1 たっと

準決勝A

メンバー
・DDBS
・パック

テーマ
『一年間』

投稿期間
6月6日AM9:00〜6月9日AM8:59

判定期間
6月9日AM9:00〜6月11日AM8:59
(ID:JKygCZ)
2 パック
布団から顔出すとうららかな緑
小さなジョウロと君、軋んだ風見鶏
カタい制服がだんだん君に馴染んでいく
今も覚えてる 出会いの暖かい季節

日々増す日照量、軒先のキンチョールと
ビニールプールの君が目に焼き付く僕の理想郷
水しぶきが僕らを包む流星群
必至に水分摂取 きっとこれが人の世でいう青春

色々教えてくれたね 他所を知らない僕の先生さ
負けじと、これでもかと背伸びする炎天下
君と写真に映れば名脇役、グリーンバック、ブルースカイ
赤い実を摘まむ 小さな指がくすぐったい

楽しい時なんてあっという間 
まるで何かの悲劇が連鎖したかのように気付けば辺り一面枯草 
カサカサの指先握りしめる貧相な枝に
誰に何も言われぬよう、君はこっそりと水を掛けた


雪に埋もれる頃、手足も腐ってりゃ
脳髄まで襲う痺れにももう慣れた
君の語っていた 冬はもっと楽しかった
でも君は楽しそうで。憎い、今日も変わらない空の色が

それぞれのものさしも当然違えば、
同じものを得たって意味もちぐはぐな共存共栄下
君の悲しいが僕も悲しかったり
君の悲しいが僕は嬉しかったり

一年なんてあっという間と、盆に語ったおじさん
僕にとってはそれがどれほど長かろうか
少しだけ 悔しいような気がしたので
少しだけ 土の下に投下をしました

いつか、
そっと苗の物陰から出る芽が皆を驚かせ
存分に愛を摂取して精一杯築いてくれ庭先の青春

2022年の夏のフォトグラフ

ちっぽけな僕の抵抗をそっと繋ぐ
(ID:Q2GCkD)
3 DDBS
.

深夜残業に休日出勤、帰宅してからも書類作り、いつ休んだかなんて遠い記憶で、毎日が本当にしんどくて、入社して半年、で人の10倍で磨耗し、たかの様な俺は仕事と人間関係、に疲れて地元に逃げ帰った


「稲刈り手伝え!」

帰ってから寝てばかりいる俺にじいちゃんが言った

『…ごめん無理』


実家は米農家をしている、10月は収穫の時期、で外からは一日中乾燥機、と広範囲、を刈り回るコンバイン、の音が聞こえてくる、親父は機械がなんぼ、あったって間に合わんと、言ってはいたが納期通り、に納品をし、毎年品評会、では一等米、を取り続けていた


「鎌の使い方覚えてっかぁ?」

まだ部屋の前に居るようだった

『…わかるよ』

家から少し離れた田んぼに行った


じいちゃんは田んぼにダンボール、を敷いて刈り残った三畳分、ほどの稲を俺が刈る様子、をそこに座ってじっと見ていた、母が軽トラ、でやって来て腹は減っとらん?と言うと新米のおにぎりをくれた


「一年掛けて作った米だ!食え!うまいど!」

塩っぱくて あったかくて 優しくて 美味しくて 申し訳なくて 夢中で食べた

「次は田植えの時期に帰って来い」


…俺は年内に仕事に復帰、して成績は見事にV字、とは行かなかったが同期の助け、もあってどうにかやっている、そして田んぼに水、が入った頃に今度はカッコイイ自分、を見せに実家に帰った


後ろからまたじいちゃんがじっと見ている

「稲刈りも田植えもまだまだだな」

じいちゃんがそう言うとみんな笑っていた

俺も笑った

入社から一年が過ぎていた

.
(ID:IM8gXQ)
4 田中事件
パックさん

最初全然意味がよくわからなかったのです。
10分くらい読んでてわかりました。
違ったら恥ずかしいのですが、「育てられる植物目線」ですよね?
そういう目で見ると、なんて色を伴って鮮明に伝わる一年で、その中で変わらない空の色と、「君」の変わらない喜怒哀楽に対して、最後枯れゆく自分が土の下に残した最後の抵抗っていう、すごく、美しい内容だなって思えました。循環ですね。


DDBSさん

こちらも、とても臨場感のある一年でした。
病んだ4-9月
稲刈りの10月
田植えの5月
と、大まかにはそう言うことになるのでしょうか。


正直内容は二人ともよくて、韻もドローかなと思ったのですが、パックさんの植物目線に気づいたあとのうわあって感じが少し自分の中で勝ったため、パックさんに1票とさせて頂きます。


