2 熟年妄想族
part 1
「おーい!おかみさん!ビールもう一杯!」
伊藤さんが大声で叫んだ。こっちまで響くその声量に、僕は思わず肩をすぼめた。酔っぱらいというのは本当に扱いにくいものだ。ましてやそれが65年分の経験値を持つ爺さんとなるとなおさらだ。
「あのなあ……今日はもうそろそろやめといたらどうだ?」
そう言いながら僕は自分の猪口におちょこ一口分のお湯割り焼酎を注ぐふりをしてごまかした。本当はもうかなり飲んでいるはずなのに顔色一つ変えない。伊藤さんの胃袋はどうなっているんだろう?
「お前こそ遠慮せずもっと飲めよ!ほら見ろ!周りみんな楽しそうじゃねえか!!」
確かにそうだ。明日が休みだから今夜は特に客が多い日だったようでほとんどのテーブルには赤ら顔の作業員たちが座っていた。彼らそれぞれ手元にはジョッキに入った冷たい麦茶でも日本酒でもなくただひたすら缶詰開けて酒ばかり流し込んでいるだけだった。
その様子を見るだけでもこちらまで酔ったような気がしてくるほどだった。
そんな風景を見つめながら私は考えていた……
「さあ行くぞ板垣!」
伊藤さんは勢いよく立ち上がると、すでに火照った顔を両手でぱしっと叩いて気合いを入れている。こっちはまだ残りのビールをちびちび飲んでいたいところだが、彼の目つきが妙に鋭くて逆らえない。
「どこ行くんですか?」
「決まってんだろ!風呂だ風呂!今日は一週間に一度の大掃除で22時に閉まるそうだ」
大浴場に向かう廊下は蒸し暑く、汗ばんだ肌に作業着がまとわりつく。窓から見える山々は夕闇に沈みかけており、空には星が瞬き始めていた。この宿で一週間過ごしてきたが、初めて外を眺める余裕があったかもしれない。
脱衣所に入ると既に他の労働者たちが裸になりつつあった。それぞれ違う方言丸出しで談笑しており賑やかなことこの上ない。そんな中俺と伊藤さんだけ黙々と服を脱ぎ始めた。
『あぁ〜いい湯だなぁ……』と思いっきり伸びをする。広々とした石造りの露天風呂に身体全体浸かる。それだけで一日の疲れが溶けてゆくようだった。
一方隣では、
「おい見ろよあの爺さん達……」と言いながら指差している先には七十過ぎと思われる男性二人組がゆっくり入り浸っていた。「あんなにシワクチャになってもまだまだ現役なんだよ」「すげえよな」と興奮するように言葉を続けている伊藤さんを見て少し驚いたものであった。
「おぉー!こりゃ気持ちいいな!」
伊藤さんが大きな声を上げながら湯船に飛び込んだ。バシャッと水音を立てて波紋が広がる。湯気の中に浮かぶその姿はまるで野生動物のようだった。全身の筋肉が若々しく隆起しており、毛深い胸元から脇腹へと続く濃い体毛が湯気に濡れて光っている。
「ちょっとはしゃぎすぎですよ」
つい苦笑しながら注意すると、「おお悪い悪い」と豪快に笑い返された。それにしても――この人の巨根ぶりには改めて感嘆せざるを得ない。浴槽の中で股間が自然と強調される形になるせいもあるだろうけれど。俺なんかよりふた回り以上大きいんじゃないのか?そんなことを思いながらふと視線を落としてしまう自分が恥ずかしかった。
幸い向こうは全く気にしていないようだったけど。
『あぁやっぱりこの人は昔からこうだったんだろうなぁ……』と思い出す。現場でも率先して動いて皆を引っ張っていくタイプだし。そういう明るさや豪胆さがある意味頼もしい反面扱いにくい部分もあるんだよなあ……
「ふう〜〜生き返るぜ!やっぱ一日の終わりはこうでなくちゃな!」
伊藤さんが大きく息を吐きながら立ち上がる。湯気越しに見るその体は確かにアイヌ民族の血が混ざった北海道人らしい頑丈な作りをしている。背中一面に広がる濃い体毛が滴り落ちる湯に濡れて黒々と光っている。そして――やはり股間が目を引いた。赤黒く膨れた亀頭が完全に露出しており、長年の使用で磨かれた艶がある。
