まほやく賢者の書8

アプリゲーム「魔法使いの約束」内の「賢者の書」を模した
ゲーム記録帳です。これまでのイベント記録、ガチャ結果、考察、
雑談何でもありです。
※7は新情報、※6は思い出アルバム扱いになっているため
　基本的には5の続きとしてお使いください。

「王子とこじき（偕成社文庫の表記）」では互いに入れ替わったことで、トムは王室の知識がないことを（気が狂って）記憶喪失になってしまった王様と思われ、エドワードはその身なりから自分の言うことを信じてもらえず、
気が変になって王族の振りをしていると思われてしまいます。身内であるトムの母親だけは目の前にいるのが息子でないことに気がつき、エドワードの後見人でもあるハーフォード卿も頭に浮かんだ違和感を振り払おうとします。外見で人を判断してしまうことはまほやくの設定にも活かされているようです。
まほやくの世界では双子は2000年以上生き、魔法使いの中で最年長です。魔法使いは魔力が成熟すると体の成長を止めてしまうので、普段は子供の姿をしています。そのため、双子が庇護している北の国（特に氷の街）を離れると、彼らが本性を見せない限り人々は子供の姿のまま受け入れようとします。また双子自身も年相応に記憶が曖昧な時もあり、トビカゲリの存在を思い出すのにも時間を要してしまいます。また双子は夜、厄災の影響で絵の中に閉じ込められてしまいます。
王子のエドワードと乞食のトムもそれぞれの立場まで入れ替えたことで、王子はこれまでは自分に正当なものとして与えられていた権利を奪われ、偽エドワードとして過ごすことになったトムも、王室の暮らしに当初は乞食として街を歩いていた頃には感じなかった窮屈さを覚えます。

双子の瓜二つ具合が物語の鍵を握るケースは漫画にも。
�C「ミントな僕ら」
好きな人ができて姉が転校してしまった！弟は姉の恋愛を阻止すべく助走してまで潜り込むが、彼自身にも好きな人ができてしまう。
�D「タッチ」
双子の兄、達也が交通事故で亡くなった弟克也のかわりに、隣に住む幼なじみのヒロイン、南のために甲子園をめざす野球漫画の王者的作品。
以下重要ネタバレ含みます。
�E「名探偵コナン」
初期のアニメの一話に、双子の兄弟の片方がもう片方を殺し、もう片方になりすます話が出てくる。さらに劇場版最新作では新一と怪人の顔がうり二つの理由が判明。
�F「黒執事」
家族を惨殺された中、生き延びセバスチャンを使役するシエル。コミックス版ではシエルに双子の兄がいたことが判明。許嫁のエリザベスはそのこと（シエルへの違和感）に気づき始めている。
�Fおちゃめな双子
瓜二つではなく二卵性っぽいが、私立の進学校に転校した双子が寮生活を送りながら巻き起こす騒動を通して、少しずつクラスメイトや教師に影響を与える。
�Gステップファザーステップ（宮部みゆき）
双子の男兄弟のもとに泥棒が居候？！
�Hモンスター
双子の兄が殺人鬼に。弁護士を目指して法を学ぶ妹が天才的腕をもつ日本人医師と真相を追う。

スノウとホワイトはおそろいが大好き。双子が瓜二つであることを利用して両者の立場が入れ替わる話は古典的作品から現在に至るまで数多作られてきました。
�@王子と乞食（マークトウェイン作）
王子のエドワードと乞食のトムは顔がそっくりだった。そこで互いの服を交換した。王子はトムから話を聞いてその身の上に驚くが、現実は理解していなかった。衣服を替えても心は王子のまま、周りに言うことを聞かせられると思っていたが、相手は自分を乞食としてしか見ず、殴られるばかりで味方はほとんどいなかった。一方、トムは乞食の身にしては日頃良くしてもらっている牧師からラテン語を習ったこともあって賢く、貴族の振るまいを想像して過ごしていた。王子になってから何とかその経験を活かしてやりすごそうとするが、突然何でも面倒を見てもらえる生活の場に置かれてかえって窮屈さを覚えていた。また周りは周りで王子の突然の変化に奇天烈な印象を覚えたものの、王様の命令で王子が記憶喪失（らしい）ということを口にのぼらせることは控えた。二人が再度邂逅するのは、ロンドンの街を偽王子（トム）が訪れた際だった。そこに元々体調を崩していた先王崩御の報せがくる。この時点から偽エドワード（トム）は英国王になってしまった。
�A二人のロッテ（ケストナー作）
ルイーゼとロッテは初対面だったが産まれた日も産まれた場所も同じだった。ルイーゼには母親の、ロッテには父親の記憶が無い。ただルイーゼは写真で母親を見た気がしていた。そこでロッテは自分が持ってきた母親の写真を見せるとルイーゼの記憶と一致した。今度はルイーゼがロッテのために父親の写真を送ってもらいルイーゼに渡した。二人は入れ替わりを画策してそれぞれの家に戻った。
�B仮面の男
「三銃士」の続編。以下は映画版のあらすじ。
今や士隊の隊長となったダルタニアンとアン王妃との間に双子が産まれる。しかし双子は争いの元。アラミスはこの事実を隠し、片方は鉄仮面を被せられて幽閉され、片方は父親の後を継いで国王となった。（後にアラミスはイエズス会の修道士のリーダーとなり密かに国王に反対する）ところが両者は性格が対照的で、傲慢な王に民衆はつかない。さらに息子のラウルが王の恋敵となったことで前線に送られ死んでしまったアトスは、幽閉された弟の方を王位につけようと、仮面舞踏会に潜入し、王と入れ替えようとする。

以前、宮沢賢治の「ふたごの星」を紹介しましたが、双子と聞いて星座を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。
ゼウスは白鳥に変身してスパルタの王妃、レダの部屋に忍び込みます。やがてレダの産んだ卵から出てきたとされるのがカストルとポルックスです。二人にはイーダスとリュンケウスといういとこがいました。ある日、四人は一緒に狩に行き、獲物の牛の取り分を早食い競争で決めることにします。ところがこれは大食いのイーダスの策略でした。とっととリュンケウスの分までたいらげて双子を残して牛を全部連れ帰ってしまいました。追いかけてくる双子に向かい、遠目のきくリュンケウスがイーダスにやりを持たせて投げました。それがカストルを貫き、カストルは息絶えました。怒ったポルックスは二人の元へ走りリュンケウスを倒しました。さらに息子の死を知ったゼウスがイーダスに雷を投げつけました。その後でポルックスはカストルを貫いていたやりを抜き、自分を刺しましたが、ポルックスが母方の血を引いて限りある命であるのに対し、カストルはゼウスの血を引いていたため不死の体をもち、傷も消えてしまいました。カストルは自分が死の国に行くか、自分の命と引き換えにポルックスを生き返らせてくれるように頼みました。そこでゼウスは兄弟が共に神々の国と死者の国を一日ずつ交代で暮らせるようにして2人の姿を星座にしました。
（12星座とギリシャ神話の絵本〜）

5月20日よりいよいよスポットエピソードが実装化されます。レノックスの育成エピソードではレイタ山に大いなる厄災の影響で逞しい体つきの黄金の羊が現れます。一攫千金を夢見る羊飼いの息子は山の精霊の恵みと考え、真面目に働いて手に入れた安定した暮らしが一番と考えるその父親は魔物だと考えます。この話の元は旧約聖書にある記述だと思われます。
モーセがシナイ山に登ったきり戻ってこないことに業を煮やしたモーセの実の兄、アロンは民がつけていた黄金の耳飾りを溶かして子牛を作り、偽りの神として祭ろうとします。これにヤハウェは怒りを覚えます。山を下って実際に子牛が崇められる光景を目にしたモーセは石版を砕き、子牛を火の中にくべて粉々に砕き、水に入れて民に飲ませました。ヤハウェの怒りを鎮めるために民は兄弟、友、隣人で殺し合う羽目になったのです。（出エジプト記　第32章）

藁は稲や小麦などの穀物の茎を乾燥させたもの。
ネロの紋章が出たのは左の二の腕。腕と足の違いはあるものの、「左」という共通点には意味がある模様。
育成ストーリーではネロが東の国で店を出していた頃に使っていた魔道具が原因で雨の街の川の色が蜂蜜の色（すなわち金色）に変わってしまう事態が発生します。（ネロは料理に魔法を使わないことをポリシーにしています）
おそらくこの状態で水を救おうとすると水飴のように糸を引くことでしょう。メインストでは、シノが聞いた話をもとに訪れた墓地で東の魔法使いたちは呪いの首飾りを見つけます。1．5部でネロは露店でブラッドリーとの縁を繋ぐ指輪を見つけますが買うかどうか逡巡してしまいます。かつて雪の中で生存をあきらめかけたとき、ブラッドリーはネロにその指輪を生き抜いた証に自分でブラッドリーの手に嵌めに来るように言って励ましたことがありました。
他にも、ネロは南のワルプルギスイベといいリケといい、無意識に「幼い子は守ってやらなければ」という意識がある様子。

