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1 石井聡美

まほやく流 世界名作○場 part2

魔法使いの約束は、日本物、洋物問わず様々な文学作品をモチーフにして
物語やキャラクター像が構築されています。
ここでは珠玉の物語のあらすじを抜粋して紹介していきます。
(随時、まほやく内のストーリーの内容にも触れます)
60 紅蓮の大地







賢者はミスラの快眠を促すため、サウナがわりに北の国の火山帯を訪れます。そこはかつてミスラがチレッタと修行した土地であり、倒しきれなかったディアウグルが封印されていました。麓は穏やかに生態系を取り戻しつつありましたが、頂付近では獣を食い散らかした跡が見受けられ、ミスラはディアウグルと再び相まみえることに。これらの描写はブリュンヒルトが元々いた土地を思わせ、チレッタの姿が彼女の勇ましさに重なります。カインとオーエンがついて来たのも、ジークフリートを重ねれば納得の人選。
59 ブリュンヒルト
因みにブリュンヒルトについては以下のように描写されています。
「海の彼方に一人の女王が君臨していた。彼女に比べられる女性はどこにも知られていないほどで、彼女は限りなく美しく、その力もたいへん優れていた。彼女は愛を賭けて勇ましい英雄たちと槍を投げ競っていた。また石を遠くへ投げ、そのあとを追う幅跳びも行った。彼女に想いを向けようとする者は、その三種競技で生まれ尊い女性に勝たねばならなかった。一種目でも負ければ、その者は首を失ったのである。」(石川,p.106)
そのような女性を落とそうとするグンター王にジークフリートは以下のように忠告します。
「王様、いま誰と言った?あの極北の乙女を娶りたいというのか?煮えたぎる鉄を血潮で溶かしているあの女を?やめておけ!ーその美貌は世に知り渡っているぞ。だが彼女と戦って勝てる男はどこにもいないのだ。一人をのぞいてはー威勢はいいが、炎で炙られ、水底に引きこまれても、はたして腰が抜けないものかな。あの女は四大元素のようなものだ。あの女を打ち負かすことのできる男はこの世に一人しかいない。彼女を自分のものにしようが、人にくれてやろうが好きにできるのはな。そいつから女をもらいうけたいのか?父親か兄弟でもないそいつから?ーあなたに勝ち目などない。一撃でこなごなだーあなたに一目惚れして、戦いをあきらめるなんてこともあり得ない。あの女は自分の純潔のためには命がけで戦うのだから。見さかいなく落ちる稲妻、悲鳴に耳を貸さない湖のようなもの。純潔の帯を解こうとする者たちを無慈悲に葬り去る。あきらめて忘れることだー彼女に勝つのは至難の業だ。俺同様石投げの名手で、投げた石のところまで跳躍する。また百歩も離れたところから槍を投げ、七層にも重ねた鋼鉄の盾を撃ちぬく。まだまだいろいろある。われわれにできるのはただ一つ、仕事を分担することだ」(香田pp38−40)
またブリュンヒルトが住む場所については、王に仕える勇士で楽士のフォルカーの「この打ち捨てられた暗礁を見ろ。生き物たちがとうの昔に恐れをなして逃げだした場所ではないか。こんな土地がいいといってしがみつくのはあなたくらいなものだ。荒れ狂う嵐、逆巻く波、吹き出る火山、それに天からしたたり落ちるこの赤光、まるで生け贄の台から流れ出た血のようではないか!悪魔ならいざ知らず、人間にはちょっとおぞましすぎる−」という言葉に対して補足するように「ここでは時間は止まっているようなもの。春も夏も秋も知らない。一年は表情を変えない。そして私たちもそれと同じく不滅なのだ。陽の光のもとですくすく育ったものはここではまったく育たないが、そのかわりこの夜の世界では、お前たちが種をまくことも育てることもできないものが実りをつけるのだー」(香田p60)とブリュンヒルト自身も言っています。
58 ジークフリートの最期
ジークフリートがクリームヒルトを妻にしたのと時を同じくして、ブルグントの王、グンターはブリュンヒルトを妻に迎えますが、なかなかブリュンヒルトの心は王になびきませんでした。ところが策略に乗っかったジークフリートが隠れ蓑を使って寝室に忍び込み、グンター王の振りをした挙げ句に彼女の腰帯を持ち帰ってしまいます。一方、忍び込んだジークフリートをグンター王だと思い込み、すっかり従順になったブリュンヒルトの方はグンターこそが英雄たる真の王だとみなし、ジークフリートとその妻で(グンターの妹でも)あるクリームヒルトの存在をよく思っていませんでした。ブリュンヒルトから侮辱されたクリームヒルトは例の腰帯を見せつけて恥をかかせます。己の野望も相まってブリュンヒルトが怒りの鉾をおさめるにはジークフリートを亡き者とするのもやむなしと考えるグンター王の配下、ハーゲンは敵方が使者を送り込んできたと偽の戦争を持ち出します。不吉な夢(※)をみたクリームヒルトは夫に死なれたくがないために、思わずハーゲンにジークフリートの背中(より正確には肩甲骨のあいだ)の弱点を告げてしまいました。ハーゲンの策略に乗ったクリームヒルトが急所をあらわす目印として白い糸で十字を縫い付けた衣を纏ってジークフリートは出陣します。実際には戦など起こっていないため、王は根城に残した一部の者を除く一同を連れて狩りに出ます。狩の場でジークフリートは大熊を仕留めますが獲物に相応しいほど喉を潤せるような葡萄酒をハーゲンは用意しませんでした。そして上手く泉の方へ導くと、ハーゲンの投げた槍が急所を突き、ジークフリートは息絶えます。
※1つめの夢では、2匹の猪がジークフリートに飛びかかり、彼の血で花が真っ赤に染まる。 2つめの夢では2つの山がジークフリートの上に崩れ落ちる。
参考図書
高木卓(著).ニーベルンゲン物語.偕成社,1968
石川栄作(訳).ニーベルンゲンの歌 前編.ちくま文庫,2011
ヘッベル(作).香田芳樹(訳).戯曲 ニーベルンゲン.岩波文庫,2024
57 再び龍の話
ここでは、ニーベルンゲンの物語をもとに英雄ジークフリートの竜退治について紹介します。
ある日、ジークフリートはニーベルンゲンの二人の息子(シルブングとニベルング)が父親の遺産を巡って争っている場に居合わせます。二人はジークフリートに遺産を等分するように頼みますが、結果に納得できずに差し違えてしまい、遺産の財宝と名剣バルムングはジークフリートが手にします。その後、ある洞窟の前で二人の敵討ちをしようとしたアルベリヒという小人がジークフリートに挑みますが、ジークフリートはアルベリヒから隠れ蓑を剥ぎ取ります。さらに洞窟の前を塞いでいる苔むした岩のようなものは実は龍で、アルベリヒはその血の効用をジークフリートに伝えます。ジークフリートはバルムングで龍を突いた際に出た血を浴びました。唇についた血でジークフリートは動物の声の意味が分かるようになりました。また彼の体は堅固になりました。ただし、菩提樹の葉が一枚背中についていたのでそこだけは弱点になりました。
56 小休止



ファウストの部屋、よく見ると、赤い蝋燭が大小で二本あります。東の祝祭のヒースの扱いといい、この前のネロのイベストといい、公式は東の魔法使いに人魚にまつわる物語を重ねたいのかしら?尚、ユダヤ教では9本のろうそくの内2本〜3本の色が赤いものを使うこともあります。
55 ゲルギオス伝説
スペインのバルセロナには祝祭日の「サン.ジョルディの日」に、男性は女性にバラを、女性は男性に本を贈る習慣があります。後半の風習はまだ歴史は浅いですが、生け贄にされた姫を竜から救ったというサン.ジョルディ(聖ゲルギオス)の伝説はここにも浸透しており、カタルーニャの守護聖人にもなっています。
313年にローマ帝国皇帝、コンスタンティヌスがキリスト教に対する寛容令を出して公認するまで、キリスト教徒は帝国全土で迫害を受けていました。にもかかわず、ローマの軍人だったゲルギオスはキリスト教の信仰を禁じられず、実践していました。ところがディオクレティアヌス帝がキリスト教徒は死刑にすると法令を出したため、ゲルギオスは職を辞め、現在のトルコ中央部ーカッパドキアに帰りました。放浪生活を送っていた彼は地中海沿いにキリスト教の教えを広めながら、リビアのシレナにやって来ます。※
シレナでは毒を吐く恐ろしいドラゴンが猛威を振るっていました。家畜(牛や羊)に飽き足らず、羊飼いの少年までも犠牲になったため、王は竜と生け贄を捧げる取引をします。その結果、人々は毎朝2頭ずつ羊を生け贄として捧げました。ところが、ついに羊がいなくなると王は子ども達を生け贄として差し出すことにします。くじで選ばれた子どもは湖に連れて行かれ、岩に縛り付けられ、食い殺されてしまいました。町の人々になす術はありませんでした。遂には王の娘がくじで選ばれてしまいます。彼女を助けるべく王は自分の財産を町民に分け与えると言いますが、元々子ども達を犠牲にすることを決めたのは王で、他の子どもが犠牲になっても対策をとらなかった王に味方する町民はいませんでした。姫は湖のそばの岩に縛り付けられてしまいます。するとそこに「金で飾った馬に乗り、槍を背負い、キリストの立派な十字架が描かれた盾と甲冑を身につけた(高尾,pp56-57)」ゲルギオスが現れます。姫はゲルギオスに去るように言いますがゲルギオスは断りました。湖から現れたドラゴンがゲルギオスに襲いかかります。ゲルギオスは槍でドラゴンの胸を貫きますが致命傷にはなりませんでした。そこで姫から帯紐を借りてドラゴンの首に巻き付けます。ゲルギオスは姫を馬に乗せ、自分は帯紐でドラゴンを引きずりながら町へ戻りました。ゲルギオスはこれをキリスト教に改宗させる契機ととらえ、王と臣民に洗礼を受けさせてからドラゴンの頭を切り落としましたー