「まったく……」
「おう?なんだよ急に黙っちまって」
「いや別に。ただ伊藤さんは相変わらず凄いなって」
「ん?ああこれか!」伊藤さんはニヤリと笑いながら腰
にタオルを巻いた。「昔からこんなんでよォ。若い頃は女どもにもモテたモンだぜ」
「違いますよ!豪放だなってことですよ」
「なんだそうか?!でもよ、こいつで何人もの女を泣かせたんだ」下品な冗談と一緒に股間をポンと叩く。こういう露骨な話題を平気で持ち出してくるあたりが「ずけずけ言うタイプ」なのだろう。悪い人ではないが正直対応に困ってしまう。特に今は……
(俺だって結婚してる身なんだけど)そんな内心はおくびにも出さずに愛想笑いで応えるしかない。そもそも50代半ばでこんな話をする機会自体滅多になかったから少々戸惑う部分もあるのだった。
伊藤さんは鼻歌交じりに浴衣を取りに歩いて行く。その後ろ姿を見送りながら自分も体を拭こうと腰を上げたところで不意に振り返られてしまった。「ところでお前はどうなんだ?」
「はい?」思わず聞き返してしまった。すると続けてこう言われたのである。「そっちの方もご無沙汰じゃねのか?」
(また突拍子もない質問だな!)そう思ったものの答えないわけにもいかなかった。
「おーい!おかみさん!ビールもう一杯!」
伊藤さんが大声で叫んだ。こっちまで響くその声量に、僕は思わず肩をすぼめた。酔っぱらいというのは本当に扱いにくいものだ。ましてやそれが65年分の経験値を持つ爺さんとなるとなおさらだ。
「あのなあ……今日はもうそろそろやめといたらどうだ?」
そう言いながら僕は自分の猪口におちょこ一口分のお湯割り焼酎を注ぐふりをしてごまかした。本当はもうかなり飲んでいるはずなのに顔色一つ変えない。伊藤さんの胃袋はどうなっているんだろう?
「お前こそ遠慮せずもっと飲めよ!ほら見ろ!周りみんな楽しそうじゃねえか!!」
確かにそうだ。明日が休みだから今夜は特に客が多い日だったようでほとんどのテーブルには赤ら顔の作業員たちが座っていた。彼らそれぞれ手元にはジョッキに入った冷たい麦茶でも日本酒でもなくただひたすら缶詰開けて酒ばかり流し込んでいるだけだった。
その様子を見るだけでもこちらまで酔ったような気がしてくるほどだった。
そんな風景を見つめながら私は考えていた……
「さあ行くぞ板垣!」
伊藤さんは勢いよく立ち上がると、すでに火照った顔を両手でぱしっと叩いて気合いを入れている。こっちはまだ残りのビールをちびちび飲んでいたいところだが、彼の目つきが妙に鋭くて逆らえない。
「どこ行くんですか?」
「決まってんだろ!風呂だ風呂!今日は一週間に一度の大掃除で22時に閉まるそうだ」
大浴場に向かう廊下は蒸し暑く、汗ばんだ肌に作業着がまとわりつく。窓から見える山々は夕闇に沈みかけており、空には星が瞬き始めていた。この宿で一週間過ごしてきたが、初めて外を眺める余裕があったかもしれない。
脱衣所に入ると既に他の労働者たちが裸になりつつあった。それぞれ違う方言丸出しで談笑しており賑やかなことこの上ない。そんな中俺と伊藤さんだけ黙々と服を脱ぎ始めた。
『あぁ〜いい湯だなぁ……』と思いっきり伸びをする。広々とした石造りの露天風呂に身体全体浸かる。それだけで一日の疲れが溶けてゆくようだった。
一方隣では、
「おい見ろよあの爺さん達……」と言いながら指差している先には七十過ぎと思われる男性二人組がゆっくり入り浸っていた。「あんなにシワクチャになってもまだまだ現役なんだよ」「すげえよな」と興奮するように言葉を続けている伊藤さんを見て少し驚いたものであった。
「おぉー!こりゃ気持ちいいな!」
伊藤さんが大きな声を上げながら湯船に飛び込んだ。バシャッと水音を立てて波紋が広がる。湯気の中に浮かぶその姿はまるで野生動物のようだった。全身の筋肉が若々しく隆起しており、毛深い胸元から脇腹へと続く濃い体毛が湯気に濡れて光っている。