まほアワの朗読劇ではネロが大活躍。そこでネロのアミュレットである麦穂に因んだ童話を紹介します。
ある粉ひきが「自分の娘は藁を紡いで金に変えることができる」と王様に見栄を張ります。王様は娘に部屋を用意し実演して見せるように言います。途方に暮れた娘が助けを求めたのはルンペルシュティルツヒェンという小人でした。彼は一度目は首飾り、二度目は指輪を対価に娘のかわりに部屋一杯の藁を紡いで金に変えました。（二度目は一度目よりも部屋は広くなっていました）王様はさらに広い部屋を用意します。王様はまたしても藁を金に変えた暁には娘を妻にすると約束します。娘は再度ルンペルに助けを求めますが、今度の対価は王と娘の間に生まれた最初の子どもでした。それでも娘はルンペルの言うことを受け入れ、ルンペルはまた藁を金に変えてやります。やがて王様と結婚した娘に子どもが産まれました。するとルンペルが現れて約束を果たすように迫ります。娘が拒むとルンペルは自分の名前を当てることができたら引き下がると言いました。答えに窮していた娘に、期限の最後の日になって朗報がもたらされます。（小澤版は使いの者、吉井版は王様自身が朗報をもたらします）なんと、ルンペルシュテルツヒェンなる小人が森の小屋の前で火を焚き、その回りを飛び跳ねて大声で叫んでいたというのです。この話を聞いた娘（妃）は見事に小人の名前を当てることができたのでした。※吉井版は初版を訳したもの。小澤版などの第二版以降を訳出したものは、ルンペルが怒りのあまり右足で地面を踏みつけると地面がめり込んでしまい、さらに怒り狂って左の足を両手でつかんで自身をまっぷたつに裂くという記述があります。

白雪姫は死んでいるにもかかわらず、その美しさを失いませんでした。小人たちが棺を眺めていると王子が通りかかりました。惚れ込んだ王子のために小人たちは棺ごと王子に贈ります。王子の家来が棺を運ぶ間に不手際が起りました。この不手際は本により違いがあります。
「王子は、召使いたちに棺をかつがせました。そのうちに、召使いたちがやぶに足をとられてよろめきました」（小澤版，p.131）
「いつも棺を担いで歩かされている召し使いたちはとても腹を立てていました。あるとき、ひとりが棺を開けて、白雪姫を高く持ち上げました。（略）白雪姫の背中を手でどんと殴りました」（吉原版，ｐ.70）
いずれにしても、引っかかっていた毒りんごの欠片（芯）が取れて白雪姫は無事に生き返りました。王子は白雪姫を城に連れ帰り、結婚式を挙げました。その結婚式には白雪姫をひどいめに遭わせた女王も招かれました。女王が渋々招待に応じると、炭火で真っ赤に焼かれた靴を履かされて死ぬまで踊らされました。
参考図書
小澤俊夫（監訳）.語るためのグリム童話3　白雪姫.小峰書店，2007
吉原素子，吉原高志（訳）.初版　グリム童話集2.白水社，1997
「黒猫と魔法使いのワルツ」のイベストにはりんごやガラスの棺など物語の鍵を握るアイテムが登場。また鏡を魔道具にしているファウストもミスラの無茶ぶりに巻き込まれます。

５月１２日開催のまほアワにて遂にスノホワが揃いました。そこで改めて白雪姫のあらすじを振り返り。
女王が冬の日に窓辺にて縫い物をしていると針が指に刺さって血が出ました。雪の上に落ちた血を見て、女王は雪のように白く、血のように赤く、黒檀の窓枠のように黒髪の子が生まれることを望みます。間もなく女王のもとに望んだ通りの女の子が産まれ、白雪姫と名付けられました。女王は魔法の鏡を持っていました。ある日、いつも通りに女王は鏡にたずねます。「鏡よ　鏡、この世で一番美しい者は？」すると、鏡は「女王よ　あなたは美しいが白雪姫はその千倍も美しい」と答えたのです。女王は自分の美しさを自慢に思っており、自分以上に綺麗な者がいることは我慢がならないことでした。そこで女王は狩人を呼び寄せました。狩人は森の奥に白雪姫を連れて行きますが殺せずにそのまま逃すことにしました。城には猪の肺と肝臓を持ち帰りました。女王は再び魔法の鏡にたずねました。白雪姫がまだ生きていると知った女王は何とか白雪姫を亡き者にしようと策を巡らせます。その頃、白雪姫は七人の小人の家にたどり着きました。野菜とパンでお腹を満たし、ぶどう酒を飲むと白雪姫は眠くなり、七人目のベッドに横たわります。そこに小人が帰ってきました。小人たちは白雪姫が家の仕事をすることを条件に迎えいれます。ある日、小人たちが出かけている間に物売りに変装した女王が訪ねてきます。白雪姫は物売りに胸紐をきつく縛られて息が出来なくなりました。小人たちが帰ってきて胸紐をほどくと再び息を吹き返しました。またしても魔法の鏡により白雪姫が生きていることを知らされた女王は今度は貧しい老婆の姿をして現れて白雪姫に櫛を見せました。老婆が白雪姫の髪に毒を含ませた櫛を挿すと、白雪姫は再び倒れました。そして帰ってきた小人たちがまたその髪から櫛を抜いてやりました。またしても失敗したことを鏡によって知らされた女王はとうとう毒りんごをこしらえて百姓の老婆に化けて再び森を訪れました。白雪姫が毒りんごに手を伸ばすように老婆は自分もりんごの半分を口にしました。ところがそれは毒のない部分だったのです。今度ばかりは小人にも、りんごを囓ってしまった白雪姫を救う方法はありません。小人たちは白雪姫のためにガラスの棺をこしらえました。

千夜一夜物語（英訳はアラビアンナイト）はギリシャ、ペルシャ、インドなどに伝わっていた民話を翻訳してシェヘラザードという女性が王に語り聞かせたという形でまとめたものです。アラブ地方の物語としたのには理由があります。実は長い間、アラビア語の原典（すなわちシェヘラザードが語ったとされる本編）が存在しませんでした。（※実在していない、とは言いいきっていないのがポイント。いわば紫式部が書いた源氏物語の原本は見つかっていませんよ、というのと同じです。）最も良く知られていた写本はフランス人のアントワーヌ.ガランによるものでした。ガランはフランス国立図書館に収蔵されているシリア系写本、三巻分に加えて、新たにアラブ人から伝え聞いた「アランジンと魔法のランプ」などの物語を足しました。
1984年にハーバード大学のムフシン.マフディー教授がバクダード期の「千夜一夜物語」のほぼ完全な復元に成功します。その過程でこれまで出回っていた二つの写本が偽物であることを明らかにしました。
シリア人のシャヴィという男性は、ガラン版の続きと称した偽本を売り込みます。さらにシャヴィが仏語に訳した文章をカゾットがリライトし、自らの創作も折り込みました。
サッバーグという名の者も、後世（18世紀後半から19世紀初頭）に新たにバクダード版を書き下ろします。いわばデタラメですが、文章は整っているので、1888年のゾーダンベールという人物に発見されて以降、長らく（本物の原典に準拠する）1700年代初期の写本だと思われていても仕方が無かったということです。因みに「アリババと40人の盗賊」も元の物語にはなかったとされています。
まほやくが千夜一夜の中でも、この二つの物語を選んでいるのは、こんな逸話も影響しているのかもしれません。
マフディー教授によると、そもそも千夜一夜と言いながら最初の頃の物語は二百数十夜分しかなかったとのこと。その数はガランが新たに話を聞いて物語を書き起こす前（すなわちシリア系写本三巻分）の物語数とほぼ変わらないということです。

錫製のスプーンで作られた25体の兵隊のうち、1体には片脚がありませんでした。途中で錫が足りなくなってしまったからです。片脚の兵隊の視線の先には紙製の城の玄関口に同じく片脚で立つ、これまた紙製のバレリーナの人形がいました。（彼女はバレエのポジションを保っているだけですが、兵隊の位置からは彼女もまた1本足のように見えたのです）あるとき、びっくり箱から飛び出す小鬼の仕業か、兵隊の持ち主だった男の子は片脚の兵隊だけを窓際に立たせます。風に煽られて兵隊は窓の外に落ち、子どもたちに船に乗せられます。船がどぶを流されていくと鼠が待ち受けていました。通行切符を見せるようにと威張る鼠の声も船は振り切って、船は回転しながら運河へと進んでいきます。船に水が入ってきて、ついには兵隊の頭まで水が達して船は崩れ、兵隊は沈んでしまい、魚に呑み込まれてしまいます。その魚が市場で売られ、再びお手伝いさんが魚を開いて兵隊を取り出しました。なんとその家は元の持ち主の家でした。ところが再び小鬼のいたずらか、男の子は兵隊をストーブに投げ入れてしまいます。兵隊は色が落ちてしまい体が溶けていきます。不意に部屋のドアが開いて風が吹き込んできました。風がバレリーナの体を持ち上げて兵隊のところまで運んできたかと思うと、バレリーナはあっという間に燃えてしまいました。翌朝、お手伝いさんがストーブから拾いあげたのはハートの形をした錫の塊でした。その横には焦げて真っ黒になったバレリーナが身につけていた服の飾りがありました。
参考図書
アンデルセン（作）
スティーブン.コリン（英訳）絵國香織（邦訳）.
アンデルセンのおはなしーしっかりしたスズの兵隊.のら書店,2018
松岡享子（編）茨木啓子（文）
子どもに語るアンデルセンのお話2ーしっかり者のスズの兵隊.
こぐま社,2007
追記
サッバーグがアラビアンナイトのバクダード版を書いたのは1810年頃です。
西尾哲夫.図説　アラビアンナイト.河出書房新社，2004

