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1 賢者の書11 若まほ図鑑

石井聡美

カインまでの若い魔法使いと+α(400歳組)にフィーチャーした
賢者の書です。
47 アーサー誕生日





シノは、5周年でまたヒースとの関係がギクシャクしてしまい、罵り語録の乏しさから暴言を吐いてしまい、アーサーに事情を聞いてもらいます。
ホワイトと仲直りするため、特別なカーケンメテオルを作ることにしたスノウ。シュガーを手に入れるためにアーサーとリケはブラッドリーやシャイロックから女性を魅了するワルになる方法を教授されます。
バラッドのストーリーで久々にオズの城を訪ねたアーサーは自分の部屋が燃やされてなくなっていることを知らされます。アーサーとの別れの痛みや過去の過ちを告げられない心情をムルに突かれて、彼を氷漬けにしてしまうオズ。カインは慌てて止めようとします。
ステの宝剣の物語のラストではネロが用意したクリームシチューを美味しそうに食べるアーサーの様子が見られます。それまでは公務に忙殺されてアーサーはなかなか皆とゆっくり食事の時間が取れませんでした。
46 アーサー誕生日
まずはアーサーの家族ともいうべき双子と、おじさんポジションのフィガロ、その弟子ファウスト。そして誰よりもアーサーを思っているオズ。





宝剣ステ、アーサーを褒めるオズと剣を握りしめながら、光の中現れるアーサーを見つめるファウストがとても良かった。
45 アーサー王の剣
下は騎士のコンチェルトより。
アーサー王伝説では、兄として慕っていたサー.ケイが槍試合に参加する際に剣を忘れてしまい、アーサーに取りに行かせます。アーサーは教会の庭の岩に刺さっていた剣を引き抜いてしまいます。それはアーサー以外には引き抜くことができない剣でした。(この剣を引き抜いたことにより、アーサーは自分の父親がサー.エクターではなくユーサー.ペンドラゴンであり、正当な王位継承者であることを聞かされます)
上は宝剣のエチュードより。
アーサーが握っているのはカレトヴルッフ(エクスカリバー)。
騎士ペリノアと一戦を交えて槍を折られたアーサーは剣での戦いに切り替えますが、剣も折られてしまいます。最後は組んずほぐれつの戦いになり、アーサーはペリノアの兜を剥ぎます。ペリノアも同様にアーサーの兜を剥ぎ首を切ろうとしたところでマーリンが止めに入ります。相手がアーサーであることを知ってペリノアは王を殺そうとするもマーリンの魔法で眠らされ、一方のアーサーは隠者の庵で3日間、傷を癒すべく療養します。剣を無くしてしまったアーサーは目の前に現れた湖の乙女に、水中から突き出た腕が捧げ持つようにしている剣の謂われをたずねます。乙女の頼みを聞き入れることにしたアーサーは腕の近くまで船を寄せ、剣を引き取ります。これがエクスカリバーだと言われています。その後、再びペリノアと会う機会がありましたが、それと知らぬ間にマーリンはアーサーの姿が見えない魔法をかけたので、ペリノアは素通りしていきました。
44 アーサー誕生日


3月9日はアーサーの誕生日。アーサーの元ネタ筆頭は勿論アーサー王伝説。今回は伝説に登場する2つの剣を紹介。
43 イソップ寓話より
アーサーの育成ストーリーは以下の2つのイソップ物語を合わせたものと考えられます。以下は中務哲郎訳,イソップ寓話集,岩波書店より。

ナイチンゲールと鷹
ナイチンゲールが高い木の上でいつものように歌っていると、鷹が見つけ、餌に困っていた折から、飛びかかってつかまえた。ナイチンゲールは殺されるより前、自分は鷹の胃袋を満たすには不十分である、餌に困っているならもっと大きな島に向かうべきだと言って、放してほしいと頼んだ。すると客が答えて言うには、「もしも手の中にあるご馳走を放り出して、まだ見ぬものを追いかけるなら俺はとんだ傑作だろうよ」ー人間の場合でも、もっと大きなものを望んで手の中にあるものを投げ捨てるのは考えの足りない人だ。

燕の自慢と嘴細鳥
法螺吹は嘘をつきながら、われとわが言葉で身を滅ぼすということ。
燕が嘴細鳥に対して、「私は生娘で、アテナイの生れで、王女で、アテナイ王の娘なのよ」と語り、さらにテレウスによる強姦や舌を切られた話までつけ加えた。すると、嘴細鳥の言うには、「舌を切られてもそれだけのおしゃべり。舌があったらどうなっていたでしょう」