「ちょっとはしゃぎすぎですよ」
つい苦笑しながら注意すると、「おお悪い悪い」と豪快に笑い返された。それにしても――この人の巨根ぶりには改めて感嘆せざるを得ない。浴槽の中で股間が自然と強調される形になるせいもあるだろうけれど。俺なんかよりふた回り以上大きいんじゃないのか?そんなことを思いながらふと視線を落としてしまう自分が恥ずかしかった。
幸い向こうは全く気にしていないようだったけど。
『あぁやっぱりこの人は昔からこうだったんだろうなぁ……』と思い出す。現場でも率先して動いて皆を引っ張っていくタイプだし。そういう明るさや豪胆さがある意味頼もしい反面扱いにくい部分もあるんだよなあ……
「ふう〜〜生き返るぜ!やっぱ一日の終わりはこうでなくちゃな!」
伊藤さんが大きく息を吐きながら立ち上がる。湯気越しに見るその体は確かにアイヌ民族の血が混ざった北海道人らしい頑丈な作りをしている。背中一面に広がる濃い体毛が滴り落ちる湯に濡れて黒々と光っている。そして――やはり股間が目を引いた。赤黒く膨れた亀頭が完全に露出しており、長年の使用で磨かれた艶がある。
「まったく……」
「おう?なんだよ急に黙っちまって」
「いや別に。ただ伊藤さんは相変わらず凄いなって」
「ん?ああこれか!」伊藤さんはニヤリと笑いながら腰
にタオルを巻いた。「昔からこんなんでよォ。若い頃は女どもにもモテたモンだぜ」
「違いますよ!豪放だなってことですよ」
「なんだそうか?!でもよ、こいつで何人もの女を泣かせたんだ」下品な冗談と一緒に股間をポンと叩く。こういう露骨な話題を平気で持ち出してくるあたりが「ずけずけ言うタイプ」なのだろう。悪い人ではないが正直対応に困ってしまう。特に今は……
(俺だって結婚してる身なんだけど)そんな内心はおくびにも出さずに愛想笑いで応えるしかない。そもそも50代半ばでこんな話をする機会自体滅多になかったから少々戸惑う部分もあるのだった。
伊藤さんは鼻歌交じりに浴衣を取りに歩いて行く。その後ろ姿を見送りながら自分も体を拭こうと腰を上げたところで不意に振り返られてしまった。「ところでお前はどうなんだ?」
「はい?」思わず聞き返してしまった。すると続けてこう言われたのである。「そっちの方もご無沙汰じゃねのか?」
(また突拍子もない質問だな!)そう思ったものの答えないわけにもいかなかった。
(PC)
3 熟年妄想族
part 2
「まあ最近はあまりですね……」しどろもどろになりつつ答えるしかなかった。幸いそれ以上の追及はなくホッとすることができたものの……このまま風呂上がりの着替えまで同じだったらどうしようかと考え始めた矢先のことであった……
「なあ板垣よ〜」
髪を拭きながら伊藤さんが寄ってきた。浴衣の裾が少し乱れて下半身が見え隠れする。湯上がりで火照った肌に浮かぶ無数の皺と、そこから伸びる濃密な陰毛が妙に生々しい。
「なんです?」
「いやな……」伊藤さんが突然小声になった。「正直言うとよ……ここに来て一週間も女抱いてねえのがツライんだわ」
その直球な告白に思わず固まる。
「……まあ、それはそうですよね」なんとか平静を装って返すが声が少し震えてしまった。
「わかるだろ?お前も結婚してるんだからよ」伊藤さんは続ける。
俺はもう嫁とはもう何年もしてねえし……
「一発抜きてえんだけどなァ……」
「はあ……」曖昧な相槌を打ちつつ考える。(ここで下手な同情したら危険だ)この人は本気で誘ってくる可能性もあるのだ。
「でもなあ……他の奴らも同じ状況のはずだし」
「まあそうだろうな」伊藤さんは肩をすくめる。
「でも俺くらい立派なモノ持ってる奴ここにいるかよ?」
そう言ってまた股間を見せてきた。確かに堂々とした逸物であることは否定できない。