(ダグラス.ナイルズ(著).高尾菜つこ(訳)『ドラゴンの教科書 神話と伝説と物語』より)
※wikipediaによると舞台がリビアになったのは13世紀以降。
 スペインのサンジョルディの日はゲルギオスの殉教日である4月23日。
54 ナッカーとは
"イングランド南部のよどんだ沼や池、汚水溜めに棲んでいた水竜で、そうした水場はときに「ナッカーホール(ナッカーの巣穴)」と呼ばれた。ナッカーホールが最初に確認されたのはサセックス地方で、それは底なしといわれた。また、ナッカーホールの水は、冬場にどんなに寒くても、けっして凍らなかったという。ナッカーには小さな翼があったが、必ずしも飛べたわけではないー実際、その翼はむしろ魚のひれのような役目を果たした。彼らは水中を非常にスムーズに動いたが、えらがなかったため、空気を吸う必要があった。クロコダイルやアリゲーターなどのワニのように、目や鼻孔は幅広の平たい頭のうえにあり、水中にいるときでも、周囲の様子を観察することができた。ナッカーには大きな頭と口があったが、体は蛇のように細長く、ウナギのようにくねくねしていた。足はないが、蛇のように地面を這い、尾を使って標的を襲った。牛や羊、人間といった獲物を捕まえるだけの俊敏さもあり、獲物を追うときのナッカーは馬と同じくらい速かったという。また牙には猛毒があり、実際酸性度がきわめて強く、犠牲者の肉を溶かすほどだったとされている”(ダグラス,高尾,p.136)
"その唸るような叫び声とシューッという不気味な音は、何キロもさきまで聞こえた”(同,p.137)
53 エルマーと16ぴきのりゅうC
エルマーは穴の外にでるとピストルをうち、ボリスから聞いた人間の名を呼びました。その声に反応して男たちが網の端をおさえていた石を外しました。男達は二発目の銃声を聞いて入り口を抑えていた網と石を取り払っていきます。そしてエルマーは合図の三発目のピストルを撃ちました。まずボリスが笛とらっぱを吹き鳴らして走りまわりました。それと呼応するように16ぴきのりゅうも一斉に笛とらっぱを鳴らします。男達は驚いてその場を離れてしまいました。ボリスの音を追いかける者もいました。エルマーはもうひとつの小さな入り口へと駆けていきました。りゅうたちも網の取りのけられた入り口へ向かいます。そして空へ飛び立ちました。16人の男達はばらばらの方向に逃げていきました。エルマーはボリスと合流しそらいろこうげんを飛び立ちました。二人が逃げ出す頃、ようやく人間たちを遠ざける砂嵐の気配がしてきました。ボリスはエルマーをわかめ町まで連れていきます。エルマーはそこからかれき町までは汽車で帰ろうと考えていました。全ての顛末が新聞に載ったのは翌朝のことです。エルマーの父親はその内容を読んで聞かせました。
52 エルマーと16ぴきのりゅうB
そらいろこうげんに着くと、人間はまだ洞穴の外で網を張っていました。エルマーはりゅうの案内で金魚草で隠れたもう一つの入り口に急ぎます。幸い、まだ人間たちには見つかっていませんでした。エルマーはリュックから懐中電灯、笛、らっぱ、一束の紐、ジャックナイフを取り出しました。そしてりゅうの首から笛とらっぱを下げました。そしてりゅう(名前はボリス)を入り口に残してエルマーは懐中電灯をつけて穴の中へ入っていきました。それから懐中電灯をしまって、16ぴきのりゅうそれぞれの首にエルマーは同じように笛とらっぱを下げました。
51 エルマーと16ぴきのりゅうA
エルマーは一連の冒険のきっかけをつくった猫に起こされてりゅうの子のことを知ります。彼らは他の人に見つかる前にりゅうの子を探しに出かけます。りゅうはみどり公園のスチーム.シャベルのなかで夜を明かしていました。りゅうを助けるにはきちんとした計画が必要でした。今回エルマーがそろえたものは、「ふえが 十六。ぜんぶちがうねいろのもの。らっぱが十六。ぜんぶちがうおとのもの。うんどうかいにつかうピストル一ちょう。それから、ピストルのたま。じょうぶなひもを一たば。いたチョコ六まい。いちじくジャムのビスケット三はこ。(渡辺訳)」それからよく切れるジャックナイフと懐中電灯。晩ご飯が済むといよいよ行動開始です。猫は家で待つことになりました。りゅうはエルマーに家族の特徴と騎士に追い払われてそらいろこうげんに逃げてきた経緯を語ります。こうしてりゅうはエルマーを背に乗せて海岸線、町、農場、山脈をこえてそらいろこうげんを目指します。(海岸線では船が、町では農場を出てきたワゴンさんがりゅうと少年の姿をとらえました)
50 エルマーと16ぴきのりゅう
りゅうの子はエルマーを送り届けると、自分たちが住んでいたそらいろこうげんに帰ろうとします。人間の目から隠れる場所を求めて、百姓のワゴンさんの農場にたどり着きます。窓から謎の金と青の体の生き物が通り過ぎるのを見て何とかつかまえようとするワゴンさんの意気込みも空しく、土管の中に隠れていたりゅうを牛たちが囲んで守ったため、何とか見つからずにすみました。ワゴンさんが牛小屋に入ったすきに、牛たちの助言を聞き入れたりゅうは飛び去り、ワゴンさんは誰もいない茂みに向かって銃を発砲する羽目になりました。ところが、いざ農場の先の町をこえて故郷に帰ろうというとき、すんだ空気に乗じて人間たちが、それまでは立ち入らなかった山脈をこえ、砂漠をこえてキャンプを張っているのを目にします。さらにりゅうの子は人間たちに自分たち(りゅう)の存在が知られ、洞穴に追い込まれてしまったことを知ります。洞穴には二つ入り口がありましたが、その一つが人間たちに知られて塞がれてしまいました。りゅうの子はもうひとつの入り口から中に入ろうとしますが途中でつかえてしまいます。そこで両親と兄弟を救うために、かれき町に住むエルマーに助けを求めることにします。りゅうは自分が入ってきた痕跡を上手く埋めたあと、山脈と砂漠と町と農場をこえて、エルマーの住むかれき町に向かいました。(途中の町の男の子と海岸沿いにつけていた船がりゅうの姿を見ていました)
49 エルマーとりゅう
みかん島で一夜を明かし、故郷の「かれき町」までりゅうの背に乗って帰る途中、嵐に見舞われるエルマー。結局、りゅうのお腹まで水がくる中、背中で眠って嵐をやり過ごすことにします。
翌朝、彼らがたどり着いたのはカナリヤのカン十一世が治めるカナリヤ島でした。彼らの前に、以前にエルマーに逃がしてもらったカナリヤのフルートが現れます。フルートの話ではカン十一世の知りたがり病が島中のカナリヤたちに伝染してしまったといいます。そこでエルマーはカン十一世に謁見し、カン十一世が知りたがっていた、王家に代々伝わる宝の正体を突き止めるべく、木の下の宝を掘り起こすことにしました。(島にはかつて人間たちが訪れてまつ林を植え、りんご畑を作って、連れていたカン一世とその王妃を置いて島を出て行ったといいます)エルマーが辛抱強く地面を掘り、りゅうが箱に尾を引っかけて取り出します。入っていたのは、
「しろめ(なまりとすずの合金)ざら 十二まい
しろめコップ 六こ
テーブルセット 十二くみ じゅん銀せい
てつのフライパン 一こ
てつなべ二つ ふたつき
コーヒーひき 一こ
しおとさとう 一かんずつ
おの 一ぽん
ほくちばこ 一はこ
たね五ふくろーかぼちゃ.とうもろこし.キャベツ.むぎ.きび
金どけい一ことくさりーわたしのつま、セーラのもの
じゅん銀のハーモニカ 一こ
金か 六ふくろ      」 (渡辺茂男訳)
カン十一世は、エルマーに金貨三袋、ハーモニカを、金時計と鎖をりゅうに与えました。十二枚の皿の上にエルマーがみかんを載せると、カナリヤたちは宴会を始めました。エルマーがハーモニカを吹きます。翌朝、種と金貨五枚と銀のスプーン1本を残して宝箱におさめると、再び地中に箱を戻しました。エルマーはフルートにチューインガムと輪ゴムを渡して去っていきました。こうして父親の誕生日に再び家に戻ったエルマーは金貨を見せてハーモニカを吹きました。金時計と鎖はエルマーの母親の手に渡りました。

まほやくの世界では、城と魔法舎の給仕をしているカナリアが一周年で、五カ国和平会議のために晩餐会の準備に追われます。また、銀宿る卵屋のファンタジアではネロの卵から出来たのはスプーンでした。偶然の一致なのか、意図的な一致なのか、はてさて。
48 エルマーのぼうけん
一作目のテーマは、竜の子を助けることと危機回避です。
エルマーの危機回避術は、
⓪麦袋の中に入り、積み荷(とうもろこし)の振りをする
@こっそりクジラの背も渡って、みかん島から動物島へ行く
Aリュックサックを背負った自分を猿に見立てて、カメには「おばあさんを医者に連れて行く」と言ってごまかす。
Bトラにチューインガムを噛ませる