追記
軌跡記す本屋のファンタジアで集めた本が100冊なのは、百科全書に由来するものと思われます。
42 アーサー育成ストーリー全容
王宮に現れ、王妃の心をとらえて離さないヒバリの姿をした生き物の正体を探るぺく、グランヴェル城を訪れたアーサー。ところが王妃から直接顔を合わせることをアーサーは拒否されていました。そこでオズが
話をつけに行き、マナ石でおびき寄せることに成功します。


正体はラルヴァという悪霊で確かにアーサーを名乗りますが、アーサーは怯むことなく、冥府に送ります。

41 bag pudding とアーサー王
When King Arthur ruled this land, 善良なアーサー王がこの地を
He was a goodly king;       お治めになっていた時、
He stole three pecks of barley-meal 彼は3樽の大麦を盗んで
To make a bag-pudding.        バグプリンを作った。
A bag-pudding the king did make,
And stuffed it well with plums;   プラム(セイヨウスモモ)
                     を詰めて、
And in it put great lumps of fat,  大量に脂を塗って。
As big as my two thumbs.      親指2本分くらいのね。
The king and queen did eat thereof,王と王妃が召し上がり、
And noblemen biside;側に控える貴族たち(騎士たち)も口にした。
And what they could not eat that night,食べられなかった分は
The queen next morning fried.      翌朝、王妃が揚げたよ
40 アーサーとホットケーキ

オズとアーサーの絆を象徴するエピソードがホットケーキです。以下以外にも、山盛りに作り過ぎてしまったエピソードや、
オズが中央の魔法使いとホットケーキを作り、盛り付けるカードエピソードが挿入されています。また、5周年では訓練でオズの雷を浴びることなく、手加減されて落ち込むアーサーにオズが中央の国で食べられているスイーツをネロと共に作る様子が描かれています。これらもマザーグースに由来するものと思われます。
39 軌跡記す本屋のファンタジア

38 軌跡記す本屋のファンタジア


この話の核がアーサーとオズの絆の進展です。これについてカインは上のように言っています。
因みに戦いの神として名高いアテナはローマ神話ではミネルヴァにあたります。芸術と文学に長けた理性の神としての側面ももち、学術書の出版社名にも使われています。また、知恵の象徴としてフクロウを従えています。アーサーたちが捕まえる本が鳥の形をしているのはそのためでしょう。



オズは最後の一冊の確保をアーサーに任せることにします。
37 鳥を捕まえる男
そのとき、うしろからしんせつそうな大人の声がしました。
「あなたがたはどこへいくのですか。」
それは、ぼろぼろの服を着て、ひげをはやした男の人でした。
「ぼくたち、どこまでもいくんです。」
「それはいい。この汽車は、じっさいどこまでもいきますからね。」
「おじさんは、どこへいくの。」
「わしはすぐそこでおります。わしは鳥をつまえる商売でね。」
「どんな鳥をつかまえるの。」
「さぎですよ。さぎというのは、天の川の砂がかたまって、ぼおっとできるもんですからね。川原でまっていて、ぴたっとおさえちまうんです。」
「おかしいなあ。」
 そのとき、がらんとした、ききょういろの空から、たくさんのさぎが、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあさけびながらいっぱいにまいおりてきました。鳥捕りは、いつのまにか川原に立っていました。そして、両手を大きくのばして、おりてくるさぎを、かたっぱしからつかまえては袋の中に入れるのでした。するとさぎは、ほたるのように、しばらくは青くぺかぺかと光って、やがて、みんなぼんやりと白くなってしまうのでした。つかまえられないで、川原へおりたさぎも、砂に足がつくと、みんな雪のとけるように消えていきました。
引用図書
宮沢賢治.原作
藤城清治.影絵.文
新装版 銀河鉄道の夜.講談社,2022
36 軌跡記す本屋のファンタジア

アンデルセンがモデルと思われるクロエをはじめ、西の魔法使いも回収に協力します。アンデルセンのアルバムには、ヒューゴーの由来である文豪、ユゴーのサインが残っています。漫画家の新井隆広先生は、レ・ミゼラブルの漫画化にあたり、巻末に寄せた漫画で、フラン紙幣の肖像画に使われていたユゴーを日本の文豪、夏目漱石に例えています。アンデルセンは旅の間スケッチブックを持ち歩いていましたが、アーサーの白紙の本をはじめ、ルチルのスケッチブックやクロエが賢者の魔法使いの衣装を描き溜めているデザイン帳の設定に活かされていると思われます。
35 軌跡記す本屋のファンタジア