「ここではトップクラスに位置するかもな」
正直な感想だったが伊藤さんはそれを聞いてますます得意げになった。
「だろ?こんなご立派なお宝を持ち腐れさせておくなんて罪だと思うんだがねぇ」
そんな風に言われてもどうすれば良いのかわからない……というかそもそもそういう話題自体避けたいところである。
伊藤さんが笑いながら俺の顔を覗き込んでくる。その距離の近さに思わず後退りしそうになるのを堪えて、「何か……」と誤魔化す。
「さてはお前も溜まってんのか?遠慮すんなよ、俺らは男同士なんだからよォ」
「そういう問題じゃないんですよ……」
困惑しながらも周囲を見渡すと、いつの間にか他の客たちは全員いなくなっていた。脱衣所には俺と伊藤さんの二人きりだった。
「みんなどこでシコッテるんだ」伊藤が言う。板垣は困惑しながらも「トイレでこそこそじゃないですか」
伊藤さんがニヤリと笑って言った。その顔には悪巧みをしているような表情が浮かんでいる。
「まさか、お前もトイレでシコってたりしないよな?」
板垣はドキリとした。家ではその通りだったからだ。しかしここでは一度も出していなかった。
「……いや、そんなことはないですよ」
伊藤は目を丸くした後吹き出した。
「プハッ!!アハハハハハハ!!!!」そして爆笑した後肩を叩いてきた。
「まぁあれだな。お互い溜まってるんだよ」
「はぁ……」
二人ともしばらく黙っていた後ふと思いついたように口を開いたのは板垣の方だった。
「あ〜あと他の人の話になりますけど……例えば風呂場とかですかね?あそこで親父がシコってるのを見たんです……」
「ほう」と興味津々といった様子なのでさらに続けようと思った矢先だ。突然大声が響いたものだから驚いて口をつぐむしかなかった。慌てて周囲を見渡すと他の労働者達が入ってきたので一旦話題を変えて落ち着こうと考えることに決めた。
伊藤と目が合った。お互い苦笑いのようなものを浮かべるしかないようだった。
二人は浴衣に着替えて部屋に向かう。部屋で伊藤が風呂場で見たことの続きを板垣に聞く。
「……そういえばさっきの話なんだけどよ」
部屋に戻ると伊藤さんが切り出した。
「さっき?」
板垣は布団を敷きながら首を傾げる。
「ほら風呂場のオヤジだよ」
「あー」思い出したように返事をする。「昨日風呂に入ったときに見たんですけど、親父がボディローションを股間に擦りつけてて……」
「ほう」
伊藤さんが興味深げに身を乗り出す。その視線を避けようと目を逸らしながら続けた。
「しかも俺からは見えてないと思って平然としてるから参りましたね」
「ははぁ〜ん……なるほどなぁ」
「ただ単純に嫌悪感がありましたよ」
「そんなもんかなあ」伊藤さんが腕を組みながら考える。「でもなあ……」
しばらく沈黙が続いた後突然思い立ったように立ち上がった。
「俺ちょっと外出てくるわ」
「え?」
驚いて問いかけようとしたが制止される。
「すぐ戻るからよ」
そう言うなり足早に部屋を出て行ってしまった。一人残された板垣は布団の上で仰向けになったまま天井を見上げる。(一体なんだろう?)疑問符が頭の中を行き交う中思考を巡らせているうちに扉の開く音と共に伊藤さんが戻ってきた。その手にはビニール袋が握られている。「はいこれ」差し出されたものは瓶入り焼酎とツマミであった。「明日休みだしお前も飲むだろ?」
「いいんですか?ありがとうございます」
グラスを受け取ると嬉しそうに酌をする。
「それじゃ乾杯といきますか!」グラスに氷を入れ焼酎を注ぎ入れる。「お疲れさまー」「カンパイ!」互いに飲み干していく中再びあの話題に戻っていくことになる……「ところでさぁ……」「はい?」伊藤さんが真剣な眼差しでこちらを見つめていることに気づきドギマギしてしまう。
