準決勝�@

メンバー
・土筆
・B-1秘書

テーマ
『1分間』

投稿期間
6月6日AM9:00〜6月9日AM8:59

判定期間
6月9日AM9:00〜6月11日AM8:59

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　彼は朝の8時にiPhone7のアラーム音で目覚めた。枕元の忌まわしいサラウンドを止めて眠い目を擦る。ベイビーブルーのカーテンの隙間からは陽光が差し込んでいる。起き抜けの精神憂鬱。筏船で滝のような急流を下るという嫌な夢を見たことを彼は思い出す。しかし現実に彼が占める空間は半年間暮らしているワンルームだ。そのリアルを反芻すると彼は安堵した。
　コーヒーを飲まなければならない。もう一度寝てしまうかもしれない。iPhoneだけでは起きられないので別の目覚まし時計も用意しているとはいえ。それにしても今の彼にはベッドからキッチンまでの僅か2mの移動がタフなイベントに思われた。脳の論理回路が機能せず大きな一歩を踏み出せない。ふと彼は朝の生理現象に意識を向ける。10代の頃に比べて些か控えめなそれは女性への精子提供を未だ諦めてはいないようだった。23歳の彼は恋愛よりも自分探しに夢中であったが性欲がないわけではない。数ヶ月前までは年上の恋人から送られてきたボイスメモで起床していたのだ。しかし彼女には別のボーイフレンドがいた。そのため２人の蜜月は彼女が彼を見捨てる形で終焉を迎えた。
　とりあえず一旦シコるか、と彼は思った。その刹那、不意にBRAUNの目覚まし時計が鳴り響く。文字盤の針は8時1分を指していた。
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801...君さえいればとあなたが言った
昔はこの一言だけで頭が一杯。
目が合わせれば1秒毎に心も跳ねて
1分も合おうものなら胸が曲を奏でた。
それが何周と繰り返した暦の果てで
会話の嬉しさや照れは徐々にこなれて
今じゃ日常に鳴りを潜めた感情の起伏
色褪せて尚輝くあの頃のフィルム。
毎年何も変わり映えもない花束も飽きた
私達は今もいつかの私と貴方なのかしら。
子も巣立った後にただ同じ道にいる
生活を共にするだけのパートナーシップ
あの高鳴りも愛情も泡となり散りゆ
寂しさに爪を立てるあのハードな一文。
気狂いを見る目で拒まれる夫婦生活
抱えちゃいけない感情を抱いて燻っています。
あなたを求めたことすらエゴみたいじゃない
ならせめて毎日1分だけでも貴方の目を見たかった。

1001...「ねぇ、まだ？」
そう聞いてまた覗き込む窯の中
「〇〇くん、これはなに？」
「パパのおなかー！」
ケラケラ笑ってまた遠ざかり
きっかり1分後にはまた窯を見る
イーストに塩と小麦粉とただの水
それがなんで？と好奇心があの子を満たす
彼には発酵も焼成も魔法の時間。
不思議な箱は膨らみに黄金の色を差していく
、、また走ってきた。何かを見て何かを知る私達の何倍も忙し気な1分。

901...1分毎に腐敗は腹を溶かし、蟲が顔を出しまた皮を飛ばす
畳に血肉の水墨画、生前以上に濁り転がった水晶体。
肉の隙間から溢れた糞の渦、一つの孤死の九相図。

...これはあるマンションのアンソロジー、人生とは冬の絶壁の横に並ぶ春の小径。
生は時間、死は分解、輪廻転生があるならまた違う舞台。個々の人生観、一つ間違えれば恐ろしい結果。無様を悔いて朽ちる酔生夢死か人生を宝とし手に取って磨く栄耀栄華か。
運否天賦に唾吐くとて時の流れは不可逆。
自己責任で積み重ねる一分間、才能の違い、境遇の違い、言い訳を省いた先で貴方が一分先に開くのはどういう扉？