お疲れ様でした。
(ID:EDG9SC)
5 B-1秘書
感想だけ書きます

パックさん
韻がすごく好みでした。
「布団から顔出すとうららかな緑 小さなジョウロと君、軋んだ風見鶏」冒頭のラインの”君”で二文字踏んでいる箇所など。ディスバトルだと特にパックさんみたいに上手い人の場合は別にわざわざ評価すべき部分ではないはずなのですがテーマバトルだと何気に大事なのかなと感じます。
名脇役/実を摘む、枯れ草/カサカサ、恣意的な抽出かもしれませんが個人的にはこういう語感が凄く好きでした。「なんか良い」みたいな効果を意図的に作り出しているという意味でスキルだと思います。
「雪に埋もれる頃、手足も腐ってりゃ 脳髄まで襲う痺れにももう慣れた」この手足は直前の段落でいう「貧相な枝?」でしょうか。擬人化されると自然の厳しさが伝わってきますね。

DDBSさん
毎回テーマが具体的なところが凄いです。1回戦では「雪国の高校球児」で今回は「仕事に疲れて地元に戻った先で家業を手伝わされながら励まされる会社員」ですかね(要約が下手ですみません)。主人公のセリフ『…ごめん無理』『…わかるよ』こことか単に稲刈がダルいわけではなく家業を継がなかった自分が鎌を持つことの後ろめたさという微妙な機微がありそうです。テーマ戦に対するアプローチとして架空の物語を書くというのは王道だと思うのですが単純な紋切り型に収まらない屈折が好きです。それでいてしっかりハッピーエンドなのも安心感があっていいなと思います。韻もパックさんに負けず劣らず上手いです。

的外れなこと書いていたら申し訳ないです!!
お疲れさまでした!!
(ID:FLgAEB)
6 キャラバン
パック
いやーー。エモい。
そして面白い!途中から訳わかんなくなってきて
自分=植物 君=育ててくれる子供。。ですかね?
夏の花なんですかね。赤い実っていうのがちょっと分からなかったです。
直感的に朝顔かなーと思ったけど赤くなかったよな・・・

いやー。しかし面白い。叙述トリック読んだみたいな。
読むほどに発見がありワクワクするスルメ系ですね。
安定して文末で踏んでいるのも好感度高い。
テーマ戦であるからこそ韻を重要視したいなって思っちゃいます。


DDBSさん

いやーー。エモい。
行間の使い方がとにかく巧いと思いました。
ストーリーの深みが凄いんですよね。
じいちゃんと自分の距離感が溜まんないですね。
跡継ぎ候補だったのに継がずに上京したんだろうなぁ・・って
そのせいで微妙な気まずさがあるように見える会話がまた良い。
しかも1年を語るのに米と自分を重ねているように見えるのがたまんない。
「稲刈りも田植えもまだまだだな」
ここで初めてじいちゃんと自分が打ち解けた様にみえるんですよね。
じいちゃんの安心感が見えるというか。
全て私の解釈なのであってるか分かりませんが、私にとっては明確にそう見えました。
文章量の3倍くらい行間に情報がある、凄く繊細なリリックでした。


これは迷う・・・
本当にどちらも素晴らしかったです。
どちらも読んでてワクワクしたしどちらも爽やかさのある作品なので気持ちよく読めました。
過去のテーマバトルで一番迷いました。

韻もアプローチも互角ですし、どっちが好みって聞かれてもどっちも好みでした。
本当に優劣付けがたいのですが、半日くらい悩んだ結果
DDBSさんの作品の事を考えている時間の方が長かったので
恐らくこちらの作品の方が私に影響を与えたのだろうと思いました。

自分からはDDBSさんに1票入れます。

最高でした!お疲れ様でした!
(ID:gKDrQA)
7 wky
パックさんに一票です。
大変甲乙つけがたい作品の並びでした。
パックさんは、言うなればピクチャレスクな物語でした。
彩りの移り変わりを文章で綴っておられたように思います。
DDBSさんは、イルマティックな物語、と読めました。
眼前がモノクロになってから、人々との交流や温かみを経て、
再び彩りを取り戻されていったように思います。
どちらの一年間も美しく、どちらの一年間も風景に思い浮かべられ、
選ぶことが酷だと思わされる名勝負でした。
最後は好みで選ばせていただきました。
ご両名、お疲れ様でした。
(ID:EH5J6U)
8 笹木咲
DDBSさんに一票やよ〜。

起承転結がすごく整理されててテンポよく読めました。パックさんのも後読感がよかったし素敵な(またはゾクっとする)表現が多くよかったのですが、物語としてDDBSさんのがよかった。名作映画に通ずるようなスマートさ。無駄な間延びもないし、なにより内容の具体性がすごい。本人米農家なんじゃない?とすら思ってしまいました。