「まあ最近はあまりですね……」しどろもどろになりつつ答えるしかなかった。幸いそれ以上の追及はなくホッとすることができたものの……このまま風呂上がりの着替えまで同じだったらどうしようかと考え始めた矢先のことであった……
「なあ板垣よ〜」
髪を拭きながら伊藤さんが寄ってきた。浴衣の裾が少し乱れて下半身が見え隠れする。湯上がりで火照った肌に浮かぶ無数の皺と、そこから伸びる濃密な陰毛が妙に生々しい。
「なんです?」
「いやな……」伊藤さんが突然小声になった。「正直言うとよ……ここに来て一週間も女抱いてねえのがツライんだわ」
その直球な告白に思わず固まる。
「……まあ、それはそうですよね」なんとか平静を装って返すが声が少し震えてしまった。
「わかるだろ?お前も結婚してるんだからよ」伊藤さんは続ける。
俺はもう嫁とはもう何年もしてねえし……
「一発抜きてえんだけどなァ……」
「はあ……」曖昧な相槌を打ちつつ考える。(ここで下手な同情したら危険だ)この人は本気で誘ってくる可能性もあるのだ。
「でもなあ……他の奴らも同じ状況のはずだし」
「まあそうだろうな」伊藤さんは肩をすくめる。
「でも俺くらい立派なモノ持ってる奴ここにいるかよ?」
そう言ってまた股間を見せてきた。確かに堂々とした逸物であることは否定できない。
「ここではトップクラスに位置するかもな」
正直な感想だったが伊藤さんはそれを聞いてますます得意げになった。
「だろ?こんなご立派なお宝を持ち腐れさせておくなんて罪だと思うんだがねぇ」
そんな風に言われてもどうすれば良いのかわからない……というかそもそもそういう話題自体避けたいところである。
伊藤さんが笑いながら俺の顔を覗き込んでくる。その距離の近さに思わず後退りしそうになるのを堪えて、「何か……」と誤魔化す。
「さてはお前も溜まってんのか?遠慮すんなよ、俺らは男同士なんだからよォ」
「そういう問題じゃないんですよ……」
困惑しながらも周囲を見渡すと、いつの間にか他の客たちは全員いなくなっていた。脱衣所には俺と伊藤さんの二人きりだった。
「みんなどこでシコッテるんだ」伊藤が言う。板垣は困惑しながらも「トイレでこそこそじゃないですか」
伊藤さんがニヤリと笑って言った。その顔には悪巧みをしているような表情が浮かんでいる。
「まさか、お前もトイレでシコってたりしないよな?」
板垣はドキリとした。家ではその通りだったからだ。しかしここでは一度も出していなかった。
「……いや、そんなことはないですよ」
伊藤は目を丸くした後吹き出した。
「プハッ!!アハハハハハハ!!!!」そして爆笑した後肩を叩いてきた。
「まぁあれだな。お互い溜まってるんだよ」
「はぁ……」
二人ともしばらく黙っていた後ふと思いついたように口を開いたのは板垣の方だった。
「あ〜あと他の人の話になりますけど……例えば風呂場とかですかね?あそこで親父がシコってるのを見たんです……」
「ほう」と興味津々といった様子なのでさらに続けようと思った矢先だ。突然大声が響いたものだから驚いて口をつぐむしかなかった。慌てて周囲を見渡すと他の労働者達が入ってきたので一旦話題を変えて落ち着こうと考えることに決めた。
伊藤と目が合った。お互い苦笑いのようなものを浮かべるしかないようだった。
二人は浴衣に着替えて部屋に向かう。部屋で伊藤が風呂場で見たことの続きを板垣に聞く。
「……そういえばさっきの話なんだけどよ」
部屋に戻ると伊藤さんが切り出した。
「さっき?」
板垣は布団を敷きながら首を傾げる。
「ほら風呂場のオヤジだよ」
「あー」思い出したように返事をする。「昨日風呂に入ったときに見たんですけど、親父がボディローションを股間に擦りつけてて……」
「ほう」
伊藤さんが興味深げに身を乗り出す。その視線を避けようと目を逸らしながら続けた。
「しかも俺からは見えてないと思って平然としてるから参りましたね」
「ははぁ〜ん……なるほどなぁ」