(トラには緑になるまでチューインガムを噛み、それを地中に植えるとまたチューインガムの実がなるとエルマーは嘘をつきます)
Cサイに歯ブラシと歯磨き粉で牙が白くなるところを見せて、
 歯ブラシを渡して牙を磨かせる
Dライオンにくしを渡して鬣をとかし、リボンで三つ編みにする
E虫眼鏡をサルに渡してゴリラののみをとる
Fキャンディーをワニの尾に結んで次のワニの口に順に入れ、橋をつくる
こうして動物たちの気をそらせることでエルマーは竜の首に巻かれた縄をほどこうとします。途中、気づいた動物たちが追ってきますが、気まぐれなワニの背のうえで右往左往する動物たちを尻目になんとか危機を脱します。
47 エルマーシリーズ 走り書き
先日、ルース.ガネットさんが100歳で亡くなられました。「エルマーのぼうけん」、「エルマーとりゅう」、「エルマーと16ぴきのりゅう」の3冊は児童文学の金字塔といっていい作品でしょう。ルースさんが本文を、ご家族(義母)が挿絵を担当しています。このシリーズでも主人公に冒険を誘うのは猫です。エルマーに拾われた野良猫が、もう自分では竜を助けにいけないので、エルマーに助けを求めます。エルマーは、麦袋の振りをして貨物船に潜りこんでみかん島に行き、岩を伝って隣の動物島に渡り、獰猛な動物たちが川を渡るために、首を縄で縛られていた竜の子(ボリス)を助けだします。二作目でエルマーは嵐のなかたどり着いたカナリヤ島で竜とともにカナリヤたちの知りたがっていた宝を掘り出してから家に帰り、三作目では人間に捕まってしまった竜の家族を救出しに竜の子の故郷(そらいろ高原)に行きます。
一連の物語に共通する特徴は、@竜のカラーリング(ボリスは空色と黄色の竜から生まれました。女の子の竜は緑のバリエーションですが、男の子の竜は空色と黄色が縞模様やドット模様で現れたり、体の部位で色分けされていたりします。共通しているのはたてがみ、角、爪が赤色をしていること。ボリス自身は太い横縞で黄色の翼をもちます)、Aユニークな土地のネーミング(エルマーは「かれき町」の出身。そらいろ高原から帰るには、とんがり山脈の先にある「わかめ町」から列車に乗る必要があります)、B小道具の使い道(特にみかん島のみかんは冒険中、貴重な食糧になり、作中でどんどん数が減っていきます)です。
猫に加えて@とAに関してはまほやくの世界観と共通するように思います。減っていくみかんや二作目の宝箱に金貨や銀食器とともに鎖がついた金の時計が入っていたくだりは東の国、特にヒースにつながるものを感じます。
46 海幸彦の命運
豊玉姫の助言は伝承により違いがあります。また山幸彦が国(地上)に帰ってから豊玉姫の言いつけに従ったことで海幸彦に待ち受けていた出来事についても尾ひれのあるものがあります。
「この鉤をあなたさまがお兄さんにお返しになる時には、こっそりこの鉤のことを貧鉤と呼んで、その幸を奪い取り、その上でお渡しなさい。(略)この潮満瓊を海の水にひたせば、たちまちのうちに潮が満ちて参りましょう。これを使ってお兄さんを溺らせなさい。もしお兄さんが後悔して哀れみを乞うようなら、反対に潮涸瓊を水につければ、潮はしぜんと引いていくでしょう。これを使って助けておあげなさい」本文
「この鉤を、あなたのお兄さんにお渡しになる時に、呪い言をして、ー貧乏のもと、飢えの初め、苦しみのもと。このように釣鉤を悪く言った上で、お渡しなさい。また、あなたのお兄さんが海をお渡りになる時には、私が必ずや疾風や大波を起こして溺らせ、苦しめてあげましょう」別伝一書の一
「この鉤を兄君にお渡しになる節は、大鉤、踉みち鉤、貧鉤、うるけじーふさぎ鉤に、せっかち鉤、貧乏鉤に、愚か鉤、このように呪いの言葉をお吐きになってうしろ手にお投げなさい(略)あなたのお兄さんが高い土地に高田をつくるようなら、あなたは低い土地にくぼ田をおつくりなさい。お兄さんがくぼ田をつくるのなら、あなたは高田をおつくりなさい」別伝一書の三
「お兄さんにこの鉤をお返しになる時に、あなたはこうお言いなさい。ーお前の生みの子は、代々、八十代のその末まで、貧乏鉤の、いよよ貧乏鉤。こう言い終ったら、三度唾を吐いて、その上でお渡しなさい。また、お兄さんが海に出て釣りをする時には、あなたは浜辺にあって、風招きをなさい。
風招きはうそぶき、すなわち、口から長く息を吐いて、風を招き寄せる術である。そうすれば、私が沖に吹く風とを起し、荒波を立ててお兄さんを溺らせて苦しめてあげましょう。」別伝一書の四
こうして山幸彦により海の幸を奪い取られてしまった海幸彦は、貧しくなり、山幸彦が潮満瓊や豊玉姫の助けを借りて起こした風の煽りを受けて海で溺れそうになったりと散々な目にあった後で改心し、山幸彦のもとで俳優として仕えることを誓いました。
45 海幸.山幸.豊玉姫A
山幸彦は海神の娘である豊玉姫を伴侶として与えられ、海神の宮で三年を過ごしますが故郷が恋しくなります。そこで豊玉姫は山幸彦に兄(海幸彦)の釣鉤を返したうえで2つの珠を渡します。それぞれ満潮と干潮を引き起こす力がありました。豊玉姫は山幸彦に、釣鉤に呪詛を込めて幸を奪ってから返すように伝えます。実はそのとき豊玉姫は既に山幸彦の子を身ごもっていました。豊玉姫は山幸彦に海辺に産屋を建ててお産のときはその姿を見ないようにと山幸彦に伝えます。ところが山幸彦は中をのぞいてしまいます。すると豊玉姫は何と竜(わに)の姿になってしまいました。姿を見られたことを恥じた豊玉姫は海へと返っていきました。
(伝承によっては、その子は付き添っていた豊玉姫の妹、玉依姫が育てたということです)
参考図書
福永武彦.現代語訳 日本書紀.河出文庫,2005
訂正
44、9行目 ×海彦→○海神
44 海幸.山幸.豊玉姫@
海に出て漁をすることが得意な海幸彦(ホノスソリノミコト)と山で猟をすることが得意な山幸彦(ヒコホホデミノミコト)の兄弟がいました。あるとき兄弟はお互いの道具を交換します。ところが兄の海幸彦は山に入っても獣の通り道すら見つけられず、弟の山幸彦も獲物を得られないばかりか兄の釣鉤をなくしてしまった。代わりの釣鉤を新しく作っても兄は受け取らず、海に元のを取りに行くように弟に言います。
山幸彦は塩土(シホツチ)という老人に出会い、事情を話しました。すると、老人は山幸彦のために竹で籠を編みました。山幸彦は籠に入って海に沈んでいきました。たどり着いたのは、立派な城郭と高楼がそびえる海神の宮でした。宮から出てきた女人は山幸彦の姿を認めると海神に取り次ぎます。山幸彦から訳を聞いた海彦は魚という魚を並べて釣鉤のことを尋ねました。皆、釣鉤のことを知らない中で鯛だけが具合が悪く、姿を見せませんでした。鯛の調子を狂わせている原因が釣鉤にあると思い至り、海神は鯛を呼び寄せて口を開けさせると確かに釣鉤がありました。
43 北欧神話の竜B
トールとヨルガムンドは終末戦争の日ー大規模な戦争が起きて神、巨人、悪魔、怪物の全てが生き残りをかけて戦い、神々の世界が終わりを迎え、人間の王国として生まれ変わるときにふたたび対決することになっていました。
戦争が始まるとヨルガムンドは口にくわえていた尾を放して陸へ揚がり、トールとの最後の戦いが始まりました。ヨルガムンドが尾を激しく打ち付け、トールに襲いかかると、トールは攻撃をかわして雷電を浴びせます。遂にはトールがハンマーを振り上げ、ヨルガムンドの頭を叩き潰しました。勝利を確信したトールが拳を突き上げ、立ち去ろうとしたときヨルガムンドが毒気を含んだ最後の息を吐きました。トールはそれを吸ってしまい、ヨルガムンドの死骸のそばに倒れました。
参考資料
ダグラス.ナイルズ(著)
高尾菜つこ(訳)
ドラゴンの教科書 神話と伝説の物語.原書房,2019
これらの逸話において、フウィルリンはヨルガムンド、ムルはヨルガムンドが変身していた猫を反映しているように思われます。
トールはヨルガムンドとの力比べには勝ちますが、その毒によって死んでしまいます。4周年ではフウィルリンの兄の敵であるスノウが毒を喰らい、既に死んでいるホワイトをつなぎとめることが難しくなります。またトールは北欧神話では雷神とされ、オズとも重なります。
42 北欧神話の竜A
あるときトールは巨人のヒュミルと釣りに出かけます。トールはハンマーで雄牛の頭を叩き、餌にしました。2人は海に出てクジラを釣ろうとしますが、トールはクジラでは物足りませんでした。ヒュミルの反対を押し切ってさらに遠くの海で、雄牛の頭がついた釣り針を海中へ投げ入れました。すると、なんとヨルガムンドが食いつきます。トールを睨み付けながらヨルガムンドはなんとか釣り針を外そうと頭を激しく動かします。船が転覆するのではないかとヒュミルが恐れる中、トールはヨルガムンドの頭を叩き潰そうとしました。ところがその瞬間にヒュミルは釣り糸を切ってしまい、ヨルガムンドは海中へと戻っていきました。
41 北欧神話の竜
ヨルガムンド(ミズガルズの大蛇)はオーディンによって追放され、囚われの状態から抜け出せないように自分の尾を加えて海底で生きることを強いられます。雷神トールとは因縁の仲でした。
ある日、トールは猫を床から持ち上げるように言われます。その猫はヨルガムンドが変身したもので、姿は変えても重さはヨルガムンドと変わりませんでした。それでも猫が片脚だけ床を離れたので、トールはその力を褒められます。ところがいかさまを知ったトールはこのことを覚えていました。