本を回収すべく、それぞれのやり方で奮闘する中央の魔法使いたち。その姿はまるで宮澤賢治の銀河鉄道の夜にでてくる鳥を捕まえる男のよう。
34 軌跡記す本屋のファンタジア
中央の国の面々はオズとアーサー、カインとリケに別れて本を回収していきます。オズはアーサーに手本を示すものの、そっと見守ります。残すはあと一冊になり、強い魔力を好んで月蝕の館へと飛んで行きました。カインと連携しながらアーサーが本を回収し、一同がヒューゴの店に戻った時、最後に回収した一冊がアーサーのもとに収まりました。
33 軌跡記す本屋のファンタジア



32 軌跡記す本屋のファンタジア
アーサーたちは中央の国の市場で不可思議な鳥の噂を聞きつけます。裏通りに入ると、ヒューゴという名前の若者が駆けつけてきます。アーサーとヒューゴは顔なじみでした。ヒューゴは魔法使い専門の書店を前店主から引き継いでいました。鳥のように見えたのは、厄災の影響で書棚から飛んでいってしまった本でした。ヒューゴの書店では本の方から相応しい主を選ぶといいます。アーサーは前に一度挑戦したことがありましたが、その時は選ばれませんでした。飛んできた本を見かけた西の魔法使いも巻き込んで、アーサーたちは合わせて100冊の本を書棚に戻そうとします。
31 軌跡記す本屋のファンタジア



アーサーは、魔導書の他に白紙の本ももらい、学んだことや日々の体験を日記のように書き記していました。
30 アーサーの宝物?


アーサーのイベストは本にまつわるものが多いです。犬使いのバラッドでは、アーサーとの別れが辛く、オズが城の部屋を焼いてしまった時に唯一残していたものが、幼い時に作っていた図鑑でした。リケの魔法で本が開くと様々な植物が溢れてきます。
29 アーサーの特技




アーサーの特技は暗記。現在、上演中の宝剣のエチュードでも司祭長のチェーリオに毅然と向き合い、カレトヴルッフの所有権を話し合います。
28 魔法と秘法
27 アーサーの魔導書
26 ニコラ.フラメル
以下は二人が読み上げた文章。
「古代の錬金術の研究は賢者の石の錬成に関するものである。賢者の石は驚くべき力を備えた伝説上の物質である。どんな金属も純金に変えるという。また永遠の命をもたらし、それを飲めば不死身になる。
賢者の石をめぐっては、数世紀にわたり幾つもの報告がなされてきたが、現存する唯一の石の所有者は著名な錬金術師でオペラ愛好家でもあるニコラス.フラメルである。昨年、665歳を迎え、デヴォンで妻と静かな暮らしを営んでいる」
原文は
J.K.Rowling,“Harry Potter and the Philosopher's Stone”より
25 ハリーポッターと賢者の石
ニコラ.フラメルが登場する、日本でもおなじみの作品は「ハリーポッターと賢者の石」です。(以下は私の訳です)
「ニコラスフラメルですって?」ハーマイオニーは大声をあげたが、思うような反応を得られなかった。「何だって?」とハリーとロン。「二人は読書をしないの?見て。そこを読んでみなさい」