「ただ単純に嫌悪感がありましたよ」
「そんなもんかなあ」伊藤さんが腕を組みながら考える。「でもなあ……」
しばらく沈黙が続いた後突然思い立ったように立ち上がった。
「俺ちょっと外出てくるわ」
「え?」
驚いて問いかけようとしたが制止される。
「すぐ戻るからよ」
そう言うなり足早に部屋を出て行ってしまった。一人残された板垣は布団の上で仰向けになったまま天井を見上げる。(一体なんだろう?)疑問符が頭の中を行き交う中思考を巡らせているうちに扉の開く音と共に伊藤さんが戻ってきた。その手にはビニール袋が握られている。「はいこれ」差し出されたものは瓶入り焼酎とツマミであった。「明日休みだしお前も飲むだろ?」
「いいんですか?ありがとうございます」
グラスを受け取ると嬉しそうに酌をする。
「それじゃ乾杯といきますか!」グラスに氷を入れ焼酎を注ぎ入れる。「お疲れさまー」「カンパイ!」互いに飲み干していく中再びあの話題に戻っていくことになる……「ところでさぁ……」「はい?」伊藤さんが真剣な眼差しでこちらを見つめていることに気づきドギマギしてしまう。
(PC)
4 熟年妄想族
part 3
「風呂場の話し……」躊躇うことなく切り出した彼は続けてこう言ったのである。
「シコッテたおやじって誰なんだ?」「あぁ?武藤さんて知ってますよね」
「武藤って……あの山下工務店の武藤か?」
伊藤は思わず声を潜めた。武藤の名は建設業界では有名だった。豪快で実力主義の現場監督で、多くの工事現場を率いてきた男だ。
「そうそう!あのゴツい親父だよ」板垣は笑いながら焼酎を煽った。頬がほんのり赤くなっている。「昨日入浴中に斜め後ろにいてよ、股間を洗ってるって思ったらシコってるのが鏡越しに見えたんだ……」
「ああ……」板垣も思い出して渋い顔をする。「風呂椅子に腰掛けて堂々と……しかも出した後、勃起を隠さず湯船に入ったんですよね」
「しかもこっち見て『どうだ?』みたいな顔してくるんだぜ?」
伊藤は思わず吹き出した。
「マジか!?それは引くな」
「だよなあ……」板垣も苦笑いを浮かべる。「武藤さん、現場監督なのに何考えてるんだか……」
「まあでもさ」
伊藤が焼酎を一口飲んでニヤリと笑った。「俺たちだって似たようなもんだろ?この歳になっても女がいなければシコるしか手はないんだからな」
「うーん……」板垣は難しい顔をして考え込む。
「俺が風呂場にいるのにシコるか普通……」
「まあまあ、いいじゃねえか。男同士なんだし」
伊藤は板垣の肩をポンと叩いた。「それにしても武藤さんも相当溜まってるみたいだな?」
「ああ……」板垣が眉間にシワを寄せる。「俺が知ってる限りじゃ奥さん亡くなってずっと独り身らしいしな」
「そうなのか……」伊藤が同情するような眼差しを向ける。「そりゃ溜まるなあ……」
二人の間に暫し沈黙が流れると伊藤がポツリと言った。
「あのな……」
「はい?」
「この民宿って一人になれる場所ってないよな?トイレも共同だし。ずっとここにいるヤツはどこでやってるんだ?」
「うーん……」板垣は首を傾げる。「確かにそれは思うところですよねぇ……」
「あ、そういえばさっきの武藤さんの話じゃないですが」
突然思い立ったように板垣が口を開いた。「遅い時間は風呂場は誰もいない時がありますよ」
「そうなのか?」
「今の時間帯ですよ」
伊藤は時計を見た「23時か大浴場は0時で終わりだからな」
「いや?」板垣は頭を掻きながら困ったような表情を見せる。「俺は行かないですけどね……」
「なんでだ?」伊藤は急かすように尋ねる。
「武藤さんもその時間帯にいるんですよ……」
「ハハハハッ!!」大きな声で笑い出す。「武藤は残業が多いからな?」
「笑い事じゃないんですよ……」板垣は真面目な表情で続ける。「あれ以来トラウマになっちゃって……」
「どんなトラウマだ?」