40 赤い竜と白い竜
最も有名なものはウェールズ地方の旗にも関わるものです。
「昔、ウェールズを支配していたブリトン王ヴォーディーガン王がディナス.エムリスに要塞を建築しようとしたが、壁を立てたとたんに崩れ落ちてしまった。そこへ少年魔術師マーリンがやってきて、土台のずっと下.地底の湖でドラゴンが2匹暴れているのが見える.だから壁が崩れるのだと告げた。地底で戦っているのは赤いドラゴンと白いドラゴンで、なかなか決着がつかなかった(p.40)」赤い竜はブリトン軍(ウェールズ)、白い竜はサクソン軍(イングランド)で、故事は両者の歴史的な対立を現しているといいます。
ヴォーディーガンに代ってこの地方を治めることになったのが、アーサー王の父、ウーゼル.ペンドラゴンでマーリンは政治顧問になりました。「ペンドラゴン(ドラゴンの頭)は王の称号で、その由来は、ウーゼルが見た火をふくドラゴンの夢は王位を表す、とマーリンが予言したこと」です。アーサーもこの称号を受け継ぎます。
同じ故事を引用してフウィルリンについて考察し、人間と魔法使いの対立とみている方もいましたが、私には白い竜はフウィルリン、赤い竜はミスラに思えます。またこの戦いにアーサーが加わっているのも、この故事を引けば納得できます。
引用文献
ジョイス.ハーグリーヴス(著)斎藤静代(訳)
ドラゴン 神話の森の小さな歴史の物語.創元社,2009
39 4周年 結末ネタバレ
若手の魔法使いのなかでカイン、ルチル、クロエ、ラスティカは先に離脱します。空中でリケがランタンを灯し、ミチルも応急処置に駆けつけます。二人の援護にはネロとブラッドリーが当たります。東の魔法使いとレノもフィガロの元に戻ってきました。一方、ミスラ、オズ、アーサー、ムル、シャイロックらは残ってフウィルリン、及びバルタザールと対峙します。バルタザールは最後の力を振り絞ってアダムズ島と同じようにボルダ島を沈めようとしますが、市場の魔法使いが賢者の魔法使いに加勢して阻止します。バルタザールが力尽きたのと同じ頃、フウィルリンも石になり、色とりどりの宝石が空に舞いました。こうしてボルダ島には平和が戻りました。世界に残る竜の物語を紐解くと何故ミスラ、オズ、アーサーらが海底に残ったのかが見えてきます。
38 りゅうのめのなみだB
川をくだる竜の姿はまるで船のようでした。
「大きなりゅうはぐんぐんと風をおこしていさましくなみをけたててすすみました。「なんとうれしい。こんなにうれしいことはない。わたしはこのまま船になろう。そうしてやさしい子どもたちをたくさんのせてやろう。新しいよいよのなかにしてやろう。」」
そして少年の住む町が見えてきます。その頃には竜の姿はすっかり変わっていました。
「りゅうのからだは、はしの方からかわりはじめて、だんだんに黒い船に見えてきました。りゅうのはなからはくいきは、いつのまにかけむりになって、りゅうのうなりは、ぼうぼうとひびくきてきと同じな声になりました」
町の人たちにも黒い立派な船に乗る少年の姿が見えたということです。
引用図書
浜田廣介作.名作絵本ライブラリー りゅうのめのなみだ.
ひさかたチャイルド,2007
浜田自身は作品の狙いについて、「ほんとうの愛の心に根ざしてはじめて勇ましい行動がとられること、そしてそれがおこなわれると、どんな者でも感動を受けるであろう」と語っています。まほやくの真木晶(賢者)が愛される理由もここにあるのではないでしょうか。
今は五月。もうすぐ端午の節句。中国では(旧暦の5月5日に)竜の船を漕ぎレースをする風習があります。端午の節句は川に身を投げた詩人の屈原に由来します。屈原の死体が川に流されたり魚に食べられたりすることを人々は危惧しました。
37 りゅうのめのなみだA
竜も少年の声に応じます。少年は優しい声で穴から出るように竜を促します。
竜の外見は人々の噂の通りでした。身体には硬い鱗がありました。竜は少年に向かい合います。少年は自分の誕生日に一緒に来るようにと竜を招きます。
「りゅうは、しばらくわれをわすれて子どもの顔をみつめていました。りゅうのするどい目の中に、あるおだやかなやさしい光がきらめきました。それはこれまで何百年というあいだ、その目のそこにとじこめられていたようなふしぎな光でありました。
「これまでわたしは、ただの一ども人間からやさしいことばをかけてもらったことがない。いや、それどころか、わたしはいつでもただきらわれてにくまれどおしできたのだよ。(略)わたしは、べつだんわるものではない。それなのに、人間たちは、わたしをちっともよいものにしようとしてはくれなかった。わたしはうらんだ。ひねくれた。人間のすがたを見ると、わたしはおこって、ただ目をむいた。はを見せた・・・」
少年の優しさに触れて竜が涙を流すと、その涙が川の流れになります。
竜は自分の背に少年を乗せました。
36 りゅうのめのなみだ@
竜が感情を持ち、少年と友人になる物語から中国を舞台に日本人が執筆した名作を紹介。
私たちは当然のことながら竜を見たことはありません。それなのに皆、山奥に棲まうという竜のことを
「目がらんらんと光っている。口は、耳までさけている。その口からは火のようなまっかなものをはいている。それはしたかもわからない。それともそれはりゅうのはくいきかもしれない。りゅうは、ときどきうなり声を出している。それは遠くで鳴るかみなりのようでもある。もし、人がうっかりそばに行こうものなら、すぐににおいをかぎつけて、みつけしだいにのんでしまう」だのと好き勝手に噂をして見られない故に怖がります。いつしか人々は誰かが竜を退治してくれればよいのにと思うようになりました。そのなかである心の優しい少年だけは母親が恐怖を植え付けなかったので皆に竜のことを聞いて回っていました。ある夜、少年が泣き出すので母親がわけを聞くと、彼は「誰も竜をかわいがってやらない」と心を痛めていました。少年は竜を自分の誕生日に招きたいと考えますが当然のことながら、母は反対します。それでもあきらめず誕生日を前にして少年は自ら竜に会いに行くことにします。
「子どもは一人でまちはずれにあるおかのところに行きました。おかにのぼっていきました。野原が広く見えました。木立のふかい山やまがむこうにならんで見えました。(略)白い雲がもくもくと山のきわからたっていました。りゅうは、たしかにあの山かげにかくれているにちがいないと思われました」
「山ふかくだんだん入っていきました。谷間には白いきりがかかっていました。そうしてながれの水音がどうどうと聞こえていました。やぶうぐいすが木の間をわたって鳴いていました。きのはのつゆがぱらぱらと子どものからだにかかりました。ほかにはなんの音もしません。大きな音をたてたなら山のかげまで聞こえるような気がしました」
山の奥深く入っていきながら少年は竜に呼びかけます。その声は洞穴で寝ていた竜にも届きました。
35 4周年とウンディーネ

34 訂正
バルタザールは
○キューレボルンのオマージュ。
×キュールレボン
同時に本体の生首は、オズの魔法使いのオズのオマージュでもあるのかも?
ただし本家には、「手足も胴体もない巨大な顔(略)には目も鼻も口もあるが、頭に髪はなく、どんな巨人の顔よりまだ大きい」(p.113)との描写が。そしてその頭を動かしていた人物は、「禿げて皺だらけの顔をした背の低い年とった男」(p.170)でした。
引用文献
ライマン.フランク.ボーム(著).河野万里子(訳).オズの魔法使い.
新潮文庫,2012
33 4周年終盤 あらすじ
ヴェスパの案内でオズと東の魔法使いはメリッサの船を見つけます。薬の竜珠を手にオズは一度賢者を連れて浮上します。残ったファウストたちはレノックスの姿をして現れたバルタザールと対峙します。レノックスにはまだ自らの意志(意識)が残っていました。その頃、アーサーとムルはシャイロックの奪還に向かっていました。アーサーがシャイロックを閉じ込めていた魔方陣を解きます。三人の前にはバルタザールの本体ともいえる生首が現れました。バルタザールはシャイロックの言う通り、アダムズ島とともに海底に沈んでいたところ、大いなる厄災を境に目覚めたのです。残りのカイン、ルチル、ラスティカたちの前にはフウィルリンが立ちはだかります。そこに援軍として現れたのはオーエンでした。地上では昼間、市場で起った騒動(謎の人物が魔法使いに紛れてばら撒いたクラッカーを食べた客たちの動作や語尾が海の生き物になってしまう)に巻き込まれて鬱憤がたまっていたブラッドリーが城に駆けつけてきた島民たちを扇動していました。ネロは逆に城主が島民と話ができる機会を作れるよう共に城主の説得にあたるようにブラッドリーを促します。残るミスラもトルタディコッコを詰めたバスケットを手にオズに合流し、ルチルたちの救援に向かいます。竜珠は無事にフィガロの手に渡り、スノウを助けるための薬が精製されます。
32 削除済
31 4周年とウンディーネ


バルタザールがシャイにあげようとしたサンゴの悪趣味なネックレスは、騎士が海に捨ててしまったウンディーネが代わりに用意したアクセサリーのオマージュ?