棚上げすみません、おつかれさまでした!
(ID:KQiHzB)
9 コトリバコ
判定させて頂きます。。正直どちらも良いです。。


パックさん
次の1年に繋がるという話がツボ過ぎて読み返すとずっと切なかったです。。1年の季節感を分けて踏んでるワードチョイスが感慨深くて堪らなかったです。。


日々増す日照量、軒先のキンチョールと
ビニールプールの君が目に焼き付く僕の理想郷
水しぶきが僕らを包む流星群
必至に水分摂取 きっとこれが人の世でいう青春
植物目線でもありジュブナイル物でもある感じが良いですね。。


君の悲しいが僕も悲しかったり
君の悲しいが僕は嬉しかったり
ここは天気の事でしょうか。。なるほどです。。

違うかもですが枯れるべきして枯れたのか…というのが「君」が子供だからですかね。。上手いです。。


DDBSさん
いやー凄いです。。仕事の一年…農業の一年…じいちゃんの存在感が良い味出してますね。。いいじいちゃんだなぁ。。

10月は収穫の時期、で外からは一日中乾燥機、と広範囲、を刈り回るコンバイン
あーなんか自然と音まで伝わってきます。。上手いですね。。韻もうま。。

「稲刈りも田植えもまだまだだな」
ここはじいちゃんなりの送り出しなんでしょうかね。。みんなや「俺」の反応が微笑ましいです。。

植物と農作物とどちらも一年の季節感が凄く伝わってきました。。


うーん、迷ったんですが自分からはパックさんに1票でお願いします!


間違ってたらすみません。。棚上げすみません。。
お二人共お疲れ様でした。。
(ID:rCnyxt)
10 えみぞ
判定します。

パックん
目線。親なのか祖父母なのか、隣人なのかはたまた死者なのか?なんて思いながら読み進めて、あなただったのね!と腑に落ちた。
人として生まれた子と植物として芽吹いたもの、成長の進度は子より早くて、誇らしげのような悔しいような。
手をかけられ喜怒哀楽しながら四季を彩っていくそちらと、日を雨を浴びれる喜びと気温に弄ばれるこちら。
同じ1年間にお互いが見た景色はほぼ同じなはずなのに伴わない結果。
時間や季節の移ろいを美しく表現されていて妬いた。


DDBSくん
わたし、じいちゃん子。泣いた。
1回戦の判定でも書いたけど、自分が見せたい世界の景色を誰が読んでもたぶんほぼ同じ光景が想像できるであろう文章力。
不甲斐ない自分とバイタリティ溢れるじいちゃん。
ぶっきらぼうだけど、愛情の塊のじいちゃん。
甘やかすだけじゃなくて、受け入れて包み込んで、強すぎない応援があって暖かい家族。
立ち直った孫にかけた言葉に込められた思い。
受け止めた本人の思い。
それを見届けた家族の思い。
1年かけて大切に育てられていくお米と同じように大切に育てられていく、愛情をかければかけるほどおいしくなるお米と、同じ人の成長とともにでてくる旨味。
重ね方もうまいなぁ。
ごちそうさまでした。

DDBSくんに1票。

お二人ともおつかれさまでした。
(ID:NwNhU4)
11 たっと
パックさんに一票です。

うーん、なるほどと。一年間を四季の流れで映し、かつ植物の目線にすることで一年間で描写を終えてるのもすごく良き。アプローチの面で、この書き手の目線が 一年間 なのが決め手になりました。持ち味の繊細さを十二分に発揮してて上手く言葉に出来ない歯痒さ。

DDBSさん
まともに心に響きますね。話的にはベタなんですが、それで心をノックして、さらに映像まで付いてくる文才。投稿日が父の誕生日だったので余計に。これから先の展開も気になり魅力的でした。

両者お疲れさまでした!
(ID:JKygCZ)
12 inge
パックさんに一票

2人とも良過ぎうますぎ。
どちらのストーリーにも引き込まれました。
優劣つけるの難しすぎたんですが
読みやすさや描写の繊細さ、好みも含めて決めました。

簡素棚上げ乱文ご容赦
お疲れ様でした!
(ID:092CVq)
13 たっと
勝者 パック
決勝進出です。

お二方お疲れさまでした。
(ID:JKygCZ)
14 DDBS
田中事件さん、B-1秘書さん、キャラバンさん、wkyさん、笹木咲さん、コトリバコさん、えみぞさん、たっとさん、ingeさん、判定感想ありがとうございました!
4ブロック構成の部分だったり、じいちゃんとのやり取りの部分など、特に悩んだ部分に感想頂き嬉しかったです!


パックさん
詩的で素敵な作品、読み惚れました!完敗です!対戦ありがとうございました!決勝期待してます😊
(ID:IM8gXQ)
15 パック
判定いただきました皆様、DDBSさん、ありがとうございました。
DDBSさんのバース、皆様の御判定を読ませていただき、お伝えしたいことはせっかくなので決勝後に取って置き、まずは謝辞のみ述べさせていただきます!
(ID:ZMYUmh)