伊藤は興味深々といった感じで身を乗り出してきた。その顔には悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
「それが……」
板垣は言い淀むが伊藤の熱心な様子に負けて渋々話し始めた。「実は武藤さんも凄い大きさなんですよ……」
「ほう?」
「しかも勃ってるところを俺に見せるんです……」
「お前も勃起してたんかい!!」
「いやいや違いますよ!」板垣は慌てて否定する。
「つまり武藤さんが勃ってるところをお前が偶然目撃したんだろ?」
「そうですよ!」
伊藤はニヤリと笑った。「で?どんなサイズだったんだ?」
「……」
板垣は言葉に詰まる。「それは……たぶん20センチくらい……」
「俺と同じくらいじゃねーか!」
伊藤が不満そうな顔をする。
「伊藤さんも20センチくらいあるんですか?」
板垣は顔を赤く染めながら聞く。
普段は見慣れない男の性器について詳しく知ることは少ないため妙な気分になってしまう。
「まあそうだな」
伊藤は涼しい顔で言う。「俺の場合は太さもそれなりだ」
「そんなに……」
「嘘じゃねーよ!」
伊藤は笑いながら言うが板垣の顔はさらに赤みを増していくばかりだ。
「それよりお前のは何センチなんだ?」伊藤が促すと板垣は慌てて口を開いた。「えっと……俺は16センチくらいだと思います……」
「ほぅ……身体の割りには意外と小さいな」
伊藤は少し驚いた様子を見せる。
「いや、俺のも平均よりはデカイが伊藤さんがデカすぎなんですよ!」
板垣は必死に弁解するが伊藤はクックッと笑うだけだった。
「……」
板垣は何も言えず俯いてしまう。
自分よりも大きなイチモツを持つ男達への劣等感が込み上げてきた。
(ああ……)心の中でため息をつく。
なぜこのような話題で盛り上がらなければならないのか理解できなかった。(しかし……)
ふと思うことがあった。
それは伊藤とのやり取りが決して嫌ではなく寧ろ楽しいとさえ感じるということだ。彼の屈託のない性格のお陰かもしれない。
深夜の空気が肌に触れる頃、焼酎瓶は半分ほど空いていた。伊藤が最後の一滴を舌で舐め取ると、大きなあくびが漏れた。
「あー……もうこんな時間か」
板垣は壁の時計を見て目を丸くした。「本当だ……0時過ぎてる」
風呂上がりの浴衣はすでに乱れており、二人とも半裸状態に近い。伊藤の分厚い胸板から滴る汗と、股間に垂れた剛毛の黒さが目に入る度に、板垣はなんとも言えない気持ちになった。
続く
「風呂場の話し……」躊躇うことなく切り出した彼は続けてこう言ったのである。
「シコッテたおやじって誰なんだ?」「あぁ?武藤さんて知ってますよね」
「武藤って……あの山下工務店の武藤か?」
伊藤は思わず声を潜めた。武藤の名は建設業界では有名だった。豪快で実力主義の現場監督で、多くの工事現場を率いてきた男だ。
「そうそう!あのゴツい親父だよ」板垣は笑いながら焼酎を煽った。頬がほんのり赤くなっている。「昨日入浴中に斜め後ろにいてよ、股間を洗ってるって思ったらシコってるのが鏡越しに見えたんだ……」
「ああ……」板垣も思い出して渋い顔をする。「風呂椅子に腰掛けて堂々と……しかも出した後、勃起を隠さず湯船に入ったんですよね」
「しかもこっち見て『どうだ?』みたいな顔してくるんだぜ?」
伊藤は思わず吹き出した。
「マジか!?それは引くな」
「だよなあ……」板垣も苦笑いを浮かべる。「武藤さん、現場監督なのに何考えてるんだか……」
「まあでもさ」
伊藤が焼酎を一口飲んでニヤリと笑った。「俺たちだって似たようなもんだろ?この歳になっても女がいなければシコるしか手はないんだからな」
「うーん……」板垣は難しい顔をして考え込む。
「俺が風呂場にいるのにシコるか普通……」
「まあまあ、いいじゃねえか。男同士なんだし」