30 4周年とウンディーネ





北の矜持と心のおもむくままを大事にする西のあり方の対立。バルタザールのシャイロックへの問答はキュールレボンに重なります。これは同時に冒頭の本来のレノックスとも対比になっています。
29 4周年 中盤あらすじ
スノウを治療するには薬の竜珠が必要でした。ムルによるとそれは西の魔女、メリッサの手に渡り、海の果てを見るといってメリッサは旅だったものの、結局戻らずじまいでした。そして彼女の船は海底に沈んでしまいました。
東の魔法使いに助けられた人魚、ヴェスパによるとバルタザールによって捕らえられている仲間の人魚が場所を知っているようです。ところがいざ助けに向かうと人魚たちは洗脳されていました。ラスティカが洗脳を和らげて、オズが檻を破壊します。ヒースがヴェスパに話を聞くとシャイロックとレノ(意識はバルタザール)がいる、沈んでしまったアダムズ島の廃墟のある場所と薬の竜珠の在処であるメリッサの沈没船の場所は離れていることがわかりました。そこでファウスト、オズ、シノ、ヒースが竜珠の探索に向かい、ルチル、クロエ、ムル、アーサー、カイン、ラスティカはシャイロックとレノックスの救出に向かうことにします。フウィルリンを殺させたくない賢者は自ら交渉役になることにします。ムルはファウストに、交渉が失敗した場合、賢者と心を繋げずに魔法を使えないオズが竜と戦って負ける前に石にするよう暗に伝えます。一方、フィガロがスノウの治療をする中、城にはリケ、ミチル、ネロが残っていました。執務室に閉じこもってしまったディアーヌをネロが説得する一方、リケとミチルは混乱に陥ろうとしているボルダ島の民を落ち着かせようとします。
28 状況確認4周年
27 4周年のあらまし
新領主、ディアーヌに招かれて賢者と魔法使いたちは再びボルダ島を訪れます。叔父のヴィンセントがディアーヌの叔母であるクラウディアと面識があることもあり、魔法使いと人間が共に手をとりあう社会を築きたいと考えるアーサーはディアーヌとも良好な関係を築きたいと考えていました。ディアーヌは魔法使いたちに食事を用意しますが、魔法科学の力で動いていたオーブンを使わせませんでした。抗議した料理長は庭師になるよう言いつけられて城を去ってしまいます。そのため昼食の味はひどいものでした。ディアーヌは魔法使いを贔屓する余り、逆に西の国で権威を振るっていた魔法科学には疑念を抱いていました。城内だけでなく、ボルダ島内で開かれるバザールを巡っても、魔法使いと人間の間に対立が起きていました。武人の祖父から武芸は仕込まれていたものの、叔母と違って政治や世情に不慣れなディアーヌは気持ちが空回りしていたのです。人間と魔法使い双方に不信感が生まれており、彼女は領主としての力量を問われていました。それは彼女の心を頑なにさせるという悪循環を生んでいました。その頃、ボルダ島では居住者が行方不明になる事件が発生していました。アーサーとカインは行方不明になった者が実は首から上を切られて見つかっていることを聞きつけます。実はバルタザールが密かに活動を再開していたのです。魔の手は南の魔法使いレノックスにも及び、レノックスは体を乗っ取られてしまいました。さらに彼(身体はレノックス)はシャイロックまでも誘拐します。実質二人が連れ去られた海底では檻に人魚たちが閉じ込められていました。東の魔法使いたちはボルダ城でディアーヌが海に廃棄した魔法科学で稼働する機械に引っかかっていた末の人魚に出会います。
一方、賢者は浜でフウィルリンという名の竜と知り合います。竜には双子の兄がいましたがスノウとホワイトと遊んでいる間に命を落としていました。残された竜は双子に憎しみを抱いていました。そのためスノウの身に危険が迫り、ホワイトの魂をつなぎとめることが難しく、ホワイトは一時的に姿が見えなくなってしまいます。つまり魔法使いたちは一度に三つもの危機を抱え、更には魔法使いの扱いに対して住民の間にある溝が絡んだ問題に巻き込まれてしまうのです。今にも起らんとする暴動の陰には、自らの欲のために人心を操ろうとよこしまな企みを抱く何者かがいるようです。
26 4周年のあらまし
4周年の舞台は、二周年に続いてボルダ島、及び二部の序盤でシャイロックのせいで沈んだと言われる島、アダムス島です。シャイロックのバーで昔話に花を咲かせる西の魔法使いたち。
その昔、神酒の歓楽街にあるシャイロックの店にバルタザールという魔法使いがやって来ました。バルタザールは北の魔法使いでしたが、世界最強と歌われる魔法使い、オズによって西の国へと追いやられてしまっていました。ところがバルタザールに目をつけられても、シャイロックはひるむことなく毅然と店を守るためにバルタザールの前に立ちはだかったのです。それはバルタザールにすれば意外な反応でした。
25 4周年
24 4周年1


これがまほやく流、人魚伝説の始まり。
23 訂正2
ラスティカの育成エピソードにはまだ不明な謎が残されています。女神像に宿る怨念のなかから聞こえてきた女性の声の主は果たしてアリアなのか。
仮にそうだとすれば女神像はもしかすると、コペンハーゲンにある人魚像なのでは?と私自身は最近思いはじめています。だとすると、ウンディーネになぞらえるのならば、ウンディーネがアリアでベルダルダがザラなのかもしれません。憶測の域を出ませんが。
尚、豊かの街のモデルはバルト三国のひとつ、エストニアにあるタリン歴史地区だそうです。(だとすると西の国のモデルはやはりあの国?)
22 訂正
金の魚のところでルチルの育成エピを紹介しましたが、正しくは人魚の方がルチルの読んだ詩に惹かれて姿を一瞬見せます。
21 ウンディーネとまほやくB
ウンディーネはフルトブラントにキューレボルンについて以下のように言います。
「叔父はベルダルダをこの城から追い出そうとしているのですわ。キューレボルンは一族の娘かわいさに、私が泣いているときベルダルダが笑っているのを見ては誤解し、私が冷たくされているときに、ベルダルダがやさしくされているのを知っては身勝手な想像を巡らし、なんとかしてベルダルダを他にやってしまおうとしているのです。叔父には愛の両面の顔がわからないし、わかろうともしません。愛の喜びと愛の悲しみは双子のようなもの、涙からほほえみが湧き、ほほえみから涙が誘い出されることのあるのを、あの人は知らないのですわ」(岸田訳,p.107)
水底に戻ってきたウンディーネは涙を流します。キューレボルンにとがめられて、「私は魂をなくしてはいません。だから泣くことができるのです。私が流すのは追憶の甘い涙。叔父さまには決しておわかりにはならないでしょうけれど」(同,pp.134−135)と切り返します。それでもキューレボルンは食い下がりますがウンディーネも負けてはいません。
「だが、おまえ。おまえは種の因果から逃れるわけにはいかぬぞ。もしあの男が二度目の妻を迎えようとするなら、おまえはあの男を裁かねばならぬ・・・・・命を、取らねばならぬ」
「あの方は独りです。私を想って悲しんでもおられます」
「だが婚約した。二、三日もすれば婚礼だ。そうすりゃおまえは」
「行かねばよいではありませんか?泉には蓋がしてありますもの」
「城から、一歩外に出たとしたらどうだ。泉の蓋を開けたとしたらどうする?」
「だからこそ、夢見させました。あの方の魂は今肉体をぬけ、この海の上。そしてあの方は、私たちの話を聞いてもくれているのです。そのくらいのこと、仕組まずにおくとお思い?」(岸田訳,p.135)
それでも、ウンディーネの願いも空しく、泉の蓋は取りのけられてしまうのです。(つづく)
20 ウンディーネとまほやくA
物語の前半はエメラルドグリーンから水色、果ては群青まで色が浮かぶような水に囲まれた世界です。(実際は濁流の世界なのですが、アーサーラッカムの美しい茶色が恐ろしさを抑え、神秘的な雰囲気を漂わせています)まほやくでいえば東の国の世界が、ウンディーネとフルトブラントの結婚を境に西の国の雰囲気へと変わります。その象徴がベルタルダです。ウンディーネとベルタルダの対比は、ザラとアリアの対比を思わせます。フルトブラントのどっちつかずの態度はラスティカを思わせます。恐ろしいことに四周年ではラスティカが金槌であることが判明します。もしクロエがいなければどうなっていたでしょう。
またベルタルダには、両の肩のあいだと左足の甲にひとつずつ、生まれつきすみれの花型の痣がありました。さらに終盤ではフルブラントとの婚礼の準備に追われるところでは、首筋の脇に広がったそばかすの染みを気にする場面があります。ラスティカの紋章が出た位置がシャツの第一ボタンを留める位置にあたる(つまり首元の近く)ことは後半の記述と関連があるのではないかと思われます。
19 ウンディーネとまほやく@
フルトブラントが最初に迷い込んだ森の雰囲気は、「朝の陽は青々とした芝生に満ちていました。それは、すんなりと伸びた樹々の幹を輝かせ、木の葉は生の喜びを囁き交わしているようです。(略)こんなにも気持ちのいい場所に魔性の者が現れるなど、たわごととしか思えなかった(略)しかし、駒を進めるうち、私は知らず知らず葉陰深く踏み入り、緑の野を見ることもできなくなっていました。私はそのとき気づいたのです。その森がひどく深く、道を迷うことも往々にしてあるのだと。そしてそれは旅人にとって最大の危険なのだと」(岸田,p.49)と描写されています。フルトブラントは森で「土色の体、身長と同じほどに大きな鼻」(同,p.51)をもつ醜い容姿の小男に会います。「そいつは馬鹿ていねいに歯を剥き出して愛想笑いをしながら、いく度もいく度も私にお辞儀したり、足を摺ったりするのでした」(同)