ハリーとロンが読み終えると「分かる?」とハーマイオニー。「あの犬(ケルベロス)が守っているのはフラメルの賢者の石なのよ!賭けてもいい。誰かが石を狙っていると知って、友人だったダンブルドアに守ってくれるように頼んだんだわ。それでグリンゴッツ(銀行)から石を取り出したのよ」
「黄金を作って不死になる石だって!」とハリー。「スネイプが欲しがるのも無理ないよ。誰だって欲しいもの」
24 ニコラ.フラメル
アーサーの魔道具はオズからもらった魔導書です。全て読み解くには、アーサーでさえもまだまだ時間がかかりそう。これにはフランスに実在した錬金術の研究者であるニコラ.フラメルにまつわる物語が影響しているかもしれません。フランス最古の住宅に認定されてる彼の居所は現在はレストランになっています。(ニコラ自体は貧しい人たちの宿泊施設として建てたそう)
ある夜、平穏に暮らしていたフラメルの夢に一人の天使が現れます。天使は一冊の古い書をさして、誰も知ることができなかった秘技を、いつの日かフラメルには分る日が来ると告げます。その後、実際にニコラは古い写本を購入します。その本はカバラ神秘学の著名な古典で『ユダヤ教アブラハム』という題を冠し、「不可思議な文字、蛇、鞭、水の噴き出す泉、流れる血、剣を持った王などの奇怪な絵」がちりばめてありました。フラメルだけでは解読できず、高名な医学者アンソームでさえも助言を与えることはできませんでした。そこでニコラは「ガリシアの聖ヤコブさま」の力を借りることにし、妻のゆるしを得て巡礼に旅立ちました。辛く長い道のりを経てサンティアゴ.コンポステーラ大聖堂で祈りを捧げ、ユダヤ教学者からキリスト教に回心していたカンチェスを訪ねます。カンチェスはニコラが手にしていた本は既に失われたと思っていました。カンチェスから神秘学を教授されたニコラは師と共に帰路を進みますが、カンチェスはオルレアンで発病し亡くなってしまいます。それからパリに戻って三年後、ニコラは秘宝の鍵を読み解き、水銀の溶媒に溶かした鉛を金に変えることに成功したといいます。
参考文献
田辺 保(著)朝日選書659 フランス巡礼への旅.朝日新聞社,2000
23 ロンドン橋つづき
Set a man to watch all night,
Watch all night,watch all night,
Set a man to watch all night,
My fair lady.
Suppose the man should fall asleep,
Fall asleep,fall asleep,
Suppose the man should fall asleep,
My fair lady.
Give him a pipe to smoke all night,
Smoke all night,smoke all night,
Give him a pipe to somke all night,
My fair lady.
訳)一晩中見張れるように夜警をつければいいよ。
  じゃあ、その男が居眠りしたら?
  眠らないように一晩中パイプの煙をふかせて
  おけばいいさ。
ここから先は本題の素材をどうするか?から離れていますね。
22 ロンドン橋
London bridge is broken down, 
Broken down,broken down,
London bridge is broken down,
My fair lady.
Build it up with wood and clay,
Wood and clay,wood and clay,
Build it up with wood and clay,
My fair lady.
Wood and clay will wash away,
Wash away and wash away,
Wood and clay will wash away,
My fair lady.
Build it up with briks and mortar,
Briks and mortar,briks and mortar,
Build it up with briks and mortar,
My fair lady.
Briks and mortar will not stay,
Will not stay,will not stay,
Briks and mortar will not stay,
My fair lady.
Build it up with iron and steel,
Iron and steel,iron and steel,
Build it up with iron and steel,
My fair lady.
Iron and steel will bend and bow,
Bend and bow,bend and bow,
Iron and steel will bend and bow,
My fair lady.
Build it up with silver and gold,
Silver and gold,silver and gold,
Build it up with silver and gold,
My fair lady.
Silver and gold will be stolen away,
Stolen away,stolen away.
Silver and gold will be stolen away,
My fair lady.
以下はここまでのおおまかな訳
ロンドン橋が壊れた(落ちた)。
なので素材を木材と粘土にしてみたら?
それじゃ流されるかもしれない。
では素材をレンガとモルタルにしてみたら?
それじゃ安定しない。
それじゃ、鉄と鋼材では?それだと曲がってしまうかも。
なら、金と銀では?それだと盗まれるよ。
21 橋の守護
何故マザーグースなのかというと、中央の魔法使いが守護の魔法を学ぶ場所として橋を選んだエピソードから、有名なロンドン橋の歌詞を思い起こされるからです。城の前にかかる橋のモデル(カレル橋)はチェコにあるものの、カレル橋もまた橋の素材を変えた歴史があります。
最初は木造でした。(当時橋はもう少し上流にありました)12世紀半ば、洪水により流されて石橋になりました。橋はウラディスラフ2世の妃の名をとってユディタ橋と名付けられ、交通の要衝として活用されました。1342年にまたもや洪水で壊され、カレル4世の命により1357年に着工、60年近くかけて出来たのが現在の橋です。建築家は当時27歳のペトルパルレーシュでした。以後約600年間、何度か洪水の危機に見舞われながらも乗り越えてきました。(地球の歩き方より)
20 きらきら星
※Twinkle twinkle little star,
How I wonder what you are!
Up and above the world so high,
Like a diamond in the sky.(※くり返し)
(日本語詞
きらきら光る お空の星よ
まばたきしては みんなを見てる
きらきら光る お空の星よ)
はよく知られた部分。
ジェイン.テイラーというイギリス人女性が1806年に発表した詩ですが、私たちが知るメロディーの原型は1770年頃にフランスで流行したシャンソンでした。(参考文献 鳥山淳子(著).もっと知りたいマザーグース.
スクリーンプレイ,2002)
この詩は5連まであります。鷲津名都江氏が『マザー.グースをたずねて』という本のなかで、そのうち4連までを紹介しています。
When the blazing sun is gone,輝くおひさま 沈んでしまい
When he nothing shines upon,お顔をすっかり 隠した時に
Then you show your little light,あなたはひそかに光ります
Twinkle,twinkle,all the nihgt. キラキラキラと夜中じゅう

Then the traveller in the dark, 暗い夜道を旅する人は
Thanks you for your tiny spark,かすかに光るあなたが頼り
He could not see which way to go,きっと道に迷うもの
If you did not twinkle so.   あなたがキラキラ光らなきゃ