＞準決勝�@


感想のみ失礼します


B-1秘書さん
テーマを見たとき、一回戦の内容から、一分前に投稿するのかもと勝手に邪推していましたが、起床後の濃ゆい一分間と言うアプローチ、からの面白ストーリー、08:01に投稿すると言う演出、楽しく拝見出来ました
韻も、生理現象／精子提供、ボイスメモ／ボーイフレンド、など韻までの距離はあったものの、頭の音を合わせてきていたので心地よく響き合っていたと思います
朝からシコる剛の者と言うところ、と言い回しがかなり好きでした


土筆さん
殺し屋1に出てくるマンションを思い出しました
３つのストーリーに"一分間"と言うワードを巧みに散りばめている点、"生は時間〜"からのテーマへ落とし込む表現力、にスキルの高さを感じました
韻も私的にはハズレはないように見えます
夫婦生活／燻っています、が特に上の句と下の句の呼応具合が良く好きでした
"人生とは冬の絶壁の横に並ぶ春の小径"カッコ良過ぎとピーコでした


両者お疲れ様でした！

部外者判定ありですか？

B-1さん
→凄い。ふむふむ、いいね、と読み進めていった後、主人公と同じ目線で（まだあれから1分しか経っていないのか）と思いました。歩幅とカロリーで調整した時間感覚の天才。描かれたのは凡人の毎日。なおかつ投稿時間の遊び心。言葉選びから伝わる風景。こんなんもうエッセイですね。村上B-1。春樹。龍。

土筆さん
→えぐい。なんか書いてるけど何の数字なんやろな、なんかの時間かな、と深読みしないまま読み進めた先に最後のところでネタバラシ。お世辞抜きに鳥肌立ちました。マイチキン、スキン。スタンダップ。ギミック自体が時間の数字ではないという「それもアリか」という発想と、だからこそオチを推測させなかった叙述。イニシエーションラブ。葉桜の季節。蛍。

テーマ戦かくあるべしというギミック対決でしたが、より大技を仕掛けていた土筆さんに1票で。

まだ鳥肌が立っています。

B-1秘書さん
一見すると大きなトリックが無いようにもみえるのですが
投稿時間見てニヤっとできちゃいますね。

作品としては物語の導入部分みたいな。
1分間というエッセンスの使い方が面白いですね。
ものぐさ男の情景が凄く丁寧に書かれていて
彼の性格とか生き様みたいなものが透ける感じがいいですね。

韻が全く邪魔にならない。なんなら読み飛ばしちゃうくらい自然なところもまた良い。


土筆さん
いやーーー。たまげた！
アイデアも韻も好みど真ん中でした！
アンソロジーでありながら、それぞれの1分の価値。
それらを繋ぐ部屋番号というリンクのさせ方。
本当に美しいですねこれ。
どんな頭してたらこれ思いつくんですか。怖っ。
それでいて韻がまた素敵。
肉の隙間から溢れた糞の渦、一つの孤死の九相図
こことかもう韻も内容も怖すぎて美しい。
文末で綺麗に韻を踏みながらも一切内容を阻害していないのはもう
スキルの賜物なんですよね。


どちらも漫画みたいだなって思いました。
どちらも凄い。それは間違いない。

その中でも読後感の衝撃度ですかね。それとテーマの扱い方。
土筆さんに1票入れます。
お疲れ様でした！
めちゃくちゃ面白かったです！！

B-1秘書さん
アラーム音で目覚めた。サラウンド
ベイビーブルー。精神憂鬱。
筏船、嫌な夢
思い出す。そのリアル。
半年間。安堵した。
コーヒーを。もう一度。
僅か2m。タフなイベント。
論理回路。大きな一歩。
生理現象。精子提供。
23歳。自分探し。
年上の。ボイスメモ。ボーイフレンド。
蜜月は。見捨てる形。
鳴り響く。8時1分。

ほとんど脚韻にしないやり方好きです。どれかって言うと頭韻が多いような。これはもう、ショートショートの小説ですね。紛れもなく「1分間」の作品として素晴らしいと思いました。


土筆さん
801とはどういう意味だろう。八百一か、8時1分か、なんだろう、と思いながら読み進め、なるほどマンションの一室か。というのが最後でわかるのが面白かったです。ただ、この「1分間」と言うテーマにおいて、今回の内容は、「時間」でも通用する内容で、「10分間」やもしかしたら「1時間」でも、この内容の中の1分間を置き換える事ができたのかもしれないと思いました。