騎士が森をさまよう話は探せば出てくるので、これだけを原典とは言えませんが、この森の雰囲気はまさにシャーウッドの森です。そして森の番人(管理者かつ案内人)をしているのがシノです。まほやくの中の育成ストーリーはずっと美談に昇華されているものの、シノが自分の身長に不満がある背景にこの小男の存在があるとしたら、それも無理からぬように思います。
18 ウンディーネD
泉の蓋から水柱を押し上げて白衣の女性が現れます。それはウンディーネでした。ウンディーネは衣を取り、フルトブラントに体をあずけるようにして口づけします。その瞬間、ウンディーネが涙を流し、フルトブラントの眼に入りました。それはキューレボルンには決して理解できない涙でした。こうして骸になってしまったフルトブラントですが、その顔には笑みが浮かんでいました。まるで自らその結末を望んでいたように。フルブラントの弔いが終った後、その墓の横に泉が湧き出ました。それは、フルブラントと共にウンディーネも亡くなったことを意味していました。
参考図書
M.フーケ作.アーサー.ラッカム絵.岸田里生訳.ウンディーネ.新書館,1995

ウンディーネもルサルカや人魚姫と同じく本来は水中に棲まう者が陸に揚り、男の心をめぐって(身分の高い地位にいる)女性とその心を争うという核をもつ話です。ただしウンディーネの場合、水難は自然のものではなく身内の者により引き起こされる、養父母に世話される、魔女の役割を叔父が担うが声と足の取引はないなどの違いがあります。最も違うのはフルトブラント自身が亡くなってしまうことです。
17 ウンディーネC
ウンディーネの安否も分からぬまま、フルトブラントとベルタルダが一緒にいるのは良くないと漁夫が城を訪ねてきます。ところがフルトブラントはベルタルダの方に心を移して、遂には漁夫を説得し、結婚式を挙げようとします。湖の向かいの修道院から例の司祭が呼びつけられてかけつけました。司祭は二人の婚姻を止めさせようとします。彼の夢枕にはウンディーネが立っていました。彼女は湖底でまだ生きているのです。そしてもしこのままベルタルダとフルトブラントが結ばれてしまうと、ウンディーネはフルトブラントの命を奪わねばならない定めにありました。その夜、夢うつつの状態のなか、フルトブラントの意識は湖底に運ばれていきます。そこにはキューレボルンと話しているウンディーネの姿がありました。フルトブラントが目覚めるとまだ司祭は城にとどまっていました。わけをたずねると、婚礼と葬礼は表裏一体の顔をしていると返します。一人、ベルタルダだけはウンディーネのことを考えつつも婚礼の準備に浮かれていました。そして泉の蓋を開けるように仕向けます。
16 ウンディーネB
ベルタルダは城にフルトブラントとウンディーネを残して魔物の棲む森へ入っていきました。ウンディーネの制止も聞かずにフルトブラントはベルタルダを追いかけます。森ではキューレボルンが馬方に扮して二人を待ち構えていました。荷馬車が水に引き込まれ、まさに間一髪のところでウンディーネがかけつけ、二人を順に陸に引き揚げました。ウンディーネは自分が乗ってきた馬をベルタルダに譲り、自分たちは徒歩で城まで戻ります。
しばらく平穏な日々が続いたある日、フルトブラントとベルタルダの頼みを聞くかたちで、ウンディーネは二人のドナウ河下りに同行します。水魔のいたずらから二人を守り、さらにフルトブラントには人間では無く種族の違う水妖の女を嫁にしたばかりに災いに遭うと愚痴をこぼされ、疲れ果てたウンディーネはうっかり眠りに落ちます。その間に船を異形の者の首がとり囲みました。ウンディーネが目を覚ますと首は消えました。怪異の間にベルタルダはフルブラントから贈られた首飾りを水の中に落としてしまいます。ウンディーネは代わりに珊瑚の首飾りを与えますが、フルブラントに投げ捨てられてしまいます。ついにフルブラントはウンディーネをののしってしまいます。そのままウンディーネは水底へと消えてしまいました。
15 ウンディーネA
フルトブラントはウンディーネを天領の町に連れ帰りました。ベルタルタは内心面白くありませんでしたが、素性の知れない花嫁を迎え入れます。翌日はベルタルタの聖名記念日でした。ウンディーネは噴水づくりに扮装した叔父から伝え聞いたように、式典に招かれていた育ての漁夫の夫婦の前でベルタルタこそが彼らの実の娘であると伝えます。一方、自分が高貴な生まれだと信じていたベルタルタは狼狽し、実の両親を罵倒します。以後、ベルタルタは城から姿を消します。ところが漁夫はベルタルタの汚れた心を受け付けませんでした。後日彼女に再会したウンディーネとフルトブラントはベルタルタを城に連れ帰ることにしました。
フルトブラントの心は段々とウンディーネから離れていきました。城には水魔が引き起こす怪異が見られるようになり、ウンディーネはキューレボルン
が出入りする泉の蓋を封じます。一方のベルタルタはそこから化粧水を汲み取っていたので不満に思っていました。叔父に悟られないよう、水のあるところでは自分をののしらないようにウンディーネはフルブラントに約束させます。
14 ウンディーネ@
水あるところに水妖ありを地で行くような悲恋の物語がウンディーネです。
人里を離れた魔物が棲むとして人々に恐れられている森を抜けたところに湖があり、そのほとりに漁夫の老夫婦が居を構えていました。老夫婦には娘がいましたが、妻の方の手を離れて湖に落ちてしまったといいます。その埋め合わせのように戸外に現れたあどけなさを残す娘を老夫婦は大事に育てました。娘は二人にウンディーネと名乗りました。そこに騎士、フルトブラントが森を抜けてやって来ます。フルトブラントはその土地の領主の義理の娘、ベルタルタに恋心を持っていました。そこでベルタルタはその心を弄ぶようにフルトブラントに恐ろしい森を抜けるように言い、騎士は漁夫の家にたどり着いたのでした。不意にウンディーネが嵐の中を外に出てしまい、フルトブラントは漁夫とともに追いかけます。外はまたたく間に急流になり、岬だったところは離れ小島になってしまいました。ウンディーネを見つけたフルトブラントは彼女の持つ不思議な魅力にとらわれていきます。そこに湖の向こう岸にある修道院から司祭を乗せてきた船が“川”を渡ってきました。司祭のもとでウンディーネとフルトブラントは夫婦になります。そこでウンディーネは自分が水妖の一族であることを告げます。伴侶となる男性を得たことでウンディーネは魂をもつことができました。それまでの幼稚な振る舞いは彼女に(人間の)魂がない故だったのです。晴れて互いの愛を確認したウンディーネとフルトブラントですが、不気味な白い影(キューレボルン)が二人を追ってきていました。キューレボルンはウンディーネの叔父で時に人間になりすまし、水を自在に操ることができました。
13 赤いろうそくと人魚
人魚と海難事故を結びつける話は日本にもあります。小川未明作の「赤いろうそくと人魚」の舞台は日本の北の海です。女の人魚が陸の上で子供を産み落とします。彼女は寒い北の海で自分が育てるよりも人間の暮らしのなかで育つ方が子供のために良かろうと考えたのです。人魚の子供を拾ったのは老夫婦でした。老夫婦は山の上のお宮に納めるろうそくを売っていました。成長した人魚の子供は老夫婦を手伝ってろうそくに絵付けをするようになりました。いつしか、そのろうそくを山のお宮に納めて、燃えさしを持っていれば安心して海に出ることができるという噂が広がり、老夫婦の商売は忙しくなります。人々はろうそくをお宮に納めてから海に出るのが日課になり、おかげで山の明かりが絶えることはありませんでした。ところがある日、南方から来た男が老夫婦に嘘を吹き込み、とうとう老夫婦はお金に目がくらんで人魚の娘を男に売り飛ばしてしまいます。男が迎えに来て娘はろうそくを仕上げることができず、ろうそくは赤く塗りつぶされます。真夜中、髪の長い女がそのろうそくを買いに来ました。お代として女が渡したのは貝でした。その夜、海は大嵐に襲われました。ちょうど娘を引き取った男が乗った船が沖に出ていました。それ以後、海難事故から人々を守っていたろうそく(今は赤いろうそく)は災いの兆しとなって、人々から忌避されるようになりました。当然のように、お宮に参る者もいなくなりました。それから幾年も経たずしてふもとの街は滅んでしまったということです。
12 余談
4周年でヒースと「心」を通わせる人魚が抱いた感情も、もしかしたら恋心に近いものかもしれません。お姉さんたちが一斉に捕えられて恐ろしい思いをした人魚にとって、自分の身振り手振りからその身に起きたこととそれを打開するのに必要なもののある場所への道筋をくみ取ってくれるヒースは確かに頼もしい存在だったことでしょう。
ところで、物語の中の人魚姫も少年像と出会った王子を重ね、人間界への憧れを募らせますが、この構図には、まほやくの中でもしかしたら伏線になっていたのでは?とも思わせる既視感があります。それが東の祝祭です。
祝祭で東の魔法使いと北の魔法使いが訪れた村には忌まわしい習慣がありました。それは魔法使いを殺してそのマナ石を池の主に捧げるというもの。