In the dark blue sky you keep,暗い夜空で眠りもせずに
And often through my curtains peep,
                   カーテン越しにわたしの寝顔
For you never shut your eye,あなたは時々のぞくでしょう
Till the sun is in the sky.再びおひさま照らすまで
(鷲津訳)
19 アーサーの思い出





アーサーが育成ストーリーて話してくれる思い出。それは幼い時に星の歌を覚えた日のことだということがこの物語からわかります。アーサーはヘイガルには王妃の事実を伏せました。

北の魔法使いが放った竜巻の描写も相まって、王妃ご歌った星の歌は前に上げた双子の星のなかに出てくる歌のようにも思えますが、きらきら星の歌をモデルにしているとも考えられます。

18 流星かける橋のラプソディ後編
訓練を終えた後、賢者は魔王と思われて、さらにはアーサーを攫ったと誤解されているオズとアーサーとの関係を見かねてオズに声をかけます。城の庭ではヘイガルのためのパーティーが始まりますが、ヘイガルが突然アーサーにアーサーが城から消えた原因は自分にあると謝ります。アーサーは誰も傷つけないように上手くその場を収めますが、オズの魂の欠片をヘイガルが持っていると知った北の魔法使いが彼を攫い、オズとミスラが空中戦を繰り広げます。一方、アーサーの視線の先には橋を歩く王妃と侍女の姿がありました。王妃がアーサーの名前を呼んだことで、アーサーはヘイガルが言っていた通り、星を数える歌を王妃から教わったことを思い出します(当初、アーサーはその歌をヘイガルから教わったと思っていました)。アーサーの一声によって彼女たちに危害が及ぶことはありませんでした。一方、城の方もオズが守護魔法をかけたことで大きな被害はありませんでした。さらにオズの魂の欠片だとヘイガルが思っていたものは実はただの亀の甲羅でブラッドリーを除く北の魔法使い(ミスラとオーエン)は拍子抜けしてしまうのでした。北の魔法使いから解放されパーティを楽しむヘイガルにリケは自分がこれまで書いてきたノートを見せました。双子も、アーサーが助かったのはひとえにオズへの敬意と優しさにあふれた言葉使い故だったと言語への造詣が深いヘイガルの功績をたたえました。賑やかな場から離れてアーサーは橋の上に佇み、親子三人で橋の上を歩いた思い出を噛みしめるのでした。
17 流星かける橋のラプソディ前編
賢者たちはかつてアーサーの家庭教師をしていたヘイガルと会います。彼の退官に当たってアーサー達はパーティを企画しますが何故かヘイガルはアーサーによそよそしい態度を取ります。ヘイガルはアーサーが城から失踪した原因を自分が幼いアーサーにオズの魂の欠片をお守りとして与えたからだと考えていました。(アーサーが失踪したのは王妃が北の山に彼を捨てたからですが、王と重臣をのぞいてその事実は伏せられていました。最初は王も盗賊や隣国や魔法使いの仕業と考えて捜索隊を出しますが事実を知った途端にその規模は縮小され極秘裏にアーサーは城へと連れ戻されます)一方、オズが城に守護魔法をかけようとするのはその魂の欠片を守るためと考えた北の魔法使いたちはオズの弱点を見つけたとばかりに乗り気に。アーサー達が城の前にかかる橋で守護魔法の訓練をする間、ブラッドリーの恩赦のための奉仕作業とその手伝いを勝手でます。
16 アーサー.グランヴェルA
魔法使いを危ぶみ、当初は西の魔法科学の力に興味を持っていたヴィンセントと異なり、アーサーはどちらにも歩み寄ろうとします。典型的な例が従者のカインとの関係です。カインはニコラスの後任で騎士団長となりますが、オーエンとの件の後で魔法使いであることが知れてしまい職を解かれていました。それにも関わらず城に戻った後のアーサーはカインに物おじせずに打ち解けました。現在も、アーサーはカインが正当な地位に再び就けるよう密かに計画を立てています。その一歩として、(いつまたニコラスのように媒介を使った(厄災の)召喚の儀式が行われるかわからず、また厄災に端を発する異変の報告も後を絶たないため)魔法使いの調査団の結成をヴィンセントに打診します。
15 アーサー.グランヴェル@
アーサーは中央の国を建国したとされるアレク.グランヴェルの直系の子孫であり、王位継承者第一位です。同時に魔法使いでもあり、人と魔法使いの間の架け橋になるべく心を砕いています。彼の幼少期は決して順風満帆ではありませんでしたが、オズとの出会いが契機になります。王妃であるアーサーの母親はあろうことか、魔法使いへの偏見の目に耐えられずアーサーを北の国の山奥へ捨ててしまったのです。そこを拾い、魔法を教えたのがオズでした。オズは当初、アーサーをマナ石にして食べようと考えますが、思いとどまります。アーサーのために城に守護の魔法を施したり、鳥の巣箱を作ったり、アーサーに気付かれない範囲で守りながら一緒に図鑑にあったオズの名を冠した花を探したりするなど、二人の間には親子のような師弟のような絆が育まれていきます。その後、結局アーサーは王子として城に呼び戻されます。
一方、一人残されたオズの悲しみから北の国は寒波に襲われました。また一冊の本をのぞいてアーサーの私物が部屋もろとも燃やされてしまったことが、犬使いのバラッドでは明らかになります。
