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1 無名さん

古アパートの押入れの扉

友人から聞いた話です。
友人が引っ越しをすることになりました。転勤することになり、今の家では職場まで遠くて通勤時間がかかってしまうため、引っ越しをすることにしたのです。
引っ越した先はアパートです。一見古そうなアパートですが、室内はきれいにされていました。大家さんがしっかりと整備をしているのでしょう。古いアパートは耐震性が心配だ、汚くないだろうかなど、いろいろなイメージがあったようですが、室内がきれいなことに安心して、このアパートに決めました。大家さんが親切な人だったことも、ここに決めた理由です。
アパートを見学したときには気がつかなかったのですが、生活するようになって室内に1枚だけお札が貼ってありました。押入れの扉です。「なぜこんなところに?」と思った友人は、お札を剥がしてしまいました。
台所に貼ってあるお札なら、火災除けなどの意味があることがわかります。しかし、押し入れは何の理由でお札が貼ってあるのかわからないです。意味がわかるお札ならそのままにしておいただろうと友人は話していましたが、わからなかったために剥がしてしまったのです。
その後、不思議な現象が起こるようになりました。
入居したばかりのころ、まだお札を貼っていたころは普通に過ごしていました。ところが、お札を剥がした後から夜中になると物音がするようになったのです。はじめはネズミでもいるのだろうと思ったそうです。古いアパートなのでネズミがいてもおかしくありません。
そこで大家さんに相談をしたのですが、これまでネズミの話しは聞いていないそうです。
不思議に思った友人は、音の出どころを調べてみました。すると、押し入れのあたりから音がすることがわかりました。以前お札が貼ってあった場所です。

音の出どころがわかったので、今度は何が音を出しているのか調べてみました。夜中、音が鳴ったときに押入れのあたりを見てみると、なんと白い影が出てきたのです。押入れの扉を開けることなく、白い影が出て来るのです。このときにはとても驚いたそうですが、後から冷静になって、あれは幽霊だったのではないかと考えたそうです。
そこで、また大家さんに相談をしたところ、以前にあの家で亡くなった人がいたそうです。その場所が押し入れです。
あのお札は亡くなった人の霊を鎮めるためのものだったのだそうです。何も知らずにお札を剥がしてしまったため、閉じ込められていた霊が出てくるようになったのです。引っ越しをする前に人が亡くなったことは聞いていません。
それから不安になった友人は引っ越しをしました。