伊藤は板垣の肩をポンと叩いた。「それにしても武藤さんも相当溜まってるみたいだな?」
「ああ……」板垣が眉間にシワを寄せる。「俺が知ってる限りじゃ奥さん亡くなってずっと独り身らしいしな」
「そうなのか……」伊藤が同情するような眼差しを向ける。「そりゃ溜まるなあ……」
二人の間に暫し沈黙が流れると伊藤がポツリと言った。
「あのな……」
「はい?」
「この民宿って一人になれる場所ってないよな?トイレも共同だし。ずっとここにいるヤツはどこでやってるんだ?」
「うーん……」板垣は首を傾げる。「確かにそれは思うところですよねぇ……」
「あ、そういえばさっきの武藤さんの話じゃないですが」
突然思い立ったように板垣が口を開いた。「遅い時間は風呂場は誰もいない時がありますよ」
「そうなのか?」
「今の時間帯ですよ」
伊藤は時計を見た「23時か大浴場は0時で終わりだからな」
「いや?」板垣は頭を掻きながら困ったような表情を見せる。「俺は行かないですけどね……」
「なんでだ?」伊藤は急かすように尋ねる。
「武藤さんもその時間帯にいるんですよ……」
「ハハハハッ!!」大きな声で笑い出す。「武藤は残業が多いからな?」
「笑い事じゃないんですよ……」板垣は真面目な表情で続ける。「あれ以来トラウマになっちゃって……」
「どんなトラウマだ?」
伊藤は興味深々といった感じで身を乗り出してきた。その顔には悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
「それが……」
板垣は言い淀むが伊藤の熱心な様子に負けて渋々話し始めた。「実は武藤さんも凄い大きさなんですよ……」
「ほう?」
「しかも勃ってるところを俺に見せるんです……」
「お前も勃起してたんかい!!」
「いやいや違いますよ!」板垣は慌てて否定する。
「つまり武藤さんが勃ってるところをお前が偶然目撃したんだろ?」
「そうですよ!」
伊藤はニヤリと笑った。「で?どんなサイズだったんだ?」
「……」
板垣は言葉に詰まる。「それは……たぶん20センチくらい……」
「俺と同じくらいじゃねーか!」
伊藤が不満そうな顔をする。
「伊藤さんも20センチくらいあるんですか?」
板垣は顔を赤く染めながら聞く。
普段は見慣れない男の性器について詳しく知ることは少ないため妙な気分になってしまう。
「まあそうだな」
伊藤は涼しい顔で言う。「俺の場合は太さもそれなりだ」
「そんなに……」
「嘘じゃねーよ!」
伊藤は笑いながら言うが板垣の顔はさらに赤みを増していくばかりだ。
「それよりお前のは何センチなんだ?」伊藤が促すと板垣は慌てて口を開いた。「えっと……俺は16センチくらいだと思います……」
「ほぅ……身体の割りには意外と小さいな」
伊藤は少し驚いた様子を見せる。
「いや、俺のも平均よりはデカイが伊藤さんがデカすぎなんですよ!」
板垣は必死に弁解するが伊藤はクックッと笑うだけだった。
「……」
板垣は何も言えず俯いてしまう。
自分よりも大きなイチモツを持つ男達への劣等感が込み上げてきた。
(ああ……)心の中でため息をつく。
なぜこのような話題で盛り上がらなければならないのか理解できなかった。(しかし……)
ふと思うことがあった。
それは伊藤とのやり取りが決して嫌ではなく寧ろ楽しいとさえ感じるということだ。彼の屈託のない性格のお陰かもしれない。
深夜の空気が肌に触れる頃、焼酎瓶は半分ほど空いていた。伊藤が最後の一滴を舌で舐め取ると、大きなあくびが漏れた。
「あー……もうこんな時間か」
板垣は壁の時計を見て目を丸くした。「本当だ……0時過ぎてる」
風呂上がりの浴衣はすでに乱れており、二人とも半裸状態に近い。伊藤の分厚い胸板から滴る汗と、股間に垂れた剛毛の黒さが目に入る度に、板垣はなんとも言えない気持ちになった。
続く
(PC)