その後、オズはアーサーが大いなる厄災との戦いで命を落とすと告げられて運命を変えようと自分が中央の魔法使いとして召喚されようとします。それも空しく結局、アーサーの手にも賢者の魔法使いとして召喚された証である黒百合の紋章が浮かび上がりました。それを見たオズはアーサーを気遣いながらも、自分と親しくすることで王子であるアーサーの立場が危うくならないように距離を置こうとします。(なかなかオズは自分が過去に犯した世界を半分征服するという過ちを告げられずにいました)アーサーはオズを慕い、各地に伝わるオズの伝承を誤ったものと考え訂正しようとする一方、オズに師匠として接してもらえるように望みます。
2部ではアーサーが叔父のヴィンセントに「クロエは人を呪わない」と約束してしまったことを受けてとうとうオズが他の国の教師役たちにアーサーの宿命を告げます。終盤ではニコラスが関与した前回の大いなる厄災いとの戦いで魂に負った傷により、魔法舎が夜に襲撃されても、オズは魔法が使えませんでした。そのことでオズは改めて自分の現状と向き合わざるを得なくなりますが、夏合宿のイベントでアーサーの宝探しに加勢しようとした時など、段々と日頃の言動の端々に教師としてだけでなく父親としての顔が見えるようになったと思います。
14 旧教徒と新教徒(識字率)
識字率の高い現代においては、修道院でも読書の時間が設けられ、聖書の文言と向き合います。そこで私自身も、リケがルチルに教わるまで、教団の仕事ではなかったという理由で文字を知らないことに驚きました。先日、その理由が判明しました。
キリスト教の教理は司教や司祭(聖職者)が自身の解釈を交えて口頭で解くものとされてきました。彼らは贖罪によって救われると考えました。これらの傾向に異を唱えたルターは宗教改革として「聖書中心主義(聖書に帰れ)」を打ち出したのです。同時期にグーテンベルクが自身が発明した活版印刷技術で聖書を印刷し、プロテスタントの間でまたたく間に普及していきました。このことがプロテスタントの識字率の向上に一役買い、両者の就ける職業の差に表れることになります。今でこそいずれの国の教育水準も向上し、宗派の違いは当時ほど問題にならなくなりましたが、「質素.倹約.硬くて真面目」なイメージのあるプロテスタント国の姿勢はコロナ前にヨーロッパが経験した経済危機における政策の違いにも現れていたようです。
13 銀河鉄道の夜B
「この汽車、どこを走っているんだろう。」
「この汽車はね、銀河鉄道を走っているんだよ。」
「銀河鉄道……。」
「銀河鉄道はね、天の川の左の岸にそって、ずっと南のほうへつづいているんだ。」そのとき、車の中がぱっと明るくなって、汽車のゆくてから、白く光る羽をした美しい白鳥が、なん百となくむれをなしてとんできました。白鳥たちがはばたくたびに、その羽の先から、光のしずくがこぼれおちるように見えました。やがて、きらびやかな銀河の流れのまん中に、ぼうっと白い十字架があらわれ、それは白鳥の姿のようにも見えて、それこそもうこおった北極の雲でつくったのかと思うように、りんとかがやかしくそびえたっているのでした。「あれは、白鳥座の北十字だよ」カンパネルラが、十字架をさしていいました。ふりかえってみると、車内の旅人たちは、みんなまっすぐに立って、黒い表紙の聖書を胸にあてたり、水晶のじゅずを手にかけたりして、どの人も十字架をあおぎながら、つつましくいのっているのでした。
やがて、白鳥たちと北十字は、とおくかすんで消えさり、川と汽車とのあいだは、光るすすきの列でさえぎられて、汽車はさわさわと風に鳴るすすきの中をまっすぐに走っていきました。そのうちにシグナルの緑のあかりが、ちらっと窓の外をすぎたかと思うと、汽車はだんだんゆるやかになって、まもなく、プラットホームの一列に並んだあかりが見え、そして汽車はすべるようにホームにはいって、とまりました。空の時計は、11時きっかりをさしていました。
「ここが、白鳥停車場だよ。20分停車だ。」
「カンパネルラ、よく知っているね。」
「だってぼく、時刻表と地図をもっているもの」
引用元
宮沢賢治(原作).藤城清治(影絵.文)新装版 銀河鉄道の夜
講談社,2022
12 銀河鉄道の夜A
ジョバンニは、青い琴の星が三つにも四つにもなって、ちらちらまたたき、足がなんべんも出たりひっこんだりしてるのを見ました。そして、すぐうしろの天気輪の柱が、しばらくはほたるのようにぺかぺか消えたりともったりしているうちに、それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないようになり、青いはがねのような空の野原に、まっすぐにすきっと立ったのです。「銀河ステーション……銀河ステーション……。」どこかでふしぎな声がしたかと思うと、いきなり眼の前がぱっと明るくなって、まるでダイヤモンド会社で、ねだんが安くならないために、わざととれないふりをしてかくしておいた金剛石を、だれかがいきなりひっくりかえして、空じゅうにばらまいたというふうに、空いちめんがなん千なん億という光の粒できらきらとかがやきわたりました。ジョバンニは、思わずなんべんも目をこすってしまいました。金剛石で光りかがやく青いはがねの空のドームが、ゆっくりと、うごきだしたように見えたのです。ーほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、ぼんやりとした電灯にてらされた、青いビロードをはった腰かけにすわって、窓から外をながめているのでした。ー
11 銀河鉄道の夜@
リケの物語を読むと、「白鳥」のモチーフに重ねられていることがあります。それはおそらく宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出てくる白鳥の停車場の手前の場面から来ていると思われます。