盗賊のエチュードで、頭領がアジトに大きな絵画や大量の金貨や宝石を一度に運べたのは、元々は西の魔女が持っていた魔法の壺のお陰でした。この壺の発想はおそらく、西遊記に出てくる平頂山の蓮華洞に棲む妖怪、金角と銀角が持っていた五つの財宝のうちの二つ、羊脂玉浄瓶と紫金紅蘆から来ていると思われます。どちらも名前を呼ばれてうっかり返事をすると、その中にその人を閉じ込めて溶かしてしまうのです。
特に紫金紅蘆は赤い瓢箪（ひょうたん）の形をしています。さらに西遊記の主役、孫悟空はこの二つの財宝を得ようとして銀角により、須弥山、峨眉山、泰山の3つの山を前に封じられてしまいます。（wikipediaで金角と銀角も参照のこと）赤のガロン瓜を求めて東の国や（レイタ山脈のある）南の国に行く必要があるのは、このエピソードと無関係ではないかも？

以下アーサーとオズが共に参加したイベストです。
初めての訓練シリーズ（エチュード）
中央＆東　「神聖なる宝剣のエチュード」
祝祭シリーズ（プレリュード）
中央＆南「正義と祝祭のプレリュード」
北＆中央「矜持と祝祭のプレリュード」
依頼人シリーズ（バラッド）
西＆中央「夢抱く飛行士のバラッド」
中央＆西「極光祈る犬使いのバラッド」
場所シリーズ（ラプソディ）
中央＆北「流星かける橋のラプソディ」
東＆中央「夕陽笑む温室のラプソディ」
職業シリーズ（コンチェルト）
南＆中央「生徒と別れのコンチェルト」
中央＆東「騎士と信義のコンチェルト」
専門店シリーズ（ファンタジア）
西＆中央「夢守る曲技団のファンタジア」
中央＆西「軌跡記す本屋のファンタジア」
その他の季節イベント
「白亜の城に伝説の目覚めを」
「ショコラの女王は誰の手に」（バレンタイン）
「未完のワインに思いを馳せて」
「惑う心と誠のグロッタ」
「闇染まる緋花に宴を捧げて」（ワルプルギス）
「花の夏夜に旅立つ君へ」（夏休み）
「悠久想う未知へのカーソス」
「落魄の血に鉄の真意を」
「道分かつ無二のパレーハへ」

自らの過去やアーサーの宿命から、はじめの頃は心を閉ざしていたオズですが、中央の若い魔法使いたちの屈託のなさが徐々にオズの心を溶かします。
アーサーと共に任務に派遣されることで、幼いときとかわらないまっすぐな心根に動かされ、オズの態度も和らぎ、言葉数も増えていきます。同時に元の親心が顔を出すことも（実は離れていたときも黒い鳥の姿になってグランヴェル城に様子を見に行っていました）。一方で自分の過去をアーサーに明かすことには迷いが生じていました。また、夜になると傷の影響でオズは魔法を使えなくなってしまいます。その隙を突くようにノーヴァによる魔法舎の襲撃事件が起きます。4周年ではフィガロから自分の今の状況を受け入れるように諭されます。

恭しくすり寄られることにも、恐れから遠巻きに見られることにも疲れてしまったオズが選んだ選択肢はなんと世界征服でした。ところが半分征服したところで止めてしまったために世界に混沌が訪れます。本人の意志はともかくとして、冷酷な魔王としてその名を轟かせていたオズに「情緒」というものを教えたのが幼いアーサーでした。アーサーが怪我をしないように城に魔法をかけたり、巣箱を作ったり、アーサーに気づかれないように危険から守りながら一緒に花を探しに行ったり、病気で伏せりがちな実の父親や魔法使いであることに対する周囲の偏見を恐れて、アーサーを捨ててしまった母親以上に親らしい様に兄弟子のフィガロも驚きます。ところが幸せな続かず、アーサーは城に連れ戻され、オズが感情を制御できなくなったために北の国に大寒波が訪れます。そして、双子からアーサーが大いなる厄災との戦いで命を落とすと聞かされたオズは自分がかわりに中央の魔法使いとして召喚されるように仕向けます。ところが元魔法科学兵団団長のニコラスが行った儀式により巨大化した厄災の影響で魔法使いが半減し、結局、新たな賢者（晶）によってアーサーは召喚されてしまいます。

「話が山場にさしかかって魔術師の悪だくみがあきらかになると、母は魔術師に対する憎悪をかきたてられて怒りのために険しい顔になるのをおさえきれませんでした。そしてアラジンが話し終えると大声をあげ、（略）魔術師を罵ったのです。母は魔術師を裏切り者、人殺し、詐欺師、魔術師、人に仇なす者とさんざんに呼びました」（西尾訳,ｐ.121）
まほやくの物語を読んでいて、作中屈指のトラブルメーカーはムルではないでしょうか。事程左様にムルのせい、とはよく言われることです。
そして、双子の件といい、人造魔法使いの一件といい、王侯貴族に取り入ることといい、シャイの心を弄ぶ姿といい、ここに並ぶのは当たらずとも遠からずな罵詈雑言に思えるのです。

「しばしの休息をとった二人は立ちあがると、先を進んでいくつかの庭を通りすぎました。庭と庭は狭い溝で区切られているだけでしたから、難なく越えていけるのですが、この町のひとびとは信心が深くて善意を重んじていましたから、いさかいが起こることはありませんでした。こうしてアフリカの魔術師は庭が広がっている場所からアラジンを連れ出し、野を横切って山のすぐ近くまでやってきました。（略）やがてそれほど高くはない双子のような山に挟まれた細い谷にたどり着きました」
まほやくの二部で中央の魔法使いが西の国に着いたとき、西の国に広まる不穏な噂からアーサーは中央の国に戻り、カインは魔法科学兵団の詰め所に用事があり、オズがアーサーを追いかける間にリケは宿に戻る途中で庭園に迷い込みます。ここまでの流れでリケが通った場所が、飛躍はしてしまいますがアラジンが魔術師に連れて行かれた場所と被っているように思えます。つまり、ここでいう魔術師はオズに重ねられているように感じます。一方、別の場面では無事に戻ったアラジンから話を聞かされた母親が魔術師をさんざんに罵ります。

「アラジンと魔法のランプ」には、盗賊のエチュード以外にもまほやくの物語（第二部）にいかされたのではないかという箇所があります。
「魔術師はにぎわっている場所、中でも大商人たちの店が軒をつらねる界隈にアラジンを連れていきました。最高級の織物や薄物を商っている店が並ぶ道を歩きながら、魔術師がアラジンに話しかけました。「今におまえもこのような商人になるのだから、足繁く通って知り合いになっておくといい」魔術師はアラジンを町一番の壮麗なモスクや異国からの商人たちが寝泊まりする隊商宿にも連れていき、スルタンの宮殿の中で自由に見物できる場所を案内しました。こうして町じゅうの美しい場所をめぐり歩いたあとは魔術師が部屋を借りている宿に着きました」（西尾訳p.106）
ところが店の準備をする日が金曜にあたっていることを口実に、魔術師は上手くアラジンの母親をだまします。
「というわけで土曜日にしましょう。でも明日も来ますよ。紳士淑女がたが集う庭園にアラジンを連れていくつもりです」（同p.107）
こうして巧に魔術師はアラジンを遠くへ連れ出します。あえて迂回した道を通れば帰りに一人で戻っても、そもそも何処かへ行ったことを商人に知られないので怪しまれることはありません。
「魔術師はとある門から町の外に出ました。そこは宮殿のような豪華な屋敷が並んでいます。どの屋敷にもすばらしい庭があり、自由に見物できるのでした。魔術師は次々に宮殿に入りながらアラジンに美しいと思うかと尋ねました」（同,ｐ.108〜）

