピソードが挿入されているものと思われます。また、彼は同時に自分のことを「鹿」として過去を話しています。鹿は狩りが得意で三日月をシンボルとするアルテミスが連れて歩く動物でもあります。またイソップ童話にも、フィガロを意識させる存在として鹿が用いられていることを感じさせるエピソードがあります。
B神曲(ダンテ)
渡し守カロンは冥界へ魂を連れていく存在です。ダンテはウェルギリウスを案内人に、地獄、煉獄そして天国を旅していきます。地獄の最終地点にはルシファーがいて氷地獄が待ち受けます。煉獄は7つの大罪のように、地獄での罪を購う場で、地獄をひっくり返したようなところです。ミスラは渡し守として死者の魂を運んでいます。シノの先生、ファウストは性をラウィーニアといいます。これはダンテを案内するウェルギリウスの著作物の主役の妻の名前です。また物語ではイライジャはひどい傷を負い。また周囲の彫刻も歪な形をしていますが、これも神曲の記述に類似するものと思われます。
Cヘルメス
ヘルメスは盗んだ牛を自分が作った竪琴と交換したことや冥界への案内人や神さまの伝令役を務めたことで、盗賊や旅人の神として崇められています。つまり今回のメンバーではブラッドリーにあたる存在です。
2 流難の神様に捧ぐ祈りは
今回のイベントは理解が難しいので、前提となる情報を書いていこうと思います。まずは前半部のあらすじから。
賢者がフィガロやフィガロに魔法をかけてもらったアーサーが市場で買い物をしているところに、フィガロの昔なじみが現れます。彼はフィガロが北で神のように崇められていたことを知っている人物でした。フィガロが離れた場所で話を聞くと、とある「神様」に執心してしまっている魔法使いについて心配しているようでした。同時期、北の国と東の国の境で陶器(彫刻)が歩いているような音が聞こえる怪異が発生していました。そこで、アーサー、ミスラとルチル、ネロとブラッドリー、シノ、リケそれにフィガロが賢者とともに現地へ向かいます。森の中で封印の甘い場所を見つけた魔法使いたちはある館に入ります。そこにあったのは歪な形をした彫刻でした。さらに倒れている魔法使い、イライジャを見つけます。彼こそが神様、ペルラに執心しているという件の魔法使いでした。イライジャの体には複数の痛々しい傷がありました。フィガロはイライジャがとある鹿と出会った時の昔話をします。その鹿は村人から崇められていましたが、洪水が起こり鹿を残して村人を呑み込んでしまったといいます(賢者は洪水ではなく、雪崩でしたがフィガロの過去として同様の話を聞いていました)その鹿がイライジャと出会います。イライジャは海の底からペルラの彫刻を引き揚げます。イライジャ以外の村人は信仰対象をペルラから代替わりしようとしていましたが、イライジャは異を唱え、一人信仰を続けようとします。