そこに来たところで、B-1さんの方は、この「1分の短さとそこで考えるとたくさんのこと」というのがすごく伝わったかなという感想で、そう言った点で、B-1さんに1票とさせていただきます。お疲れ様でした。

土筆さんに一票です。
土筆さんの作品では、謎の数字に翻弄され、
徐々に種明かしされていくような展開に引き込まれました。
B-1さんの作品では、まさに、ここから何が起こるのか、
その先を読みたいと思わされました。
魅力的な『導入』なだけに、その先の展開まで書いてほしかった…個人の感想です。
ご両名、お疲れさまでした。

悩みましたが、あ、笹木やよ〜。
B-1さんに一票で。

一分間というテーマの使い方が上手かったのがB-1さんの方かなーと思いました。
悩んだのは作品の完成度、ライミングなどでは僅差で土筆くんかなと思ったためで、ただB-1さんの朝起きてめちゃくちゃ色々考えての一分間経過、てのがすごく面白くて、また起きたくない朝って本当にどーでもいいことが頭のなかで巡りまくるよなーって共感しました。

棚上げすみません、おつかれさまでした！

判定します。

B-1くん
１分間の刹那、切り取り方がうまいなぁと。
長いようで短い、１分間てそうだよなぁと。
奇しくも、初見はとても長く感じたのに、２回３回と読んでいくと短くも感じる。
寝起きの２３才独身者のリアル、重なる自分の朝の光景、思考回路。そして投稿時間のリアル。
１回戦も含めてギミックの使い方天才。


土筆ちゃん
切り取られた相成らない３つの物語、それを映す部屋という箱、たった１分間に込められる客観視された世界。
部屋番号は時間ともリンクしているのかなと深読み。
冒頭の夫婦のすれ違いの淀み感、その後のただただ幸せな親子の眩しさ、最後の虚無しかない空間。
温度感というよりは、それぞれの場面の明暗を想像させられ、グレー→白→黒みたいな移ろいを見ました。
物語が語られる部分での口調と、その後のストーリーテラーが話しているかのようなエンドロールの言葉選びの秀逸さに溜め息がでたよ。。(褒め)

土筆ちゃんに１票。

お二人ともおつかれさまでした。

土筆さんに一票です。

B-1さん
濃密な1分。読む度に、こんなに考えてるか？となったり、確かにこんくらい考えてるよな…とか思ったり。投稿時間もきっちり合わせてきて面白いバースでした。朝の様子が目に映りリアルが感じる一本でした。

土筆さん
それぞれの『一分』。全くバラバラの時間間隔で、しかもストーリー的にも交わってないのに纏まっている不思議。自分で書くと必ず同じ場面に登場させたがるクセがあるので、こういう手も…と勉強になりました。今回は韻での分が土筆さんにあると感じました。

B-1さんに一票

何回か読み比べましたがどちらも好きな感じの一捻りがあって優劣つけ難く、
よりテーマとしてスッと入ってきたのが最終的な票の理由です。
二人とも描写が上手でイメージがしやすかったです。

簡素棚上げ乱文ご容赦
お疲れ様でした。

勝者 土筆
決勝進出です。

お二方お疲れさまでした。

DDBSさん、牛肉さん、キャラバンさん、田中事件さん、わくやさん、コウくん、えみぞさん、たっとさん、いんげさん、判定ありがとうございました！！一層の肥やしにさせていただきます！！
B1さん、お相手ありがとうございました！！基本自分が落とす前に相手の作品を見ないのですが、投下して作品を見た瞬間、テーマのアプローチに完成度エグいしなにより投稿時間とかいい意味で本当に表現に強かだなぁと思いました、、朝の一分ってホントひりつきますよね。笑　めちゃくちゃ食らいました、、！改めてお相手ありがとうございました！！

判定してくださった方々、土筆さんありがとうございました！
アプローチや情景描写もさることながら後半の総括が強かったです！対戦相手である自分のバースすらも包括してしまうくらいの含蓄があって唸りました！
決勝のバースも楽しみにしてます！！