目的のランプにたどり着く前にアラジンは広間を三つ通り抜けます。（「三番目の奥に扉がある。扉の向こうにはみごとな果実をつけた木々が並んでいる。まっすぐ進みなさい。小径をたどって庭を抜けると五十段の階段がある。これをのぼるとテラスに出る。テラスまで行くと目の前に（略）灯の灯ったランプがある」）最後の広間にある木には宝石が実っていました。
「アラジンはランプをふところにいれるとテラスから降り、来るときにちらりと目に入っていた庭で立ちどまるとしげしげと眺めました。庭にある木すべてが風変わりな果実をつけて、木によって果実の色が違うのです。白い果実もあれば水晶のようにきらきらと透きとおった果実もあり、赤い果実にしても薄い色や濃い色などさまざまでした。緑、青、紫、黄色っぽいものなどとりどりの色があるのです。白い果実は真珠、きらきらと透きとおったものはダイヤモンド、濃い赤はルビー、薄い赤はスピネル、緑はエメラルド、青はトルコ石、紫はアメジスト、黄色っぽいものはサファイアなのです。他にもいろいろとありました。石でできた果実はどれも大きくて瑕ひとつなく、世にふたつとないものでした」
宝石の種類までは完全には重ならないものの、色味はほぼ同じで、ルビー、エメラルド、アメジスト、ダイヤモンドなどかなり一致しています。
引用文献
西尾哲夫訳.ガラン版　千夜一夜物語5.岩波書店

また一つ疑問が解けました。私が注目したのは、何故盗賊のエチュードに同行したのが西の魔法使いだったのか？ということ。「アラジンと魔法のランプ」では、主人公、アラジンの父親の職業は仕立屋でした。また地下で閉じ込められたアラジンを救ったのは指輪の魔神でした。「アリババと40人の盗賊」では主人公の兄の遺体を葬儀屋が縫い合わせます。またモルジアーナは踊りで頭領を魅了してその隙をつきます。これらの条件を満たすのはやはり西の魔法使いを置いて他にはいないでしょう。厄災のデザインも盗賊の頭領を意識していますね。厄災君が従えているユニコーンには財宝がそれぞれ乗っています。アリババもロバに財宝を乗せて洞窟から運び出します。また、財宝も赤、青、緑、紫、水晶などの色合いでそれぞれの国のイメージカラーを意識させます（中央は白）がこれにも意味があります。

ヴァルシー封印の贄として賢者が名乗り出ます。グランヴェル家の末裔で中央の土地と相性の良いアーサーを賢者の楯に指名して、召喚のための杯（蜂蜜、ハーブ、チーズ、生魚等のミックス）をファウストが飲み干します。
いよいよヴァルシーが現れます。糸を伸ばし、賢者たちを繭の中へ取り込もうとします。ファウストが魔道具の鏡で糸を振り払い、ムルとシャイロックも魔方陣の中へヴァルシーを誘います。シノはヴァルシーに向かい、何度も大鎌（昔、リカルドの先祖がヴァルシーを封じたのも鉄の武器でした）を振り下ろします。弱ったヴァルシーはリカルドを介して吸血を試みますが、懸命に戦うシノに鼓舞されてリカルドも踏ん張ります。アーサーは中央の精霊の力を借りてシノを援護します。とうとうヴァルシーは石になりました。同時にヴァルシーを封じていた勲章の宝石も外れました。ファウストはマナ石の中に宝石と同じ気配を宿すものを見つけます。ヴァルシーを封じたリカルドの先祖は魔法使いでしたが、封印と引き換えに命が尽きる直前まで気づかなかったのです。中央の精霊たちはそんな気概に感心して先祖に力を貸したのでした。それを知ったリカルドは自ら英雄譚の続きを記すことにします。シノの活躍をファウストも労います。そして、この日の出来事は魔法使いと人間が手を取り合う世界を目指すアーサーにとっても記念すべき日となりました。館から出た魔法使いたちは魔法舎に手土産を買うためにレモンパイの店へと走って行くのでした。（完）

ムルは娘の分身を作り、路地裏から人々の目をそらせます。治療のためミチルとシャイロックも残りました。一方、オズの魔法でアーサー、ファウスト、ホワイト、シノ、賢者はバーナード邸に戻りました。アーサーとシノがリカルドの袖をめくると、リカルドの腕には無数の傷がありました。厄災の後、リカルドは封印の間に入りました。厄災の影響で封印に隙が出来てリカルドはヴァルシーの餌になるところだったのです。吸血衝動が起きて人を襲う度に衝動を抑えるためにヴァルシーに血を注ぎ、結局は悪循環に陥っていました。ホワイトとオズはヴァルシーを封印する勲章そのものを破壊することを提案しますが、シノは一族の誇りを守ってきた自分の心に従うようリカルドを促します。

館を出ると魔法使いたちは二手に別れました。ホワイト、アーサー、オズ、ミチルは通り魔事件の被害者である花屋の息子に話を聞きます。一方、シノ、ファウスト、シャイロック、ムル、賢者は過去の事件現場を訪れました。現場にはヴァルシーの気配が残っていました。既に夕刻を迎えていました。シノが血のにおいを感じて皆で路地裏に回り込むと、唇を赤く染めて、眼は虚ろでうずくまりながら一人の女性の血を首元からむしゃぶっているリカルドの姿が。ファウストが口の中をのぞくと牙が生えていました。ヴァルシーを封じるために血を与えるうちに、リカルドは体をのっとられかけて吸血衝動を抑えられなくなっていたのです。幸い、女性は一命をとりとめます。

名雄の街で評判のレモンパイを携えて賢者と魔法使いが少年の家を訪ねると、家の棚には魔術書と魔法道具や魔術の媒介が並んでいました。一介の人間のコレクションにファウストは関心します。一方、賢者は周囲に瞬間漂った甘い香りと耳鳴りを感じました。（最初に少年の姿を見た時と同様、シノも血のにおいを感じました）少年はリカルドと名乗ります。リカルドは父親を亡くしていました。家を引き継いだとき、既にその財務状況は苦しくなっていました。さらには父親が慈善事業者に騙されていたことも分かりました。状況を見かねて叔父が家を売りに出してしまいますが、リカルドは愛着のある家を離れられなかったのです。さらに家にはヴァルシーを封印している勲章がありました。勲章には代々、バーナード家の当主の血を捧げ続ける必要があるとされていたのです。

ファウストが革命軍で身を賭して戦っていた４００年前よりも更に前の混沌の時代に、バーナード家の当主は英雄として名を馳せていました。彼が倒した魔法生物こそ、シノが図書室で見ていた繭の中で生き血を吸うヴァルシーでした。以来、バーナードの家で封じられていました。ヴァルシーの体液が混ざると人間も吸血衝動を起こしてしまいます。封じるには悪に決して屈しない強い気概が必要でした。シノはヴァルシーを封印している勲章に興味を持ちます。返された財布に余分にお金が入っていたムル、通り魔事件が木に掛かるアーサー、少年の困窮ぶりを気にかけるシャイロックとミチルとそれぞれの動機から、後日、魔法使いたちは名雄の街を再び訪ねます。

賢者が図書室に忘れ物を探しに行くと、アーサーとミチルがシノとテスト勉強をしていました。危険な魔法生物の生態について学んでいた彼らの目に留まったのは、音と蜜のような甘い香りによっておびき寄せた人間の生き血を養分に、繭の中で成長する蜘蛛のような生き物。ただし、大抵は生まれてくるまでに取り払われてしまい誰もその姿を見た者はないということでした。
試験が明けて、成績の良かったシノをファウストたちは労います。訪れたのは「名雄の街」。昔、魔物と戦った街の名将を称えてその名が冠された本、「バーナードの英雄伝説」にシノが興味を持っているところへ、ムルとシャイロックが合流します。彼らはムルの財布を盗んだ少年を追いかけてきたところでした。英雄を輩出した家に生まれながら、わけあって貧しい暮らしを強いられお腹を空かせている少年に、魔法使いたちは手持ちのお菓子やつまみを分け与えます。少年は夕方になると現れるという通り魔について魔法使いたちに警告しました。被害者の首には噛み跡が残されているとのことでした。

◎1．31「落魄の血に鉄の真意を」シノ、ファウスト、アーサーSSR
○2．11「囚われのノーチェに恋して」（バレンタイン）ブラッドリーSSR
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ネロSRetc
◎3．2「道分かつ無二のパレーハへ」オズ、シノ、ネロSSR
◎３．１３「涙の果てで紫花の微笑みを」（ホワイトデー）
オーエン、ルチル、ファウストSSR、アーサーSRetc.
◎４．３「アルテレ-ゴの掟」（エイプリルフール）
シャイロック、スノウ、ヒースSSR、オーエン、リケSRetc.

以前途中で切れてしまっていたイベスト一覧の続きです。
東の稼働率が高い。ガチャの引き時を見誤らないようにご注意を。
（毎回SSR三枚、SR三枚なので省略する場合はetcと表記）
○4．3「シー.ローバー.スクアーマ」（エイプリルフール）
ブラッドリー＆ネロSSRetc.
◎4．30「闇染まる緋花に宴を捧げて」（ワルプルギス）
オズ、ヒース、ファウストSSR
5．27「幸運招く真実のクオーレ」フィガロSSRetc.
6．7「迷える旅人に門出のボーダを」（南のジューンブライド）
リケ、ルチル、レノSSR
7．9「記憶の汀に踊る綺羅星」（西の七夕）
ラスティカ＆クロエSSRetc.
◎7．23「セラータの調べは鎮魂の夜に」
ブラッドリー、ファウスト、レノックスSSR
○8．20「花の夏夜に旅立つ君へ」（サマーバカンス）
アーサー、ミチル、リケSSR,ファウスト＆シャイロックSRetc.
◎9．17「禁忌と哀愁のマリオネッタ」ホワイト＆シノSSRetc.
10．6　ルチルのカウリスイベント
10．23「終らぬ夜へ戯れの愛寵を」（北のハロウィン）双子SSRetc.　　　　　　　　　　　　　　
11．2　ミスラのカウリスイベント
◎11．18「きっと、君と奇跡を」（4周年）全員SSR
◎12．7「悠久想う未知へのカーソス」リケ,ネロ,フィガロSSR,
　　　　　　　　　　　　　　　　　ファウストSRetc.
◎12．20「叶わぬ吹雪に願いを灯して」ヒース、オーエン、レノSSR
　　　　　　　　　　　　　　　　　　オズ、シノSRetc.