銀河鉄道の夜あらすじ
ジョバンニは父親が漁に出かけて病気の母親と二人暮らし。ケンタウル祭の夕方も他の子が出かける中でジョバンニだけは活版所で働いていた。友人のカンパネルラは一足先に来て彼を待っていた。仕事終り、ジョバンニは祭りに来ていた同級生を見かけるが父親のことでからかわれてしまう。逃げ出したジョバンニが見たのは夜空を走る列車だった。そして何故かジョバンニは自分もその列車に乗っていた。さらに向かいにはカンパネルラが何故か濡れた姿で座っていた。銀河鉄道には二人以外にも客が乗り込んでくる。最初は鳥追いの男。次は修道士の格好をした男の人と姉弟。三人は氷山に衝突した船に乗っていたようだ。その頃、カンパネルラの父親が同級生とともにカンパネルラを探していた。川に落ちたザネリを助けるかわりにカンパネルラの姿が見当たらなくなってしまったのだー当のカンパネルラはジョバンニに尋ねる。「僕の母さんは僕がしたことを許してくれると思う?」と。
10 彷徨う夜に導きをかざして


以外ネタバレ
校内のとある場所にかかっていた絵が、まるで隠し扉のようになって子どもたちを引き込んでいました。その奥はまるで図書室のようになっていて、その昔、魔法使いが住んでいました。誘拐事件のようだった一件もその実は厄災の影響を受けたものだったことが分かり、魔法使いたちは部屋を封印することにします。
9 水鏡に映る心の奥底
彷徨う夜に導きをかざしてにて、双子がリケの元を訪れ、その心が望んでいることをたずねるシーンには以下の逸話が重なります。(立場は逆転していますが)"ある孤独な修道士のところへ、ある日、数名の訪問者がやってきた。彼らは修道士にたずねた。「あなたは自分の静寂の人生に、どんな意味があると思っているのですか?」修道士はちょうど雨水溜めから水をくもうとしていた。彼は訪問者たちにいった。「水溜めのなかをのぞいてみなさい。何が見えるかね?」その人たちは深い水溜めのなかをのぞいた。「私たちには何も見えません」しばらくして修道士はふたたび、訪問者たちにいった。「もう一度、水溜めのなかをのぞいてみなさい。何が見えるかね?」訪問者たちはもう一度、下をのぞいた。「ああ、いまは自分たちの姿が見えます」修道士はいった。「そうだろう。私がさっき水をくんだときは、まだ水面は波打っていた。いまは静かになっている。これが静寂の体験だ。水が静まると、自分自身の本当の姿を見ることができるのだ」”
引用文献
ペーター.セーヴァルト(編)ジモーネ.コーゾック(訳)島田道子(訳)
修道院へようこそ 心の安らぎを手にするための11章
創元社,2010
8 リケの理想と戸惑い2

"白樹のもとで優しく嘘を"
ミチルが体調の悪いのを隠してリケと一緒に勉強をしようとします。リケは正直に話してほしかったと言い、二人は喧嘩してしまいます。ある日、市場で友人のフクロウを探す木樵に出会います。フクロウは実は魔法使いですが、木樵の前ではフクロウの姿を保とうとして大分弱っていました。実はフクロウは大雨の後で自分の力を制御できずに木樵に怪我を負わせてしまったのをずっと気にしていました。木樵とフクロウに自分たちを重ね合わせるようにリケは悩みます。

