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1 無名さん

インカレサークルの肝試し

これは私が大学生の頃に体験したことです。私は学生時代、とある有名大学の男子学生と、他大学の女子学生だけが所属できるサークルに参加していました。
表向きは、春夏秋はテニス、冬はスキーをするという活動内容でしたが、実際は飲みサークルで恋愛ごっこを楽しむサークルでした。

このサークルには夏と冬、二大合宿があり、夏は海に、冬はスキーに行くことが決まっていました。

問題のことが起こったのは2年生の夏の合宿の時のことです。

この時はなぜか、サークルの幹部の人たちが「毎年海ってつまらないよね、今年は山にしよう」ということになりました。

それで、とある山に行きました。川遊びなどもできるところで、そういうことをするのが初めてだった私はとてもうきうきしたことを覚えています。


このうきうきには別の理由もあって、当時、私には憧れている先輩がいて、この少し前から可愛がってもらえるようになったという実感があって、もっと距離が近づけられるかもしれないと思っていました。

とはいえ、そう物事はうまくいきません。合宿中、先輩は他の女子にロックされていて、私は隣に行くことすらできません。


夜になり、肝試しをしようみたいな話になりました。最初は一人という話だったのですが、幹部の人は「ここでそれはまずいだろ」と言い、3,4人のグループでということになりました。

グループはくじ引きで決め、女子の参加者が多かったことも災いして、私は先輩と一緒になれなかったのはもちろんのこと、女子ばかりのグループで、かつ、いつもキャーキャーうるさいなと思っていた子と一緒になりました。

私たちは最終グループでした。前に行く別のグループのこわーい、大丈夫だよ、手をつかんでいるからみたいな会話が遠くから聞こえました。先輩の声も聞こえました。とても楽しそうでした。でも、私たちのグループは女子だけなので若干トーンが違います。

例の彼女だけがキャーキャー言っていて、他の人はやっつけでただ歩くみたいな感じでした。私は期待していたのと違うこともあり、イライラがかなりマックス状態でした。

そんな中、彼女から腕をぐいっと引っ張られました。彼女はなぜか人に絡みつく癖がありました。いつもはされるがままになる私ですが、その時に限っては「いい加減にしてよ!」と言って、強く振り払いました。その瞬間周りの空気が止まり、彼女も静かになりました。あとは黙々と歩くだけでした。

ゴールに着くと、男子学生もいるので、彼女のキャーキャーがまた始まりました。私は彼女のこういうところが本当に嫌だなと思いました。


でも、ふと気づいたのですが、彼女は最初から私の前にいたのです。前にいる彼女が私の腕を引っ張ることなんて出来るはずがない。……私の後ろに誰かがいた?いや、誰もいない。じゃあ、私の腕を引っ張ったのは誰?

掴まれた感じはまだとてもリアルに腕に残っているのに……。

こんなことってあるでしょうか。ぞっとしました。このことに気付くと、肝試しに行く前、幹部の人が「ここではちょっとまずい」と言った言葉が気になりました。後でネットで調べたら、色々、そういった噂のあるところのようでした。何と言ったらいいでしょうか。あれからうん十年が経ちますが、人間でない何かの仕業だとしても、どういう気持ちで私の腕を引っ張ったのかなと思っています。