アンデルセンは自分の身の上に起きたことを童話の中に活かしています。「雪の女王」ではゲルダとカイの家は隣り合っていて雨樋をまたいで往来が可能でした。二人の両親は窓の外に木箱を置いて野菜や花を育てていました。アンデルセン自身の家も雨樋を通じて隣の家とつながっており、母親はゲルダたちのようにパセリやエゾネギ、薬草などを育てていました。また亡くなる前年に、生みの父親は、凍った窓ガラスに熱した硬貨でのぞき穴を作ると、「氷姫が呼びにやってきた」と言ったといいます。“女王は、降りしきる雪の中を飛びまわって、地上におりたつことはないんだ。（略）冬の夜、雪の女王は、町の通りを飛んで家々の窓の中をのぞいて、窓に霜の花を残していくのさ”（アンシア.ベル再話，成沢栄里子訳.雪の女王.BL出版，2016）
アンデルセンは、落ち葉拾いに出かけたある畑で木靴が脱げてしまい、一人取り残されてしまったことがありました。畑の管理人はアンデルセンを叱ろうとしますが、アンデルセンが、自分をぶてるものなら神の前で殴ってごらんというと、むちを下ろしただけでなく彼にお金をやったといいます。この
木靴をなくす話は「マッチ売りの少女」にも出てきます。
「赤い靴」のカレンも元々貧しい家の出ですが、裕福な家に引き取られると赤い靴の誘惑に逆らえなくなります。ここにもアンデルセン自身の堅信礼時のエピソードが活かされています。アンデルセンは他の子と一緒に受けるのが嫌だったため、副牧師でなくの牧師に堅信礼をしてもらうことにします。当日は新調したブーツにズボンの裾を押し込んで少しでも皆の目がブーツに向くといいのにと考えていました。牧師の言葉よりもブーツの方に気を取られていたのでアンデルセンは良心の呵責を感じていました。

教会の入り口には赤い髭を生やした兵隊がいて赤い靴に目を留めました。兵隊は「この靴は踊るのによさそうだ」と言ってカレンの靴底を手で叩きました。すると、靴が勝手に踊り出して終いには老婦人を蹴飛ばします。家に帰ると赤い靴はしまわれてしまいました。月日が経ち、老婦人は体調を崩して寝込みます。看病できるのはカレンだけです。ところがカレンの元には舞踏会の招待状が届いていて、またしてもカレンは赤い靴を履いて行ってしまいます。ところが、いざ踊り出すとカレンが思う方向とは反対の方向に靴は勝手に踊り出し、森の方へと向かいました。そこではあの兵隊の顔が見えました。靴をぬごうとしてもぬげず、靴下を剥いでもカレンには踊りを止めることができません。そのまま墓地までくると、そこには剣を持った天使がいました。見覚えのある家の前まで来ると、棺が運ばれるところでした。老婦人が亡くなったのです。自分の力では踊りを止められないので、カレンは首切り役人に足を切らせて松葉杖をもらいます。一週間しても、カレンが教会に行くと切られた足が踊るのが見えました。カレンは教会の給仕として働くことにしました。夜は牧師が読む聖書の文言に耳を傾けます。自分を慕う子供たちに、カレンはかつての自分を重ねて黙ってたしなめます。ある時、他の皆が教会に行ってしまいカレンだけがベッドと椅子だけの部屋に残って神への祈りが書かれた本を開いていました。すると天井が高くなり、星が降り、賛美歌が聞こえて辺りの景色がまるで教会のようになります。そこに薔薇の花がついた枝を持った天使が現れました。ようやくカレンの罪は許されて、その魂は天へと昇ったのでした。

カレンという裸足の女の子がいました。貧しいカレンは冬も木靴で過ごしていました。靴屋の婦人はカレンのために小さな赤い靴をこしらえました。カレンがそれを履けたのは母親の葬式でした。お金持ちの老婦人が哀れに思ってカレンを引き取ります。靴屋の婦人が作った靴は燃やされてしまいました。あるとき女王の一行がカレンの街にやって来ます。カレンが目を引かれたのは女王の娘と彼女の履いていた赤い靴でした。ある日、カレンは堅信礼用に黒い靴をこしらえることになります。店に並べられていたのは王女が履いていたのとそっくりの赤い靴でした。それはカレンの足のサイズに適っていました。カレンは老婦人が目の悪いのをいいことに、その靴を買ってしまいます。堅信礼が進む間もカレンの頭にあったのは赤い靴のことでした。回りの者たちはカレンの足下に目をやります。カレンが履いていったのが赤い靴だと知った老婦人は彼女に注意します。ところがカレンはどうしても赤い靴が履きたくて次に教会に行くときにも赤い靴で行ってしまいます。

ラスティカがツバメの学名であることは、「幸福の王子」を紹介したところで書いたと思います。このツバメが王子に語ったように、あるいは「絵のない絵本」で月が主人公に語るように、「親指姫」のツバメもまた介抱されている間に親指姫に自分の知る様々な話を語ります。婚礼衣装の準備に追われていた親指姫を連れだす様は、まさにクロエを仕立屋から連れ出すラスティカのようです。
他にも「マッチ売りの少女」、「みにくいアヒルの子」、「人魚姫」、「雪の女王」、アンデルセンの物語を読んで、厳しい環境に置かれても芯の強い、主人公の心の清らかさに涙ぐんだ人は多いでしょう。それはアンデルセンの感受性の豊かさを示していると思います。同時にアンデルセンは感情の浮き沈みやうぬぼれが激しく、物事を大げさにとらえがちとも見られていたようです。ディケンズ家にいた頃、新聞に著書の悪評が出た際には新聞をわしづかみにして泣いたのでディケンズ夫人に心配されたといいます。また不慣れな英語圏で一人で馬車に乗せられた際は、馭者が自分をどこか知らない遠くの場所へ連れて行くと思いこんでいました。
それでもストーリーテリングの巧みさで多くの人（特に著名人）を惹きつけて、アンデルセンは稼ぎの少なかった頃から学業、公演、旅行など様々な支援を受けたばかりでなく、晩年まで食事相手を求めて知人の家を転々としていました。魔法舎に来るまではラスティカと二人で旅をしていたクロエの物語とも重なります。ただし、アンデルセンよりもクロエの方が金銭感覚はあるようです。魔法舎へ来たばかりの頃は、アンデルセンの感受性とともに心配性の性格も引き継いでいたようですが、最近は西のマイペースに慣れてきた様子。仕立屋としての腕は魔法使いたちの衣装作りに活かされます。ここにも、幼少期に人形の服を作って遊んでいたアンデルセンの姿が重なります。
参考文献
ルーマ･ゴッテン著.山崎時彦.中川昭栄共訳.「アンデルセン　夢をさがしあてた詩人」.偕成社，1994

モグラが親指姫に求婚すると、野ネズミは大喜びします。親指姫が断ろうとすると、怒りだしました。親指姫は糸を紡ぎ、婚礼衣装の準備に追われます。ついに当日がきて、親指姫は太陽に別れを告げるためすきを見て外に出ます。そこにあのツバメが現れたので、親指姫は今度は助けを求めました。ツバメは暖かい南の国へと飛んで、自分の家に親指姫を連れ出しました。そこには親指姫が愛する花々が咲き乱れていました。すると、羽をつけた天使が現れて親指姫を見初めます。親指姫には断る理由がありません。親指姫にも羽が与えられて、新しくマーヤという名をもらい、親指姫は花の女王になりました。
参考図書
時任森、読み語りアンデルセン童話、あすなろ書房、1998

冬が来て親指姫は凍えながら切り株の下にできた穴に住む野ネズミの家の戸を叩きます。野ネズミのところへは金持ちのモグラが度々訪ねに来ていました。ところがモグラは目が明るさに慣れないので、親指姫は自分が好きな花のことを悪く言うモグラを好きには慣れませんでした。モグラは自分の家と野ネズミの家をトンネルでつなぎました。ある日、親指姫はトンネルで気を失っていたツバメを助けます。春が来てツバメは親指姫は一緒に外へ出ようとと誘いますが、優しい親指姫は野ネズミを思って一度は断ります。

