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1 無名さん

段ボールの隙間に挟まる女

私が小学生の高学年頃の出来事です。私の家族は3姉妹で、父と母がいて毎年夏休みになると旅行に行くというのが習わしになっていました。年に一度だけの家族旅行だった為、毎年とても楽しみにしていたのです。
そんなある年の家族旅行での出来事です。その年は、福島に旅行に行くことになり、駅前のビジネスホテルに泊まる事になりました。夕方に一度チェックインをしてから、みんなで駅周辺を散歩しながら夕飯を食べに行こうという事になりました。まだ時間が早かったので、少し周辺を探索しながら歩いてみようという事になり、街並みをあちらこちら歩いているうちに、道に迷ってしまい(今のようにスマホ等なかった時代でした)、少しすたれた感じの商店街の中に入っていきました。
しばらく商店街の中を歩いているうちに、一件の昔ながらの作りの家の前を通りかかった時です。その建物は木造でしたが、昔お店を営んでいた感じで、正面はガラス張りになっていました。電気はもちろんついていなかったのですが、夕暮れ時という事もあって、薄明かりの中で、室内の様子が少し見える感じでした。中はなぜか大量の段ボール箱が積み重なっていて、足の踏み場もないくらい部屋一面に敷き詰められていました。子ども心に「なんでこんなに段ボール箱でいっぱいなんだろう?」と違和感を感じました。
その為、じーっと部屋の中を覗き込んでみると、なんと段ボールが敷き詰められた隙間(30センチ位)に真っ白のワンピースのような服を着た髪の長い女の人が経っている、というか挟まっているような格好でこっちを見ていました。そして私に向かって、声は聞こえませんでしたが、口パクで「みーなーいーでー!」と叫んできたのです。私は、母親と手を繋いで歩いていたのですが、あまりの恐怖に母の手を引っ張りながら「見て見て!怖いよー!」と大きな声で訴えました。でも誰も反応してくれませんでした。私の大きな声が全く聞こえていない様にも感じました。そこには父も母も姉二人もいたはずなのですが、誰も私の大きな声には気付かない、というか無反応で聞こえていないような素振りで、その出来事は過ぎてしまいました。あの時のイメージだけはしっかりと焼きついているのですが、なぜ私にだけしか気づく事が出来なかったのか、みんなには見えていなかったのか?と不思議に思いましたが、怖くて聞くことが出来ませんでした。