その村の教会には、マナ石となりながらも元の姿を保った像があり、村人たちは月の光の影響で像が池の主に姿を変え、大いなる厄災を招くと信じていたのです。魔法使いたちは村に厄災を招かぬための贄でした。実際は池にいたのはレモラという魔法生物で、下手に攻撃を加えると分散して水脈をたどって同時に複数の場所に出没することができました。一方で教会にいたのは
ここで石になった魔法使いであり、本来はレモラとは全く無関係と考えられます。そしてこの像の面持ちはヒースに似ていました。つまり、レモラと像とヒースがそのまま人魚、少年像、王子に置き換えられなくもないのです。
実際、4周年の人魚達は警戒心は見せるものの温厚でしたが、私たちが伝え聞かされている人魚像には既に書いてきたように、人を惑わし水に引き込むような恐ろしい側面もうかがわれます。
11 人魚姫と少年像
人魚姫の中で、末の人魚のお気に入りとして描かれる少年像は以下のように描写されています。人魚姫は助けた王子の面影がこの像に似ているように思えてなりませんでした。王子と会った日以来、物思いに沈んだ姫はこの像を抱きしめるようになります。
「この姫は、(略)ただ美しい大理石像だけをたいせつにしていました。それは、すきとおるようにまっ白な大理石にほった、美しい少年の像で、船が座礁したとき海の底へしずんできたものでした。姫はこの像のそばに、バラ色のシダレヤナギをうえました。それはみごとに生長して、みずみずしい枝は像の上にかぶさり、そのさきは青い砂地にとどきそうにたれました。砂地にうつった影は、むらさき色にそまり、枝のうごくままにゆらめきました。それはまるで、枝のさきと根がキスをしようと、たがいにたわむれているようでした」(大畑訳,pp97−98)
「このお姫さまは(略)美しい大理石の像だけをだいじにしていました。それは白く、すきとおるような大理石から掘りだした、美しい少年の像で、つんでいた船が難破したので、海の底に沈んできたのでした。この像のそばに、お姫さまは、バラのように赤いシダレヤナギを一本、植えました。この木は、みごとに育って、その若々しい枝は像の上にたれ、さらに、青い砂地のほうまでたれさがっていました。そこの砂地にうつる影は、紫色に見え、枝の動きにつれて、ゆれ動いていました。そのようすは、まるで枝の先と根とが、キスしあおうとして、遊んでいるようでした」
(大塚訳,pp264−265)
10 人を惑わす水妖(人魚A)
アンデルセンの人魚姫よりもはるか昔、ギリシャ神話の時代から歌声で船乗りを惑わす海に棲むとされる水妖がセイレーンです。ホメロス作のオデュッセイアの中では、主人公オデュセイアがキルケーに、「この者たちは自分に近付く人間はこれを惑わす魔力を具えており、知らずして近付き、セイレンたちの声を聞いた者は、もはや家クに帰って妻や幼な子に囲まれ、その喜ぶ顔を見ることはかなわぬ。セイレンたちは草原に坐って、すき通るような声で歌い、人の心を魅惑する。セイレンたちの周りには、腐りゆく人間の白骨がうず高く積もり、骨にまつわる皮膚もしなびてゆく。そなたはここを漕ぎ抜けねばならぬが、そなたのほかは誰も声を聞けぬように、甘い蜜蝋を捏ね、これを部下の耳に貼り付けなさい。しかしもしそなたが、自分だけは聞きたいと思うなら、そなたは帆柱の根元に真っ直ぐに立ち、部下に命じて手足を縛らせ、縄の端を帆柱に結わえつけなさい。さすれば楽しくセイレンたちの声を聞くことができる。万一そなたが部下に縄を解いてくれと、頼んだり命じたりした場合には、さらに綱を増して縛らせるのです」
(pp312−313)と忠告されます。この後オデュッセイアが言われた通りにすると、セイレンは「さあ、ここへ来て船を停め、わたしらの声をお聞き。これまで黒塗りの船でこの地を訪れた者で、わたしらの口許から流れる、蜜の如く甘い声を聞かずして、行き過ぎた者はないのだよ。聞いた者は心楽しく知識も増して帰ってゆく−」(pp318−319)と誘惑してきます。セイレンの歌声を聴くためにオデュッセウスは縄を解くように部下に言いますが、事前の指示通りに部下達は船を漕ぎ進め、むしろ縄の縛りをきつくして難を逃れたのです。
引用文献
ホメロス(著)松平千秋(訳).オデュッセイア(上).岩波文庫,1994
9 人を惑わす人魚@
美しい外見とは裏腹に人魚のもうひとつの顔として、美しい歌声で人を惑わせるというものがあります。アンデルセンの人魚姫の中にもそれに呼応する描写が見られます。
「五人のおねえさまたちは、夕方になると、よくおたがいに腕をくんで、ならんで海の上へ浮かんでいきました。姫たちは、どんな人間よりも美しい声をもっていました。あらしが吹きつのって、舟が難破するほかはないと思うと、その舟のまえをおよぎながら、海の底がどんなに美しいかということを、それはいい声でうたうのでした。そして、海の底へいくのをこわがらないようにと船びとたちにたのみました。けれども、この人たちには、そのことばがわかりません。あらしのざわめきだと思い込んでいました。また、海の底のすばらしさも見るまでにはいたりません。というのは、舟が沈むと同時に、人間はおぼれて、死体となって人魚の王さまのお城へつくよりほかはないからです」(大畑訳,p.104)
「夕方になると、五人のお姉さんたちは、よく手をつなぎあい、列になって、海の上にうかびあがっていきました。五人はみんな、どんな人間よりも美しい、きれいな声をもっていました。そして、たまたま嵐がおこって、きっと船は沈んでしまうだろうと思ったときには、お姉さまたちは、そういう船の前を泳ぎながら、とてもきれいな声で、海の底がどんなに美しいかを、歌って聞かせました。そして、船の人たちに、海の底にくるのをこわがらないでちょうだいなと、歌って、たのみました。でも、船の人たちは、お姫さまの歌の言葉がわからないで、みんな、あれは嵐の音なんだ、と思いこむのでした。それに、だいたい人間には、海の美しさを見ることもできません。というのも、もし船が沈めば、人間はおぼれてしまい、死人になってから、やっと人間の王さまのお城にくる、というわけですからね」
(大塚訳,pp272−273)
8 小休止 金の魚
ルチルの育成場所、ティコ湖では賢者はルチルと人魚に遭遇し、その歌声を聴きます。ティコ湖のアクティビティは魚釣り。運がよければ金の魚を釣り上げてパロメーターをアップさせることができます。

シュレスヴィヒの中州に貧しい二人の漁師が住んでいました。今日も漁が空振りに終り引き上げようとしていると、対岸からきらびやかな宝石に身を包みながらも黒衣を纏った(マル)グレート(女王)が、宮廷の広間にいた頃、そのままの姿で現れました。そして、二人に「もう一度網を投げて漁をするといい結果を得られるが、その中で最上の魚は水に返さなければならない」と言い残しました。二人が言うとおりにするとそれまでが嘘のように魚は網にかかりました。そのなかに鱗のかわりに金貨、ひれにエメラルド、鼻の上に真珠をつけた魚がかかりました。これが最上の魚であるに違いないとふんで、一人は言いつけ通り水に返そうとしますがもう一人が(マル)グレートに見つからないように魚の山の中に隠して、舟を漕ぎ出します。すると、釣り上げた魚に異変が起りました。みるみる魚は金に変わっていき、舟を重くしていきます。やがてその重みに耐えきれず、舟は沈んでしまいます。悪巧みをした漁師は共に沈んでしまいますが、水に返そうとした漁師は生き延びてホルムの漁師たちにこの話を語ったということです。
世界の水の民話ー金の魚(ドイツ).三弥井書店,2018

ティコ湖の育成がなかなか難しいのはこの話の影響だったりして・・・?
7 ルサールカ(ロシア)
ディズニーのリトル.マーメイドの原作などおそらく世界でもポピュラーな人魚姫の物語といえば、紹介したアンデルセンの物語でしょう。
でも、世界には海につながる湖や川があり、水あるところに水妖ありで同様の伝承が存在します。

ベラフカ村の湖の際に「ルサールカの石」と呼ばれる石がありました。その石にはまるで石を抱きしめるように女の手の形がついているといいます。
昔、湖にルサールカという名の、夜のように黒く小麦畑の穂のように豊かな髪をもつ女性が棲み、夜ごと水から浮かびあがって石の陰から村の若者たちを見守っていました。なかでも、細い身体と青い瞳をもち踊りが上手な羊飼いのワシリョークに、ルサールカは心を奪われていました。辺りが雪に覆われる冬の間はワシリョークはおろか若者たちは姿を見せず、ルサールカはじっと春を待っていました。ところが待望の春がくると、ワシリョークは溶けかけの湖に捕まった近所の二人の男の子を助け出そうとして力尽きてしまいます。そこでルサールカはワシリョークを助けました。草原で楽しげに踊る若者を見ているとルサールカは自分も湖を出て草原に足で立ちたくなりました。そこで魔女のもとへ行き、根負けした魔女から三つの条件を言い渡されます。
1.水から出ると二度と戻れない2.足を得るが歩くときに非常に痛みを伴う
3.ワシリョークの愛を得られない場合、ルサールカは永遠に消えてしまう
そして人魚姫と同様にルサールカもこれらの条件をのんで人間の身体を手にします。そしてワシリョークに誘われ、痛みに耐えながら踊りに加わります。ところが、ワシリョークには既にアレナという恋人がいて二人は抱き合ってルサールカの目の前から消えていきます。ルサールカは石のもとまでたどり着くと石を抱え込むようにして闇に消えていきました。
参考図書
日本民話の会,外国民話研究会(編,訳).