子供のいない女の人が、魔法使いに頼んで種をもらいます。植えるとチューリップが咲き、中には親指姫の背丈しかない女の子がいました。女の人は親指姫と名付けてクルミで寝床を作ります。ある夜、窓ガラスの隙間からヒキガエルが入り込み、親指姫を連れ去ります。危うくヒキガエルに嫁がされるところを、魚たちが睡蓮の茎を切って助けます。そこに蝶がやってきたので親指姫は自分の服のリボンで蝶と睡蓮を結びます。ところが今度はコガネムシが親指姫を連れ去り、さんざん悪し様に言います。親指姫は森に取り残されて厳しい冬を迎えます。

アンデルセンは晩年、「巻き毛、広い額、りこうそうな小さい深くくぼんだ目」をしていました。巻き毛はクロエの髪の特徴です。
アンデルセンの生涯を紐解くと、イタリア旅行を経て発表した「即興詩人」が、彼の才能が開花したことを世界的に認められた最初の作品とも言えるでしょう。厄災後の大陸の異変を解決するために賢者の魔法使いとして駆り出されることになるクロエ。彼が西の魔法使いたちと最初に受けたのは、仮面が知人になりすますという中央の国との辺境で起きた異変でした。異変を解決すべく西の魔法使いと組んだのは南の魔法使いでした。また、南の国で行う祝祭には今度は西の魔法使いたちが同行します。これまで魔法使いであることにより人間から偏見の目を向けられてきたクロエは南の国のおおらかさに驚くとともに癒されます。
前述したグルベーア教授やマイスリングの他にも、クロエの周囲にはアンデルセンの知人を踏襲している人物がいるようです。
ムルはおそらく物理学者のエーアステッドを意識して作られているでしょう。エーアステッドは電流と磁気の関係を発見した人物として知られています。彼の故郷はデンマークのランゲラン島です。アンデルセンの故郷のあるフュン島からは橋を通して行くことができます。陶芸で有名な自然に囲まれた島です。（ちなみに西のバラッド、及び二部には科学者の島かつ軍事要塞として真逆の雰囲気をもつラングレヌス島が登場します）
オペラ歌手のジェニーリンドは背が高くほっそりしていて、とび色の頭髪、灰色の目、広い額、巻き毛の持ち主でした。一方映画グレイテスト.ショーマンのジェニーリンドは裾の長い白いドレスとアップにしたオレンジがかった茶色の髪と緑が入った瞳が目を引きます。ラスティカの容姿とは完全には一致しませんが、心奪われる歌声や華やかさは引き継いでいると思えます。
クロエは魔法舎に来てから同世代の魔法使いたちや歳下の魔法使いたちと交流を持ちます。特に同い年のルチルと東のヒースクリフとは仲が良いようです。ヒースクリフの実家であるブランシェットのモデルとなった城は英国（スコットランド）にあります。ここから、特にディケンズの妻の人物像をヒースは引き継いでいるように思います。一方、ヒースクリフの従者で幼なじみのシノは当初、主人ほどクロエに対して心を開いていなかったようです。この辺りはディケンズを踏襲しているように思います。

1867年、アンデルセンは故郷、デンマーク、フューン島、オーデンセにて名誉市民の称号を贈られました。その翌日は市役所にて盛大な祝賀会が開かれました。彼の胸にはスウェーデンの北極星騎士勲章、ワイマールの白鷹勲章、プロシアの赤鷲勲章（デンマークは1864年からプロシアと戦争になりました。プロシアはシュレスヴィヒとホルシュタイン地方を併合。デンマークは「領土の三分の一、人口の五分の一」（ゴッテン，中川，山崎，p.366）を失い、両国と親交のあるアンデルセンは心を痛めます）をはじめ
メキシコの聖母マリア勲章等が輝いていました。
晩年、アンデルセンにはメリキョール家とヘンリクス家との間に交流が生まれました。ヘンリクス夫人もまた音楽を嗜む人でした。またアンデルセンはそれぞれの家の子供たちのために、切り紙細工やスクラップブックを作り、自作の童話を朗読しました。そして、1875年、70歳で亡くなり国葬されました。
引用文献
ルーマ･ゴッテン著.山崎時彦.中川昭栄共訳.「アンデルセン　夢をさがしあてた詩人」.偕成社，1994

以後、アンデルセンは毎年、諸国を旅して回りました。彼のアルバムから著名人との交流の記録を辿ることが出来ます。他に訪問地のスケッチも残されています。1833年にはパリで「ノートルダムのせむし男」や「レ．ミゼラブル」の作者としておなじみのビクトル．ユゴーに会い、紙にサインをもらってアルバムに貼りました。他にも、映画「グレイテストショーマン」にも出てきたジェニー．リンドからの手紙もアルバムに収められています。ジェニーは1843年にコペンハーゲンの王立劇場で公演を行いました。アンデルセンは彼女の歌声を聴き、またしても恋に落ちて、度々彼女に会いにきます。彼女に宛てて、「天使」、「柳の下で」、「小夜啼鳥（ナイチンゲール）」などの童話を仕上げました。ナイチンゲールはジェニーの異名でもあり、彼女のことをさすと考えられます。それでも結局、恋は実らずジェニーもまたピアニストのオットー．ゴールドシュミットと結婚しました。
1847年にイギリスを訪れた（ディケンズは貧富の落差に驚きます）際にはディケンズと知り合います。10年後に再訪し、ディケンズ家に滞在すると、ディケンズ自身はアンデルセンに不快感を示しますが、彼の妻はアンデルセンに親身に接しました。

アンデルセンはその後、二番目の小説「O.T」、「親指姫」を収録した第二の童話集、「人魚姫」を収録した第三の童話集、三番目の小説「さびしきバイオリン弾き」を発表します。1837年の夏には、スウェーデンを訪問し、フレデリカ.ブレーメル女史と知り合い、生涯の友人になりました。友人の物理学者、エーアステッドは童話集の内容に最初に理解を示した一人になりました。（恋多きアンデルセンは彼の娘、ソフィのことも意識します）アンデルセンに年金が授与されることになり、エーアステッドも喜びます。スウェーデンから帰国後、アンデルセンは「混血児（ムラット）」という戯曲を書き上げますが国王の逝去で上演は延期されました。二作目の戯曲「モール人の娘」は宛書きをした女優から出演を拒否されてしまいます。（この後、アンデルセンはルイーゼの婚約を正式に知らされます）
結局「モール人の娘」はアンデルセンがイタリア、ギリシャ、トルコさらにはイギリスへと至る旅行中に上演されますが、失敗に終ります。

大学入学後、アンデルセンは「ホルム運河からアマール島の東端までの徒歩旅行」という作品を自費出版します。さらには王立劇場で自作の戯曲の上演機会も得ました。大学が夏期休暇に入ると、アンデルセンは友人のクリスチャン.ボイドの家を訪ねます。そこでボイドの姉のリーボルを愛しますが、リーボルには既に婚約者がいました。リーボルに失恋後、アンデルセンは「幻想とスケッチ」という詩集を出版しますが酷評されます。同じ年（1831年）、コリン氏の勧めでドイツ旅行に出かけ、旅行記にまとめます。デンマークに戻ったアンデルセンが二度目の恋の相手として選んだのはルイーゼでした。ところが、この恋も上手くはいかず、ルイーゼは弁護士の男性と結婚しました。この恋を挟んで、1833年、アンデルセンはまたしてもコリン氏の計らいで国王に自著を献上して得た外遊資金で二度目の外国旅行に出ます。今度はパリ、さらにはスイスへと足を伸ばし、人魚姫の原型となる「アグネーテと人魚」という作品を仕上げますが、この作品もまた評判はよくありませんでした。そしてアンデルセンはイタリアへ行き着き、ミケランジェロやボッティチェリの作品に衝撃を受けます。ローマでは彫刻家のトーバルセンという知己を得ました。そして最初の小説「即興詩人」を書き始めます。帰国後、エドゥアールの尽力により何とか出版にこぎつけ、アンデルセンは成功をおさめます。「即興詩人」は版を重ねてヨーロッパ諸国の言語に翻訳されました。

アンデルセンは王立劇場に「ピッセンベルの盗賊」、「妖精の太陽」という戯曲を続けて提出しますが、（基本的な教養と知識の欠如を理由に）返されてしまいます。それでも友人の厚意で「ピッセンベルの盗賊」の一部は新聞に掲載されました。その後、アンデルセンは王立劇場の支配人のなかでも重要人物だったヨナス．コリンに会うよう勧められます。コリン氏の計らいでアンデルセンは十七歳でスラゲルセのラテン語学校に入学します。成績をグルベーア教授に報告するも、教授からも校長のマイスリングからも詩を書くことを禁じられてしまいます。さらにマイスリングは彼の子供たちの世話を押しつけました。またマイスリング夫人は周囲からの評判がよくありませんでした。それでも3年目のクリスマス休暇にコペンハーゲンで過ごした日々が、一時アンデルセンの心の慰めになりました。4年目に入るとアンデルセンは校長宅に住むことになります。校長がヘルシンゲーアに転勤した際も一緒について行きました。この新しい家はアンデルセンにとって快適な環境ではありませんでした。
「不潔でだらしなく、校長は服を着たまま寝るようなじじむしさでしたし、子どもたちはいやなにおいがしていました」（ゴッテン，山崎，中川，ｐ．164）「彼ともう一人の書生は、同じ一つのお皿から食事をさせられました。ヘルシンゲーアでは生活費が高くついて（略）ハンス.クリスチャンは一切れの肉に手を出すことも気がねして、コペンハーゲン時代のように飢え死に一歩手前というありさまになりました」（同ｐ.169）「暖房用のまきは一日五本しかもらえず、召使いたちのようすはだらしなく、（略）マイスリング夫人の行動にハンス.クリスチャンが閉口させられていた」（同ｐ.170）他の若い教師からこの様子を伝え聞いたコリン氏はアンデルセンを退学させます。
コリン氏は子供達にアンデルセンを家族も同然に接するように言いました。特に末娘のルイーゼはアンデルセンと親しくしていました。コリン氏の次男、エドゥアールはアンデルセンの大学入学前から語学の勉強を見てやっていました。入学後はアンデルセンの校正刷りを訂正したり、コリン氏がアンデルセンに外国旅行を勧めるように促したりしました。

