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1 無名さん

雛人形とオルゴール

私が小学生の時に体験したお話です。私には、私のことを大変可愛がってくれた祖父母がいます。孫の中で女の子は私だけだったということもあり、それはそれは祖父母からの愛をたくさん貰いました。特に祖父は私のことを大事にしてくれており、初めて女の子の孫が出来たことが余程嬉しかったようで、素敵な雛人形と、私の名前が掘られた特注のオルゴールまで作ってくれたのです。ただ、きっと舞い上がっていたのだと思いますが、私の名前の漢字が違っていましたが、それでも私は嬉しかったです。ひな祭りが近くなると、母の部屋にその雛人形は飾られました。本来は私の部屋に飾るべきだったのでしょうが、私の部屋は兄と一緒に使っていたため狭く、置くスペースがなかったのです。
しかし、しばらくして。私達は引っ越すことになりました。私も今まで兄と一緒に使っていた部屋を卒業し、私だけの部屋を貰えました。雛人形を置くスペースができたので、その年から私の部屋に雛人形を置くことになったのです。日本人形だし、少し怖いという思いも確かにあったのですが、それよりも祖父が私のために買ってくれたということの方が大事に思えて、私はその年からひな祭り周辺の日は、雛人形がある部屋で寝ることになりました。

初めて雛人形と一緒の部屋で過ごした夜。夜中にふと、何か音楽のようなモノが聞こえてきました。寝ぼけ眼で耳を澄ますと、それは「うれしいひなまつり」の曲でした。私の名前が掘られたオルゴールが鳴っていたのです。初めは夢かと思いましたが、次第に目が冴えてきても音楽な鳴り止まず。私は意を決して身体を起こし、雛人形の方を見ました。しかし、そこには誰も、何もありませんでした。いつの間にかオルゴールも止まっています。不思議に思いながらも、私はそのまま意識を失うようにもう一度眠りました。翌朝その出来事を家族に話すと、案の定信じてもらえず笑われました。やっぱり夢だったのかと思っていると、ふと母が「そういえばいい機会だし、名前の漢字、直してもらおうか」と言いました。私の名前が掘られたオルゴールのことでした。膳は急げとばかりにその日のうちに雛人形を購入したお店に母と行き、オルゴールのことを説明して名前の漢字を直して貰えることに。お願いして家に帰ると、すぐに家の電話が鳴りました。雛人形を購入したお店からでした。「名前の漢字のことは聞いたんだけど、オルゴールの中の線も切れてるみたい。一緒に直しておきますか?」鳴ったはずのそのオルゴールは、本来なるはずなかったのでした。