”彷徨う夜に導きの光をかざして"


私立の学校で生徒の行方不明事件が起き、友人も巻き込まれたという相談をスーキーという少女から受けてリケとクロエは教師に変装したミスラやオーエンも伴って潜入調査をします。ところが肝心のスーキーからは校内で知らない人の振りをしれてしまい、リケは悲しみと怒りで一杯になります。そんなリケを慰めに賢者は双子とともにリケの部屋を訪ねます。そして心に正直でいるよう双子は助言します。夜、昼はいなかったシャイロックやファウストを伴い、リケは再び学校へ赴きます。生徒を誘拐したのは夜な夜なさまよい歩くナイトウォーカーかもしれないという噂もありました。
7 教団からの解放
リケは教団の司祭と神に選ばれた力は人間のために役立てるようにと言われてきました。特にニコラスの二の舞にならぬように召喚の儀式に使われそうな媒体の調査および回収作業の一環として、中央の国の建国の立役者で初代国王アレク.グランヴェルが使用していた聖剣カレトヴルッフを聖堂から城に打つ際に渋るチェーリオに向けてリケが使命感から放った言葉はなかなか強烈。(東のジューンブライドで行方不明の花嫁を探す依頼を受けて村に向かったのに追い払われそうになったときも、魔法使いを悪く言われたことに対して、周りに咲く白い花の影響で気持ちをコントロールできず同様に村人に怒りをぶつけてしまいます)
ただし、教団はリケを洗脳している面があり、二周年ではミチルに「二度と教団(リケのいわば実家)を悪く言わないで」と約束を迫ります。無知のまま約束に縛られることの意味をよく理解しているヒースとシノは止めに入りリケも我に返ります。
それでも、魔法使いはその土地の精霊を使役して力を使うがより力の強い者に精霊は惹かれるので、その意味でオズが最も精霊に愛され、彼らを束ねる王のような存在たり得るという説明には納得できない様子。そこにアーサーが「良い、悪い」ではなく「好き嫌い」同様に捉えればお互いを理解する助けになると助言します。完全には自分の気持ちを素直に伝えることができず、他者の希望を介して望みを伝えるリケですが、それでも日々新しい世界に触れてリケは成長していきます。これからも彼の笑顔を見守っていきたいものです。
6 リケの理想と危うさ、戸惑い









5 修道院と比較して
一読すると異様に聞こえる教団の生活ですが、先に修道院の生活で紹介したように、お祈りをはじめとするリケの生活方針は大体修道院の生活方式にのっとって書かれているようです。リケの食べられるもの(果物、野菜、卵、パン=小麦)や蜂蜜は自給自足を行う修道院の中で賄われているものです。
教団でリケのいた部屋のイメージはおそらくカトリック教会にある懺悔室もしくは告解室からきたもので、小部屋の中で信者が神父に罪を聞いてもらいます。定住も所属を動かせないところからきていると思われます。
修道院で最も大事な修行は沈思黙考(ただしシトー派の一部の教会をのぞき必要なときには話をする)ですが、リケはこの点においてはまだ未熟さが出ています。(「賢者は言葉の少なさでわかる」)
4 リケの生活
リケは魔法舎に来た頃から自分の持ち物は少なく部屋も簡素です。規則正しい生活を好み、お祈りをしています。食べられる物は限られていますが、ネロはそのなかで温かく美味しいものを用意します。外の世界は汚れていると教えられ、使途として生活する以外は教団の中にいたために冒険に憧れています。(一方の南の魔法使いは安全に帰ってこられる冒険を望みます)2周年ではリケの教団にいた頃の生活が檻の中で衆人に見られるような生活だったためにミチルは驚きます。
3 リケの生活




2 リケオルティス
リケは賢者の魔法使いとして召喚される前は終末教団と呼ばれる怪しげな一種のカルト教団にいました。司教から外の世界は汚れていると教えられ、魔法使いの力は神に選ばれた者がもつ特別なものであり人間を導くために使うよう教えられてきました。初めは額に現れた紋章に戸惑い、オズに消してもらうことを望みますが、お前だけが特別ではないと断られます。賢者の魔法使いとして共同生活をする中でリケに変化が見えます。アーサーからは知りない世界だからといって悪いものは限らず、世の中には様々な考え方があることを教えられ、ネロには温かいご飯でもてなしてもらい、ルチルからは文字を教わり、新しく触れたものを冒険の書に書き込むようになりました。魔法舎でてきた一番の友人はミチルです。