アンデルセンは、一つの部屋で全員が眠るような貧しい家庭で育ちました。最初の父親はアンデルセンのために母国（デンマーク）の劇作家、
ホルベーアの喜劇や「アラビアン.ナイト」を読み聞かせて、人形の舞台をあつらえました。
靴屋で生計を立てていましたが、軌道に乗っているとは言いがたく、ナポレオン戦争に出征します。戦場に着く前にナポレオンは敗退してしまい、生気を失ったようになってしまった父親は帰国後に亡くなりました。洗濯婦として家計を支えた母親は元の夫の死後に再婚します。
アンデルセンの元の父方の祖母は精神病院の庭番をしており、周りに自分は貴族の出身であるとうそぶいていました。また祖父の方も精神の病を患っていました。アンデルセンも物事を大げさに表現するところがあり、周りから奇異な目で見られることがありました。それが後の豊かな創造力の基盤になったのです。（ただし、それが経験と相まって洗練された形で世に認められるのはまだ先のことです）アンデルセンに故郷を離れるきっかけを与えたのは、王立劇場のオーデンセでの巡業公演でした。その後、アンデルセンが拠点を移しながら作品を発表していく間に母親はアルコール中毒で亡くなります。

ラスティカは、3月19日の誕生日にラスティカのみが排出されるガチャで引き当てたものです。3月21日までのイベント、及びその他の復刻含むホワイトデーのガチャとは関係ありません。
引き当てたSSRは二枚（オルヘルと仮面）です。

クロエの名前の由来も諸説ありますが、アンデルセンが世話になった家のひとつにコリン家があります。英語で「〜（一）家」というときはｓをつけるのでコリンズというクロエの名字はここから来たのではないかと推測できます。また王立劇場傘下で学び下宿生活をしていた頃からのアンデルセンのデンマーク語の師匠にあたる存在がグルべーア教授で、ラスティカを思わせます。（ラスティカは何気ない日常を豊かな語彙で特別なものに変えてしまうところがあります。ただし、グルベーア教授はお金があればあるだけ使ってしまうラスティカとは違い、アンデルセンの下宿代が正当なものではないと知ったときには便宜をはかってくれました）
クロエは泡の街の生家で冷遇されていたところをラスティカに連れ出されて豊かの街に出てきます。冷遇されていた頃の環境は、ラテン語学校の校長、マイスリングのもとでのアンデルセンの生活と重なります。その後アンデルセンは大学の入学試験に合格しますが、作家の道を選び、外国旅行に出かけて見聞を広めた後で病床にあった母のことを耳にして故郷に戻った後、再び異国の地を踏みます。
クロエも魔法舎に来るまでは「学校に通って先生に習う」ということがなく、20歳になって賢者の魔法使いとして召還後、カインとルチルを除いては歳下の魔法使いたちと学んでいくので、このあたりもアンデルセンと重なっています。そして大陸各地で起る異変を解決するためにかり出され、二部では大半の時間を西の国で過ごすことになります。二部でのカインのやらかしは人前で何度も自作の詩を朗読していたアンデルセンの姿を思わせます。
参考文献
ルーマ･ゴッテン著.山崎時彦.中川昭栄共訳.「アンデルセン　夢をさがしあてた詩人」.偕成社，1994

魔法使いの約束にはこれまで何度かアンデルセンが書いた童話をベースにしたストーリーが展開されてきました。今でこそ世界中の子供たちに知られたアンデルセンですが最初から順風満帆というわけにはいきませんでした。アンデルセンが大成するまでの半生を追うと、その軌跡が西の魔法使い、クロエと重なります。不思議なことに、「牡猫ムルの人生観」のアブラハムとクライスラーとの関わりとも似た部分があります。

アンデルセンはデンマークのオーデンセの生まれで、父親は靴職人でした。
アンデルセンも幼い頃から紙を切って様々なものを作り出していました。父親の死後、織物工場に徒弟奉公に出されますがすぐにやめてしまいます。母親は再婚したものの、相手の実家から遠ざけられてしまい、一家で引っ越します。一方のアンデルセンは仕立屋奉公に出そうとする母親の勧めに従わず、コペンハーゲンに出てきます。そこで王立劇場に入ろうとしますが相手にされず、劇場付属音楽学校長のシボーニから個人指導を受けます。ところがのどをつぶしたため舞踏に転じ、ダーレンのもとで学ぶことにします。
アンデルセンの芝居を見るのが大好きで、感情を高ぶらせやすいところや夢中になると他が見えなくなってしまうところをクロエは引き継いでいます。
アンデルセンは自作の戯曲や詩を見てもらおうとしますが、「正式な教育（高度な教養）が必要」と突き返され、その度に「教育」という言葉に抵抗を示すものの、人からは大分遅れて進学し、大学をめざします。

メアリーポピンズ（原作通りの表記）は東風とともに、ジェインとマイケルの前に子守りとして現れ、風が西風になると二人のもとを去ります。

ある金曜日、三人がメアリーポピンズのおじであるアルバート･ウイッグ氏の家に行ってみると、食卓には、「四人分の茶わんとおさら、バターをつけたパン、やわらかそうな菓子パン、ヤシの実いりのお菓子などの山盛りのおさら、それから、桃色のお砂糖でころもをかけた、干しブドウ入りの大きなケーキ」が並び、お茶会の用意がととのっていました。ところが何と当人は空中に浮いていたのです。その日はウイッグの誕生日でした。当人曰く、「わたしは、ほとんどなにを見ても、笑いたくなるんだよ。ほんとだよ。（略）そこでね、おかしなことには（略）わたしの誕生日が金曜日にぶつかるとなると、さあもう、どうにも、あがってきてしまうのさ。（略）そのとくべつな日に、わたしが笑うと、笑いガスがからだじゅういっぱいになるんだよ。それで、どうしたって地面についていられないのさ。ちょっと、にこっとしただけで、もうそうなんだ。なにかはじめにおかしなことがある、すると、もう風船玉みたいにあがってしまうんだ。そして、なにか、ごくまじめなことを考えつくまでは、二どとおりられなくなってしまうのさ。」（林,pｐ51−52）
物語はここで終らず何とウイッグ氏の奇妙な有様（「空気のなかで手足を動かしながら、ときには天井につかまったり、また、ときには通りすがりに、ガス灯の柄につかまったり」（同p.53））に笑いを抑えられなくなってしまったジェインとマイケルの体も浮かび上がってしまうのでした。

引用文献
P.L.トラヴァース作.林　容吉訳.「風にのってきたメアリー.ポピンズ」.
岩波少年文庫，2000

水妖の話を探していたところ、以下の物語に遭遇。アーサーが消そうとしているオズの逸話って大体下のような内容なのではと想像。

貧しい親の暮らしを助けようと思っていた娘は、ある日狩りに出かけた父親を追って森に入り、迷ってしまいます。そこで穀物畑を見つけた娘は、それが森の木を伐採し、地を耕し、種をまいてできたものだと聞きつけ、自分たちも森に土地を見つけて同様の手順を踏みます。種まきの日、娘が雨を待っていると、先客がいました。その先客は見目麗しくまるで王子のような装いをしており、娘はすっかり心を奪われてしまいました。娘の願いを聞いた王子は娘が自分と結婚することと引き換えに、畑に雨をもたらすことを約束しました。実際に雨が降り、娘は喜びます。娘を空の上へとつれていった王子にはもうひとつ別の顔がありました。「体にはサソリや蛇が這い、髪が風に舞い、眼は赤」色をしていました。あまりのことに娘は気絶してしまい、王子は娘が約束を破ったと思いました。そこでナイフを娘の胸に突き刺します。娘は稲妻となり、王子は雷になって娘を追いかけました。二人は雨の王と稲妻の女王になったのです。
日本民話の会.外国民話研究会（編,訳）.世界の水の民話.三弥井書店,2018