世界の水の民話ールサールカの石(ロシア).三弥井書店,2018
6 人魚姫D
人魚姫は船べりに腕をかけて夜が明けるのを待っていました。すると、再びお姉さんたちが船に近づいてきました。ひとつ違うのは彼女たちの長い髪が切り取られていることです。お姉さんたちは自分たちの髪を対価に魔女と取引をしたのでした。彼女たちはナイフを姫に手渡しました。なんとそのナイフで王子の心臓を突き刺せというのです。その返り血が姫の足にかかれば、再び魚の尾になり、姫の寿命も戻るというのでした。全ては夜が明ける前、姫が日の光を浴びてしまう前に行わなければなりません。
人魚姫はとばりをくぐって中で眠る王子に近づきました。王子の胸には王女が頭をもたせかけていました。姫が王子を眺めていると、王子は花嫁の名を呼びました。それでも姫はナイフを海に捨ててしまいました。そして自分も海へと身を投げました。ちょど朝日がのぼったところでした。
やがて人魚姫は自分の身体(魂)が天に昇っていくのを感じました。周りにも自分と同様に天をのぼる者たちがいて美しい音楽が聞こえました。王子と王女は連れの者とともに消えてしまった人魚姫を捜しました。空気の泡になった人魚姫は王女の額にキスをして王子に微笑みかけました。
けれどももう姫の姿を見ることもその調べを聴くことも人間にはできないのでした。
人魚姫は空気の泡としてこの世を300年漂うことになります。そしてその後には良い行いをした褒美として不死の魂を授かるのです。
もし、人間の家で両親の愛情にふさわしいよい子を見つけてほほえみかけると300年は1年になります。一方でいたずらな悪い子を見つけて涙を流すと、300年だった日数はそのたびに1日ずつ伸びてしまうということでした。(完)
参考図書
大畑末吉訳.アンデルセン童話集2.岩波少年文庫,1986
大塚版はみにくいアヒルの子に同じ。
5 人魚姫C
明るい月の夜、皆が寝ている頃を見計らって人魚姫は船べりに座って水面を眺めてしました。船の下には人魚の城があり、人魚姫の祖母が船底の竜骨を見上げてしました。すると、お姉さんがたちが浮上して姫の様子を伺いにきたので、姫は「万事順調です」といった笑みをうかべました。
やがて船のボーイが姫に近寄ってきたので、お姉さんたちは海へと戻っていきました。ボーイにはそれが白い泡のようにしか見えませんでした。
隣国に着くと、来る日も宴会やら舞踏会やらがくり返されますが王女はなかなか姿を見せませんでした。ようやく現れた当人に王子は驚きます。それは聖堂から出てきて王子を介抱した王子の思い人だったのです。王女は王子を助けた時、聖堂で王族にふさわしい徳をつむべく教育を施されていたのです。人魚姫は王子の手にキスをしますが心の中は、恋に破れて自らは泡と消えゆく運命を思い、悲しみで一杯でした。街の教会に婚礼を知らせる鐘が鳴り響きます。花嫁の衣服の長い裾をもって人魚姫も式に参列しました。王子
と王女が乗り込み、船は帰路を進みます。その晩、人魚姫は今まで披露したなかでもとりわけ美しく舞いました。
姫にはこれが王子と過ごせる最後の晩なのだということが分かっていました。その悲しみを思うと足の痛みなど比にならないほどでした。
4 人魚姫B
魔女は末娘に人間になれる薬を渡します。一度人間になれば二度と人魚に戻ることはできません。ただし、尾ひれが足になる痛みに耐えたとしても、王子と結婚式を挙げる(永遠の愛を王子が末娘に捧げる)ことができなければ、万が一にでも王子が別の女性と結婚するようなことがあれば、翌朝には末娘の心臓は破裂して水の泡と消えてしまうかもしれないというのです。さらには薬をつくる代償として末娘は人魚のなかでもとびきり美しい声を渡さなければなりませんでした。魔女は自分の胸を裂いて血を入れた後、末娘の舌を切り取りました。
こうして末娘は光り輝く魔女の薬の効果でポリプたちを退け、無事に海の宮殿に戻り、姉妹が各々もっていた花壇から一輪ずつ花をとって姉妹や王や祖母に会うことなく去っていきました。
朝、海へと続く宮殿の階段の上で目覚めたときには美しい人間の姿になっていました。王子は彼女に身許をたずねますが、末娘は声を出すことができません。どこからともなく現れて身体を長い髪で隠していた女性に王子も惹きつけられました。足の痛みに耐えながら末娘は王子について歩いて行き、衣装に着替えました。末娘が披露した踊りに感動した王子は末娘に寝床を用意し、時には男装をさせてともに乗馬をさせ、登山にも連れ出しました。
宮殿の者が寝てしまう頃になると末娘は海に続く階段へと出て足を冷やしながら家族のことを思いました。そんな末娘の様子を姉たちが見にくるようになり、王や祖母も遠くから見守っていました。
王子は、末娘が王子を助けるために教会のような建物から出てきてくれた女性によく似ており、その女性を恋慕っていたので、末娘のことも大事にしてくれるものの、末娘を結婚相手には考えていませんでした。それでも末娘は王子につき従う決意をしていました。そんな時、あろうことか王子に隣国から婚約の話が持ちかけられ、王子は相手の顔を見に、末娘も連れて船で隣国に行くことになりました。
3 人魚姫A
姉たちは末の妹を心配していました。そこで伝手をたよって王子の住まう宮殿を突き止めました。姉妹は列になって海をのぼり、宮殿がある場所の前に浮かびでました。以来、末の娘は何度も宮殿のそばへ行くようになりました。時にはバルコニーの下までいって、月下の王子の姿をこっそりと眺めることもありました。またある時には船に乗った王子が沖へ漕ぎ出すところも見ました。人々には、末娘が身につけていたヴェールがたなびく様子は白鳥が飛び立つところのように見えていました。
祖母の話では人魚の寿命は300年もありました。海を離れてしまうと泡になって消えてしまうということでした。人間のように死んでも、体から自由になった魂がただよい、天にのぼることはないのです。それが可能な方法があるとすれば、人間の男性に永遠の愛を誓ってもらい、そのたましいを分けてもらうこと。姉や祖母の心配をよそに末娘の人間への憧れはますます強くなり、抑えられないところまできていました。そして遂に、末娘は海底で催されていた宮廷舞踏会を抜け出して海の魔女のもとへ向かいます。
海の魔女は、大渦巻きやら泡立つ熱い泥の上を越えた先に住んでおり、半分は動物半分は植物のくねくねと動くポリプたちを従えていました。
2 人魚姫@
海の底に人魚の住む城がありました。人魚の王は妃を亡くしており、6人の娘がいました。娘たちの祖母(王の母親)は孫たちに地上の暮らしを語ってきかせました。娘たちは15歳になると海上に出ることが出来ました。娘たちは1歳ずつ離れていたので末娘が海上に出るまでには、一番上の娘が海上に出てから5年も待たなければなりませんでした。末娘は物静かでいつも物思いに耽っていました。彼女の慰めは沈没した船内にあった白い大理石の少年像でした。姉さんたちは毎年それぞれが見た海上の光景を語ってきかせました。海岸沿いの街の音、教会の鐘の音、夕暮の空を飛ぶ白鳥、運河をたどってたどり着くぶどう園、森、入り江を泳ぐ子ども、吠え立てる犬、遠くに見える船、そばを泳ぐクジラやイルカ。外の世界への憧れを胸にようやく海上へ出られるようになった末娘の頭に祖母は花びらを真珠を半分に割って作った百合の冠をのせ、尾ひれは8つのカキではさんで送り出しました。(普通の人魚はかきは6つまでしかつけられず、祖母だけが身分の高い証として12個つけていました)娘は海上で大きな船と花火を見ました。船からは音楽も聞こえます。それは王子の16歳の誕生日を祝うためのものでした。ところが船が嵐に襲われ、マストは折れて船底も割れてしまいます。王子も海に投げ出されます。このままでは王子は死んでしまい末娘の住む人魚の世界にあるかつて座礁した船と同じ運命をたどることになります。そうはさせまいと末娘は王子を助け、陸地に引き揚げます。奥には教会のような建物がありその庭にはレモンやオレンジの木などが茂っていました。物陰に隠れるようにして末娘が様子を見ていると、教会の方からやってきた女性のひとりが王子に気がつき、助けを呼びに行きました。王子は気がついてその女性に目をとめますが、人魚に助けられたことを知らない王子は末娘には目をとめることがありませんでした。そこで末娘は以来、海上に出ては戻って物思いに沈むようになります。