ミスター･ミストフェリーズは神出鬼没。
ふだんの彼ときたら、暖炉のまえで丸まって、ぼーっとしているだけ。
なにがおきても気にしない。
こんな内気で臆病な猫も、ほかにいないと思うくらい。
ところが、これまた不思議。
暖炉のまえで丸まって、寝ているはずなのに屋根の上で声がする。
屋根の上をうろついていたはずなのに、暖炉のまえで声がする。
とうとう最後には、気持ちよさそうに彼がのどをゴロゴロ鳴らすのを、
家中のみんなが聞くのです。

ミスター.ミストフェリーズは、なにしろただ者じゃない。
これこそが彼のなみはずれた魔力の証拠。
もう、うたがいありません。
庭の木陰に姿を消して、いつまでたっても帰らない。
みんなでどれほど呼んだって、いつまでたっても帰らない。
どこへいっちゃったの、帰ってきて。
ところが当の本人は、ホールでスヤスヤねむっている。
さて、ついこのあいだも、すごい魔術をみせてくれた。
帽子のなかからとりだしたのは、まっ黒い子猫。
1、2、3、4・・全部で7匹。
なんてすてきな魔法猫。（以下略）
引用図書
T.S.エリオット（作）.田村隆一（訳）.
魔術師キャッツ　大魔術師ミストフェリーズ.ぽるぷ出版,1991

ミスター.ミストフェリーズは謎の猫。
世界がどんなにひろくても、こんな猫は2匹といません。
摩訶不思議な手品をつかい、わたしたちを別の世界へつれていく。
その幻想の世界では
本当なのか、うそなのか。
夢なのか、現実なのか。
なにがなんなのかわからない。
わたしたちをとりこにしてしまう、すべてが彼のしわざなのです。
ミスター･ミストフェリーズは超一流の奇術使い。
世の偉大な手品師たちも、そのしかけの秘密を知りたくて、
はるばるたずねてやってきます。
太陽が消えて、夜に変わる夕暮れどきの魔法の時間。
それは一瞬の出来事。
ミャミャーン、クルリン！
目にもとまらない。
あー、ほら、見てごらん。
こんなことってあるのだろうか。
なんてすごい猫なんだ。
不思議なミスター･ミストフェリーズ。
ミスター･ミストフェリーズは神秘の黒猫。
耳の先からしっぽの裏まで真っ黒で、静かで小さな黒い猫。
彼は、黒い影になり小さな割れ目をスルリとぬける。
針のような爪の先で、細いレールの上へヒラリと舞う。
しなやかな指先で、トランプのカードも、サイコロだって自由自在に
あやつって。
いつだって、わたしたちはだまされっぱなし。
お月さまと同じ光の目をもっている。
（略）

魔法使いたちの祝辞を読むと、大体大人組（〜600歳）と若手組（ファウストを除く400歳〜）で意見が別れる模様。大人組が哲学者としての側面やまほやくの物語の起点に関わるようなこと（月に焦がれて魂が砕ける前は西の王家に助言していたり、人造魔法使いなどの危険な研究に手を出したり、パトロン探しをしていたり、双子を引き裂くような発言をしたりと止まらぬ好奇心が災いを招く）を指摘しているのに対して、若手組は猫っぽさを指摘。（あごを撫でられて喜んだり、いたずらをしかけたられたり、花火をあげたり）その二面性を一番楽しんでいるのは当人だったりして？最近ではシャイロックが距離を置こうとすると、戸惑いを覚えてあえて困らせる発言をすることも。

前に書いたのがみつからなかったので記憶を元に再構成。
youtubeに別々にコメントしたものが奇跡的につながってた。
設定/ネロだけ魔法舎に残り、残りの東３人で任務に。後日お礼状が届く。
　　ヒースとシノがファウストを囲むように座り、礼状を読んでもらって
　　いる。ネロは料理中。
ネ）「先生、涙で文字読めないから試験パスしていい？」
ファ）「いいわけないだろ。でも、とりあえず食事にしようか？」
試験中。賢者は見学兼試験監督補佐
ネ）「（ボソッ）賢者さんわかる？」
ファ）「賢者に聞いてどうするんだ」
朝、興奮したヒースが寄声をあげ、駆け込んできた３人。
シ＆ファ）「ネロ、ヒースに何を食わせた？」
ネロ）「俺じゃない。起きたらもうこうなってた」
ヒースはよっぽどお礼状が嬉しくて眠れなかったらしい。
ファウストがエルダーフラワーソーダで落ち着けましたとさ。（完）

※キャラ造形崩れあり（ミチルは多分もっと賢い）。
　地質条件は創作（レイタ山脈には当てはまらないかも）
　植物の生育条件は植物ごとに異なります。
魔法舎談話室。
フィガロ）「あれ、三人そろってどうしたの？」
ミチル）「フィガロ先生。この前、南の国に帰ったときに久しぶりに診療所に寄りましたよね。花壇の様子を見に行ったら、ようやく芽が出てたんです。花が咲くところをリケにみせようと思ってたんですけど・・・」
リケ）「ミチルが精一杯お世話をしていたのに枯れてしまったんです」
アーサー）「植え替えた土が合わなかったのかもしれないな」
フィガロ）「そうだね。南の土は水はけが悪いし栄養も偏っている。元々適応できる植物は限られているんだ。一方の中央や東の地質は真逆。普通は根が張りやすくなって栄養も吸収しやすいんだけど・・・水や肥料のやり過ぎは逆効果になることもあるんだ」
ミチル）「もう、どうにもならないんですか？」
フィガロ）「元々、植物が持っている生命力を活かして回復力を高めることはできる。こうなる前なら土を入れ替えるなり、鉢の置き場所を移動させるなりできたかもしれない。でも、ミチルも分かってるだろう？既に終えてしまった命を取り戻す手段は魔法使いといえどもないってこと。命の期限そのものを伸ばすことは出来ないんだ。ちょっと、なんで俺を見るんですか？」
スノウ）「いたいけない子どもに容赦ないのう」
ホワイト）「もっと気の利いたことは言えんか、フィガロや」
フィガロ）「・・・・・・」
賢者）「ドライフラワーにするのはどうですか？」
全員）「！」
賢者）「ほら、フィガロの診療所にも飾ってあったでしょう」
ルチル）「それはいいですね。元々、この花は皆さんの目を楽しませようと思って咲いてくれようとしたのかも。本来とは違う形になっても、目的を果たせるならお花も喜ぶかもしれないよ。ミチル」
ミチル）「じゃぁ、できあがったらリケと兄様、それにフィガロ先生にあげますね。賢者様も一緒に作りましょう」
賢者）「皆さんで作りませんか？」
アーサー）「それは楽しそうですね。ぜひ、私も参加したいな。オズ様も呼んで差し上げたい」
スノウ）「なに、一人でこそこそ逃げようとしておるのじゃ。フィガロや」
ホワイト）「こそこそというより、いそいそじゃよ。スノウちゃん」
（完）

スノウとホワイトの名前の由来。一見「白雪姫」と思われそうですが、「青い鳥」同様、双子が登場するうえに片方がこの名前（snowwhite）を持つ別の作品があります。タイトルは「白雪と赤薔薇（Snow　White　and　Rose　Red）」。児童書の英文を翻訳すると、「白雪と赤薔薇はお互いのために身を捧げ、生きている限り一緒にいると誓っていました」という一節に出会います。
ホワイトの魂はスノウによってつなぎとめられています。背景には二人はいつでも一緒という固い意志のもとに結ばれた約束があります。まほやく考察部にもある通り、この約束は上記の原作を踏襲したものといえそうです。
（考察部では、この本に登場するアイテムも育成ストーリーに散りばめられていると指摘しています）

まほラジ第48回からインスパイアされて
魔法舎食堂。晩酌をしようとファウストが顔をのぞかせると、いつになく
どんよりとした空気が。机に突っ伏す一同。
ファ）「どうしたんだ一体？」
女晶）「年はとりたくないよぉ」
男晶）「会社に行きたくない〜」
ヒース）「ちょっと、オーエンのかけた魔法が上手くとけなくて
　　　　・・・自己嫌悪です」
ファ）「で、君は？何、若者に混じってるんだ」
ネロ）「いやぁ、ちょうどさっきフィガロの部屋に呼び出されて、何事かと思えば足腰を鍛えるべきだって言われちゃって」
ファ）「さぼりグセのつけだよ・・・いや、それはあの方もか」
ネロ）「あの方？」
ファ）「何でもない。全く、国家もク・・・いや、こんな時はーサティルクナート・ムルクリード」
柑橘系の香りに包まれる食堂。そこに駆け込んでくる足音が。
シノ）「レモンパイ、焼いたのか？」
ネロ）「そういえば、残りがまだあるから温めるよ。落ち込んだ時こそ
　　　　甘い物だろ？」
ネロの声にはね起きる賢者二人。
こうして魔法舎は再び穏やかな？時間を取り戻したのでした。（完）
（最初の落ち込むシーンはワ○ピー○でビ○王女と別れて、アラバスタを
離れなければならず、船の欄干にぶらさがっている麦わらの一味のような顔を想像してください）
動）inspire　　＝鼓舞する、激励する
名）inspiration　＝鼓舞、激励